大家重夫の世情考察

第1章 ヨーロッパのシリア難民

 2015年9月。連日のように、シリアやアフリカから大勢の難民がトルコ、イタリアなどを経由して、ドイツ、フランス、イギリスを目指しているという。
 ドイツ、フランスなどシリアなどから来た難民で一杯のようである。
 ただ、全員が、着の身着のままでなく、多少のお金は持っているようだ。
 ボートピープルとは違う。だから、デンマークは、1万クローネ(約17万円)を超す現金や所持品を警察が没収し、このお金で、難民一時滞在施設の利用料に充てるという。

 わたしは、普通の日本人と同じく、移民受け入れに反対ではあった。
第1、日本人は、外国人を使用人として使い、監督することが下手、苦手である。
日本人は、受け入れるとなると、同等の人間として取り扱うことになる。D・アトキンソン小西美術工芸社社長は、「外国人が上の立場になることに対して、日本人は、抵抗が強い」、日本人はプライドが高い、よいう意見を述べている(WiLL2016年3月号216頁)。
 日本人が使用者になって、部下の外国人の扱いに不馴れで、一方、上司に外国人が来るのは嫌で、結局、人材も鎖国の方がいいのである。
 外国人労働者を受け入れるにしても、日本語を学ばせ、その本人、子供を日本人に同化させる。
 下級労働者として固定させてはならない。ただ、日本語というハードルは越えて貰う。
第2に、日本の国土は狭隘であること、を挙げたい、インドシナ難民を受け入れの際、難民収容施設を探すことに苦労した。
第3,日本は、このところ不景気で、失業者、非正規雇傭者が多いことを挙げたい。
第4に、今度のシリア難民も、欧米諸国が中東に対して、今まで執ってきた政策とその行動の結果であり、日本は、まったく、責任はない(西尾幹二・川口マーン恵美「膨張するドイツの衝撃」(ブジネス社・2015年)147頁)。
 1916年(大正5年)、サイクス・ピコ協定(英仏露がオスマン帝国の解体・分割を図って約束した秘密協定)が中東の国境を定めたとされている。
イギリス人マーク・サイクス(Mark Sykes)は、中東問題の専門家、フランス人のフランソワ・ジョルジュ・ピコ(Fransois Georges Picot) という外交官がとりきめ、ロシアもこれに加わった。
 日本は、その時も、その後もまったく、中東に関与していない。
 この点で、1979年、ベトナム、カンボジア、ラオスの難民を日本は受け入れたが、このインドシナ難民の場合、日本が第二次世界大戦で、迷惑をかけている、また、隣人であるという点でシリア難民と違っていた。
第5,日本は、「世界一治安のよい日本」である。日本は、司法制度が確立し、人々に表現の自由があり、人権は、重んじられている。ヨーロッパ諸国と米国と同じと考えてよい。中国や、ロシアは、その点で信用がおけない。こういう日本について、多くの国民は、移民難民が流入することにより、犯罪が多発し、平穏な生活が脅かされることを怖れている。
 身勝手と言えば、身勝手であるが、おおむね、以上のような理由で、多くの日本人は、シリア難民に限らず、移民受け入れに、少なくとも70%は反対であると思う。
これは、経験から言うが、一応、シリア難民の受け入れに、まあ、賛成しようか、という人も、近隣にシリア難民の合同宿舎を建設するというと、反対運動の側に廻るのではないだろうか。

 しかし、全く、日本が受け入れを拒否し、金銭の補助だけですませてよいだろうか。
安倍内閣も、反対の姿勢をつづけられるだろうか。
難民移民を受け入れるとすれば、どいう理由づけになるだろうか。

  1. 難民、移民を人道的見地から受け入れる。
  2. ドイツ、フランス、イギリス、イタリーなどヨーロッパ先進国がシリア難民受入で苦労しているが、いずれも、民主主義国、人権尊重の国で、これらの国との友情のため。
  3. 日本が国連常任理事国になるなど、国際社会で、一定の発言権をもつため。
  4. 日本は、高齢化し、また人口減の傾向にあるため。
  5. 優秀、有能な外国人を定住させ、日本の科学技術を更に発展、日本文化を豊富にするため。

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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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