iモードID事件

2015年11月9日

インターネット上の電子掲示板で名誉を毀損された者が接続サービス会社に対し発信者情報の開示請求と損害賠償請求をおこなったが、損害賠償請求は棄却された事例である。

金沢地裁平成24年3月27日判決(平成22年(ワ)第559号、判時2152号62頁)

原告Xは、インターネット上の電子掲示板における氏名不詳の発信者によるスレッドの立ち上げ及び投稿により名誉を毀損され又はプライバシー権を侵害されたとして、プロバイダーであるY会社(エヌ・テイ・テイ・ドコモ)に対して、プロバイダ責任制限法4条1項所定の発信者情報開示請求権に基づき、本件発信者が使用した電気通信回線に係る識別番号(iモードIDほか)によって特定される電話番号の契約者の氏名又は名称及び住所の開示を求めるとともに、Y会社が本件IDに係る契約者の情報を保存しなかったために精神的苦痛を被ったとして慰謝料50万円と遅延損害金の支払いを求めて訴えた。
Xは、投稿の中で浮気・不倫をしたなど誹謗中傷されていた。

金沢地裁は、「被告は、原告に対し、別紙アクセスログ記録7記載の投稿に使用された電気通信回線に係る識別番号(iモードID:05E0…)によって特定される契約者の氏名又は名称及び住所を開示せよ。)」として、発信者情報の開示は認めた。
しかし、損害賠償請求については、Y会社が、iモードIDによって特定される契約者の氏名住所等が「発信者情報」に該当する旨の司法判断がなく、その認識がなく、認識が容易であったとまでいえない、として、Y会社に故意又は重大な過失はないとした。

Xは、浮気、不倫をしていると書かれ、傷ついたと思うが、金沢地裁は、NTTドコモに故意過失なく、慰謝料なしでいいと考えた。