IP FIRM商標事件

2015年12月11日

「IP FIRM」なる商標は、商標法3条1項6号に該当するとされて事例である。

東京地裁平成17年6月21日判決(平成17年(ワ)第768号、判時1913号146頁)
(控訴されたが控訴後和解)

「IPアドレス」といえば、Internet Protocol address のことで、IPは、Intellectual l Property 知的財産権のことだと連想する人も多い。

原告Xは、IP国際技術特許事務所を経営する弁理士で、登録商標「IP FIRM」(指定役務 第42類「工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務、訴訟事件その他に関する法律事務、著作権の利用に関する契約の代理又は媒介」)の商標権者である。
被告Yは、東京IP特許事務所を経営する弁理士である。XYは平成15年11月迄、共同で特許事務所を経営し、同年12月、共同経営を解消した。

平成15年12月、Yは、「東京IP特許事務所」として新たな事務所を開き、「TOKYO IP FIRM」の欧文字、横書きで、IPの文字はデフォルメ化した標章(以下、被告標章1)を付した英文レターヘッドの使用を開始し、平成16年11月頃から、「TOKYO IP FIRM」の欧文字を通常の書体で、横書きにしたもの(以下、被告標章2)、ネットの事務所のホームページにおいて掲載した。
Xは、Yが被告標章1,2を広告等に付して使用する行為は、Xの有する商標権侵害であると主張、Y標章1、2の使用差止め及びY標章を付した名刺等の廃棄を求め訴えた。

[東京地裁]
民事46部の設楽隆一裁判長は、原告の請求をいずれも棄却した。
Xの商標は、第42類「工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務、訴訟事件その他に関する法律事務、著作権の利用に関する契約の代理又は媒介」の指定役務を提供する事務所であることを一般的に説明しているにすぎず、需要者等において、指定役務について、他人の指定役務と識別するための標識であるとは認識し得ないものであるから、商標法3条1項6号に該当し、XのYに対するX商標権に基づく権利行使は、商標法39条が準用する特許法104条の3の規定により許されないとし、Xの請求を棄却した。

本来、商標登録を受けるべきでない、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」であった、そのため、権利行使できない、としたのである。知財高裁平成21年9月8日判決(アイデー事件)も商標法3条1項6号に当たるとしている。2009-2参照。