インターネット用のニュース記事の見出しは、無断でインターネットに転載できるかということを論じた判決で、1審、2審の判断が分かれた事件である。
原告X(読売新聞)は、日刊紙発行を業とする新聞社であるが、ホームページ(Yomiuri On-Line)も運営し、ニュース記事(YOL記事)を載せ、記事に見出しを付している。
被告は、デジタルコンテンツの企画・制作等を業とする有限会社で、インターネット上で、「ライントピックス」というサービスを提供している。
「ライントピックス」とは、自ら運営するウエブサイト上に、ヤフー株式会社の開設するウエブサイト「Yahoo! Japan 」上のニュース記事の見出しと同一の見出しを掲載し、その見出しをクリックすると、見出しに対応するニュース記事本文が表示されるというサービスが提供される。このサービス希望者は、Yサイトにユーザー登録し、指定された手続きを経てYサイトからデータをダウンロードし、自己の管理するウエブサイトニライントピックスを表示させることができる仕組みになっている。
Xとヤフー株式会社は、Yomiuri On-Line上の主要なニュースの使用を許諾するとの内容の契約を結んでおり、Yahoo! ニュースには、YOL見出しと同一の記事見出しが表示され、同記事見出しをリンクするとYOL記事と同一の記事が表示される。
Yは、Yahoo! ニュースの記事の中から、重要度関心度の高いニュースを選択し、
定期的に更新していた。Yは、Xには無断で、YOL見出しを利用したことになった。
Xは、主位的にYの行為は、Xの著作権侵害、予備的に、仮にXの記事見出しに著作物性が認められないとしても、その無断複製等の行為は、不法行為であるとし、Yに対し、記事見出しの複製等の差止等及び損害賠償を求めて訴えた。
[東京地裁判決]
東京地裁民事29部飯村敏明裁判長は、
[知財高裁判決]
控訴審において、控訴人Xは、
の請求をした。
知財高裁4部塚原朋一裁判長は、1.YOL見出しの著作物性について、おおむね原審と同一の判断をした。
2.不法行為について、これを肯定した。次のように述べた。
「本件YOL見出しは、控訴人の多大の労力、費用をかけた報道機関としての一連の活動が結実したものといえること、著作権法による保護の下にあるとまでは認められないものの、相応の苦労・工夫により作成されたものであって.簡潔な表現により、それ自体から報道される事件等のニュースの概要について、簡潔な表現により、それ自体から報道される事件等のニュースの概要について一応の理解ができるようになっていること、YOL見出しのみでも有料での取引対象とされるなど独立した価値を有するものとして扱われている実情があることなどに照らせば、YOL見出しは、法的保護に値する利益となり得るものというべきである。」そう述べた上で、「一方、前認定の事実によれば、被控訴人は、控訴人に無断で、営利の目的をもって、かつ、反復継続して、しかも、YOL見出しが作成されて間もないいわば情報の鮮度が高い時期に、YOL見出し及びYOL記事に依拠して、特段の労力を要することもなくこれらをデッドコピーないし実質的にデッドコピーしてLTリンク見出しを作成し、これらを自らのホームページ上のLT表示部分のみならず、2万サイト程度にも及ぶ設置登録ユーザーのホームページ上のLT表示部分に表示させるなど、実質的にLTリンク見出しを配信しているものであって、このようなライントピックスが控訴人のYOL見出しに関する業務ろ競合する面があることも否定できないものである。そうすると、被控訴人のライントピックスサービスとしての一連の行為は、社会的に許容される限度を超えたものであって、控訴人の法的保護に値する利益を違法に侵害したものとして不法行為を構成する」
[参考文献]
前田哲男・著作権判例百選「第4版」10頁。茶園成樹・知財管理56巻7号1063頁。蘆立順美・コピライト521号60頁。奥邨弘司・著作権研究31号81頁。