CD等の楽曲を自己の携帯電話で聞くことのできる「MYUTA」という名称のサービスの提供は、許されるか。
原告は、携帯電話向けストレージサービス等を業とする会社で、au WIN端末のユーザーを対象として、CD等の楽曲を自己の携帯電話で聴くことのできる「MYUTA」という名前のサービスを始めようと考えた。
そこで、原告の行おうとする事業が円滑に行えるように、音楽著作権を多数管理している日本音楽著作権協会を被告として、被告(日本音楽著作権協会)が、「作詞者、作曲者、音楽出版者その他著作権を有する者から委託されて管理する音楽著作物の著作権に基づき、これを差し止める請求権を有しないことを確認する」との訴えを提起した。
主要な争点は、次の通り。
である。原告は、管理著作物が複製されていることは認めるが、行為主体は、ユーザーで、公衆送信に当たらないと主張した。
すなわち、本件サーバーからユーザーの携帯電話に向けた3G2ファイルを送信(ダウンロード)しているのは原告か、ユーザーか。自動公衆送信行為がなされたか、である。
東京地裁民事47部高部眞規子裁判長は、次のように判決した。
これらの原告の行為は、被告の承諾がなければ、被告の著作権を侵害するものである。
本件サーバーにおける音楽著作物の蔵置及びユーザーの携帯電話に向けた送信につき、被告は差止請求権を揺する。よって、原告の請求は棄却する。
[参考文献]
田中豊「著作権侵害とJASRACの対応ー司法救済による権利の実効性確保」(紋谷暢男編「JASRAC概論ー音楽著作権の法と管理」(日本評論社・2009年)151頁、特に188頁)
相澤英孝「知的財産法判例の動き」『ジュリスト』1354号「平成19年度重要判例解説」286頁。