大家重夫の世情考察

8,内閣法制局との協議

前に述べたが、アジア福祉教育財団難民事業本部へ、外務省から委託費、文部省から日本語教師への謝金等国費が支出されること等について、内閣法制局大出峻郎参事官(のち最高裁判事)を訪問し、了承を得た。
 次のような議論があった。

  1. インドシナ難民救済事業は、国の事務か。
     これについて、インドシナ難民問題は、発生した初期の段階は民間の慈善団体の自主的な活動に委ねられたが、難民の数が増加し、国際政治に及ぼす影響が大きくなり、政府として、人道に関する国際協力の一環として、積極的に取り組む必要に迫られてきた。
    昭和52年9月20日付け閣議了解に基づき、政府の方針をきめ、この時点で、インドシナ難民救済事業を国の事務と認識し、特に昭和54年4月3日及び同年7月13日の閣議了解で、インドシナ難民救済事業を国の事務として「推進することが了解された。
  2. インドシナ難民救済のため、国が財団法人に事務を委託し、これに必要な委託費を支出することは、憲法89条後段との関係で問題がないか。
    憲法89条後段は、国・地方公共団体が、公の支配に属しない慈善事業、博愛事業等を財政的に「援助」することを禁止する規定であるが、公の支配に属しない慈善団体等が、国や地方公共団体の事務を、その個別の委託に基づいて行い、これに伴う実費をうけることは差し支えない。
  3. インドシナ難民救済のため、国が宗教団体に対し、委託金を支出することは問題ないか。難民救済事業は、「慈善又は博愛」の事業と考えられる。89条前段は、信教の自由と宗教団体に特権を与えることを禁止している。憲法20条の趣旨を財政面から規定した。宗教団体を特別に援助することにならないような、公金その他の公の財産の支出であれば、差し支えない。
  4. 難民救済事業をある団体に委託し、そこから更に他の団体に再委託することは問題ないか。
     難民事業は多岐にわたる。しかし、始めから格別の団体に委託するのも現実的でない、
    国は、事業を中核的な団体に委託し、当該団体を通じてさらに再委託すること、再委託先は過去に実績のある団体にすることは、許したい。ただし、再委託はあくまで、難民救済事業を効率的に運営するための措置で、事業委託に際し、、当初より再委託を認めることを明確にしている場合、予算執行上、会計法上問題はないと考える。


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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

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2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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