大家重夫の世情考察

5,難民事業本部

こうして、奥野誠亮元文相が理事長である「アジア孤児福祉財団」は、その名称を変更し、「アジア福祉教育財団」となり、そこに「難民事業本部」を付加することになった。
 7月19日、わたしは、日本赤十字社社会部長片岡経一氏、社会福祉法人日本国際社会事業団常務理事伊東よね氏にお目にかかっている。
 7月26日、アジア孤児福祉財団の藤川芳正理事、そして牧園満事務局長に会っている。
このあと、奥野誠亮先生にお目にかかるが、何時だったか記憶、メモにない。先生は、田中角栄内閣で、文部大臣を1972年12月22日から1974年11月11日まで勤められたが、文化庁著作権課の課長補佐として、ハンコを貰いに大臣室に伺ったことが一度か二度ある程度の面識であったと思う。
「難民事業本部」に人員をおくこと、その建物を探すこと、が必要になった。
 昭和54年8月3日付け、朝日新聞に「難民受け入れ財団方式、月内に発足」と報じられた。
 アジア孤児福祉財団の寄付行為を変更し、名前も変更した
 わたしは、辻宏二氏と一緒に、内閣法制局を訪問し、政府からアジア福祉教育財団へ委託費を支出することに、憲法89条等の関係で問題はないか、などを問い合わせ、勿論差し支えなし、との返答を得た。また、カソリックの土地を借用し、バラックを建てることも問題なしとの回答を得た。担当参事官は、のち最高裁判事になられた大出峻郎さんだった。大出さんには、文部省の頃、何度かお目にかかていた。89条については、後述する。
アジア孤児福祉財団は、当時、千代田区六番町の六番町マンションにあった。ここは狭く、同居できず、われわれは、難民事業本部の事務室を探すことになった。
森ビルやランデイックという会社などを訪問し、そこの紹介で、新橋、東京タワーの下などを見て廻った。
総理府に近い所ということで、赤坂2丁目10-9ランデイック第二赤坂ビルの4階にきめた。村角さんも賛成されたが、外務省難民対策室の田口省吾氏もがここがいい、と大賛成されたことを思い出す。外務省には、難民対策室がやや早くできており、今川幸雄氏が、1979年から1982年まで、難民対策室長であった。今川氏は、のちカンボジア大使、関東学園大学教授になる。田口氏は、亡くなられたという。日経新聞の文化欄に、「ガーター勲章」の由来など外国の勲章についてのエッセイを掲載された。

6,難民事業本部の人員構成

この難民事業本部に各省から、人員を派遣することになった。
この事業は、外務省が中心となり、予算は、外務省から難民事業本部の人件費を含む大部分の額を負担した。文部省は、日本語教育関係である。労働省は、職業斡旋の関係である。
難民事業本部の本部長は、労働省の小守虎雄氏に、総務課長には、法務省の岩本晃氏、日本語教育を担当する調査課長には、文部省から鷲塚壽氏が就任した。
 調査課長の人事は、わたしが文部省の国際学術局長篠澤公平さんに会い、相談し、当時、三重県の鈴鹿高専庶務課長だった鷲塚壽氏に決めた。鷲塚氏が文化庁国語課に在籍していたこと、会計課の経験があり、どういう予算を要求すればいいか、予算に明るいこと、などから、調査課長にお願いしたもので、適任だった。
この原稿を書いている平成28年には、考えられないことだが、昭和54年当時、実行されたことは、この難民事業本部へ、都市銀行からの出向者を受け入れたことである。当時も今も、公務員は簡単に増員できない。翁官房副長官か村角泰連絡調整会議事務局長が直接、都市銀行に依頼されたのであろうか。
いまも、ときどき会う呑み仲間の高橋正弍氏は、東海銀行から、増田孝行氏は、第一勧業銀行からであった。ちなみに、半年に一度、飲む場所は、カンボジア難民出身者の経営する代々木駅近くの「アンコールワット」である。
 ラオスへ派遣されていた青年海外協力隊の出身の元気者の開原紘氏も難民救援事業の適任者であった。私立大学事務局に勤務されていた下平和雄氏、松本基子氏(のち皇學館大学社会福祉学部教授)、森永兼一氏(2016年現在、勤務されている)、寺本信生氏(2016年現在、現役で勤務されている)…が、難民事業本部に馳せ参じた。
 なんといっても、農林省外郭団体から世界食糧機構(FAO)勤務を経験された内藤健三氏の参加が有難かった。国際人である内藤さんが初代の大和定住促進センターの所長を務められ、外国人達にも評判がよかった(内藤氏は平成27年4月30日逝去された。ご子息は、文部科学省に入省され、現在、千葉県教育長。)。
銀行出身の人を含め、難民事業本部の職員は優秀であった、とのち、鷲塚氏から聞いた。


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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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