SEO債務不履行事件

2015年11月4日

ウエブサイトが検索結果上位に表示されるようにする義務の不履行により損害を被った等とする債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求及び不当利得返還請求が棄却され、その反訴であるリース料金及び割賦販売代金の請求が認容された事例である。

大阪地裁平成25年3月5日判決(判時2198号113頁)

 SEO(Search Engine Optimization)とは、検索エンジンの検索結果ページにおいて、ホームページ(以下、HP)が表示される順位を上げる手法をいう。この表示される順位を上げるということが実現できるのか別として、そういう契約がなされた。  この事件は、その契約がなされたのに、実際に達成できなかったとして、原告会社X1が、インターネットHPの制作を請負った被告会社Y1などを訴えた事件である。

 原告X1は、療養術、整骨院の経営、整体師の育成、専門学校の経営等を目的とする会社(前身は、小林整骨院)で、原告X2は、その代表取締役である。  被告Y1((株)アールエム)は、インターネットプロバイダ業、インターネットホームページの企画、立案、制作等を業とする株式会社である。

 X1は、傘下に整骨院などを置いているがそれらのために、Y1と、平成18年11月15日から、平成20年5月8日までの間に、コンピュータ・ソフト等の「供給契約」を結び、その際、X1は、次の会社とリース契約若しくは割賦販売契約を締結し、X2がその保証人になった。リースの年数は、それぞれ4年、5年とまちまちである。
被告Y2(三井住友ファイナンス&リース(株))、被告Y3(NECキャピタルソリューション(株))、被告Y4(イデアカード(株))、被告Y5((株)ビジネスパートナー)。
X1は、平成22年11月の支払日以降のリース代及び割賦販売代を支払わなくなった。
 X1は、Yらに対し、X1のウエブサイトが、検索エンジンにおいて、検索結果ページの順位が上がるように工夫するというSEO対策を行うとの供給契約に基づき、その債務を負っているのにこれを怠ったこと、これにより損害を受けたとして、債務不履行、不法行為(共同不法行為等)に基づく損害賠償を請求した。予備的に本件各供給契約が公序良俗違反、錯誤、詐欺取消又は心裡留保により無効であることを前提に、既払金等の不当利得返還を請求する本訴を起こした。
 Y2ないしY5は、X1及びX2に対し、リース契約及び保証契約等に基づき、期限の利益喪失を前提に残りのリース代金等の支払を求める反訴請求を提起した。

[争点]

  1. 被告Y1が「継続的かつ効果的なSEO対策」を行う債務を負うか、について契約書には、原告会社と被告アール・エムとの間で原告の主張するような『継続的かつ効果的なSEO対策』を実施する具体的な債務を負うことを裏付ける記載は見当たらない。本件各供給契約に至る経緯、契約前後の当事者間の交渉状況、契約後の被告Y1の対応状況、その他本件における一切の事情に照らしても、被告Y1が、原告会社に対し、『継続的かつ効果的なSEO対策』を行う手段債務を負っていたとまでは認められない。
  2. 被告Y1が「継続的かつ効果的なSEO対策」を行う債務を負わない場合に不法行為が成立するか。被告Y1に不法行為は成立しない。

[大阪地裁の判断]

(判決主文)

  1. 原告らの請求をいずれも棄却する。
  2. 原告らは、Y2へ連帯して87万7060円及びうち86万6250円に対する平成22年12月27日から支払済みまでの年14.6%の金員の支払を命ずる。
  3. 原告らは、Y3へ連帯して316万1970円及びうち別紙1の金員に対する別紙1の遅延損害金起算日欄記載の各日から支払い済みまでの年14.6%の金員の支払を命ずる。
  4. 原告らは、Y4へ連帯して55万0500円及びこれに対する平成22年12月28日から支払い済みまでの年14.6%の金員の支払を命ずる。
  5. 被告Y3のその余の反訴請求をいずれも棄却する。
  6. 訴訟費用は、本訴反訴を通じ、原告らの負担とする。
  7. この判決は、第2、3、4項に限り、仮に執行することができる。
判決文において、「SEO対策、特に原告の主張するようなHP制作後の継続的かつ効果的なSEO対策の実施は、HP制作とは別個の商品的価値を有し、また、その具体的な実施態様・程度についても、当事者が想定する獲得目標等に照らして様々なパターンが考えられる」とし、かかるSEO対策の実施が、本件各供給契約においてHP制作等と同時に具体的に合意されたか否か、慎重に検討する必要があるとし、検討している。
そもそも検索エンジンの検索結果ページにおいて、順位を上げることが可能であろうか、それがよく分からない。