大家重夫の世情考察

4,アジア福祉教育財団へ事業を委託する

 われわれ「インドシナ難民対策連絡調整会議」事務局員が、難民の受け入れ事業を、直接するわけではない。
 団体を新規に設立して、そこに委託するのが望ましいが、それは、時間的に困難である。
翁内閣官房副長官の知恵であると思うが、(財)アジア孤児福祉財団を改組し、ここに難民事業本部を新たに設置し(付加して)、ここに各省から委託費を支出する仕組みになった。(注9
外務省が、難民事業本部の人件費を、文部省が、日本語教育の教員の人件費を、厚生省、労働省がそれぞれ、関係する費用を負担した。
難民事業本部は、定住センターを設置し、そこで難民に住まわせ、日本語教育を施し、職業訓練、職業紹介を行い、日本社会に送り出す、のである。
(財)アジア孤児福祉財団とは、大阪出身、松田竹千代代議士(1888-1980)が、中心となって作った団体で、ベトナム戦争当時、ベトナムで孤児となった子供達のためのベトナムの施設へ、援助金を集めて拠出する団体であると聞いた。調べると次のようであった。
松田竹千代氏は、昭和3年の総選挙にて、民政党から衆議院議員に当選、戦争を挟んで12回当選、第二次鳩山一郎内閣で郵政大臣、第二次岸信介内閣で文部大臣、昭和43年7月16日から44年12月2日まで衆議院議長であった。昭和47年総選挙に落選し、政界を引退した。
 昭和40年、松田竹千代は、南ベトナムを訪問、戦争による孤児、母子の悲惨な状況を目にして、帰国後、その実情を述べ、日本からの援助の必要性を自由民主党両院議員総会で、訴えた。
 昭和42年、衆議院の決算委員会で、社会党の華山親義義員(注10)が、ベトナム難民救済のため、ベトナム協会なる法人に補助金を支出するのは、憲法89条違反でないか、と質問している。
 内閣法制局次長吉国二郎政府委員は、「本件は、ベトナム共和国政府の要請に基づきまして、日本国政府が、外交上の見地から、難民救済のために」「ベトナム協会を、いわばその手足として使」い、ベトナム共和国政府に対して難民救済のための物資を供給するという事業を行った、「その難民救済のために必要な物資を購入」「梱包し、運送するということは、すべて日本政府の責任で」行った、憲法89条の問題は生じないと、答弁した。
また、補助金としているが委託金であり、外務省にその事務的な能力がないから、6000万円について、事務の処理を、単に、ベトナム協会を選定し、委託した、憲法89条には違反しないと回答した(55回、昭和42/6/17、衆・決算・18号1頁)。
 昭和43年3月22日の自由民主党総務会において、ベトナムの孤児・母子のために、昭和43年10月から、毎月1,000円ずつ60ケ月にわたって、各自の歳費から拠出することが決定した。この拠出金総額1,500万円を基金として、第二次佐藤栄作内閣、愛知揆一外相当時、「財団法人ヴェトナム孤児福祉教育財団」が設立された。昭和44年12月12日許可、事務局は、東京都千代田区一番町3-3日生ビルに置かれた。
当初の役員は、松田竹千代、茅誠司、永野重雄、井出一太郎、葛西嘉資、新国康彦、
今里広記、桜内義雄、根本龍太郎、奥野誠亮、鈴木善幸、橋本登美三郎、小沢辰男、高木武三郎、藤尾正行、川島正二郎、坪川信三である。
奥野誠亮議員、桜内義雄議員は、昭和45年、ベトナムに派遣され、10億円の基金が必要であると考え、奥野誠亮議員等は、財界、各種団体に呼び掛け、10億円を集めた。
ビエンホア郊外に孤児を対象に、農業、機械、電気、土木の全寮制職業訓練校を建設、一学年100名、総員400名の施設を作った。
 昭和46年(1971年)、ベトナムに限らず、アジアの国の孤児にも救済ができるように、団体の名称を「アジア孤児福祉教育財団」と改称し、事務局は、千代田区一番町6-4、6番町マンションに移転した。
昭和48年9月、100名の新入生を受け入れの式典には、チャン・チエン・キエム南ベトナム首相、松田竹千代夫妻が臨席した。
昭和50年4月28日、北ベトナムの猛攻により、、訓練所の生徒はビエンフォアからサイゴンに引き揚げた。同年4月30日、南ベトナムは、北ベトナムに無条件降伏した。
昭和51年5月、松田竹千代理事長は、辞意を表明し、後任には、満場一致で、奥野誠亮氏に決まった。


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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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