大家重夫の世情考察

中国政治事情

第8章 習近平総書記と王岐山と李克強 – 後編 - ≪第1部 中華人民共和国小史≫

○2014年(平成26年)

朱建栄教授は、7ヶ月後の2014年1月17日解放され、同月28日羽田空港に着いた。西尾幹二は「彼はテレビに出て日本で有名だから助かったものの、そうでなければ、収監されたままのケースもあるのでしょう」(注85)と述べた。朱教授が拘束されていた時期に発行された中央公論2013年12月号82頁「朱建栄氏はなぜ拘束されたか」において、産経新聞矢板明夫は、「この研究者は数年前に日本国籍を取得」「約20年前に来日」「いまでも中国名を使って活動している人物」とした上で、中国共産党内に、習近平等日本批判派の意見と、胡錦濤前主席の側近らから日本との関係改善を求める意見の2つの意見があり、対日外交の軸足が定まらず現場が混乱していると指摘した。遠藤誉「『朱建栄教授拘束事件』の真相」(WiLL2013年12月号220頁)は、朱建栄が文書による「参考消息」を限定した知人に送るだけであれば、拘束されなかったかも知れないが、(朱建栄のようなネット空間で力を及ぼし得る知識人が)「参考消息」として複数の相手にBCCで不定期に中国のニュースをメール送信したことが問題であった、とした。
矢板明夫論文によれば、朱建栄は、日本国籍とのことであるが、2013年9月11日、中国外交部洪磊副報道局長は定例記者会見で、「朱建栄氏は中国の国民だ。中国国民は国家の法律と法規を順守しなけばならない」と述べたという(前掲遠藤誉論文227頁)。
朱建栄が日本国籍であれば、日本政府は抗議すべきであった。抗議したが報道されなかったのだろうか。日本人、中国人、各ジャーナリズムともに「国籍」について鈍感である。
6月、福田康夫元首相が、北京を訪問した。習近平の外交を担当する楊潔篪国務委員、王毅外相とあった。福田は官房長官として、安倍晋三は官房副長官として、小泉純一郎首相を支えた清和会の同僚である。福田元首相が対中国に親和的であり、安倍現首相は、靖国神社を参拝するし、尖閣諸島は、日本領土で、そこに領土問題はないとし、中国からみれば対中強硬派と見られていた。福田は、日中首脳会談を開くように動いた。
7月28日、福田は、国家安全保障局長谷内正太郞を同行、習近平と会い、安倍首相の伝言を伝え、自論をのべ、APECで首脳会談が行われるよう努力した。こういう福田の努力を見ると、人柄、人格にもよるだろうが、日本の派閥、特にお互い二世の議員であり、自民党の「文化」を感ずる。
7月29日、習近平は、前最高指導部にあった周永康の摘発を公表した。
9月14日、環球時報(国営)に、中国側の日本政府に対する要求を掲載させた。 北京政府は、本気で安倍首相に自分たちの主張(靖国不参拝、尖閣が係争地であることの認定)を押し付けられと考えていた証拠であると、ルトワックはいう(「中国4・0ー暴発する中国」(文春新書・2016年)55頁)
11月10日、北京の人民大会堂で、日中首脳会談が行われた。3年ぶりの正式な会談であるが、会談を前に、安倍首相と握手する習近平の表情は硬く、仏頂面であった。ここに至る経緯について、近藤大介「パックス・チャイナ中華帝国の野望」(講談社新書・2016年)181頁以下において、福田康夫の「中国の朋友」は、蒋曉松(1951年生、映画監督蒋君超と女優白楊の子)であることを明かしている。

○2014年12月22日

 新華社は、令計画が重大な規律違反、汚職、職権濫用で調査 中との報道をした。 令計画の妻、兄弟など親族、元部下など100人が党の規律部門によって拘束された。 令計画の弟令完成は,もと新華社通信の記者であったが、これより先、2014年12月、うまく妻ととも にアメリカに逃れた。令計画から機密資料約2700点を渡され、これをもち、カリフォルニア州の高級住宅(約3億円)に妻と2人で住んでおり、中国共産党へ、令計画や家族に重い判決を下せば、機密資料を公開する、と脅迫しているという。「兄が計画を立て、弟がそれを完成する。見事な連係プレーである。」と令兄弟に同情的な共産党幹部もいるという(矢板明夫・正論2015年10月号54頁、相馬勝・サピオ2015年10月号31頁。)


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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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