大家重夫の世情考察

インターネット判例要約集ー附・日本著作権法の概要と最近の判例

事件名ー内容、判決年月日、事件番号、判決要約文、「コメント」「キーワード」は、全ての事件に付し、いくつかの事件に、「参考文献」を付した。

1988年

クラブ・キャッツアイ事件

(最高裁1988年3月15日判決民集42巻3号199頁判時1270号34頁)

 音楽家を雇い、音楽の生演奏をさせていたクラブ・キャッツアイというバーが、それをやめ、カラオケ装置を置いて、客がカラオケで、歌うようになった。
 作詞家作曲家からその著作権を信託的譲渡されている日本音楽著作権協会は、演奏権に基いて、著作権使用料を請求、経営者であるバーを訴えた。
 バーにおいて、カラオケで歌唱しているのは、客か客と従業員であって、経営者は、音痴で歌わないし、店にいないといい、責任主体は、バーの経営者でないと主張した。

 最高裁は、

  1. 客が歌っていたとしても、バーの管理下にあること、
  2. バーは、カラオケスナックとしての雰囲気を醸成し、客の来集を謀り、営業上の利益の増大を意図していること、

を理由に客による歌唱も、著作権法上の規律の観点から、バーの経営者による歌唱と同視しうるとした。

 著作権侵害について、侵害者と思われる者が直接、侵害していないとしても、その行為のなされる状況において、

  1. その仕組みが侵害者の管理下にあること、
  2. 侵害者が利得している場合、

侵害とされる。この判例法理は「カラオケ法理」と呼ばれる。
最高裁平成23年1月27日判決(ロクラクII事件)、知財高裁平成22年4月28日判決(TVブレイク事件)、東京地裁平成19年5月25日判決(MYUTA事件)、東京地裁17年10月7日決定(録画ネット事件)など、このカラオケ法理に拠ると思われる判決は多い。

[参考文献]
井上由里子「著作権判例百選(第二版)」16頁(1994)。
大淵哲也「著作権判例百選(第4版)」190頁(2009)。
市村直也「田中豊編『判例で見る音楽著作権訴訟の論点60講』(日本評論社)166頁」(2010)
上野達弘「著作権法における『間接侵害』」ジュリスト1326号75頁(2007)。
上野達弘「いわゆる『カラオケ法理』の再検討」「知的財産法と競争法の現代的展開ー紋谷暢男先生古稀記念」(発明協会)781頁(2006)
田中豊「著作権侵害とJASRACの対応」(紋谷暢男編「JASRAC概論」(日本評論社)151頁)(2009)

1996年

わいせつ画像蔵置事件(刑事)

インターネット接続専門会社の会員が、サーバーコンピュータ内にわいせつ画像のデータを記憶、蔵置させて、インターネットの不特定多数の利用者に右わいせつ画像が再生閲覧可能な状態を設定したことが、わいせつ図画の公然陳列に当たるとされた事例。

東京地裁平成8年4月22日判決(平成8年(刑わ)302号、判時1597号51頁)

 被告人は、インターネット接続専門会社である(株)甲野・インターネットの会員である。インターネットの不特定多数の利用者にわいせつ画像を送信し、再生閲覧させてわいせつ画像を公然陳列しようと企て、平成8年1月28日頃から同月31日頃までの間、東京都墨田区の(株)甲野・インターネット所有・管理するサーバーコンピュータのサン・マイクロ・システム製デイスクアレイ内に男女の性器・性交場面等を露骨に撮影したわいせつ画像のデータ合計67画像分を記憶・蔵置させて、一般の電話回線を使用し、インターネット対応パソコンを有する不特定多数の利用者に右わいせつ画像が再生閲覧可能な状況を設定し、もって、わいせつ図画を公然と陳列したものである。
 東京地裁刑事2部の小川正持裁判官は、刑法175条前段を適用し、「被告人を懲役1年6月に処」し、「裁判確定の日から3年間右刑の執行を猶予」との判決を下した。

執行猶予がついて、刑の執行が猶予された。

  1. これは、無制約な情報発信を事実上放置している商用プロバイダの存在によって可能になった面があること、
  2. インターネットにおいて、他にもわいせつ画像データ発信が野放し状態で、被告人は誘発された面があること、
  3. 営利目的で犯行に及んでいないこと、
  4. 被告人は深く反省し、自宅所有のパソコンを処分、パソコン通信ネットの会員を退会した

等を判決文は述べている。

1997年

天気予報画像消去事件(刑事)

朝日放送がインターネット利用者に提供するため開設したホームページ内の天気予報画像を消去してわいせつ画像等に置き換え、不特定多数の者に閲覧させた者が、電子計算機損壊等業務妨害罪及びわいせつ図画公然陳列罪に問われた事例。

大阪地裁平成9年10月3日判決(平成9年(わ)第2305号、判タ980号286頁)
 被告人は、朝日放送が開設した天気情報提供ホームページのサーバーコンピュータ内に記憶、蔵置されていた画像データファイルを消去し、代わりに、わいせつな画像のデータファイルを送信するなどし、ハードディスク内に記憶、蔵置させ、利用者がわいせつ画像を受信し、再生閲覧することができる状況を設定し、不特定多数の者に再生閲覧させた。
被告人は、刑法234条の2の電子計算機損壊等業務妨害罪及び同法175条1項前段のわいせつ図画公然陳列罪に当たるとし、懲役1年6月、執行猶予3年の判決を受けた。

こういう事件のように画像を置き換えることは、インターネットを勉強すれば、誰でも可能であろうか。

[参考文献]
渡辺卓也「別冊ジュリスト メデイア判例百選」(堀部政男・長谷部恭男編・2005年)244頁。岡村久道・南石知哉「サイバー法判例解説」(岡村久道編・商事法務・2003年)64頁。

わいせつ画像マスク処理事件(刑事)

画像をマスク処理したが、わいせつ物公然陳列罪に問われた事件である。

岡山地裁平成9年12月15日判決(平成9年(わ)220号判時1641号158頁)

被告人2人は、猥褻画像を不特定多数のネット利用者へ有料で閲覧させようと意図して、女性の性器部分等を撮影した画像に、画像処理ソフトで、マスク処理したものをプロバイダーのサーバコンピュータに送信し、同時に取り外し機能のソフトを付して送信し、その記憶装置内に記憶、蔵置させた。不特定多数のインターネット利用者において受信した画像データを同じソフトを利用することにより、マスクを取り外した状態の猥褻画像を復元閲覧することができた。これが、猥褻物公然陳列罪に問われた。

被告人側は、

  1. サーバーコンピュータの記憶装置内に記憶、蔵置させた画像は、性器部分が画像処理ソフトにより、マスク処理され見えないようにされているから猥褻性はない
  2. 被告人らが送信し記憶、蔵置させたものは、情報である画像データであり、有体物であるべき、猥褻図画は存在せず、猥褻図画陳列罪に該当しない

と主張した。

裁判所は、

  1. 画像にマスクがなされていても、マスクを外すことが誰にでも、その場で、直ちに、容易にできる場合には、その画像は、マスクをかけられていないものと同視することできるとし、
  2. 陳列された図画は、サーバコンピュータではなく、情報としての画像データであると解すべきである、とし、情報としてのデータもわいせつ物の概念に含ませることは、刑法の解釈として許される、とし、

被告人らの行為は、刑法175条猥褻図画公然陳列罪に当たるとした。

当然の結論と思われる。

[参考文献]山本光英・判例評論487号59頁(判時1679号237頁)。

1999年

あまちゅあふぉーとぎゃらりー事件(刑事)

(1),画像処理ソフトによるマスク処理の画像データを記憶蔵置したコンピュータのデスクアレイが、「わいせつ図画」に該当し、(2)この画像データをサーバーコンピュータに送信、記憶蔵置させた行為が「公然と陳列した」に該当し、(3)日本国内から国外の海外プロバイダーのサーバーコンピュータへわいせつ画像を送信し記憶蔵置させる行為にも刑法の適用させることができるとされた事例である。

大阪地裁平成11年3月19日判決(平成9年(わ)第637号、判タ1034号283頁)

被告人は、インターネット上に、男女の性器、性交場面を露骨に撮影したわいせつ画像にマスク処理した画像データ18画像分を東京都港区赤坂のプロバイダのサーバーコンピュータに送信、その記憶装置であるデイスクアレイ内に記憶蔵置していた。被告人は、このマスクを外すことのできる「エフ・エル・マスク」と称する画像処理ソフトの利用方法等に関するホームページにアクセスできるリンク情報データを、被告人の滋賀県の自宅から、サーバーコンピュータに送信し、被告人開設のホームページにアクセスした不特定多数のインターネット利用者が、電話回線を使用し、マスクを外して、わいせつ画像を復元閲覧することが可能な状況を設定した。

被告人は、わいせつ画像データ合計102画像分を米国のレンタルサーバー会社のコンピュータに送信、同コンピュータの記憶装置であるデイスクアレイ内に記憶、蔵置させ、被告人開設のホームページにアクセスして会員登録した日本国内の不特定多数の利用者がわいせつ画像を再生閲覧できるようにした。

[大阪地裁]
第7刑事部湯川哲嗣裁判長は、

  1. 画像処理ソフトによるマスク処理の画像データを記憶蔵置したコンピュータのデスクアレイ自体が、刑法175条の「わいせつ図画」に該当するとした。
  2. わいせつ画像データをサーバーコンピュータに送信し、デスクアレイに記憶、蔵置させ、不特定多数の者ガダウンロードして、これを閲覧可能な状況においた被告人の行為が刑法175条1項「公然と陳列した」に該当する。
  3. 日本国内から国外の海外プロバイダーのサーバーコンピュータへわいせつ画像を送信し記憶蔵置させる行為にも刑法の適用させることができるとした。
わいせつ図画公然陳列罪にあたる刑事事件が、案外多い。

[参考文献]
高山佳奈子「別冊ジュリスト メデイア判例百選」(堀部政男・長谷部恭男編・2005年)246頁。

電話番号ネット掲示板公表事件

電話帳に記載されている実名、電話番号等をパソコン通信に無断で公開したことがプライバシーの侵害にあたるとして、20万2380円の損害賠償が命ぜられた事例である。

神戸地裁平成11年6月23日判決(判時1700号99頁)

原告Xは、個人で診療所を開業している眼科医で、ニフテイ(株)の会員である。
被告Yも、ニフテイ(株)の会員である。

XYともに、ニフテイの運営する掲示板を利用していた。
Yは、平成9年5月17日未明、Xの氏名、職業、Xが開設する診療所の住所及び電話番号等の個人情報をニフテイの掲示板に掲載した。
Xの氏名、職業等の個人情報は、医師会名簿には掲載されていても、ネットの参加者には公開されていなかった。Xは、個人情報をネットの掲示板システムに掲載されて、自己のプライバシーを侵害され、その結果、原告Xは、数名の者から無言電話のいやがらせの電話を受け、眼科の診療を妨害され、信用を毀損され、被害を被ったとして、Yに対し、不法行為に基づく損害賠償181万0360円(内訳、1,営業損害30万7980円、2,治療費2380円、信用毀損による損害50万円、4,慰藉料100万円)を請求した。

竹中省吾裁判長は、Yの本件表示は、プライバシーを侵害に当たるとして、20万2380円(治療費2380円、慰藉料20万円)および遅延損害金を支払うようYへ命じた。

インターネット掲示板で、プライバシーが暴露された者が勝訴した事件である。慰謝料20万円は低く、50万円程度にしてもよかったのではないか。

[参考文献]
新保史生「サイバー法判例解説」(岡村久道編・商事法務・2003年)92頁。
牧野二郎「ニフテイ・プライバシー事件」(岡村久道編「インターネット訴訟2000」(ソフトバンク・パブリッシング・2000年)222頁)

都立大学事件

大学内に2つのグループがあり、一方の学生が他方の学生等が傷害事件を起こしたという印象を与える文書を大学管理下のコンピュータ、ホームページに掲載し、掲載した学生に名誉毀損による損害賠償が命じられたが、大学は、文書の削除義務を負わないとされた事例である。

東京地裁平成11年9月24日判決(平成10年(ワ)第23171号、判時1707号139頁、判タ1054号228頁)

原告X1、X2、X3と被告Y1は、ともに被告Y2が設置する大学の学生で、X1、X2、X3とY1は、学生の自治組織をめぐり、対立するグループに属していた。
Y1は、Y2が学内に設置し、管理しているサーバーに、Y1が委員長をつとめるホームページを開設しており、ここにY1は、平成10年の新入生入学手続きの際に起こった両派の衝突事件で、複数の学生が傷害を負ったこと、その事件顛末を記載した文書を公開した。文書は、Xらが傷害事件を起こし、刑事事件になったという印象を与えるものであった。

X1、X2、X3は、Y1に対し、名誉毀損であるとし、Y1に対し、ホームページからの本件文書の削除、ホームページへの謝罪広告掲載と損害賠償(各33万円)を求め、Y2に対しては、名誉毀損文書の掲載を知った場合、速やかに削除すべき義務が条理上認められ、Y2は、掲載を知った後も放置した削除義務の不履行(故意又は過失による不法行為)をしたとし、ホームページからの本件文書の削除・謝罪広告掲載と損害賠償(各33万円)を求め訴訟を提起した。なお、この訴えが報道されるとY2は、本件ホームページの問題部分を閉鎖した。

[東京地裁]
民事第25部の野山宏裁判長は、Xらに各3000円の支払いを命じ、Y1に対するそのほかの請求とY2に対する請求を全部、棄却した。

当時、学生紛争があったこと及びインターネットのホームページが惹起した事件と言うことで注目された。

[参考文献]
森亮二「サイバー法判例解説」(岡村久道編・商事法務・2003年)4頁。

2000年

会社従業員ネガ窃盗事件

Y1会社の従業員Y2が同僚の女性Xの事務机の引き出しから、ネガ・フイルムを盗みだし、焼き付けて、無断でY1会社のホームページ(以下、HP)に掲載した行為について、会社の事業の執行につきなされたものとは認められず、Y1会社の使用者責任は認められなかった事例である。

東京地裁平成12年1月31日判決(判タ1046号187頁、控訴和解)

 Y1会社は、電子機器等の輸出入業務を行う会社で、Y2は、情報技術部のシニアマネージャー、Xも平成7年から平成10年8月まで従業員であった。平成10年4月頃、Y2は、Y1会社内のXの事務机の引出しに保管されていたX撮影の写真のネガフイルム数葉を盗み出し、Xに無断でこれを焼付け、そのうちの3葉をY1会社のHPに掲載した。

 Xは、Y2のネガフイルムの盗み出しとHPへの掲載は、不法行為に当たるとし、民法709条に基づき、また、右不法行為がY1会社の事業の執行につきなされたものであるとして、民法715条に基づき、Y1会社とY2に対し、それぞれ3000万円の慰藉料を求めて訴えた。

東京地裁地裁民事40部の都築裁判官は、

  1. Y1のHPの管理等がY2の職務行為の範囲内に属しない、Y2の右不法行為がY1会社の事業の執行につきなされたとはいえないと判断し、XのY1に対する請求は、棄却した。
  2. Y2のネガフイルムの盗みだしとY1のHPへの掲載については、不法行為として、Y2の損害賠償責任のみを認め、Xへ200万円の慰藉料の支払いを命じた。
Y1会社にも責任が問えるのではないだろうか。

2001年

ジェイフォン事件

著名な営業表示含むドメイン名の使用を不正競争防止法2条1項2号に基づいて差し止め損害賠償も認めた事例である。

東京地裁平成13年4月24日判決(平成12年(ワ)第3545号、判時1755号43頁)

原告X(ジェイフォン東日本株式会社)は、携帯電話による通信サービスを主たる目的とする会社で、グループ企業8社とともに、平成9年2月頃から、「J-PHONE」というサービス名称を使用している。
被告Y(株式会社大行通商)は、水産物、海産物及び食品等の輸入販売を主たる目的とする株式会社である。

Yは、平成9年8月29日、社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)から、「j-phone.co.jp」のドメイン名(以下、本件ドメイン名)の割り当てを受け、「http://www.j-phone.co.jp」のアドレスにおいて、ウエブサイトを開設し、そこにおいて、「J-PHONE」「ジェイフォン」「J-フォン」を横書きにした表示(以下、本件表示)をし、レッスンビデオ、携帯電話機、酵母食品等の販売を行っていた。

Xは、Yに対して、

  1. 本件ドメイン名の使用の禁止、
  2. インターネット上のアドレスにおいて開設するウエブサイトから、本件表示を削除すること、及び
  3. 損害賠償950万円

を求めて訴えた。根拠は、不正競争防止法2条1項1号、2号である。

[東京地裁]
民事46部の三村量一裁判長は、次のように判断した。

  1. 被告Yの本件ドメイン名の使用は、不正競争防止法2条1項1号、2号にいう「商品等表示」の使用に該当する。
  2. 「J-PHONE」本件サービス名称は、同法2条1項2号にいう「著名な商品等表示」である。
  3. Yに対し、Xが本件ドメイン名及び本件表示の使用の差し止め、本件ウエブサイトからの本件表示の抹消を求める請求は理由がある。
  4. 被告Yは、本件ウエブサイト内で、いわゆる大人の玩具販売広告、特定企業の誹謗中傷する文章等の表示をし、原告Xの信用毀損行為を故意に行った。
    その損害額は200万円、弁護士費用100万円である。

[判決主文]

  1. 被告は、その営業に関し、別紙目録記載の表示及び「j-phone.co.jp」のドメイン名を使用してはならない。
  2. 被告は、インターネット上のアドレス「http://www.j-phone.co.jp」において開設するウエブサイトから、別紙目録記載の表示を抹消せよ。
  3. 被告は原告に対し、300万円及びこれに対する平成12年4月24日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。

(4,5,6)省略。

ドメインは、先着順である。著名な会社などは、自他ともに認める自社がそのドメイン名を持ちたいのに出遅れた、そこで、訴えるなど紛争は多い。
ジャックス事件(名古屋高裁金沢支部平成13年9月10日判決、富山地裁平成12年12月6日判決)参照。

アルファネット事件(刑事)

被告人がわいせつな画像データを記憶、蔵置させたホストコンピュータのハードデスクは、刑法175条のわいせつ物に当たる、とした刑事判例である。

最高裁平成13年7月16日判決(平成11年(あ)第1221号、判時1762号150頁。刑集55巻5号317頁)
大阪高裁平成11年8月26日判決(平成9年(う)第1052号、判時1692号148頁、高刑集52巻42頁)
京都地裁平成9年9月24日判決(平成7年(わ)第820号、判時1638号160頁)

自らパソコン通信「アルファネット」を開設、運営していた被告人は、ホストコンピュータのハードデイスクにわいせつな画像データを記憶、蔵置させて、不特定多数の会員が、自己のパソコンを操作して、電話回線を通じ、ホストコンピュータにアクセスして、わいせつな画像データをダウンロードし、画像表示ソフトを使用してパソコン画面にわいせつな画像を現出させ、これを観覧することができる状態にした。

1審及び2審は、会員の再生閲覧が可能な状態に設定したことが、「公然陳列」に当たるとして、刑法175条の公然陳列罪にあたるとした。

被告人は、上告し、会員が再生閲覧するのは、自分のパソコンにウンロードされたわいせつな画像データで、ホストコンピュータに記憶蔵置された画像データは、不可視なままで、わいせつ性が顕在化していない、わいせつ物公然陳列罪は成立しない、と主張した。

最高裁第3小法廷(奥田昌道裁判長、千種秀夫、金谷利廣、濱田邦夫裁判官)は、被告人がわいせつな画像データを記憶、蔵置させたホストコンピュータのハードデスクは、刑法175条のわいせつ物に当たるとした。同条のわいせつ物を「公然と陳列した」とは、その物のわいせつな内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいうとした。
原判決は、同旨の判断をしているとして、上告を棄却した。

この結論は、正しいと思う。

[参考文献]
園田寿「ダウンロードとわいせつ物陳列罪」『別冊ジュリスト・メデイア判例百選』(№179)(2005年12月)242頁。

本と雑誌のフォーラム事件

ニフテイサーブ「本と雑誌のフォーラム」での名誉毀損事件である。

東京地裁平成13年8月27日判決(平成11年(ワ)第2404号、判時1778号90頁判タ1086号181頁)

Yは、インターネット上の電子掲示板の運営会社。
Xは、Yが提供するニフテイサーブの会員として、「本と雑誌のフォーラム」において、ID番号とハンドル名で意見表明をしていた。匿名で参加してきたAの第三者宛コメントに対しXが、「私に対する個人的侮辱だ」と発言し、Aが「やれやれ、妄想系ばっかりかい、この会議室は(笑)?」と応じ、言論による20通の書き込みの応酬がつづいた。

Xは、Yに対し、

  1. YがAの不法行為に対し適切な措置をとらなかったため、Xが精神的苦痛を被ったとして、債務不履行ないし不法行為により損害賠償を請求し、
  2. Yが発信者Aの契約者情報(氏名、住所)の情報を開示せず、Xの名誉権回復を妨害しているとして、

人格権による差止請求権及び不法行為に基づく妨害排除請求権を根拠に、Aの契約者情報(氏名、住所)を請求した。

[東京地裁判決]
原告の請求を棄却した。

  1. 言論による侵害に対し、言論で対抗するというのが表現の自由の基本原理であり、被害者が、加害者へ十分な反論をし、それが功を奏した場合、被害者の社会的評価は低下していないから、このような場合、不法行為責任を認めることは、表現の自由を萎縮させるおそれがあり、相当と言えない。
  2. 本件において、「会員であれば、自由に発言することが可能であるから、被害者が、加害者に対し、必要かつ十分な反論をすることが容易な媒体であると認められる。」
    「被害者の反論が十分な効果を挙げているとみられるような場合には、社会的評価が低下する危険性が認められず、名誉ないし名誉感情毀損は成立しない」
  3. 「被害者が、加害者に対し、相当性を欠く発言をし、それに誘発される形で、加害者が、被害者に対し、問題となる発言をしたような場合には、その発言が、対抗言論として許された範囲内のものと認められる限り、違法性を欠く」
  4. 「Aは、Xに対し、不法行為責任を負わない。よって、Aに不法行為が成立することを前提としたXのYに対する本件請求は」「理由がない。」
書込がXの挑発的発言に対する反論、対抗的言論で許されるという法理から、不法行為(名誉毀損)にならないとした点が興味を引く。

[参考文献]
山口成樹・別冊ジュリスト179号「メイデイア判例百選」226頁(2005年)。
大須賀寛之・ニフテイーサーブ「本と雑誌のフォーラム」事件・(岡村久道編「サイバー 判例解説」96頁)

現代思想フォーラム事件

パソコン通信の電子会議室における発言が名誉毀損とされ、50万円の支払いを命じられたが、会議室主宰者とシステムオペレーターは、発言削除義務違反等の責任がなく、損害賠償を負わなかった事例である。

東京高裁平成13年9月5日判決(平成9年(ネ)第2631号・2633号・第2668号、5633号、判タ1088号94頁判時1786号80頁)
東京地裁平成9年5月26日判決(判時1610号22頁)

 パソコン通信ニフテイサーブの主宰者Y1(被告・控訴人)は、ニフテイサーブ上に、「現代思想フォーラム」を開設し、Y2(被告・控訴人)をシステムオペレーターにし、その管理運営に当たらせていた。X(原告・被控訴人)及びY3(被告・控訴人)は、ニフテイサーブの会員である。平成5年11月から平成6年3月にかけて、Y3は、Xが名誉毀損等に当たると主張する発言を書き込んだ。
シスオペのY2は、問題点を指摘したが、削除はしなかった。その後、平成6年2月15日、Y2は、Xの訴訟代理人から発言番号を特定し、削除要請を受けたため削除した。

同年4月、Xは、

  1. Y3に対し、名誉毀損等の不法行為に基づき、
  2. Y2に対し、名誉毀損等の発言を直ちに削除する作為義務の懈怠による名誉毀損を放置した不法行為に対し、
  3. Y1に対しては、Y2の使用者責任等の債務不履行責任に基づき、

各自1,000万円及びこれに対する遅延損害金の支払い及び謝罪広告を求め訴訟になった。

[東京地裁]
Y3の発言は、名誉毀損に当たる、Y2は、本件各発言を知ったときから条理上の削除義務を負うとし、本件各発言の一部につき削除義務を怠った過失があるとし、Y1は使用者責任を負うとし、Yらについて各自10万円、Y3についてはさらに、40万円の支払いを命じ、謝罪広告掲載要求は棄却した。

[東京高裁]
 控訴審は、Y3の発言の一部が、名誉毀損・侮辱に当たると認め、Y3へは、50万円の支払いを命じた。Y2及びY1については、発言削除義務違反等の責任が認められないとし、原判決を取消して、Y2、Y1に対するXの請求を棄却した。

地裁と高裁の意見が異なる点が興味を引く。

[参考文献]
橋本佳幸・判例時報1809号178頁(判例評論530号16頁)。
大谷和子・ニフテイーサーブ「現代思想フォーラム」事件・(岡村久道編「サイバー判例解説」98頁)。西土彰一郎・別冊ジュリスト179号「メイデイア判例百選」224頁(2005年)。牧野二郎「ネット関連訴訟の現状について」自由と正義2002年6月号68頁。
参考:http://www.law.co.jp/cases/gendai2.htm

ジャクス事件

著名な営業表示と類似の部分を含むドメイン名の使用を不正競争防止法2条1項2号に基づいて差し止めた事例である。

名古屋高裁金沢支部平成13年9月10日判決
富山地裁平成12年12月6日判決(平成10年(ワ)第323号判時1734号3頁)

原告は、株式会社ジャックスといい、割賦購入斡旋等を主たる事業とする会社で、英文では「JACCS CO.LTD.」と表記している。肉太のアルファベットであるJACCSを、指定役務「36 債務の保証、金銭債権の取得及び譲渡…」、で、スリムな書体のアルファベットで、指定役務「35 広告用具の貸与…」、「38、電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与…」「42、電子計算機のプログラム設計・作成または保守。電子計算機の貸与」についてそれぞれ、商標登録を受けている。1部上場の会社である。
被告は、有限会社日本海パクトで、簡易組み立てトレイの販売及びリース等を事業とする有限会社である。

平成10年5月26日、被告は、社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)から、「http://www.jaccs.co.jp」というドメイン名の割り当てを受け登録した。同年、9月から、ホームページを開設し、「ようこそJACCSのホームページ」というタイトルで、「取扱商品」等を表示し、そのリンク先に被告の扱う簡易組立トイレや携帯電話などの商品の販売広告をし、のち、ホームページのJACCSの下に、「ジェイエイシーシーエス」と振り仮名を附けた。

原告は、不正競争防止法2条1項1号及び2号を根拠に、被告に対し、

  1. ホームページによる営業活動に、「JACCS」の表示を使用しないこと
  2. 被告は、社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)、平成10年5月26日受付の「http://www.jaccs.co.jp」を使用しないこと

を求めて、訴訟を提起した。

[富山地裁]
民事部徳永幸蔵裁判長は、不正競争防止法2条1項2号に当たるとして、原告の請求を全て認容した。

[名古屋高裁金沢支部]
控訴を棄却した。「本件ドメイン名」を「jaccs.co.jp」を略称するものとした。控訴審で、原告は付帯控訴により「http://www.」を除いた「jaccs.co.jp」の差止めを求めるよう請求の趣旨を変更、高裁は認めた。

2001-1(東京地裁平成13年4月24日判決、ジェイフォン事件)参照。

[参考文献]
満田重昭・判例時報1764号184頁(判例評論515号30頁)
土肥一史・法律のひろば2001年5月号。土肥一史・発明2001年10月号。
岡村久道・NBL706号14頁、同707号54頁。桐原和典・CIPICジャーナル109号(2001年2月号)。小野昌延・芹田幸子「ジャックス事件」(岡村久道編「サイバー法判例解説」(商事法務・2003年・14頁)

迷惑メール仮処分事件

携帯電話利用者あてに「迷惑メール」を無差別に送信する業者に対し、その送信行為の差止めが認められた事例である。

横浜地裁平成13年10月29日決定(平成13年(ヨ)第560号)

仮処分命令の申立事件であるため、原告、被告でなく、債権者、債務者である。
債権者Xは、第1種電気通信事業者である株式会社エヌ・テイ・テイ・ドコモ。
債務者Yは、情報処理及び情報提供の各サービス業、移動体通信機器の販売等を目的として平成10年9月11日設立の有限会社グローバルネットワークであるが、平成13年9月4日、社員総会の決議で解散、清算人菊池越を代表者とする清算法人である。

Xは、iモードの名前のパケット通信サービスを提供する義務を負っている。
Yは、Xのパケット通信サービス契約者を不特定多数の男女の交際の仲介をする「出会い系サイト」というインターネットサイトの紹介を内容とする電子メール(本件メール)に勧誘するとともに、同契約者をして、有料インターネットにアクセスさせることにより収益を図ることを計画した。
Yは、本件電子メールを発信する際に、宛先となる電子メールアドレス(090に8桁の数字を付したものに続けて@dokomo.ne.jp)の8桁の数字部分にランダムな数字を当てはめる等の方法で、遅くとも平成13年5月、不特定多数の同サービス契約者宛ての電子メールアドレス及び同サービス契約者の存在しない多数の架空の電子メールアドレス宛てに、本件電子メールを大量かつ継続的に送信した。
このYの大量かつ継続的な本件電子メールの送信行為等に起因し、Xの電気通信設備等に機能障害が生じた。
そこで、Xは、Yに対して、送信行為の中止とその旨の誓約書の提出を求めたが、Yは、依然として本件電子メールを大量かつ継続的に送信し続けた。
Xは、Xの電気通信設備に対する所有権侵害を理由に、Yの送信行為の差止を求める仮処分の申立を行った。

[横浜地裁]
民事9部は、X請求を認容し、次の決定をした。

[主文]

  1. 債務者は、この決定送達の日から1年間、宛先となる電子メールアドレス(「090」に8桁の数字を付したものに続けて「@dokomo.ne.jp」を付したもの)の8桁の数字部分にランダムな数字を当てはめる等の方法により、債権者の所有する電気通信設備を利用して行われるパケット通信サービスを通じて、同サービスの契約者の存在しない多数の電子メールアドレス(「090」に8桁の数字を付したものに続けて「@dokomo.ne.jp」を付したもの)宛てに、営利目的の電子メールを送信する等して、債権者の所有する電気通信設備の機能の低下もしくは停止っをもたらすような行為をしてはならない。
  2. (省略)
この決定は、当然である。

速読本舗事件

書籍の要約文を掲載するウエブサイトは、許されるか。

東京地裁平成13年12月3日判決(平成13年(ワ)第22067号、判時1768号116頁)

 平成8年頃、Y(有限会社コメットハンター、本社福井市)は、インターネット・プロバイダAとサーバースペース提供に関する契約を締結し、Yのホームページを開設、そこに、ビジネス書の要約文を紹介するサイト「速読本舗」を置いた。
 Yは、毎月4冊のビジネス書を選び、その要約文を作成し、会費を支払った個人、法人の会員にメールサービスによって、書籍要約文を送信した。また、毎月、一冊の書籍要約文をホームページ上に無料で公開し、新規にこのサービスに加入する会員を募集した。
 Yは、要約した書籍の著者には、全く無断で、報酬も支払わず、連絡もしなかった。

 江口克彦、竹村健一、田原総一朗ら9名の著名な評論家、文化人、経営者である書籍の著者X1~X9らが、原告となって、Yに対し、複製権、翻案権、公衆送信権、送信可能化権及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害するものとして、その差止めと損害賠償を請求して訴えた。 X1らは、インターネット・プロバイダAへも著作権侵害で訴えた。

[東京地裁判決]
被告Yは、答弁書、準備書面を提出せず、口頭弁論期日にも出頭しなかった。民事29部飯村敏明裁判長は、Yが請求原因事実を認め、自白(民事訴訟法159条、179条)したものとみなし、原告の請求をすべて認容したものとした。

[判決主文]

  1. 被告は別紙書籍要約文を自動公衆送信又は自動公衆送信可能化してはならない。
  2. 被告は、被告の開設するウエブサイトから別紙各書籍要約文を削除せよ。
  3. 被告は、各原告に対し、それぞれ金110万円(うち10万円は弁護士費用)及びこれに対する平成13年10月28日から各支払済みまで年5分の金員を支払え。

 なお、Xらは、Aの行為も著作権侵害であると主張、Aに対し差止及び損害賠償を求めたが、XA間で、裁判上の和解が成立した(和解条項は判時1768号118頁に掲載。)

被告は、著者、出版社の承諾をとり行うか、被告が読み、褒めるなり、批判するなりして、文章を前後に書き、「引用」の形式で、試みる方法があった。

[参考文献]
山本順一・「速読本舗事件」「サイバー法判例解説」(商事法務・2003年)26頁。

外資企業私用メール事件

外資系企業の従業員の私用メール、セクハラ、パワハラの紛争事件である。

東京地裁平成13年12月3日判決(平成12年(ワ)第12081号、第16791号(反訴請求)、労判826号76頁、労経速報1814号3頁)
  1. 原告(反訴被告)X1は、甲野A子で、平成9年10月からF株式会社Z事業部に勤務している。事件当時、Z事業部営業部長Dの直属アシスタントである。
    原告(反訴被告)X2は、甲野B夫で、X1の夫である。
    被告(反訴原告)Yは、乙川C男で、他社を退職後、平成11年4月、F株式会社に入社し、5月取締役に就任、平成12年11月までZ事業部の事業部長である。
  2. Yは、平成12年2月中旬、X1へ、「仕事や上司の話など聞きたい」といって、飲食の誘いの電子メールを送っていた。平成12年3月1日、X1は、この勧誘のメールを快よく思わず、むしろ反感をいだき、Yを批判する内容のメール「(Yは)細かい上に女性同士の人間関係にまで口を出す」といったメールを夫であるX2へ、送信するつもりで、操作を誤り、Yあてに、送ってしまった。Yは、これを読み、X1及び訴外のX1の友人Eの電子メールを監視しはじめた。F社では、電子メールアドレスが公開され、パスワードも各自の氏名で構成されてたから、Yは、監視でき、Yをセクシュアルハラスメント行為で告発しようとするX1らの動きを知った。同年3月6日、X1がパスワードを変更したため、Yは、F社のIT部にX1及びE宛ての電子メールをY宛てに自動送信するよう依頼し、その後、この方法で監視した。
  3. 同年3月2日までに、夫であるX2は、YがX1にホテルへの誘いかけをしたこと、宴会の場で、抱きつき行為をしたこと、頻繁な飲食の誘いかけをしたこと等の行為を指摘し、Yをセクシュアル・ハラスメント行為で告発することも辞さないという警告の電子メール(以下、警告メール)を作成し、X1へ送信した。この動きを知ったYは、飲食の誘いは、個人的な付き合いを意図したものではなかったこと、誤送信メールはなかったことにするという内容の電子メールをX1へ送信し、口頭でも同様のことをX1へ述べた。
  4. 同月7日、X2は、Yへ、X1、X2の代理人を明示した警告メールを送信した。同月9日、Yは、X1の直属上司Dを呼び出し、警告メール作成に協力したのでないかと詰問し、Dは否定した。Dは、このことをX1、X2へ知らせた。Yは、これらの状況をX1の電子メール監視で把握した。
  5. 同月22日、Yは、X1を多摩川工場の事務要員に配置転換することを検討中であるとDへ伝えた。Dから知らされたX1は、代理人へ連絡を取って欲しいと、X2へ電子メールで伝えた。Yは、X1の電子メールを監視していたからこれを知り、未決定の人事を直接本人に伝えたDに不信感をもった。
  6. 同年4月7日、X1X2らの代理人は、Yへセクシャル・ハラスメント行為を行っているとして、書面で回答を求める趣旨の内容証明郵便を出した。X1への配置転換はなかった。同年5月、Dは、Z事業部アジア総括責任者Fへ以上の状況を伝えたが、Fは、Yを支持し、のち(同年12月27日)、Dは、営業部長から降格処分を受けた。
  7. 同年6月14日、X1がYからセクシャル・ハラスメント行為を受けたことYがX1の私的な電子メールをX1らの許可なしに閲覧したことを理由として、不法行為に基づく損害賠償を求めて訴えた。
    Yは、反訴を起こし、X1らがセクシャル・ハラスメントを捏造し、会社内外の者へ送信したことに対し、名誉毀損に基づき損害賠償を求めた。

[東京地裁判決]
民事40部綱島公彦裁判官は、次のように述べて、原告の請求を棄却した。

  1. 社内ネットワークシステムを用いた私的電子メールの送受信につき、日常の社会生活を営む上で、通常必要な外部との連絡の着信先として用いること、更に、職務遂行の妨げとならず、会社の経済負担もきわめて軽微なものである場合には、外部からの連絡に適宜即応するために必要かつ合理的な限度の範囲内において、発信に用いることも社会通念上許容されていると解すべきである。
  2. 従業員が社内ネットワークシステムを用いて電子メールを私的に使用する場合に期待し得るプライバシーの保護の範囲は、通常の電話装置の場合よりも相当程度低減されることを甘受すべきであり、監視の目的、手段およびその態様等を総合考慮し、監視される側に生じた不利益とを比較衡量のうえ、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合に限りプライバシー権の侵害となると解するのが相当であるとされた。
  3. 原告X1が、社内ネットワークシステムを用いて、被告Yのセクシャル・ハラスメント行為等について、送受信を行なった被告X2らとの私的な電子メールをX1らの許可なしに閲覧したことを理由として、被告Yが閲読したことを理由とする損害賠償請求につき、原告らの電子メールは私的使用の程度は限度を超えており、被告Yによる監視という事態を招いた原告X1の責任、監視された電子メールの内容、事実経過を総合すると、被告Yの監視行為は、社会通念上相当な範囲を逸脱していない、原告らが法的保護(損害賠償)に値する重大なプライバシー侵害を受けたとはいえないとし、請求を棄却した。
  4. 被告Yによる、X1らがセクシャル・ハラスメントの事実を捏造し、会社内外の者へ送信したことに対し、名誉毀損による損害賠償を求めた反訴について、これを棄却した。
上記2.にあるように、電子メールが私用電話に比べ、プライバシー保護の範囲が相当程度低減されるー電話ほど保護されない、見られても仕方ない、と述べているのが注目される。いわゆるセクハラは事実認定が困難であるが、この事件は、原告が勝訴になってもおかしくなかったように思われる。

[参考文献]
押以久子「従業員の電子メール私的利用をめぐる法的問題」(労働判例827号29頁。真嶋理恵子「東京地裁、使用者による従業員のEメールの無断モニタリングとプライバシー侵害につき、使用者側に軍配(平成12年(ワ)第12081号)」NBL734号6頁。荒木尚志・別冊ジュリスト179号「メイデイア判例百選」238頁(2005年)。
永野仁美・ジュリスト1243号153頁(2003年4月15日)。小畑史子・労働判例百選〈第7版〉(別冊ジュリスト165号)46頁。藤内和公・法律時報75巻5号100頁(2003年)。

2002年

日経クイック情報事件

会社が従業員のパソコン等を調査し、入手した個人データを返却せず、多数人に閲覧させた等を理由として、従業員がプライバシー侵害等で会社を訴えたが請求棄却となった事例である。

東京地裁平成14年2月26日判決(平成12年(ワ)第11282号、労判825号50頁。)
  1. 原告Xは被告Y1に平成9年10月から平成12年3月1日まで雇用されていた。
    被告Y1は、経済情報及び関連情報をコンピュータ処理し、販売を業とする会社。
    被告Y2は、Y1の管理部部長。被告Y3は、Y1の経営企画グループ部長。被告Y4は、同グループ員で社内システム委員会の委員。被告Y5は、Y1の取締役営業第一部長であった者。
    Xは、平成10年頃からY1の営業第一部に勤務し、社内システム委員会の委員であった。
    平成11年12月上旬頃、営業第2部の訴外AからY1のシステム委員会委員の訴外Bに、平成11年6月頃から、日経新聞社電子メデイア局管理部長の訴外Cの名前でAを誹謗中傷する電子メールが複数回送られ迷惑であるという苦情があった。内容は、Aと営業部所属の契約社員訴外Dが接近することを阻止する目的でAを非難するものであった(以下、誹謗中傷メールという)。
  2. Y1が調査したところ、誹謗中傷メールが、Y1の営業部が共有する端末からフリーメールアドレスを使ってAに送信されたこと、同時に共有端末を使用してフリーメールアドレスからXの社内アドレスへ6通の電子メール、Xの個人の電子メールアドレスへ2通の電子メールが送信され、Xの机上の端末を使用して、Xの社内アドレスからフリーメールサーバーに1通の電子メールが送信されていた。
  3. Y1は、平成11年12月17日、Xへ第1回事情聴取を実施した。Xは、誹謗中傷メールの発信者であることを否定した。しかし、調査過程でXの「個人使用」の領域からXの私用メールが多数発見された。Y1は、その一部を印刷、Y1の社長、Y2、Bが閲覧した。
    平成12年1月13日、第2回事情聴取が行われ、Xは、誹謗中傷メールの発信者であることを否定した。翌日1月14日、Xは、退職日を3月1日とする退職願をY5へ提出した。同日、Y1は、経営会議を開催し、Xに対し、私用メールが就業規則に該当するとして譴責処分を決定し、1月17日、Xに伝達し、Y1社員告知板に告知した。Y1は、Y2を通じて1月20日、同月21日から出社停止、同月31日付けで退職するようXへ申し入れたが、Xが抗議し、Xは、3月1日退職した。
  4. Xは、
    1. Y2、Y3、Y5による第1回事情聴取が名誉毀損等に当たる
    2. Y2、Y3、Y4、Y5によるX使用のパソコン等の調査、その際入手のXの個人データをその後も返還せず、印刷物にし、閲覧し、多数の者に閲覧させたことは、Xの個人情報に対する所有権及びプライバシーの侵害に当たる
    3. Y2、Y3、Y4、Y5による第2回事情聴取がXの名誉毀損等に当たる
    4. Y2、Y5が、Xの退職日を1月31日に繰り上げること及び出社停止を求めたことは、強要、脅迫である

    として、Y2、Y3、Y4、Y5に対して、民法709条、719条、Y1に対して、民法715条1項、719条に基づいて慰藉料500万円及び弁護士費用50万円の支払いと前記データの交付と削除及び印刷物の交付を請求した。

[民事第11部]
多見谷寿郎裁判官は、「原告の本訴請求は理由がない」として、主文「1、原告の請求をいずれも棄却する。2,訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を下した。

多見谷寿郎裁判官は、次のように判断した。

  1. 企業が行う調査及び命令は、企業の円滑な運営上必要かつ合理的なものであること、方法、態様が労働者の人格や自由に対する行過ぎた支配や拘束ではないことを要する。
  2. 社内における誹謗中傷メールの送信という企業秩序違反事件の調査を目的とし、その送信者と疑われる合理的理由がある以上、原告に対して事情聴取を行う必要性と合理性が認められる。
  3. 2回にわたる事情聴取は、社会的に許容しうる限界を超えて原告の精神的自由を侵害した違法な行為ではない。
  4. 原告のメールファイルの点検は、行う必要のあるものであったし、その内容は業務に必要な情報を保存する目的で会社が所有し管理するファイルサーバー上のデータ調査であることから、社会的に許容しうる限界を超えて原告の精神的自由を侵害した違法な行為とはいえない。
  5. 処分を相当とする事案に関して、必要な範囲で関係者がその対象となる行為の内容を知ることは当然で、私用メールであっても違法な行為でない。
  6. 処分事案に関する調査記録を、削除しないとしても違法でなく、原告が具体的に必要とする事情が認められない以上、返還義務はない。
  7. 会社は、退職の日付けを早めようとしたが、社会的に許容しうる限界を超えて原告の精神的自由を侵害した違法な行為とはいえない。
  8. 私用メールは、送信者が文書を考え作成し送信することにより、その間、職務専念義務に違反し、私用で会社の施設を使用する企業秩序違反行為になるだけでなく、私用メールを読ませることにより受信者の就労を阻害し、受信者からの返信メールの求めに応じてメール作成、送信すれば、そのことにより受信者に職務専念義務違反と私用企業施設使用の企業秩序違反を行わせることになる

とした。

この判決には、異論もあると思われる。

[参考文献]砂押以久子・労働判例827号29頁。

「mp3.co.jp]事件

MP3(音声圧縮技術の国際規格)形式で配信サービスを行うアメリカ合衆国法人に対して、「mp3.co.jp」ドメインをもつ原告が不正競争防止法3条1項に基づく使用差止請求権を有しない、「不正競争行為」に当たらないとの判決を得た事例である。

東京地裁平成14年7月15日判決(平成13年(ワ)第12318号、判時1796号145頁)

MP3は、MPEG(動画や音声を圧縮・伸張する規格)によって策定された音声圧縮規格の1つである。

原告X(有限会社システム・ケイジェイ)は、パソコン周辺機器の開発、輸入、販売等を目的とする会社で、平成11年7月、(社)日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)へ、ドメイン名「mp3.co.jp」を登録した。
被告Y(エムピー3・ドット・コム・インコーポレイテッド)は、アメリカ合衆国において設立され、「mp3.com」の営業表示及び標章を用い、MP3形式によって圧縮処理した音声データをインターネットを通じて、配信するサービスを行う会社で、世界的に著名である。Yは、平成13年3月5日、日本知的財産仲裁センターに対し、Xを相手方に、原告ドメイン名を被告へ移転登録するよう紛争処理の申立をした。仲裁センター紛争処理パネルは、平成13年5月29日、原告ドメイン名を被告へ移転すべき旨の裁定をした。
原告Xは,Yを相手方として、「ドメイン名『MP3。CO.JP』について、不正競争防止法3条1項に基づく使用差止請求権を有しないことを確認する。」旨の訴訟を提起した。裁判では、Xの行為は、不正競争防止法2条1項12号(「不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品表示」「と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為」)に当たるか、であった。Yは、Xがドメイン名を全く利用していないこと、Yの顧客吸引力等を利用する意図があること、Xのサイトが不正確な情報を掲示し、Yの名誉を毀損していると主張した。

東京地裁民事29部飯村敏明裁判長は、Xに「不正の利益を得る目的」も「他人に損害を加える目的」もなかったとし、不正競争防止法2条1項12号所定の不正競争行為にあたらないとして、原告の請求どうり、被告は、原告に対し、ドメイン名『MP3。CO.JP』について、不正競争防止法3条1項に基づく使用差止請求権を有しないことを確認する。」とした。

ドメイン名が原則として、先着順であること、登録に際し、実質的な内容にはいった審査はないため、そのドメイン名を取得した者よりも、そのドメイン名がもっと相応しい企業等は多いと思われる。平成13年の改正不正競争防止法が対応し、これを適用した判例である。2001-1,2001-5参照。

[参考文献]松尾和子・佐藤恵太「ドメインネーム紛争」弘文堂・2001年。

ホテル・ジャンキーズ事件

被告が、インターネットの掲示板への書き込みをした者の著作権を侵害したことは、認められたが2審で賠償額が減額された事例である。

東京高裁平成14年10月29日判決(平成14年(ネ)第2887号、第4580号)
東京地裁平成14年4月15日判決(平成13年(ワ)第22066号判時1792号129頁)

Y1(株式会社森拓之事務所)は、情報産業に関連する事業を営む会社で、「ホテル・ジャンキーズ」というホームページを設置、管理し、掲示板を設置し、書込みをさせていた。
Y2は、ホテルに関する執筆活動をしているジャーナリストで、Y1の取締役である。
Y3(株式会社光文社)は、図書、雑誌の出版を業とする株式会社で、Y1,Y2が執筆した書籍を出版、販売、頒布し、その宣伝広告をしている。
原告X1から原告X11までの11人は、Y1のホームページに文章を書き込んだ。被告らは、原告の文章を複製したとし、この行為は、著作権侵害であるとして、書籍の出版の中止を求め、また被告らに、X1らは、13万円から40万円までの損害賠償請求をした。

[東京地裁]
民事29部飯村敏明裁判長は、原告の書込みに著作物性を認め、被告らが複製権侵害をしたとした。被告Y3の過失を認定し、次の判決を下した。

  1. 書籍の出版、発行、販売、頒布、頒布のための広告及び宣伝の禁止。
  2. Y3(光文社)は、書籍並びにこれに関する印刷用紙型、亜鉛版、印刷用原板(フイルムを含む)の破棄。
  3. 被告らは、連帯して、X1、X2に対して、10万3300円、X10に対して10万7700円、X4に対して10万8800円、X7に対して、13万7400円、X8に対して10万2200円、X3に対して11万7600円、X6に対して10万2200円、X5に10万1100円、X9に対し10万3300円、X11に対して5万2200円の支払を命じた。

[東京高裁]
Yらは、控訴し、インターネットの特質を主張し、インターネットの書込みの著作物性の基準は、厳密な基準にすべし、と主張した。
民事第6部山下和明裁判長は、「創作性の高いものについては、少々表現に改変を加えても複製行為と評価すべき場合がある」「創作性の低いものについては、複製行為と評価できるのはいわゆるデッドコピーについてのみ」で、「少し表現が変えられれば、もはや複製行為とは評価できない場合がある」というように、「著作物性の判断に当たっては、これを広く認めた上で、表現者以外の者の行為に対する評価において、表現内容に応じて著作権法上の保護を受け得るか否かを判断する手法をとることが、できうる限り恣意を廃し、判断の客観性を保つという観点から妥当」とする。
原判決では、各記述について、一部分が省略された形で転載されているため、転載された部分毎に分けてそれぞれについて著作物性の判断をし、一部分についてその著作物性を否定したが、「著作物性の有無の判断は、まず、これらそれぞれの記述全体について行われるべきである」とし、全体として一個の転載行為がなされた、「原告各記述部分は、それ自体としてみても、原判決が著作物性を否定した部分を含め、いずれも、程度の差はあれ記述者の個性が発揮されていると評価することができるから、著作物性を認めるのが相当である。この点において、当裁判所は、原判決と判断を異にする。」とし、判決した

[判決主文]

  1. 原判決中、金員請求に関する部分(主文2,4項)を次の通りに変更する。
    1. 控訴人らは、連帯して、被控訴人X3に対し、5500円、被控訴人X11に対し、1100円、被控訴人X5に対し1100円、被控訴人X9に対し、1万2100円、被控訴人X9に対し2200円、被控訴人X4に対し、8800円、被控訴人X11に対し2200円及びこれらに対する平成13年10月26日から各支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
    2. 被控訴人X2、同X7、同X6、同X10の各請求及び被控訴人X3、同X11、同X5、同X9、同X9、同X4、同X11のその余の請求をいずれも棄却する。
  2. その余の本件控訴及びその余の本件附帯控訴をいずれも棄却する。
  3. (省略)
  4. (省略)
ネットの文章を紙媒体にしたところ、著作権侵害に問われた事件である。

[参考文献]
光野文子・時の法令1678号48頁。
上野達弘・別冊ジュリスト179号「メイデイア判例百選」238頁(2005年)。

動物病院対電子掲示板事件

名誉毀損書き込み放置した管理者責任が問われた事件である。

東京高裁平成14年12月25日判決(平成14年(ネ)第4083号判時1816号52頁)
東京地裁平成14年6月26日判決(判時1810号78頁)

原告X1(動物病院)および原告X2(同院院長)は、被告Yが設置しているインターネット上の無料電子掲示板「Y2ちゃんねる」の「ペット大好き掲示板」に、X1を「悪徳病院」として批判、非難する発言が書き込まれていることを知った。
 X2は、名誉毀損発言の箇所を削除するよう求めたが、インターネットに不馴れなため、所定の削除依頼の方法に従ってなく、一部の削除にとどまった。
 X1,X2は、平成13年1月、訴訟を起こし、掲示板にXらの名誉毀損発言が掲載されたにもかかわらず、Yがこれらを削除するなどの義務を怠り、Xらの名誉が毀損されるのを放置したことにより、X1及びX2らそれぞれに対し、不法行為に基づき、損害賠償250万円を支払うよう、また、掲示板の名誉毀損発言の削除を求めた。

[東京地裁判決]
原告の請求のうち、損害賠償金額の一部を認容し、名誉毀損発言の削除を命じ、X側が勝訴した。「Yは、遅くとも本件掲示板において他人の名誉を毀損する発言がなされていることを知り、又は、知り得た場合には、直ちに削除するなどの措置を講ずべき条理上の義務を負っているものというべきである」と述べ、Yが、書き込まれた各発言を具体的に知っていたにもかかわらず、削除するなどの措置を講じなかったことから、Yの作為義務違反を認め、Xらへそれぞれ、200万円支払うことと、掲示板上の発言番号を特定し、その部分の削除するよう命じた。

[東京高裁判決]
Yは、控訴した。
控訴審は、合計400万円の損害賠償及び特定した掲示板上の発言の削除を命じる1審判決を支持し、控訴を棄却した。控訴審は、次の点を指摘した。
本件掲示板で、被害を受けた者が、その発言者を特定し、その責任を追及することは事実上不可能で、本件掲示板に書き込まれた発言を削除しうるのは、本件掲示板を開設し、これを管理運営する控訴人のみである。控訴人は、本件掲示板に他人の権利を侵害する発言が書き込まれないようにするとともに、書き込まれたときには、被害者の被害が拡大しないようするため、直ちにこれを削除する義務がある。「被害者自らが発言者に対して被害回復の措置を講じ得ないような本件掲示板を開設し、管理運営している以上、その開設者たる控訴人自身が被害の発生を防止すべき責任を負うのはやむを得ない。」と。また、名誉毀損の要件である公共性、公益目的、真実性・相当性について、1審同様、被害者の相手方が主張立証すべきであるとした。

控訴審で、400万円の損害賠償と2倍になっていることが注目される。

[参考文献]
新保史生・別冊ジュリスト179号「メイデイア判例百選」228頁(2005年)。
潮見佳男・コピライト499号27頁。町村泰貴・判タ1104号85頁。同・NBL742号6頁。同・2ちゃんねる動物病院事件(第1審判決)・(岡村久道編「サイバー判例解説」42頁)同・2ちゃんねる動物病院事件(控訴審判決)・(岡村久道編「サイバー判例解説」58頁)

2003年

眼科医対電子掲示板事件

電子掲示板に医療法人の名誉信用を毀損する書き込みがなされ、医療法人が発信者情報の一部を把握している場合に、プロバイダ責任制限法4条の要件が肯定された事例。

東京地裁平成15年3月31日判決平成14年(ワ)第11665号判時1817号84頁、金判1168号18頁

 原告は、E眼科という名称で全国に眼科病院を運営する医療法人である。
 被告は、インターネット上で、電子掲示板を管理運営する者である。

 訴外のAが、平成14年2月16日、ハンドルネームBを名乗って、本件掲示板に、「E眼科のセミナーにいってきた。投稿者B。あのヤロー他院の批判ばかりだよ。Mが裁判かかえてるて。お前のところは、去年3人失明させてるだろうが!」というメッセージを書き込んだ。
 原告は、少なくともこの情報により1名の患者が手術取消をし営業利益を侵害されたこと、平成13年に患者が3人失明した事実はないこと。原告は、訴外Aと面談し、同人の住所氏名は、入手したこと。これは、名誉毀損、信用毀損であり、損害賠償請求権を行使するため、発信者情報の開示を求めるとし、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(プロバイダ責任制限法)4条の正当な理由があると主張し、被告に開示を求めた。また、原告はすでに訴外Aと面談しているが、Aが、原告と競業関係にある病院を運営する医療法人の理事長が経営する会社の正社員であったことから、医療法人へも損害賠償請求を検討中で、そのため本件発信情報が訴外人の個人のパソコンから発信されたか、勤務先のパソコンからの発信からか、知る必要があるとして、発信者情報の開示を求めて訴えた。

[東京地裁判決]
東京地裁民事6部の高橋利文裁判長は、原告(被害者)が発信者情報の一部を把握し、送信行為自体をおこなった者が特定されているような場合であっても、その余の発信者情報の開示を受けることにより、当該侵害情報を流通過程に置く意思を有していた者すなわち、当該送信行為自体を行った者以外の「発信者」の存在が明らかになる可能性がある、として、発信者情報の開示を受けるべき必要性があるとし、原告の請求を認容した。

平成13年11月22日成立し、平成14年5月27日施行の「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(平成13年法律第137号)の4条をめぐる初めての裁判例である。動画無断使用事件(東京地裁平成25年10月22日判決平成25年(ワ)第15365号)参照。

[参考文献]
長谷部由紀子「プロバイダ責任制限法による開示命令(1)」『別冊ジュリスト』「メデイア判例百選」179号230頁。

女流麻雀士対2ちゃんねる事件

インターネット上の電子掲示板に書き込まれた発言により名誉毀損された者が、その発言の削除を掲示板運営者に求め、削除しなかったことが、不法行為とされ損害賠償が認められ、また、その発言の削除請求が認容され、しかし、当該発言の発信者情報の開示請求は棄却された事例である。

東京地裁平成15年6月25日判決(平成14年(ワ)第13983号、判時1869号46頁)

原告は、日本プロ麻雀連盟所属の20代の未婚のプロ麻雀士である。
被告は、インターネット上で、閲覧及び書き込みが可能な電子掲示板「2ちゃんねる」の開設者、管理運営者である。

平成14年1月、掲示板に、原告について、「整形しすぎ」「年いくつ誤魔化してんの?」「穴兄弟たくさんいるよ」などの書き込みがなされた。

原告は、

  1. 原告の名誉を毀損する発言等が書き込まれたのに、被告がこれら発言の送信防止措置を講じる義務を怠り、原告の名誉が毀損されるのを放置し、原告が損害を被ったなどとして、原告が被告に対し、民法709条に基づき、706万1000円の損害賠償を求め、
  2. プロバイダ責任制限法に基づき、掲示板に原告の名誉を毀損する発言等の書き込みをした者の情報の開示を求めて

訴えた。

[東京地裁]
民事24部の大橋寛明裁判長は、次のように判断した。

  1. 掲示板への各発言は、名誉毀損にあたる。
  2. 被告が当該発言の送信防止措置を講ずる条理上の作為義務を負う。送信防止措置を講じなかったことは、作為義務違反で、原告に対して不法行為になる。
  3. 被告は、本件発信者の氏名、住所及び電子メールアドレス、発言に係るIPアドレスを保有している証拠はない。従って原告の本件発信者の情報の開示請求は理由がない。
  4. 被告が、発言を削除せず、送信を継続し、原告の名誉を毀損し、名誉感情を侵害した不法行為について、精神的損害を慰藉する賠償金額は、90万円が相当で、弁護士費用10万が相当である。

とした。

発信者情報の開示請求は棄却され、当該発言の削除は認められた事例である。

DHC名誉毀損事件

インターネットの電子掲示板に書き込まれた発言によって、名誉を毀損されたという化粧品会社とその代表取締役が掲示板の管理運営者に対して求めた当該発言を削除しなかったことを理由とする不法行為に基づく損害賠償請求が一部認容された事例である。

東京地裁平成15年7月17日判決(平成14年(ワ)第8603号、判時1869号46頁)

原告X1は、化粧品の輸出及び製造販売等を目的とする会社デイーエイチシーである。
原告X2は、X1の代表者代表取締役である。
被告Yは、インターネット上で、閲覧及び書き込みが可能な電子掲示板である本件ホームページを開設し、これを管理運営する者である。

平成13年3月12日から同年7月7日までの間、本件ホームページに、「私がDHCを辞めた訳」「DHCの苦情!」「DHCの秘密」(以下、本件発言)などが掲載された。
Xらは、本件発言は、X2の人格等を誹謗中傷し、その名誉を毀損する違法な発言で、また、化粧品会社X1の品位を貶め、取り扱い商品を誹謗中傷し、その名誉及び信用を毀損する違法な発言であるとして、Yは、

  1. X1に対し5億円、
  2. X2に対し、1億円、
  3. 被告Yは、X1に対し、2ちゃんねるにおける別紙4発言目録4記載と同一の発言の削除をせよ、
  4. 被告Yは、X2に対し、2ちゃんねるにおける別紙3発言目録記載の発言と同一の発言を削除せよ、

と請求し、提訴した。

[東京地裁]
民事49部の齋藤隆裁判長は、次のように判決した。

  1. 被告は、原告X1に対し、金300万円及びこれに対する平成14年5月12日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  2. 被告は、原告X2に対し、金100万円及びこれに対する平成14年5月12日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  3. 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。(4,以下省略)
DHCという最近有名になった化粧品会社が、誹謗中傷された事件である。

パワードコム発信者情報開示事件

WinMXによるファイル送信は、「特定電気通信」=(不特定多数の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信)に当たり、特定電気通信の始点は、特定電気通信役務提供者でなくてもよいから、本件ファイル送信が、「特定電気通信」に該当し、被告(株)パワードコムへ、発信者情報開示が命ぜられた事例である。

東京地裁平成15年9月12日判決(平成14年(ワ)第28169号)

原告Xは、ネット上、名誉毀損された者である。
被告Yは、株式会社パワードコムである。

 原告Xは、コンピュータプログラムWinmx を利用して行われた方法で、インターネットを経由した情報の流通で、(ユーザー942)という者が、Xのプライバシーを侵害した文章を書いていることを知った。
ユーザー942は、被告Y提供の通信装置を利用し、Yによって、インターネットプロトコルが付与され、Yは、ユーザー942の住所、氏名に関する情報を保有している。
Yは、Xらから本件発信者情報の開示を請求されたので、ユーザー942に対し、開示を問い合わせたところ、「勘弁して貰いたい」と回答した。YはXへ開示しなかった。
Xは、インターネット接続を提供したプロバイダであるYを被告として、発信者の住所氏名の開示を求めて訴えた。
 裁判で、WinMXによる電子ファイルの送信が、「特定電気通信」か、特定電気通信は、特定電気通信役務提供者が、始点に立つものである必要があるか、について論ぜられた。

[東京地裁]

民事第38部菅野博之裁判長は、次のように判断した。

  1. WinMXによるファイル送信は、プロバイダ責任制限法2条の「特定電気通信」の定義である「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信」に当たる。
  2. 特定電気通信は、特定電気通信役務者が、その始点に立つものであることを要しない。

「判決主文」

  1. 被告は原告等に対し、平成14年12月6日22時48分ころに「61.204.152.48というインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続していた者の氏名及び住所を開示せよ。
  2. 訴訟費用は被告の負担とする。
被告が東京地裁平成15年4月24日判決平成14年(ワ)第18428号(羽田タートルサービス事件)を援用したが、東京地裁は、別件判決であり、そもそもプロバイダ責任制限法のインターネット適用のない事案で、斟酌することはできないと、述べている。ナップ型音楽ファイル交換事件(東京高裁平成17年3月31日判決、東京地裁平成15年1月30日中間判決)は、送信者側コンピュータから受信者側コンピュータに対する電子ファイルの送信において、受信者側ユーザーが、アイデイーやインターネットプロトコルアドレスにより特定されていたとしても、送信側ユーザーから見て「不特定の者」に当たる、とする。
プロバイダについては、一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会があり、正会員148,賛助会員6という(2015年6月)。なお、堀之内清彦「メデイアと著作権」(論創社・2015年)256頁。

[参考文献]森亮二・NBL771号(2003年10月15日)6頁。

弁護士対経由プロバイダPRIN事件

氏名不詳者により電子掲示板「2ちゃんねる」に名誉毀損書き込みがなされた弁護士が、プロバイダ責任制限法に基づき、経由プロバイダに対してしたは発信者情報の開示請求が認容された事例である。

東京地裁平成15年9月17日判決(平成15年(ワ)第3992号、判タ1152号276頁)

原告は、航空旅客手荷物運搬等を行う訴外B会社の顧問を務める弁護士である。
被告は、「PRIN」の名称で、インターネット接続サービス等の通信事業を営む株式会社である。

氏名不詳の本件発信者は、被告にインターネットでアクセスし、ウエブサイト「2ちゃんねる」内の電子掲示板に、「最悪のアルバイト会社 Part 7」という名前のスレッドに対し、原告を中傷する内容の記事(合計11本)を投稿した。
訴外B会社は、「2ちゃんねる」の訴外管理者Cを仮処分で訴えた。B会社のCに対する仮処分命令申立事件の和解となり、和解条項によりCは、本件各記事に関するアクセスログの情報を開示した。しかし、掲示板への投稿は匿名で行えるため、Cは、投稿した者につきIPアドレス以外の情報を保有していない。
原告は、上記アクセスログを被告に提出し、本件発信者の個人情報の開示を求めたが、被告は、拒否した。原告は、本件発信者に対して、名誉毀損の損害賠償請求訴訟をするためには、本件発信者の氏名、住所が必要である。そこで、原告は、被告に対し、本件発信者へインターネット接続を提供していること、被告は、プロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に該当する、とし同項に基づいて、発信者情報の開示を求め提訴した。

[東京地裁]
民事第32部井上哲男裁判長は、「したがって、発信者からウエブサーバーへの情報の送信とウエブサーバーから不特定多数の者への情報の送信を、それぞれ別個独立の通信であると考えるべきではなく、両者は一体不可分であり、全体として1個の通信を校正すると考えるのが相当である。」「両者が一体となって構成された1個の通信は、発信者から不特定多数の者に対する情報の送信にほかならないものであるから、これが『不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信』であることは明らかである。」
「発信者からウエブサーバーへの情報の送信は、発信者から不特定多数への情報の送信という『特定電気通信』の一部となると解する」とする。
経由プロバイダである被告は交換機などの特定電気通信設備を用いて、発信者と不特定多数の者の間で行われる通信を媒介した者で、「特定電気通信役務提供者」に当たるとした。 原告は、記事11本について、名誉毀損を主張したが、裁判長は、2本は、原告の社会的地位を低下させるものでないとし、次のように判決した。

「主文]

  1. 被告は、原告に対し、別紙アクセスログ目録記載1ないし6,同9ないし11の各日時ころにおいて、各IPアドレスを割当てられた電気通信設備を管理する者の氏名及び住所を開示せよ。
  2. 原告のその余の請求を棄却する。
  3. 訴訟費用は被告の負担とする。
経由プロバイダについて、最高裁平成22年4月8日判決民集64巻3号676頁もプロバイダ責任制限法2条3項の「特定電気通信役務提供者」とした。

「就職情報」著作物事件

ウエブサイトに掲載の就職情報は、著作物であるとされた事例。

東京地裁平成15年10月22日判決(平成15年(ワ)第3188号、判時1850号123頁)

原告(エン・ジャパン株式会社)は、株式会社シャンテリーから同社の転職情報に関する広告の作成及びウエブサイトへの送信可能化について注文を受けて、転職情報を作成し、平成15年1月7日から原告が開設するウエブサイトに掲載した。
被告(イーキャリア株式会社)も、株式会社シャンテリーから、同社の転職情報に関する広告の作成及びウエブサイトへの掲載について注文を受けて、転職情報を作成、平成15年1月8日、被告が開設するウエブサイトに掲載した。掲載時期について争いがある。

被告Yがインターネット上に開設したウエブサイトに掲載した転職情報について、これは、原告Xが創作し、そのウエブサイトに掲載した転職情報を無断で複製ないし翻案したものであるとして、Xが著作権(複製権、翻案権、公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)の侵害であると主張し、掲載行為の差止及び損害賠償5720万円を求めた。

民事29部飯村敏明裁判長は、原告作成の転職情報について、著作物性を認め、被告が、原告の著作権(複製権、翻案権、送信可能化権)を侵害したとして、

  1. 被告は、原告に対し、金65万円及び平成15年2月27日から支払済みまで年5分の金員の支払を命じ、
  2. 原告のその余の請求をいずれも棄却する、との判決を下した。
2011年(平成23年)の「データSOS事件」(原告敗訴)のように、同業者の間で、広告の文章が同じか酷似とし、著作権侵害事件になるケースが多い。本件は原告勝訴である。(ありふれた文章)でなく、著作物であるという注目すべき判例。

2004年

ソニーコミュニケーションネットワーク事件

送信者側プロバイダが、「開示関係役務提供者」に該当するとされ、同プロバイダにより第三者に対し、権利侵害情報を送信した者の住所、氏名の開示請求を認容した事例である。

東京地裁平成16年1月14日判決(平成15年(ワ)第354号発信者情報開示事件、金融・商事判例1196号39頁)

WinMxプログラム(ピア・ツー・ピア方式による電子ファイルの交換をするリフト)における送信側プロバイダが、プロバイダ責任制限法4条1項にいう「開示関係役務提供者」に該当するかどうか争われたが、該当するとして、同プログラムにより、第三者に対し、権利侵害情報を送信した者の住所および氏名の開示請求を認容した。
原告は、X1、及びX2である。被告Yは、ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社である。

[判決主文]

  1. 被告は、原告等に対し、平成14年12月27日21時54分ころに、「218,41.21.155」というインターネットプロトコルアドレスを使用して、インターネットに接続していた者に関する氏名および住所を開示せよ。
  2. 訴訟費用は、被告の負担とする。
この判例は、「金融・商事判例」という雑誌に掲載されている。

外務省デンバー元総領事肖像写真無断放送事件

被告日本テレビが、原告X作成のウエブサイト掲載のA元デンバー総領事の写真を、X及びAに無断で、放送し、100万円の損害賠償が認められ、複製及び公衆送信が禁止された事件である。

東京地裁平成16年6月11日判決(平成15年(ワ)11889号、判時1898号106頁)

原告Xは、アメリカ合衆国コロラド州デンバー市において、在米邦人向けの日本語新聞を発行する新聞社を経営し、ホームページを開設し、また写真家としても活動している。
被告Y(日本テレビ)は、放送法に基づき、一般放送事業、放送番組の企画、制作、販売等を行う株式会社で、キー局と言われる大放送局である。

Yは、平成13年7月当時、外務省の不祥事に関連する報道の一環として、その制作した報道番組において、原告X作成のウエブサイト上に掲載のXの友人である元デンバー総領事であったAの肖像写真を、XおよびAに無断で、ウエブサイトから採り、放送した。
Xは、Aの肖像写真は、著作物であるとし、Xの著作権侵害であるとし、損害賠償等を求めて訴えた。すなわち、Xは、Yに対し、写真の著作権(著作権法21条の複製権、同23条の公衆送信権)及び著作者人格権(同法19条の氏名表示権、同法20条の同一性性保持権)を侵害されたとして、

  1. 4521万円の損害賠償
  2. 上記写真の複製・公衆送信の差止め(同法112条1項)
  3. 上記写真及び上記写真が撮影された録画テープの廃棄(同法112条1項)
  4. 被害回復措置としての謝罪放送及び謝罪広告(同法115条)

を求めた。

東京地裁(三村量一裁判長、松岡千帆、大須賀寛之裁判官)は、次のように判断した。

  1. 被告が本件著作物(Aの同意を得て撮影されたAの肖像写真)が使用された各番組を原告Xの同意を得ずに公衆送信する行為は、公衆送信権の侵害である。
  2. 侵害による損害額は、キー局となる被告Yが1回公衆送信(放送)し、ネット局である各地方ネットワーク局が同時に公衆送信(放送)するに当たり、5万円を著作権法114条3項の損害額とする。5万円×12回=60万円
  3. 被告Yの公衆送信及び地方ネットワーク局の公衆送信におけるXの著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)侵害による損害額(慰謝料)は、10万円である。
  4. 弁護士費用は、30万円である。合計100万円の損害賠償を命じた。

Aの写真を複製し、又は公衆送信してはならない。原告のその余の請求を棄却する。

米国在住の原告であるからか4521万円の請求を行った。だが判決は、100万円であった。被告は著作権法41条時事の事件の報道である、との主張をしたか。

ヤフー電子掲示板発信者事件

インターネット上の掲示板に記載された情報で、名誉、プライバシー、名誉感情を傷つけられたとして、プロバイダ責任制限法により発信者情報開示が認容され、損害賠償請求は棄却された事例。

東京地裁平成16年11月24日判決(平成15年(ワ)第6540号、判タ1205号265頁)

原告Xは、田中次郎である。被告Yは、ヤフー株式会社である。

Yは、電気通信事業法に基づく一般第2種電気通信事業等を行う株式会社で、インターネット上で、「Yahoo!掲示板」を設営している。この掲示板に投稿するには、利用者は、Yに対して、住所氏名と「Yhoo!JAPAN ID」とパスワードを申告、YからIDが付与されることが必要である。利用者が掲示板に投稿しても、申告した住所氏名は表示されない。IDを取得した利用者は、プロフィールを公開することが可能で、これに本名真実の住所などを公開する必要もない。

 Xは、何者かによって、自己の名前のイニシヤルJとXの苗字のローマ字記載を連結した(j.tanaka.仮名)を取得され、同IDを使用してYが提供するサービスの1つ、公開プロフイールに、Xが持っている携帯電話番号が記載され、職業欄に知的障害者、住所欄は、精神病院隔離病棟などと記載され、Yが運営する掲示板にも、同IDを使用して携帯電話番号が書き込まれていた。さらに、他のID(bu)を使用して掲示板に、j.tanaka を侮辱する投稿がなされ、buから自己のIDに侮辱的な電子メールが送付された。
 そこで、Xは、各ID(j.tanaka,bu)を使用して、投稿等を行った者の発信者情報の開示を請求し、Yが、Xから前記投稿等の削除要求を受けながらこれを放置したとして、不法行為に基づく損害賠償請求をした(Yは、1週間後削除した)。
 Yは、電子メールは、プロバイダ責任制限法4条1項の特定電気通信による情報に該当しない、前記投稿の1部は、Y運営の掲示板へのものでない、j.tanakaは、個人として特定できないからXの名誉を毀損をしない、携帯電話番号は一般に公開されていないから、プライバシー侵害は不成立と主張した。

[東京地裁]
民事第5部の長秀之裁判長は、次のように判断した。

  1. 本件投稿等及び本件メールは、「特定電気通信による」情報にあたるか、について。
    プロバイダ責任制限法2条1号「特定電気通信」とは、不特定多数の者によって、受信されることを目的とする電気通信をいうから、「投稿」は、特定電気通信に当たるが、電子メールは、当たらない。
  2. 各投稿は、いずれもYが運営する掲示板に投稿されたものであり、職業欄に知的障害者、住所欄に精神病院隔離病棟などと記載するのは、Xへの名誉毀損であるとした。
  3. 上記掲示板に、個人名、携帯電話の電話番号、またj.tanakaと携帯電話番号を併記したことは、プライバシー侵害に当たるとした。 これにより、上記各投稿の発信者情報の開示を命じた。
  4. 損害賠償請求については、Yが、Xからの削除請求があってから1週間後に削除しており、遅きに失したと言えない、として、棄却した。

[判決主文]

  1. 被告は、原告に対し、別紙侵害情報目録記載1の1、1の5の各公開プロフイール並びに同目録記載1の2,1の3の1,1の4の1及び2,1の6,2の1の1,2の1の3ないし6,2の2の2及び3の各投稿に係る者の氏名又は名称、住所、発信者の電子メールアドレス、上記各公開プロフイール及び上記投稿に係るIPアドレス、同IPアドレスを割り当てられた電気通信設備から被告の用いる特定電気通信設備に上記各公開プロフイール及び上記各投稿が送信された年月日及び時刻の発信者情報を開示せよ。
  2. 原告のその余の請求を棄却する。(あと訴訟費用は省略)
電子掲示板への投稿、電子メールは「特定電気通信」に当たるか。

2005年

エステックサロン対楽天仮処分事件

発信者情報開示請求権を被保全権利とする発信者情報の開示を命ずる断行の仮処分が認められた事例である。

東京地裁平成17年1月21日決定(平成16年(モ)第54824号判時1894号35頁)
東京地裁平成16年9月22日決定(平成16年(ヨ)第2963号判時1894号40頁)

債権者Xは、A又はエステキューズ及びBの名称で、エステックサロンの経営等を業とする株式会社である。
債務者Y(楽天株式会社)は、各種マーケッテイング業務の遂行及びコンサルテイング等を業とし、インフォーシークレンタル掲示板という電子掲示板を開設、インターネットサービスを提供している。

インフォシークレンタル掲示板に、「ベルボーというサポーターが、全部で20万円もするにかかわらず、開封してみると紙1枚だけでどういう仕組みで痩せられるかのか等について全く掲載されておらず、グルメッツという食品に至っては詳しい成分の記載もなく、こんな怪しい商品は今まで見たことがない」といった記事が掲載された(ベルボーもグルメッツもXが販売している商品である。)。
Xは、Yに対して、Yの電子掲示板に対する投稿により、名誉を毀損されたとして、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報開示に関する法律(以下、プロバイダ責任制限法)4条1項の発信者情報開示請求権を被保全権利として、同投稿にかかるIPアドレス等の開示を求めた。

[平成16年原決定]
平成16年9月22日東京地裁は、Xの申立の内、別紙記事目録1記載番号15(タイトル、返品について),97(まとめて返事),143(Aやめました),178(現社員です),別紙記事目録2記載番号14(最悪でした)については、理由があるとして、これを認容し、その余の申立は、被保全権利の疎明を欠くとして、これを却下した。債務者Yが保全異議を申し立てた。

[平成17年本決定]
民事9部大橋寛明裁判長は、別紙記事目録1掲載番号178及び同目録2掲載番号14に係る発信者情報の開示を命じた部分については、被保全権利の疎明があるとはいえず、不当であるから、これを取消し、その余の部分は正当であるからこれを認可し、債権者の仮処分命令申立は、上記取消に係る部分につきこれを却下した。

電子掲示板においては、化粧品、健康食品などの商品、サービスへの悪口、非難、批評があり、これに対し、信用毀損、名誉毀損で対抗する事例が多い。

マンション建設業者対電子掲示板事件

マンション建設業者が、電子掲示板の書込みにより名誉等の権利を侵害されたとして、ネット運営会社に不法行為に基づく損害賠償請求、書込の削除請求、発信者の情報開示請求をし、いずれも棄却された事例である。

名古屋地裁平成17年1月21日判決(平成16年(ワ)第3336号、判時1893号75頁)

 原告Xは、木材防腐処理業等を目的とする甲野木材防腐株式会社である。
被告Yは、インターネットの運営等を目的とする株式会社である。

Xは、東京都豊島区にマンションを建設することを計画しているが、附近住民により、反対運動がなされていた。このような状況下で、Yの運営する電子掲示板に、「(1)投稿日、2004/6/15/7:32、(2)投稿者kounomokuzai-shaco-otsuyama、(3)題名 なめとんか? (4)今更、ワンルームマンション、誤った新規事業、最低。」と書き込まれていた。

Xは、

  1. 不法行為に基づく損害賠償請求
  2. 条理上の削除請求権に基づく書き込みの削除
  3. プロバイダ責任制限法4条に基づく発信者情報の開示

を求めた。

[名古屋地裁]
民事8部の黒岩巳敏裁判長は、

  1. 原告の請求をいずれも棄却する。
  2. 訴訟費用は原告の負担とする。

と判決した。

 この電子掲示板の投稿者は、kounoで、原告の名を冒用しているが、内容から通常の一般人は、この書き込みの主体がXの代表者であると誤認することはない。本件書き込みがXの名誉、信用、プライバシー権及び人格権を侵害したと評価できない。したがって、本件書き込みがXの権利を侵害するのとは認められず、その余の点を判断するまでもなく、理由がないとした。

この事件は、珍しく、発信者情報を求めた原告が敗訴しているが、裁判所は、インターネットによる原告への攻撃は、軽微であると判断したのであろうか。

2ちゃんねる削除義務放置事件

インターネットの運営者はどんな責任があるかが論ぜられた事件である。

東京高裁平成17年3月3日判決(平成16(ネ)第2067号、判時1893号126頁。)
東京地裁平成16年3月11日判決(平成15年(ワ)第15526号)

 インターネットの運営者は、どういう責任を負うか、という事件である。
書籍に掲載された対談記事(原告ら2名が著作権共有)が、ある利用者によりそのまま「2ちゃんねる」に転載され、送信可能化され、アクセスした者に自動公衆送信された。
対談者の1人が、「2ちゃんねる」の運営者に対し、「運営者は著作権侵害を行っている」との警告をし、対談記事の削除を求めて、訴えた。
 原告は、対談記事の発言者、被告は、「2ちゃんねる」の運営者である。

[東京地裁]

  1. 裁判所は、自動公衆送信又は送信可能化差止請求について、相手方が、現に侵害行為を行う主体となっているか、あるいは侵害行為を主体として行うおそれのある者に限られる。被告は、書き込みの内容をチェックしたり、改変したりすることはできず、運営者である被告は、侵害行為を行う主体でない、とした。
  2. 発言者から削除要請があるにも拘わらず、ことさら電子掲示板設置者が要請を拒絶したりすれば、著作権侵害の主体と観念され、差止請求も許容されようが、本件ではその事情はない。プロバイダー責任制限法に照らし、本件では、被告が送信防止装置を講じた場合、同法による発信者に対する損害賠償責任が免責される場合に当たらない、発信者から責任追及されるおそれあり、また被告に送信可能化又は自動公衆送信を止める義務なし。

 原告敗訴。原告控訴。

[東京高裁]
2審では、逆転し、原告が勝訴した。
(1),電子掲示板の設置者は、書込まれた発言が著作権侵害(公衆送信権侵害)に当たるとき、侵害行為を放置しているときは、放置自体が著作権侵害行為と評価すべき場合がある。電子掲示板の運営者は、著作権侵害となる書込みがあったと認識した場合、適切な是正措置を速やかにとる義務がある。著作権侵害が極めて明白な場合、ただちに削除するなど、速やかに対処すべきである。本件の場合、被告は、本件発言がデッドコピーで、著作権侵害と容易に理解し得た。発言者に照会もせず、是正措置をとらなかった。被告は、故意過失により著作権侵害に加担したと評価できる。原告著作権者が、著作権侵害者の実名、メールアドレス等発信者情報を得ることはできず、削除要請が容易であるとは到底言えない。被告は、著作権の侵害者である、とした。

山本隆司「コピライト」2004年8月号20頁は、1審東京地裁判決に対して、17頁にわたり批判的に判例紹介をしている。田中豊も「コピライト」同号7頁(講演録)において東京地裁平成16年3月11日判決に批判的である。草地邦晴・知財管理55巻13号2007頁は、2審東京高裁判決を「貴重な事例を提供するもの」として、好意的である。

アクセス制御機能事件(刑事)

プログラムの瑕疵や不備のため識別符号を入力する以外の方法によってもこれを入力したときと同じ特定利用できることをもって、直ちに識別符号の入力により特定利用の制限を解除する機能がアクセス制御機能に該当しなくなり、合法というわけではないとし、執行猶予付8月の懲役に処せられという事例である。

東京地裁平成17年3月25日判決(平成16年特(わ)第752号、判時1899号155頁)

「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」とは、

  1. 不正アクセス行為を禁止し、
  2. 電気通信回線を通じて行われる電子計算機に係る犯罪の防止、
  3. アクセス制御機能により実現される電気通信に関する秩序維持を図り、

もって高度情報通信社会の健全な発展に寄与することを目的とする法律である(1条)。

この法律は、「アクセス制御機能」を次のように定義している(2条3項)。
(特定電子計算機の特定利用を自動的に制御するために当該特定利用に係るアクセス管理者によって当該特定電子計算機又は当該特定電子計算機に電気通信回線を介して接続された他の特定電子計算機に付加されている機能であって、当該特定利用をしようとする者により当該機能を有する特定電子計算機に入力された符号が当該特定利用に係る識別符号であることを確認して、当該特定利用の制限の全部又は一部を解除するものをいう)、と定義してる(条文中の括弧書きを省略した)。この法律は、不正アクセス行為をしてはならない(3条1項)、として2項に3類型を掲げる。

1号)、アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気津信回線を通じて当該アクセス制御機能に係る他人の識別符号を入力して当該特定電子計算機を作動させ、当該アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為。

2号)、アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気津信回線を通じて当該アクセス制御機能による特定利用の制限を免れることができる情報又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為。

3号)電気通信回線を介して接続された他の特定電子計算機が有するアクセス制御機能によりその特定利用を制限されている特定電子計算機に電気津信回線を通じてその制限を免れることができる情報又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されれている特定利用をし得る状態にさせる行為。

 被告人は、平成15年11月6日午後11時23分55秒頃から同月8日午後3時47分50秒頃まで、合計7回にわたり、京都市内ほか数カ所において、パーソナルコンピュータから電気通信回線を通じて、アクセス管理権者である大阪市中央区安土町甲野ビル3階乙山株式会社が大阪市内に設置した「アクセス制御機能を有する特定電子計算機であるサーバーコンピュータ」に当該アクセス制御機能による特定利用の制限を免れることができる指令を入力して上記特定電子計算機を作動させ、上記アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせた。
 これは、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」3条2項2号違反に当たるとして、起訴された。被告人はコンピュータシステムなどで、本来の手順を踏まずにアクセスが可能になるような保護設計上の欠陥を利用したのであった。
 弁護人は、被告人のアクセス行為は、「アクセス制御機能」のない電子計算機に対するものであったから、不正アクセス禁止法3条2項2号に当たらない。2,被告人が、本件アクセスに及んだのは、コンピュータの脆弱性について、ボランテイア的問題提起であって、違法性は阻却される、3、仮にアクセス制御機能が存在していたとしても、被告人はそれを知らず、アクセス行為が禁止行為との認識がないとして、無罪を主張した。

東京地裁刑事10部青柳勤裁判長は、次のように判断した。

  1. 「アクセス制御機能」の有無は、プロトコル(コンピュータ間のデータ通信の規約)ごとでなく、特定電子計算機ごとに判断すべきである。特定電子計算機の特定利用のうち一部がアクセス制御機能によって制限されている場合であっても、その特定電子計算機はアクセス制御機能があると解すべきである、とした。
  2. 本件の各特定利用ができたのは、プログラムないし設定上の瑕疵があったためで、アクセス管理者が本件アクセス行為のような特定利用を誰にでも認めていたとはいえない。
  3. 被告人のアクセス行為が、サーバーの脆弱性に関する正当な問題指摘活動には当たらない。

とした。

[判決主文]
被告人を懲役8月に処する。この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。訴訟費用は全部被告人の負担とする。

不正アクセス行為の禁止等に関する法律違反の刑事事件判決は、多くない。
これは、珍しい判決例と思われる。

ナップスター型音楽ファイル交換事件

インターネットを使って音楽を送受信してもかまわないか。

東京高裁平成17年3月31日判決(判例集未登載)
東京地裁平成15年1月29日中間判決(平成14年(ワ)第4237号。判時1810号29頁、判タ1113号113頁) - 東京地裁平成15年12月17日判決(終局判決、判タ1145号102頁判時1845号36頁)
仮処分、東京地裁平成14年4月11日決定(判タ1092号110頁)

 インターネット上のピア・ツー・ピア(P2P)方式の電子ファイル交換サービスにおいて、ユーザーの間で、音楽著作物を複製して電子ファイルの送受信が行われる。
 これによる著作権侵害が起きる場合において、このサービスの提供者は、どういう責任を負うか。

 被告Y1は、ピアー・ツー・ピア技術を用い、中央サーバー(セントラルポイント、P2Pネトワークの方式の1つでP2Pネットワークを見つけやすくするための入り口として働くホストのこと)を設置し、インターネットを経由して、利用者のパソコンに蔵置されている電子ファイルから他の利用者が好みの音楽のものを選択して、無料でダウンロードできる「ファイルローグ」事業を行っている業者である。
 被告Y2は、Y1の代表者。
 原告Xは、日本音楽著作権協会(JASRAC)である。
原告Xは、被告らに、原告の管理著作物を複製したMP3ファイルを本件サービスにおける送受信の対象とすることの差止めを求めるとともに、Yら2名に対して2億1000万余円の損害賠償金の連帯支払を求めて訴えた。

「東京地裁」 次の点が争われた。

  1. ハイブリッド型P2Pファイル交換サービスのセンターサーバーの提供者が、ユーザーのパソコン間で、直接行われる電子ファイルの送受信の「主体」であるか。
  2. 差止めの対象となる行為の特定方法。
  3. 著作権侵害の主体とプロバイダ責任制限法3条1項「情報の発信者」の関係。
  4. 損害賠償額の認定。

東京地裁平成15年1月29日中間判決および平成15年12月17日判決の結果は、次の通りである。

  1. 1審被告Y1が運営する本件サービスにおいて、Xに無断でXの管理著作物を複製した電子ファイルをユーザーのパソコンの共有フォルダに蔵置した状態で、本件サーバーに接続させる行為は、Xの著作権侵害であり、Y1がその著作権侵害の主体である。
  2. 「送信型パソコンから被告サーバーに送信されたファイル情報のうち、ファイル名または、フォルダ名のいずれかに本件管理著作物の『原題名』を表示する文字及び『アーテイスト』を表示する文字(漢字、ひらがな、片仮名並びにアルファベットの大文字、小文字等の表記方法を問わない。姓又は名についてはいずれか一方のみの表記を含む)の双方が表記されたファイル情報に関連つけて、当該ファイル情報に係るMP3ファイルの送受信行為として特定するのが、最も実効性のある方法である。」
  3. Yらは、自らがプロバイダ責任制限法上のプロバイダに該当するので、損害賠償責任を免れると主張したが、Y1は、同法2条4号所定の「発信者」に該当し、同法3条1項による損害賠償責任の免責は適用されない。
  4. 本件サービスにおいて、本件各MP3ファイルが送信可能化ないし自動公衆送信されることによって、原告の受けた使用料相当額の損害額については、特段の事情のないかぎり、本件使用料規程の定める額を参酌して算定するのが合理的である。

しかし、諸事情を考慮し、著作権法114条の4により、2億7932万8000円の概ね10分の1に相当する3000万円(平成3年11月1日から平成14年2月28日までについては概ね10分の1に相当する2200万円)を使用料相当損害額とした。
 裁判所は、JASRAC等のもつ「自動公衆送信権」「送信可能化権」の侵害であるとして損害賠償を命じている。
 このように被告のようなファイル交換サービス事業者は、単に電子ファイルの送受信に必要なファイル情報を提供しているに過ぎないが、管理性があり、営業上の利益を得ていることから、著作権、著作隣接権の侵害行為の主体であるとした。

関係者にとって重要な判例である。

[参考文献]
平嶋竜太・ファイルローグ事件(中間判決)「サイバー判例解説」(商事法務・2003年)60頁。富岡英次・判タ1154号188頁。
田中豊編「判例で見る音楽著作権訴訟の論点60講(日本評論社・2010年)209頁、356頁、176頁(市村直也執筆)。紋谷暢男編「JASRAC概論」151頁以下、特に185頁(執筆田中豊)。

IP FIRM商標事件

「IP FIRM」なる商標は、商標法3条1項6号に該当するとされて事例である。

東京地裁平成17年6月21日判決(平成17年(ワ)第768号、判時1913号146頁)
(控訴されたが控訴後和解)

「IPアドレス」といえば、Internet Protocol address のことで、IPは、Intellectual l Property 知的財産権のことだと連想する人も多い。

原告Xは、IP国際技術特許事務所を経営する弁理士で、登録商標「IP FIRM」(指定役務 第42類「工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務、訴訟事件その他に関する法律事務、著作権の利用に関する契約の代理又は媒介」)の商標権者である。
被告Yは、東京IP特許事務所を経営する弁理士である。XYは平成15年11月迄、共同で特許事務所を経営し、同年12月、共同経営を解消した。

平成15年12月、Yは、「東京IP特許事務所」として新たな事務所を開き、「TOKYO IP FIRM」の欧文字、横書きで、IPの文字はデフォルメ化した標章(以下、被告標章1)を付した英文レターヘッドの使用を開始し、平成16年11月頃から、「TOKYO IP FIRM」の欧文字を通常の書体で、横書きにしたもの(以下、被告標章2)、ネットの事務所のホームページにおいて掲載した。
Xは、Yが被告標章1,2を広告等に付して使用する行為は、Xの有する商標権侵害であると主張、Y標章1、2の使用差止め及びY標章を付した名刺等の廃棄を求め訴えた。

[東京地裁]
民事46部の設楽隆一裁判長は、原告の請求をいずれも棄却した。
Xの商標は、第42類「工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務、訴訟事件その他に関する法律事務、著作権の利用に関する契約の代理又は媒介」の指定役務を提供する事務所であることを一般的に説明しているにすぎず、需要者等において、指定役務について、他人の指定役務と識別するための標識であるとは認識し得ないものであるから、商標法3条1項6号に該当し、XのYに対するX商標権に基づく権利行使は、商標法39条が準用する特許法104条の3の規定により許されないとし、Xの請求を棄却した。

本来、商標登録を受けるべきでない、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」であった、そのため、権利行使できない、としたのである。知財高裁平成21年9月8日判決(アイデー事件)も商標法3条1項6号に当たるとしている。2009-2参照。

弁護士発信者情報請求事件

弁護士の名誉を毀損する情報がホームページに掲載され、インターネット・サービス・プロバイダへ発信者情報の開示請求をし、認められた事件である。

東京地裁平成17年8月29日判決(平成17年(ワ)第1876号判タ1200号286頁)

原告Xは、第2東京弁護士会に所属する弁護士である。
被告Y(ヤフー株式会社)は、プロバイダ業等を営む株式会社である。

  1. 平成16年11月1日から同月26日の間、Yのサーバー上に開設しているホームページに、「私たちにとってXらは、お金のために、何の関係もない私たちを利用し、沢山の幸せを奪い取るという精神的な虐待をした、恐喝犯でしかありません」等の文章(本件各侵害情報)が掲載された。
  2. Xは、平成16年11月5日付けで、Yに対し、発信者情報の開示を求めた。
  3. Yは、本件ホームページの開設者に、平成16年11月16日、本件発信者情報をXへ開示することについて意見照会をした。同年11月23日、開設者は、Xへ、同意しないと返答した。
  4. Yは、平成16年11月27日、本件ホームページの掲載を一時的に停止し、同月30日、Xに対し、直ちに開示請求に応じられない、と返答した。

 平成17年2月2日、Xは、Yへ、発信者情報を開示せよと訴えた。

[東京地裁]
第31民事部金子順一裁判長は、次のように判断した。

  1. Yは、別紙発信者情報のうち、別紙発信者情報目録記載の3、4,5の各情報のみを保有している。
  2. 本件各侵害情報は、プロバイダ責任制限法4条1項1号の権利侵害要件を具備している。
  3. 原告Xには、同法4条1項2号所定の本件各侵害情報の開示を受けるべき正当な理由がある。

[判決主文]

  1. 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載3ないし5の各情報を開示せよ。
  2. 原告のその余の請求を棄却する。
  3. (省略)
原告弁護士が、発信者情報、誰が書いたか、知りたいという気持ちもわかる。

歩行女性無断撮影ウエブ掲載事件

公道を歩行中の最先端ファッション着用女性を無断撮影し、ウエブサイトに無断掲載した行為は、肖像権侵害である。

東京地裁平成17年9月27日判決平成17年(ワ)第18202号判時1917号101頁

原告女性Xは、著名なデザイナードルチェ・アンド・ガッパーナによる、胸部に「SEX」と大きい赤い文字のある上着を着て、銀座界隈を歩行していた。
被告Y1会社は、通信ネットワークを利用した衣料品の製造、販売、リサイクル輸出入に関する各種情報を提供する会社。
被告Y2会社は、日本のファッション向上のため調査研究等を目的とする財団法人。

Y1会社の従業員が、歩行中のXを無断撮影し、Y1とY2が共同で開設しているウエブページに、掲載した。しばらくして、2ちゃんねるの掲示板サイトへ、Xへの誹謗中傷が書き込まれ、被告らのサイトへリンクが張られた。Xは、Yらに抗議し、サイトは削除されたが、別の第三者により、写真が複製され、リンクが張られ、Xへの誹謗中傷が続いた。

Xは、Yらを訴え、

  1. 写真撮影とサイトへの掲載行為は、肖像権侵害である。
  2. Yらの行為には、表現の自由の行使としての違法性阻却事由がない。
  3. 訴外第三者による誹謗中傷行為によるXの損害との間に因果関係がある

と主張した。

東京地裁は、1.2.を認め、慰藉料30万円、弁護士費用5万円、合計35万円の支払いをYらに命じた。判決中、「原告が公道上を歩いているとしても、その周囲の人に一時的に認識され得るにすぎないが、本件写真が撮影されることにより原告の容貌等が記録され、これが本件サイトに掲載されることにより、上記の限られた範囲を超えて人々に知られることになる。」と述べている。

肖像権の問題であるが、天下の公道を歩いているから、撮影とそのネット配信が自由であるとはいえない。判決を支持する。

[参考文献]
大家重夫「肖像権 改訂新版」(太田出版・2011年)122頁、177頁。

YOLニュース見出し事件

インターネット用のニュース記事の見出しは、無断でインターネットに転載できるかということを論じた判決で、1審、2審の判断が分かれた事件である。

知財高裁平成17年10月6日判決(平成17年(ネ)第10049号)
東京地裁平成16年3月24日判決(平成14年(ワ)第28035号、判時1857号108頁判タ1175号281頁)

原告X(読売新聞)は、日刊紙発行を業とする新聞社であるが、ホームページ(Yomiuri On-Line)も運営し、ニュース記事(YOL記事)を載せ、記事に見出しを付している。
被告は、デジタルコンテンツの企画・制作等を業とする有限会社で、インターネット上で、「ライントピックス」というサービスを提供している。

「ライントピックス」とは、自ら運営するウエブサイト上に、ヤフー株式会社の開設するウエブサイト「Yahoo! Japan 」上のニュース記事の見出しと同一の見出しを掲載し、その見出しをクリックすると、見出しに対応するニュース記事本文が表示されるというサービスが提供される。このサービス希望者は、Yサイトにユーザー登録し、指定された手続きを経てYサイトからデータをダウンロードし、自己の管理するウエブサイトニライントピックスを表示させることができる仕組みになっている。
 Xとヤフー株式会社は、Yomiuri On-Line上の主要なニュースの使用を許諾するとの内容の契約を結んでおり、Yahoo! ニュースには、YOL見出しと同一の記事見出しが表示され、同記事見出しをリンクするとYOL記事と同一の記事が表示される。

 Yは、Yahoo! ニュースの記事の中から、重要度関心度の高いニュースを選択し、

  1. Yのライントピックスにおいて、Yahooニュースへリンクを張り、リンクボタンを当該記事見出し(その中にYOL見出しが含まれる)と同一又は実質的に同一の語句とし、
  2. ライントピックス登録ユーザーにLTリンク見出し及びリンク先データを送信して、ユーザーのホームページ上にも、「Yahoo!ニュース」にリンクしたLTリンク見出しが表示されるようにし、

定期的に更新していた。Yは、Xには無断で、YOL見出しを利用したことになった。

Xは、主位的にYの行為は、Xの著作権侵害、予備的に、仮にXの記事見出しに著作物性が認められないとしても、その無断複製等の行為は、不法行為であるとし、Yに対し、記事見出しの複製等の差止等及び損害賠償を求めて訴えた。

[東京地裁判決]

東京地裁民事29部飯村敏明裁判長は、

  1. YOL見出しは、ありふれたもので、創作性が認められず、YOL記事で記載された事実を抜き出して記述したもので、著作権法10条2項の「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」に当たるとして、著作物性を否定、著作権侵害を否定した。
  2. 著作権法等によって排他的な権利が認められない以上、第三者が利用することは自由で、不正に自らの利益を図る目的により利用した場合あるいはXに損害を加える目的により利用する等の特段の事情のない限り、インターネット上に公開された情報を利用することは、合法であるとし、不法行為を構成しないとして、Xの請求を棄却した。

[知財高裁判決]

控訴審において、控訴人Xは、

  1. 著作権侵害(YOL見出しの複製権侵害及び公衆送信権侵害、並びにYOL記事の複製権侵害)を理由とする差止請求及び損害賠償請求(使用料相当額480万円)
  2. 不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為を理由とする差止請求及び損害賠償請求(使用料相当額480万円)
  3. 不法行為を理由とする差止請求及び損害賠償請求(使用料相当額480万円のほか無形侵害1000万円、弁護士費用1000万円、合計2480万円)

の請求をした。
知財高裁4部塚原朋一裁判長は、1.YOL見出しの著作物性について、おおむね原審と同一の判断をした。

2.不法行為について、これを肯定した。次のように述べた。
「本件YOL見出しは、控訴人の多大の労力、費用をかけた報道機関としての一連の活動が結実したものといえること、著作権法による保護の下にあるとまでは認められないものの、相応の苦労・工夫により作成されたものであって.簡潔な表現により、それ自体から報道される事件等のニュースの概要について、簡潔な表現により、それ自体から報道される事件等のニュースの概要について一応の理解ができるようになっていること、YOL見出しのみでも有料での取引対象とされるなど独立した価値を有するものとして扱われている実情があることなどに照らせば、YOL見出しは、法的保護に値する利益となり得るものというべきである。」そう述べた上で、「一方、前認定の事実によれば、被控訴人は、控訴人に無断で、営利の目的をもって、かつ、反復継続して、しかも、YOL見出しが作成されて間もないいわば情報の鮮度が高い時期に、YOL見出し及びYOL記事に依拠して、特段の労力を要することもなくこれらをデッドコピーないし実質的にデッドコピーしてLTリンク見出しを作成し、これらを自らのホームページ上のLT表示部分のみならず、2万サイト程度にも及ぶ設置登録ユーザーのホームページ上のLT表示部分に表示させるなど、実質的にLTリンク見出しを配信しているものであって、このようなライントピックスが控訴人のYOL見出しに関する業務ろ競合する面があることも否定できないものである。そうすると、被控訴人のライントピックスサービスとしての一連の行為は、社会的に許容される限度を超えたものであって、控訴人の法的保護に値する利益を違法に侵害したものとして不法行為を構成する」

非常に難しい問題であるが、筆者は2審判決を支持したい。

[参考文献]
前田哲男・著作権判例百選「第4版」10頁。茶園成樹・知財管理56巻7号1063頁。蘆立順美・コピライト521号60頁。奥邨弘司・著作権研究31号81頁。

「録画ネット」事件

日本のテレビ番組をインターネットにより、海外の日本人が視聴できる仕組みが、著作隣接権侵害とされた事例である。

知財高裁平成17年11月15日決定(平成17年(ラ)第10007号)
東京地裁平成17年5月31日決定(判タ1187号335頁)
東京地裁平成16年10月7日決定(平成16年(モ)第15793号判時1895号120頁判タ1187号335頁)

 海外諸国へ転勤し、その外国で働く日本人は、日本で放映されている日本のテレビ番組をどうしても観たいと思っている。その希望を叶えたいとAという事業者が考えた。
A(有限会社エフエービジョン)は、「録画ネット」の名称で、インターネット回線を通じて、テレビ番組の受信・録画機能を有するパソコンを操作して、日本で録画されたファイルを、海外の邦人の自宅等のパソコンに転送できる環境を提供する方法により、海外など遠隔地居住の日本人が日本のテレビ番組を視聴できるサービスを提供しようとした。

サービスとは、次の通りである。

  1. Aが利用者ごとに1台づつ販売したテレビチューナー付のパソコンをAの事務所内に設置し、テレビアンテナを接続するなどして、放送番組を受信可能な状態にする。
  2. 各利用者はインターネットを通じて、テレビパソコンを操作して録画予約し、録画されたファイルを海外の自宅のパソコンへ転送して貰う。

放送事業者(NHKなど)は、Aの行為は、NHKなどの放送を複製するもので、放送事業者の有する著作隣接権侵害(放送に係る音又は映像の複製権)(著作権法98条)であるとして、本件サービスによる放送の複製の差止を求める仮処分を求めた。

争点は、次の通り。

  1. 放送事業者側の主張。
    1. 本件サービスは、専ら利用者に放送番組をその無断複製物により視聴させるおのだ。
    2. 放送番組の複製は、Aの管理・支配下で行われている。
    3. このサービスで、Aは、直接利益を得ている。複製主体は、Aと評価すべきである。
  2. Aの主張。
    1. 本件サービスは、テレビパソコンの販売とそのハウジングサービス(寄託、インターネット接続、保守)であり、利用者は、自己のパソコンで、適法な私的複製(著作権法30条)をしている。
    2. 本件サービスにおける放送番組の複製行為は、Aの管理・支配下で行われていない。
    3. Aが得ているのは、テレビパソコンの対価とその保守管理費用で、複製のサービスによる対価でない。要するに複製主体は、利用者であるとした。

東京地方裁判所民事40部賴晋一裁判官は、平成16年10月7日、NHKの請求を認容する仮処分決定をした。
「本件サービスにおける複製は、債務者の強い管理・支配下において行われており、利用者が管理・支配する程度はきわめて弱い」「より具体的にいえば、本件サービスは、解約時にテレビパソコンのハードウエアの返還を受けられるという点を除き、実質的に、債務者による録画代行サービスと何ら変わりがない。債務者が主張する、テレビパソコンの販売とその保守管理というのは、本件サービスの一部を捉えたものにすぎず、サービス全体の本質とはいえない。」「本件サービスにおいて、複製の主体は債務者であると評価すべきである」とした。

Aは、この決定に対し、異議を申し立てたが、上級審は、この仮処分を認可する決定を行い、東京地裁平成16年10月7日決定を是認した。カラオケ法理(ア、管理支配の帰属、イ、利用による利益の帰属)によって、A(抗告人)は、敗訴した。

この一連の判決は重要なものである。

[参考文献]
相澤英孝「知的財産法判例の動き」(『ジュリスト』1313号)276頁は、「特定の記録媒体から利用者の機器への送信は公衆送信とはいえないので、記録媒体を管理している者の行為を複製権の侵害とすることによって著作隣接権の効力を及ぼしたものと理解される。」とする。

2006年

スメルゲット事件

ホームページ上の広告販売用商品写真について、1審は著作物性を認めず、2審は、著作物性を認め、1万円の損害賠償を認めた事例である。

知財高裁平成18年3月29日判決(平成17年(ネ)第10094号判タ1234号295頁)
横浜地裁平成17年5月17日判決(平成16年(ワ)第2788号)

平成13年頃、Aは、シックスハウス症候群対策品である「スメルゲット」及び「ホルムゲット」の広告販売をインターネット上で行っていて、ホームページにおいて、その商品の写真(本件写真)を掲載し、「川崎市に住むKさん一家は、県営住宅に当選し、新築の団地に引っ越ししました。すると間もなく6歳の娘がアトピー性皮膚炎にかかり、極度のアレルギー体質となってしまいました」といった文章を掲載した。
インターネット上で、商品販売を行うY1(株式会社プラスマークス)及び被告Y2(有限会社)は、平成14年11月から平成15年6月27日まで、本件写真を文章とともにAに無断で、自社のホームページに掲載した。
平成16年、Aは、X(有限会社トライアル)へ営業権を譲渡した。
Xは、Yらに対し、本件写真と文章について、複製権ないし翻案権を侵害したとして、損害賠償60万円及び慰藉料150万円を求めて訴えた。

[横浜地裁]
1審は、本件写真の著作物性および文章の著作物性を認めず、請求棄却。

[知財高裁]
2審の塚原朋一裁判長は、

  1. 本件写真の著作物性を認め、
  2. 文章については、創作性がない部分について同一性があるが、各文章について、複製権ないし翻案権について侵害はない、

とし、YらはXへ、連帯して1万円及びこれに対する平成15年6月28日から支払済みまでの年5分の金員を支払えとの判決を下した。

1審と2審の判断が異なった事例である。

[参考文献]三浦正広・コピライト2006年9月号43頁。

個人情報流出事件

インターネット接続サービスの加入者の個人情報が外部に流出したことにつき、サービス業者に不正アクセス防止につき過失があるとして、会員のサービス業者に対する慰藉料請求が認容された事例である。

大阪地裁平成18年5月19日判決(平成16年(ワ)第5597号(甲事件)・同17年(ワ)第4441号(乙事件)、判時1948号122頁)

原告は、甲事件3名、乙事件2名で、いずれも「Yahoo!BB」という非対称加入者線伝送(ADSL)方式等を用いたインターネット接続サービス及びこれに付随するメールサーバーのレンタル等の総合電気通信サービス(以下、本件サービス)の会員である。
被告Y1は、BBテクノロジー株式会社である。
被告Y2は、ヤフー株式会社である。

Y1Y2は、「Yahoo!BB」の統一名称を用いて、電気通信事業法にいう電気通信事業にあたる本件サービスを顧客に提供している。
原告等は、いずれも平成16年1月までに、被告らそれぞれと本件サービスに係る契約を締結し、本件サービスに入会した。
Bは、Y1へ業務委託先から派遣され、顧客データベースのメンテナンスやY1会社のサーバー群の管理業務に従事していたが、Bの知人Cと共に、顧客データベースに含まれる顧客情報を外部に転送し、Cのハードデスクに保存して不正に取得、この不正取得された顧客情報はCを通じて恐喝の実行犯であるDに渡った。
原告等は、Y1及びY2が個人情報の適切な管理を怠った過失等により、自己の情報をコントロールする権利を侵害されたとして、被告らは、甲事件原告らにそれぞれ各自10万円、被告らは乙事件原告等にそれぞれ、各自10万円支払うよう求めて訴訟を提起した。

[大阪地裁]
民事11部山下郁夫裁判長は、次のように判断した。

  1. Y1は、リモートメインテナンスサーバーを設置し、リモートアクセスを可能にしたが、情報漏洩の危険性に鑑み、必要な範囲に限り、相当な措置を講じてアクセスを許すべきであったこと、Y1は、Bが退職後に知り得た情報を悪用しないように、ユーザー名の削除、パスワードの変更をすべきであったのにBの退職後も長期間これを放置したこと、本件不正取得について、Y1は予見が可能で、結果回避の可能性があった、とした。
  2. しかし、Y2は、Y1と管理している情報の範囲が異なり、利用料の徴収業務、クレジットカード番号の決済情報の保有であって、その管理している顧客情報は、他に流失していないこと、Y2が、Y1の顧客情報を適切に管理監督する義務もないので、Y2は、Xらに対する不法行為責任は、ないとした。
  3. 判決は、Y1は、甲事件原告等それぞれに対し、各自6000円及び遅延利息を支払うよう命じた。また、判決は、Y1は、乙事件原告等それぞれに対し、各自6000円及び遅延利息を支払うよう命じた。6000円の内訳は、各原告等の精神的苦痛に対する慰藉料として、1人当たり5000円、弁護士費用1人当たり1000円である。
判決の慰謝料の金額は、低すぎる。

ワットシステム対東京国税局事件

東京国税局がそのホームページに、原告株式会社のホームページの記載は、事実に反する部分があるとの注意文書を掲載し、公表したことは公務員による適切な職務行為であり、名誉毀損、信用毀損による不法行為の成立が否定された事例である。

東京地裁平成18年6月6日判決(平成17年(ワ)第11648号(第一事件)・第27297号(第二事件)判時1948号100頁)

原告X1(株式会社ワット)は、平成11年8月設立の株式会社で、

  1. 視聴覚機器、文具事務機器の販売及び輸入
  2. 情報通信、情報処理機器の販売、輸入等及びこれらに附帯する一切のレンタル事業等

を目的としている。

原告X2は、X1の代表取締役である。

X2は、償却資産すべてを対象とした全企業向けのサービスを展開するビジネスモデル(ワットシステム)を考案し、X1において、この事業を取り扱うことを考えた。
X1X2は、この事業が、法人税法、所得税法でどのように取り扱われるか、東京国税局に行き、課税第1部審理課を訪問したり、文書で照会したりした。
X1は、そのホームページに、東京国税局が事前照会に対する回答により、ワットシステムの税務面での効果を承認しているかのような内容の記載を行った。
この記載を見て、東京国税局は、X1又はX2へ、X1のホームページの内容の削除又は訂正を要求するなどし、また、東京国税局のホームページにおいて、「誤解を招くホームページにご注意ください」との見出しで、X1X2の実名を挙げて、X1のホームページの記載中に事実に反する部分があるとの内容の注意文書を掲載し、公表した。

平成17年、X1及びX2は、この公表がXらの名誉・信用を毀損する不法行為であるとし、これにより無形の損害を被たとして損害賠償を求め訴えた。

東京地裁民事48部(水野邦夫裁判長)は、

  1. 本件注意文書の掲載行為について、法律上の根拠は要しない。
  2. X1のホームページの記載内容の真実性について広く、国民に情報提供するという目的は正当である。東京国税局は、一般納税者がX1ホームページ記載内容を真実と誤信、不測の損害発生を防ぐため、X1のホームページの内容が真実に反するとの情報提供の必要があった。
  3. 本件注意文書の内容が摘示する事実について真実性がある。
  4. 本件注意文書を国税局がそのホームページにおいて公表することは、手続保障の精神がみたされ、公務員による適切な職務行為であり、違法性が阻却される。

として、X1及びX2の請求を棄却した。

ホームペ-ジ同士のやりとりで、東京国税局を相手に訴訟提起した珍しい事例である。

有名ホスト電子掲示板名誉毀損事件

有名ホストが電子掲示板になされた書き込みが名誉毀損に当たるとして携帯電話事業会社が発信者情報の開示を命ぜられたが、損害賠償請求は棄却された事例である。

大阪地裁平成18年6月23日判決(平成17年(ワ)第4861号、判タ1222号207頁)

原告Xは、有名ホストである。
被告Yは、携帯電話事業を業とするボーダホン株式会社である。

訴外Aの運営するホームページは、ホストクラブ情報交換を目的とする電子掲示板を包含しているが、ここに、「Xさんは、性病でした。花子うつされた~」などの書き込みがなされた。Xは、Aを相手に平成17年1月27日、大阪地裁に対し、発信者のIPアドレス及び書き込みがなされた日時の情報を開示を求める旨の仮処分を申立て、同年2月10日、仮処分決定を得て、同年3月16日に情報の開示を受けた。この開示で、Xは、書き込みに利用された端末が「j-phoneV402SH」で、IPアドレスは、被告Yが管理しているサーバーであることを知り、平成17年3月17日、Yに対し、書き込みについての発信者情報の開示及び開示までの保存を請求した。

平成17年5月20日、Yは、Xに対し、その発信者情報開示請求が、プロバイダ責任制限法4条1項の要件を充足していると判断できず、請求に応じられないと回答した。
Xは、名誉毀損及びプライバシー権侵害であるとして、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、発信者情報の開示を求めると共に、Yが開示しなかったことによる精神的損害100万円の損害賠償支払を求めて提訴した。

[大阪地裁]
第9民事部の深見敏正裁判長は、本件書き込みは、公共性も公益目的も違法性阻却事由もなく、権利侵害の明白性要件を満たしているとし、発信者情報の開示を命じた。Yの損害賠償責任については、Yに故意や重過失はないとし、これを否定した。

[判決主文]

  1. 被告は、原告に対し、別紙書込目録1及び2記載の各書込の発信者に係る住所及びメールアドレスを開示せよ。
  2. 原告のその余の請求を棄却する。
  3. (省略)
有名ホストが原告として、発信者情報を求めて訴訟するという珍しい事例。

2007年

エステックサロン名簿流出事件

エステックサロン経営社の管理するウエブサイトに送信した個人の氏名、住所、職業、電話番号等が流出し、プライバシー侵害で、経営者が敗訴した事件である。

東京地裁平成19年2月8日判決(平成14(ワ)7790号、平成15(ワ)7975号、平成16年(ワ)8051号、1部認容、1部棄却(控訴)、判時1964号127頁)

被告Yは、エステックサロンを経営する会社である。Yは、インターネット上にウエブサイト等を開設することにし、訴外A社((株)ネオナジー)とサーバーコンピュータのレンタル契約などを締結した。平成11年頃、Yは、ホームページの政策、保守についてもAと契約し、Yは、ホームページの閲覧者から、質問に対する回答を集めるなどして、そのサイトに送信した個人の氏名、住所、職業、電話番号、メールアドレス等の個人情報を保管し、蓄積していた。集積した個人情報は、サーバー内の特定の電子ファイル(本件電子ファイル)に格納され、本件電子ファイルへの第三者からのアクセスを拒否する設定がなされた状態で保管された。Yは、本件電子ファイルにアクセスし、これに格納された個人情報を被告の社内のパソコンに転送し、それを保管していた。

 平成14年3月、年々アクセス数が増加し、サーバーの容量が十分ではなくなったため、Aは、Yの同意を得て、本件ウエブサイトをY専用のサーバーに移設する作業を行った。
その際、本件本件電子ファイルは、インターネット上の一般の利用者が、特定のURLを入力することで自由にアクセスし、閲覧することのできる状態に置かれた。
同年5月26日頃、インターネット上に開設された掲示板「2ちゃんねる」に「大量流出!TBCのずさんな個人情報管理」との表題のもとに5種類のURLと「おなごの個人情報とかスリーサイズが丸見えじゃん」といった書き込みがなされた。AもYもそれまで全く知らなかった。

X1からX14までの14人が個人情報の流出により、プライバシー権侵害で訴えた。
原告X1からX14まで、それぞれ、115万円(慰謝料100万円、弁護士費用15万円)を請求し、それぞれ訴訟提起の日から支払済みまでの年5分の金員の支払を求めた。

民事15部(阿部潤裁判長、中里敦、丹下友華裁判官)は、

  1. 本件ウエブサイトからインターネット上に流出したことは、原告X等のプライバシーを侵害する
  2. Aが民法709条の不法行為責任を負う
  3. 被告Yは、Aに対し実質的な指揮、監督関係にあり、民法715条の使用者責任を負う
  4. 原告Xらは、情報流出事故で、精神的苦痛を受けている
  5. 原告X10を除く各被告は、2次的被害を受けており、各3万円の慰謝料が相当である
  6. 原告X10は、慰謝料1万7000円が相当である
  7. 弁護士費用として、各原告あたり、5000円が相当である

とした。

判決は、Yは、

  1. X1からX9までは、3万5000円
  2. X10に対し2万2000円
  3. X11からX13まで、に対し、各3万5000円
  4. X14に対し、3万5000円

それぞれ、訴訟提起日から支払済みまでの年5分の金員を支払うよう命じた。

少なくとも平成14年3月から平成14年5月26日頃まで、第三者の閲覧可能な状態に置かれ、原告のうち、早い者は、平成15年早々に訴訟提起している。
この判決は、事件発覚後、被告Yが、謝罪のメールを発し、全国紙に謝罪の広告をだし、発信者情報開示請求請求訴訟を提起し、保全処分事件の申立を行ったことを評価し、原告1人当たり、3万円としたと考えられる。筆者としては、このプライバシー侵害に対し、3万円はやや低すぎると思う。

ロックバンド「HEAT WAVE」事件

1997年著作権法改正で規定された「実演家の送信可能化権」は、ロックミュージシャンがもっているか、レコード会社へ譲渡されていたか、が争われ、原告Xミュージシャンが原始的に取得し、同時に、訴外Aレコード会社へ譲渡され、のちその地位を承継した被告Yレコード会社に承継された、と判断した事例である。

東京地裁平成19年4月27日判決(平成18年(ワ)第8752号、平成18年(ワ)第16229号)

原告X1、X2,X3は、ロックミュージシャンで、1979年から2001年まで、X1がリーダーだった「HEAT WAVE」という名称のロックバンドのメンバーであった。
被告Y((株)エピックレコードジャパン)は、著作権及び著作隣接権の取得、管理等を目的とするレコード会社である。

1989年9月1日、Xら3人は、Xらが所属するマネジメント会社Aの代表者とレコード会社Bの3者の間で、(Xらが、Bの専属実演家になる)という「専属実演家契約」を結んだ。この契約の中に「4条 本契約に基づく原盤に係る一切の権利(原告等の著作隣接権を含む)は、何らの制限なく原始的且つ独占的にBに帰属する。」とあった。
この契約の後、1998年、インターネットに対応した著作権法が改正され(平成10年法律第101号)、実演家には、新たに送信可能化権が認められた(92条の2)。
2001年10月1日、Bの上記契約上の地位が、新設のYへ移転した。
Xらは、上記契約により、Bに帰属する権利の中に「送信可能化権」は、含まれていない、Yに承継されていない、と主張し、Yへ「各音源について、実演家の送信可能化権を有することを確認する」との訴えを起こした。

東京地裁民事第40部市川正巳裁判長は、「本件音源についての実演家の送信可能化権も、本件契約4条柱書きの『一切の権利(Xらの著作隣接権を含む)』に含まれ、平成10年1月1日に著作権法92条の2が施行された時点で、Xらが原始的に取得すると同時に、Bに対して譲渡され、その後、Yに承継されたものというべきである。」とした。

法律や契約書に関心を持たない実演家が多い中で、自分の音楽がパソコン向けに配信されたことを知り、ネット音源配信については、許諾していない、と気つき、Xらが権利主張をしたことは、勝敗は別として、非常に素晴らしい。

[参考文献]
升本喜郎「譲渡契約の解釈(1)」著作権判例百選[第4版]140頁。
田中豊「」コピライト561号23頁。
藤野忠「知的財産法政策学研究」19号313頁。

MYUTA事件

CD等の楽曲を自己の携帯電話で聞くことのできる「MYUTA」という名称のサービスの提供は、許されるか。

東京地裁平成19年5月25日判決(平成18年(ワ)第10166号、判タ1251号319頁、判時1979号100頁)

 原告は、携帯電話向けストレージサービス等を業とする会社で、au WIN端末のユーザーを対象として、CD等の楽曲を自己の携帯電話で聴くことのできる「MYUTA」という名前のサービスを始めようと考えた。
 そこで、原告の行おうとする事業が円滑に行えるように、音楽著作権を多数管理している日本音楽著作権協会を被告として、被告(日本音楽著作権協会)が、「作詞者、作曲者、音楽出版者その他著作権を有する者から委託されて管理する音楽著作物の著作権に基づき、これを差し止める請求権を有しないことを確認する」との訴えを提起した。

 主要な争点は、次の通り。

  1. 複製権侵害の主体(本件サーバーにおける3G2ファイル(携帯向け動画音声ファイルの形式)の複製行為の主体)は、原告か、ユーザーか。
  2. 公衆送信、自動公衆送信がなされているか。なされているとして、その主体は誰か。

である。原告は、管理著作物が複製されていることは認めるが、行為主体は、ユーザーで、公衆送信に当たらないと主張した。

すなわち、本件サーバーからユーザーの携帯電話に向けた3G2ファイルを送信(ダウンロード)しているのは原告か、ユーザーか。自動公衆送信行為がなされたか、である。

東京地裁民事47部高部眞規子裁判長は、次のように判決した。

  1. 本件サーバーにおける3G2ファイルの複製行為の主体は、原告である。
  2. 本件サーバーからユーザーの携帯電話に向けた3G2ファイルを送信(ダウンロード)している主体は、複製と同様、原告である。
  3. 本件サービスを担う本件サーバは、ユーザーの携帯電話からの求めに応じ、自動的に音源データの3G2ファイルを送信する機能を有している。ユーザーによって、直接受信されることを目的として自動的に行われるから、自動公衆送信に当たり、その主体は原告である。
  4. 本件サーバーにおける音楽著作物の複製及びユーザーの携帯電話への自動公衆送信も原告が行っている。

これらの原告の行為は、被告の承諾がなければ、被告の著作権を侵害するものである。
本件サーバーにおける音楽著作物の蔵置及びユーザーの携帯電話に向けた送信につき、被告は差止請求権を揺する。よって、原告の請求は棄却する。

この事件は、CD等の楽曲を携帯電話で聴くことができるように音楽データのストレージサービス提供事業というビジネスモデルが、適法であるかどうか、を事業開始前に、裁判所の判断を仰いだ訴訟という点で、田中豊弁護士は、原告を高く評価している。同感である。

[参考文献]
田中豊「著作権侵害とJASRACの対応ー司法救済による権利の実効性確保」(紋谷暢男編「JASRAC概論ー音楽著作権の法と管理」(日本評論社・2009年)151頁、特に188頁)
相澤英孝「知的財産法判例の動き」『ジュリスト』1354号「平成19年度重要判例解説」286頁。

マンガ無断ネット配信事件

マンガを著作者に無断で配信した事件である。

東京地裁平成19年9月13日判決(平成19年(ワ)第6415号判時1991号142頁)

さいとうたかお、永井豪、井上雄彦ら11人の漫画家が、それぞれのマンガを無断で配信されたとして、インターネットコンテンツ企画制作等を行うA会社及びインターネットカフエ経営のB会社等を訴えた。

被告らは、原告等の漫画単行本を裁断し、スキャナーで読み取った画像ファイルを、サーバーを用いて、ウエブサイトPを通じて、インターネットを利用する不特定多数の者に自動公衆送信が可能な状態にし、実際に自動公衆送信が行われた。

原告は、これらの行為をした被告らに対し、著作権侵害(公衆送信権侵害)に基づいて、損害賠償を求めた。被告は、インターネットコンテンツの企画制作等を目的とするA会社、インターネットカフエ経営のB会社、C(元A会社及び元B会社の代表者)、D(現在のA会社代表者)である。

東京地裁民事46部設楽隆一裁判長は、

  1. ABCDの被告は、原告10人それぞれに対し、連帯して金200万円及び平成18年2月1日から支払い済みまでの年5分の金員を支払え
  2. 被告は、原告丙川竹夫こと丙川二郎(筆者注、「家栽の人」「斗馬TOMA」著者)に対し、金32万2560円を平成18年2月1日から支払い済みまでの年5分の金員を支払え
  3. その余の請求を棄却した。

A社には、侵害行為の幇助、Dには故意があり、共同不法行為を認め、B社も本件侵害行為を幇助、Cには故意があるとして、不法行為責任を認めた。
裁判所による損害額は、各漫画単行本を電子書籍化した場合の想定販売価格に、相当な使用料率を乗じ、ウエブサイトPの利用者の閲覧総数を乗じた金額を損害額とし使用料相当額の算定について、ヤフーブックや有限責任中間法人出版物貸与権管理センター使用料規程によることをしなかった。

電子書籍とマンガは、親和性があるという。

[参考文献]JUCC通信126号4頁に亀井弘泰弁護士の判例紹介がある。

2008年

社保庁LAN電子掲示板事件

ジャーナリストが週刊現代に掲載した記事を社会保険庁の職員が、社会保険庁のLANシステムの中の新聞報道等掲示板にそのまま掲載し、ジャーナリストから訴えられた事件である。

東京地裁平成20年2月26日判決(平成19年(ワ)第15231号)

原告は、ジャーナリストで、社会保険庁に関する記事(本件著作物)を株式会社講談社発行の「週刊現代」に掲載した。
社会保険庁は、社会保険庁LANシステムを管理運営しているが、その電子掲示板に、社会保険庁の職員が、平成19年3月19日、同年4月2日、同年4月9日、同年4月16日に原告の本件著作物を掲載した。同年6月8日、本件掲示板を一旦閉鎖した。

原告は、被告国に対して、複製権および公衆送信権の侵害であるとして、本件LANシステムからの本件著作物の削除と掲載の差止めと374万円の損害賠償を求めて訴えた。
被告国は、著作権法42条1項「行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合」にあた利、複製権侵害でない、その後の複製物の利用行為である公衆送信行為は、その内容を職員に周知させるという行政目的を達するためのもので、著作権法49条1項1号により、複製権侵害とみなされるべきでなく、著作権法42条の目的達成の行為であるから公衆送信権侵害でない、と主張した。

「東京地裁判決」
民事46部設楽隆一裁判長は、社会保険庁職員による本件著作物の複製は、公衆送信権侵害であると判断し、次のように判決した。

将来の掲載行為の予防的差止請求は、理由があるとして、

  1. 被告は、社会保険庁が運営する社会保険庁LANシステムの電子掲示板用記録媒体に別紙目録記載の著作物を記録し、又は当該著作物を公衆の求めに応じ自動送信させてはならない。
  2. 被告は、原告に対し、42万0500円及びこれに対する平成19年4月17日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。

本件著作物の公衆送信権侵害行為により、原告が被った損害額は、22万0500円とし、弁護士費用20万円、合計42万500円としたのである。

明治32年から昭和45年末まで施行された旧著作権法30条第9は、「専ラ官庁ノ用ニ供スル為複製スルコト」は、著作権侵害にならないと規定していた。

[参考文献]岡邦俊・JCAジャーナル55巻5号54頁。

花画像デジタル写真集事件

携帯電話の待受画面用に1日1枚1年分として、花の画像を365枚集めたデジタル写真集について、その著作権の譲渡を受けた者が、週1回1枚ずつその画像を携帯電話の待受画面として配信した行為は、編集著作物としてのデジタル写真集の同一性保持権を侵害するものではない、という事例である。

知財高裁平成20年6月23日判決(平成20年(ネ)第10008号、判時2027号129頁)
東京地裁平成19年12月6日判決(平成18年(ワ)第29460号

 原告Xは、主として四季の風景、野花などの自然写真の撮影、発表を専門とする写真家で「四季の肖像」(1994年)等の写真集を出版している。
被告Yは、通信システム等の製造・販売等を業とする富士通株式会社で、インターネット上に同社製造のiモード対応携帯電話利用者のための「@Fケータイ応援団」というサイト(本件サイト)を開設している。

Xは、1日1枚、日めくりカレンダー用に、花の写真365枚を画像データにした、デジタル写真集(本件写真集)を作成した。
2003年、Yは、子会社の富士通パレックスを通じて、この携帯電話向け画像について、画像に関する権利をXから237万7500円で、譲渡を受けた(1枚7500円×365=237万7500円)。
Yは、平成15年6月27日から、週1回、1枚の割合で、本件写真集の写真の配信を行ない、平成17年7月15日にすべての配信を終了した。
平成20年、Xは、Yに対し毎日である各配信日に、対応する写真を用いなかったことは、編集著作物である本件写真集の同一性保持権等の侵害であるとして、不法行為による損害賠償額として慰藉料273万7500円と遅延損害金の支払いを求めて訴訟を提起した。

[東京地裁]

  1. 本件写真集は、著作権法12条の編集著作物か。
  2. 週1回の配信行為は、著作権法20条1項の同一性保持権の侵害か。
  3. 週1回の配信方法にXは、明示又は黙示の同意があったか。

の争点について、原被告の主張が行われた。

東京地裁は、3.についてのみ判断し、花の写真が毎週1回の割合で更新してYが配信することにXは、Yに対して黙示の同意を与えていたとして、Xの請求を棄却した。

[知財高裁]

次のように判断した。

  1. 本件画集は、編集著作物である。
  2. 編集著作権の譲渡を受けたYが、概ね7枚に1枚の割合で、X指定の応当日前後に配信していて、いわば編集著作物たる本件写真集について、公衆送信の方法で、その1部を使用するもので、Xから提供を受けた写真の内容に変更を加えていない。著作権法20条1項の「変更、切除その他の改変」の文理的意味からして、配信行為が同一性保持権を侵害していない。

本件控訴を棄却するとした。

編集著作物かどうか、そうだとしてもこのような使い方は、侵害でない、という結論が正いと思う。

[参考文献]
井関涼子・Law &Technology49号40頁(2010年10月)
堀江亜以子・発明2009年5月号52頁。
平澤卓人・知的財産法政策学研究24号259頁(2009年9月)

発信者情報NTT請求事件

ネットのチャットルームにおける書込みがプライバシー侵害、名誉毀損に該当する等として、発信者情報開示請求が認められたが、プロバイダーによる情報開示請求の拒否につき重過失がないとして、損害賠償請求が棄却された事例である。

大阪地裁平成20年6月26日判決(平成20年(ワ)第461号、判タ1289号294頁)

Xは、私人である。
Yは、エヌ・テイ・テイ・コミュニケーションズ株式会社である。

インターネットのチャットルームにおいて、Aが、原告Xについて、その住所、氏名を公開し、「郵便局の配達員クビになった」、「誰もが認める人格障害」「引き籠もり40歳」などと記載した。
Xは、プロバイダ責任制限法4条1項に基づいて、Aの住所、氏名の開示を求めたが、拒否された。Xは、「別紙アクセスログ記載の参加日時から退出日時までの間に同目録記載のIPアドレスを使用してインターネットに接続していた者の氏名及び住所を開示せよ」および百万円の損害賠償を請求して訴訟を提起した。

[大阪地裁]
第17民事部の西岡繁靖裁判官は、Xのプライバシー権が侵害されたことが明白で、名誉を毀損されたことも明白で、開示を受ける正当な理由があるとして、Aの住所、氏名の開示請求を認めた。
しかし、損害賠償請求については、被告Yに、故意、重過失を認めず、原告Xの損害賠償請求は理由がない、とした。
Aは、原告Xから、(弁護士が発信者の住所を調べ、判明したら原告が極道をAの下に送るから待ってろよ)、との脅迫を度々受けており、被告Yとしては、Aの意見を尊重して、原告の開示請求に応じることはできないと判断した事情があった。

発信者情報開示請求について、被告側にもいろいろの事情がある。

「海賊版」指摘名誉毀損事件

被告が、原告発行の書籍が他の出版社の発行する書籍の「海賊版」である旨を指摘する電子メールの内容及び被告のホームページの記事内容が、原告の名誉毀損及び信用毀損であるとして、不法行為に基づき、損害賠償と名誉回復のための措置として、上記ホームページに謝罪文の掲載を求めた事例である。

東京地裁平成20年8月29日判決(平成19年(ワ)第4777号)

原告は、韓国に本店を置き、韓国法によって設立された出版等を業とする会社である。
被告は、朝鮮民主主義人民共和国の図書等を専門的に扱う小売商人である。被告は、ホームページを管理している。ここで、関係する書籍は、

  1. 朝鮮総督府政務総監大野緑一郎関係文書
  2. 友邦文庫文書
  3. 不二出版書籍
  4. 龍渓書籍
  5. 原告の「日帝下戦時体制期政策史料叢書」

である。被告は、無断複製販売を続けている業者から無断複製本を購入した学校を訪問したこと、「このならずものの業者はどこか」と聞かれるので、これ以上日本の図書館に海賊版を入れさせてはいけないと思い、実名を出した。被告は、また「韓国・民族問題研究所出版『日帝下戦時体制期政策史料叢書』も海賊版」「間違いなく無許可でコピー販売しているものと思われます」という内容の電子メールを作成し、不特定多数人に送信した。また、被告ホームページに、「民族問題研究所編・韓国学術情報発行『日帝下戦時体制期政策史料叢書』は海賊版、復刻許可申請の記録なしとの、2005年9月ハーバート大学図書館」らの指摘に対し、韓国学術情報代表理事F氏は「1ページでも無断複製があれば、『日帝下戦時体制期政策史料叢書』は海賊版と語る」(表現3)と掲載した。原告は、被告を名誉毀損で訴えた。

 東京地裁民事40部市川正巳裁判長は、次のように述べて、原告の請求を棄却した。

  1. 「被告による表現の全体を一般読者の普通の注意と読み方とを基準として読めば、史料集の復刻版の無断複写物も海賊版の一種であると考えている被告が史料集の復刻版の無断複写を海賊版になぞらえて非難していることを読み取るにすぎない」。
  2. (表現3の名誉毀損性)「これを一般読者の普通の注意と読み方とを基準として読めば、Fが仮に1部でも無断複製があったとすれば原告書籍は海賊版となることを述べたものと理解され、『原告書籍は無断複製されたものである。』と理解されるものではないと認められる。」として、理由がない、とした。
    原告代表者Fが「仮に1部でも無断複製があったとすれば原告書籍2は海賊版となる」との発言自体、何ら原告の名誉や信用を毀損するものでない。
  3. (「海賊版」の真実性ー原告の版面権侵害行為)
    原告は、龍渓書舎の版面を複写したこと、不二出版の書籍については、「タイプ印刷」で補ったこと等を認定し、本件表現1及び2で摘示の事実の重要部分につき真実であるとの証明があり、被告の真実性の抗弁は理由がある。

とし、原告の請求を棄却した。

龍渓書舎といえば、東京高裁昭和57年4月22日判決(無体集14巻1号193頁)が有名である。

医療法人社団対NTTドコモ請求事件

携帯電話から接続サービスを利用してインターネットのブログになされた書き込みにより名誉、信用を毀損された者から携帯電話会社NTTドコモに対する発信者情報開示請求が認められた事例である。

東京地裁平成20年9月9日判決(判時2049号40頁)

被告Yは、NTTドコモである。
原告Xは、医療法人社団で、診療所を開設し、化粧品(本件化粧品)も販売している。

Xは、芸能人だった訴外Aへ本件化粧品を贈呈した。Aは、訴外B会社が提供しているブログのシステムを利用してインターネット上にブログ(本件ブログ)を開設していたが、平成19年8月15日午前10時20分頃、本件ブログに本件化粧品のカラー画像を掲載し、「嬉しき頂き物」などと書き込んだ。ところが、同日午後9時37分ころ、「肌悲しい子」の名前の者から、「その化粧品でひどく肌が赤くただれて、大学病院の皮膚科で治るまで3ケ月かかると言われました」などの書き込み(本件書き込み)がなされた。Xの求めに応じて、B会社は、同年9月20日、Xに、IPアドレスとこのIPアドレスを割当てられた携帯電話等からBの電気通信設備に送信された年月日及び時刻の情報を任意に開示した。
Xは、本件IPアドレスは、Yが所有しており、本件発信者が本件ブログに本件書込みをした際、インターネット接続サービスを提供したのは、Yであると知った。
Xは、Yの通信回線を利用し、本件書き込みをした者(「肌悲しい子」)の住所、氏名の情報の開示を請求をしたが、Yは拒否した。

民事23部須藤典明裁判長は、原告は、本件発信者によって、その名誉や信用を侵害されている。本件書き込みは、携帯電話等から被告の通信回線を経由して本件ブログに書き込まれたもので、被告は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(平成13年法律第137号)4条1項にいう「開示関係役務提供者」に該当するとし、原告に対し、本件発信者の氏名、住所、電子メールアドレス等の情報を開示せよ、と命じた。

2005-1エステックサロン事件と類似する事件である。

産能ユニオン会議室事件

インターネット上の掲示板会議室の管理者が他人の名誉を毀損する投稿を知ったときの削除義務等が議論された事例である。

東京地裁平成20年10月1日判決(平成18年(ワ)第23518号判時2034号60頁)

原告Xは、S大学を設置する学校法人である。
被告Yは、もとS大学助教授を務めていたが、裁判上の和解により、平成17年3月31日退職し、同年10月以降、S大学の教職員組合(産能ユニオン)代表者兼執行委員長を務めている。産能ユニオンは、インターネット上に「産能ユニオン 会議室」(本件掲示板)を設置していたが、平成16年9月17日から平成18年6月1日までの間に、投稿(1ないし15を総称して「本件各投稿」)がなされた。

原告Xは、この投稿は、被告Yが行なったとし、ア、本件各投稿が名誉毀損又は業務妨害に当たる、被告が全てを投稿していないとしても予備的に、掲示板管理者であるYが本件掲示板の削除義務を怠ったこと、又は本件投稿(9,13,14)を公開したことを理由とする損害賠償5850万円、イ、名誉毀損行為及び被告原告敷地に立ち入ったことが和解の債務不履行に当たり和解解除に基づく原状回復請求権として、500万円の支払を求めて訴えた。

民事32部の高部眞規子裁判長は、次のように判断した。

  1. まず、本件投稿について、Yの投稿は、7,8,10,11,12,15とした。
    掲示板の管理者の責任について、インターネット上掲示板に第三者による投稿が、自動的に公開される管理体制が採られている場合、意見して第三者に対する誹謗中傷を含むなど第三者の名誉を毀損することが明らかな内容の投稿については、右内容の投稿を具体的に知ったときは、第三者による削除要求がなくても削除義務を負う。これに至らない内容の投稿については、第三者から削除を求める投稿を特定した削除要求があって初めて削除義務を負う、とした。
  2. インターネット上の掲示板が、管理者による投稿内容の確認を経て公開される体制の下において、掲示板に第三者の名誉を毀損する投稿がなされた場合、掲示板管理者は、当該投稿を公開しない条理上の義務を負い、これに反して当該投稿を公開した場合には、速やかにこれを削除すべき条理上の義務を負う、とした。
     これにより、被告Yは、第三者の名誉を毀損する本件投稿9,13,14につき、自ら投稿した者と共に共同不法行為責任を負うべきであるとした。
  3. 本件投稿7,8,10ないし15は、原告Xの名誉毀損とした。これについて、真実と信じるにつき、相当の理由があるとは認めなかった。
  4. 被告は、原告は言論による対抗で、名誉回復を図ることが可能であったことを理由として、本件投稿7,8,10ないし15の違法性は、対抗言論の法理により、違法性が阻却されるべきだ、と主張したが、この主張も採用されなかった。
  5. 使用者であるXに関する表現行為である上記投稿が名誉毀損に当たる場合、被告Yの行為は、団結権に基づく正当な組合活動とはいえず、その範囲を逸脱しており、違法性が阻却されないとした。

以上により、高部眞規子裁判長は、(7,8,10ないし15の)名誉毀損行為によって原告Xの被った損害を400万円、弁護士費用50万円とし、

  1. 被告は、原告に対し、450万円及びこれに対する平成18年11月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  2. 原告のその余の請求を棄却する。

(3,4省略)

と判決した。和解の債務不履行についての500万円は、和解条項において違反の場合の違約金の定めが明示されてなく、Xの主張は理由がないとした。

ネット上の名誉毀損等の背景には、学校法人とその労働組合委員長との紛争、対立がある。

2009年

電子掲示板書込名誉毀損事件

ネット掲示板に原告配偶者氏名・住所等を書いて、プライバシー侵害とされた事例である。

東京地裁平成21年1月21日判決(判タ1296号235頁)

原告X1は、インターネット上で消費者問題に関する電子掲示板「悪徳商法?マニアックス」を管理、運営している者である。原告X2は、X1の妻である。
被告Yは、インターネット上のトラブル解決を業とすると自称する者である。

インターネット上の掲示板「2ちゃんねる」に、平成19年1月24日、「悪マニ管理人、X1が企業恐喝?」と題するスレッドに、原告2の氏名・住所、原告等の親族の氏名、親族の経営する会社の本支店の所在地・電話番号が書き込まれた。この書き込みは、掲示板管理人により、平成19年5月8日削除された。
原告X等は、発信者情報開示訴訟をNTTコミュニケーションズ株式会社に提訴し、平成20年7月4日判決で勝訴、開示を受けた。
Xらは、Yに対し、Xらのプライバシーを侵害する書き込みを行い、3か月余の間、第三者が閲覧可能な状況に置いたこと、プライバシー侵害であると主張して、不法行為に基づく損害賠償をX1に対し550万円、X2に対し、440万円及び、それぞれ平成23年3月24日判決19年1月24日から支払済みまで、年5分の金員を支払うよう求めた。

東京地裁民事32部高部眞規子裁判長は、次の判決を下した。

  1. 被告Yは、原告X1に対し、12万円及びこれに対する平成23年3月24日判決19年1月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え
  2. 被告Yは、原告X2に対し、12万円及びこれに対する平成23年3月24日判決19年1月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え
  3. 原告らのその余の請求をいずれも棄却する
  4. (省略)
  5. (省略)
発信者情報の開示を受けた後、当該人物を訴え、500万円の請求に12万円の損害賠償金であった。約3月間強、ネット上でプライバシー権侵害された代償の相場は、この程度であろうか。

アイデイー商標事件

「アイデイ-」という商標は許されるか、許されないという判決例である。

知財高裁平成21年9月8日判決(判時2076号89頁)

IDは、Identificationの略語で、システムの利用者を識別するための符号であり、一般には、数字や英字を組み合わせる。インターネットやサーバーにアクセスする場合、パスワードやユーザーを入力し、サーバーはこれにより、正当な利用者であると認知し、識別する。このIDを商標登録しようとしたが、特許庁、知財高裁は、拒絶した。

原告X((株)インフォメーション・デペロプメント)は、「アイデイー」の片仮名文字を標準文字で書して成る商標を、指定商品:第9類「加工ガラス(建築用のものを除く)、自動販売機…(省略)スロットマシン、レコード、メトロノーム、電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCDーROM」に平成17年3月22日、出願をした。
特許庁は、平成19年3月28日拒絶査定をした。
原告Xは、平成19年4月16日、特許庁へ拒絶査定不服審判の請求をした。

特許庁は、平成20年12月26日、「本件審決の結論として『本件審判の請求は成り立たない。』」とした。審決理由として、「指定商品中の例えば、『システム・情報等のセキュリテイに関する商品を含む電子応用機械器具及びその部品並びに電気通信機械器具(テレビジョン受信機・ラジオ受信機…を除く。)』」に使用しても、これに接する取引者・需要者は、「識別子。ネットワークシステムなどの利用者を識別するための符号」を意味する語、さらには、「コンピュータ、情報セキュリテイに関する1用語である「ID」の表音と理解・認識するにとどまり、自他商品の識別標識として認識し得ないものであるから、本願商標は商標法3条1項6号所定の「需要者が何人かの業務に係る商品…であることを認識することができない商標」に該当する、とした。
Xは、不服で、商標法63条に基づき、上訴した。

知財高裁は、「本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であり、本願商標が商標法3条1項6号に該当するとした本件審決の判断に誤りはない。」として、原告の請求を棄却した。

[商標法3条1項]
自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
一、その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
(省略)
六、前各号に掲げるものの外、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標

東京地裁平成17年6月21日判決(2005-6)は、「IP FIRM」なる商標は、商標法3条1項6号に該当、商標権者に基づく商標権行使を許さなかった。
2009-2(IT事件)参照。

オークションカタログ事件

絵画・絵画カタログをインターネットで自由に送信できるか。

東京地裁平成21年11月26日判決(平成20年(ワ)第31480号)

 原告等は、現代美術の作家で、絵画等の作品(本件著作物)の著作権者である。
被告は、オークション等を業とする株式会社エスト・ウエストオークションズである。

 被告は、原告の著作物の画像をフリーペーパー、パンフレット、冊子カタログに掲載し、その一部をインターネットで公開した。
 原告らは、原告等の複製権及び原告Xの公衆送信権を侵害したとして不法行為に基づく損害賠償を請求した。

 被告は、次のように主張した。

  1. 引用(32条)である。
  2. 展示に伴う複製であるから47条の「小冊子」である。
  3. 被告は、オークションは香港で開催され、これは「時事の事件の報道」に当る。
  4. オークションに先立ち著作権者に無断でカタログが作成されることは、国際慣行である、原告の著作権行使は、権利濫用である。

と被告は主張した。

民事47部阿部正幸裁判長は、

  1. 原告著作物をフリーペーパー等に掲載し、文字の部分は、資料的事項を箇条書きにしているが、32条の「引用」に当たらない。
  2. 47条は、観覧者のためのものであることが必要で、フリーペーパー等への掲載は、観覧者に限らない多数人に配布するから、「小冊子」に当たらない。
  3. 本件パンフレットは、オークションの広告で、「時事の事件の報道」に当たらない。
  4. 原告の著作権行使は、権利濫用に当たらない、とし、
    1. 被告は原告Aに対し、20万円、
    2. 被告は原告Bに対し、9万円。
    3. 被告は、原告Cに対し、14万円。
    4. 被告は、原告Dに対し、9万円。
    5. 原告のその余の請求をいずれも棄却した。
この判決の約1月後の平成22年1月1日施行の改正著作権法により、一定の要件を満たせば、権利者の許諾なしに美術品、写真の譲渡等をしようとする場合、その画像を、その申出のための複製又は自動公衆送信を行える、ことになった(47条の2)。
フランス美術著作権団体とピカソの相続人が毎日オークションに対し、オークションカタログに無断転載したとして、訴え、それぞれ、損害賠償金を得た事件が「東京地裁平成25年12月20日判決平成24年(ワ)第268号」であるがこれはインターネット送信は行っていないので本書に収録しなかった。

[参考文献]
茶園成樹「知的財産法判例の動き」『ジュリスト』1420号(平成22年度重要判例解説)320頁。種村佑介『ジュリスト』1422号153頁。
福王寺一彦・大家重夫「美術作家の著作権」19頁、231頁。

2010年

大学院教授対医博作家海堂尊事件

医博で作家である海堂尊がインターネット上で、記事を掲載し、大学院教授から名誉毀損で訴えられ、110万円の損害賠償が命じられた事例である。

東京地裁平成22年1月18日判決(平成20年(ワ)第29905号、判時2087号93頁)

原告Xは、T大学大学院教授で日本病理学会副理事長である。
被告Yは、独立行政法人放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院勤務の病理専門の医学博士で、海堂尊のペンネームをもつ作家でもある。

Xは、社団法人内科学会が平成17年9月1日から厚生労働祥補助事業として実施の「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」に関与していたが、平成20年度科学研究費補助金で、研究課題「『診療行為に関連した死亡の調査分析』における解剖を補助する死因究明手法の検証に関する研究」の募集に応じ採択された。応募はXのみであった。
Yは、海堂尊の名前で、(株)日経ビーピー社が運営する「日経メデイカルオンライン」というサイト(医師限定のサイト)内で、「Aiめぐる生臭い話」などの記事を掲載した。
また、Yは、(株)宝島社が運営する「『このミス』大賞受賞作家・海堂尊のホームページ・宝島社」サイト内に「学会上層部と官僚の癒着による学術業績剽窃事件」と題する記事を掲載した。

Xは、Yに対して、これらの記事により、Xの名誉を毀損されたとして、330万円(慰謝料300万円、弁護士費用30万円)を求めて訴えた。
Yは、記事の摘示した事実は、真実であり、また公正な論評であると主張し、争った。
東京地裁民事5部(畠山稔裁判長、熊谷光喜、折田恭子裁判官)は、日経ビーピーのサイトの記事1と宝島社のサイトの記事2を合わせて、これを、別紙とし、「No.1」部分を、「本件記述1」とし、本件記述12まで、を順に、主張を並記し、検討した。

  1. 本件記述1,2,4,5,6,7,8,9,はXの社会的評価を低下させるとした。
  2. 本件記述3,4の摘示事実は、真実かどうかについて、真実と認める証拠はない、とした。
  3. 本件記述10,11,12は、公正な論評でないとした。
  4. 原告は、精神的苦痛を被っており、本件記事1は、閲覧記事ランキング一位になり、多数の目にふれたこと、Xの社会的地位その他本件に現れた一切の事情を総合考慮し、慰謝料100万円、弁護士費用10万円、合計110万円の支払いをYに命じた。
学者間の争いである。問題の記事について裁判官は、両者の主張を並記し、丁寧に審理している(判例時報2087号参照)。内部告発的な記事と思われる。

ラーメン・チェーン店名誉毀損事件(刑事)

インターネット上の名誉毀損行為には、インターネットの特殊性を反映した独自の判断基準が適用されるのかー1審は、無罪、2・3審は、有罪とされた事例である。

最高裁平成22年3月15日第一小法廷決定(平成21(あ)360刑集64巻2号1頁、判時2075号160頁、判タ1321号93頁)
東京高裁平成21年1月30日第12刑事部判決(判タ1309号91頁)
東京地裁平成20年2月29日判決(判時2009号151頁、判タ1277号46頁)

[東京地裁判決]
 被告人は、米国の大学中退後、平成8年7月頃から、プログラマーとして、数社に勤務し、現在に至っている。
 被告人は、自己の開設するホームページにラーメン店チェーンの経営会社である株式会社甲野食品(のち乙山株式会社に商号変更)について、「インチキFC甲野粉砕」「貴方が『甲野』で食事をすると、飲食代の4~5%がカルト集団の収入になります。」などと甲野食品がカルト集団である旨の虚偽の内容を記載した文章や同社が会社説明会の広告に虚偽の記載をしている旨の文章を掲載し、不特定多数の者に閲覧させたとして、名誉毀損罪に問われ、検事は罰金30万円を求刑した。
 東京地裁刑事3部(波床昌則裁判長、柴田誠、牛島武人裁判官)は、無罪を言渡した。

 日本の名誉毀損罪は、真実を述べた場合も成立するとされ、表現の自由よりも個人の名誉を優先保護していると批評されていた。戦後占領下の昭和22年の刑法改正で、刑法230条の2が追加され、名誉毀損的表現が、

  1. 公共の利害に関係し、
  2. 公益目的でなされたとき、
  3. 摘示された事実が真実であると証明されたときは、これを罰しない

と規定した。しかし、真実の証明は困難であることが多いため、最高裁昭和44年6月25日判決刑集23巻7号975頁(「夕刊和歌山時事」事件)は、「真実であることの証明がない場合でも、行為者がその事実を真実だと誤信し、その誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らして相当の理由があるときは、故意がなく、名誉毀損罪は成立しない。」とし、言論の表現者に有利な判例変更を行った。

 このインターネットの名誉毀損事件で判決は、

  1. 公共の利害に関係し、
  2. 公益目的であることは肯定し、
  3. 摘示された事実が、真実であるとの証明がなされていない、しかし、
  4. 真実であると誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らして相当な理由があったかどうか、

として、インターネット上の表現行為について、新たな基準を提示し、名誉毀損罪に当たらないとした。

 すなわち、

  1. インターネットにおける個人利用者の表現行為については、従前のマスメデイアと個人の関係と異なり、相互に情報の発受信に対し、対等の地位に立ち、言論を応酬し合え、容易に加害者に反論することができる、
  2. インターネット利用の個人利用者は、マスメデイアのような高い取材能力や綿密な情報収集、分析活動が期待できないことについて、利用者一般が知悉しており、個人利用者がインターネット上で発信した情報の信頼性は一般的に低いものと受け止められていることに鑑みると、確実な資料、証拠に基づいて真実と誤信したと認めなければ名誉毀損罪に問擬するとするのは相当ではなく、「加害者が、摘示した事実が真実でないことを知りながら発信したか、あるいは、インターネットの個人利用者に対して要求される水準を満たす調査を行わず真実かどうか確かめないで発信したといえるときにはじめて同罪に問擬するのが相当」

とした。

 このように解することによって「インターネットを使った個人利用者による真実の表現行為がいわゆる自己検閲により萎縮するという事態が生ぜず、ひいては憲法21条によって要請される情報や思想の自由な流通が確保される、という結果がもたらされることにもなると思われる。」とする。

[東京高裁判決]
東京高裁は、1審判決を否定、「原判決を破棄」「被告人を罰金30万円に処」した。

高裁判決は、

  1. 被告人は、公益を図る目的で表現行為に及んだ(検察官は疑問であると主張)、という1審の判断は是認した。
  2. 被告人に名誉毀損罪を問えない、とした1審判決は、間違いで、刑法230条の2第1項の解釈・適用の誤りがある、という検察官の点については、同調した。
  3. 被告人の表現は、重要な部分が真実であるあることが証明されていないとした。
  4. 仮に証明不十分であったとしても、被告人は必要な調査義務は尽くしたか、について、「被告人は、乙山株式会社の関係者に事実関係を確認することを一切していないこと等に照らして」、「摘示された事実が真実であると信じたことについて」「『確実な資料、根拠に照らして相当な理由があった』とは到底いえない、」

とした。

「結局のところ、個人利用者によるインターネット上での表現行為について、名誉毀損罪の成否に関する独自の基準を定立し、これに基づき被告人に名誉毀損罪は成立しないとした原判決は、刑法230条の2第1項の解釈。適用を誤ったもの」とした。

[最高裁判決](判例要約)
インターネットのホームページにおいて、被害会社の名誉を毀損する虚偽の事実を掲載した場合、個人利用者が公益を図る目的であったとしても、一律に他の表現手段と区別して、より緩やかな要件で名誉毀損罪の成立を否定すべきでなく、犯人が当該事実を真実であると誤信したことについて確実な資料や根拠が認められず、相当の理由がないときには、同罪が成立する。

1審判決が出たことは、非常に興味深い。

[参考文献]
西土彰一郎「インターネット上の表現について名誉毀損罪の成否」平成22年度重要判例解説23頁。丸山雅夫「インターネット上の個人利用者による名誉毀損と真実性の誤信についての相当 の理由」平成22年度重要判例解説210頁。
岡田好史「インターネット上における名誉毀損について」専修大学法学100号143頁。
永井善之「インターネットと名誉・わいせつ犯罪」刑事法ジャーナル15号10頁。
鈴木秀美・ジュリスト2010年11月15日号22頁。小島慎司・ジャーナリズム2010年7月号48頁。西野吾一「最高裁刑事破棄判決等の実情(中)平成22年度」判時2132号3頁。

「しずちゃん」経由プロバイダ事件

経由プロバイダが、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(以下、法)2条3項にいう「特定電気通信役務提供者」に該当するとした判例である。

最高裁平成22年4月8日判決(平成21年(受)第1049号民集64巻3号676頁)
東京地裁平成20年9月19日判決、東京高裁平成21年3月12日判決

被告Yは、株式会社NTTドコモである。
原告X1は、土木工事事業等を目的とする株式会社である。原告X2は、X1の代表取締役である。原告X3は、X2の妻である。原告X4は、X1の従業員である。

ウエブサイト「しずちゃん」内の電子掲示板に、原告X1ではいじめがはげしい、X2は、不貞行為をしている、X3は、従業員と不貞行為をしている、X4は暴力団と関係があるなど、という事実無根の記事を、複数の氏名等不詳の者(本件発信者)から書かれた。
Xらは、名誉毀損、プライバシー権等の人格権侵害をされているとして、原告等は、静岡地方裁判所浜松支部に対し、「しずちゃん」管理者から委託を受けたホステイング業者を相手に仮処分命令を申立てて、投稿した者のIPアドレス及びタイムスタンプ等の情報を得、これにより、本件発信者らは、被告Yの管理するサービスのユーザーで、Y経営の携帯電話からの発信と判明、X等は、東京地裁へ、Yを相手に発信者情報の消去の禁止を求める仮処分命令申立をしたが、自動消去されていたので、同地裁から却下決定がなされた。
原告等は、コンテンツプロバイダ「しずちゃん」管理者に発信者の携帯端末機の機種、シリアルナンバー及びFOMAカード個体識別子がアクセスログとして記録されているので、被告Yに、発信者等の情報を特定することが可能であるとして、経由プロバイダである、被告Yへ、発信者情報の開示を求めて訴えた。
被告Yは、被告は経由プロバイダであるから、法4条1項、法2条3号にいう「特定電気通信役務提供者」に該当しないと主張した。

1審の東京地裁民事第37部は、

  1. 被告は、「特定電気通信役務提供者」(法4条1項、2条3号)に該当しない
  2. 原告主張のFOMAカード個体識別子による情報は、法4条1項所定の「権利の侵害に係る発信者情報」ではなく、被告は発信者情報を保有していない、原告らの本件請求はいずれも理由がない

とし、原告らの各請求をいずれも棄却した。

2審の東京高裁第24民事部は、解釈を変えた。

[判決主文]

  1. 原判決を次の通り変更する
  2. 被控訴人は、控訴人X1に対し、原判決別紙アクセスログ目録(1)の表の2,3及び5の「投稿日」及び「時間」欄記載の日時における、これに対応する同表の「icc」欄記載のFOMAカード個体識別子によって特定されるFOMAカードに係るFOMAサービス契約の相手方の住所及び氏名又は名称をそれぞれ開示せよ。」とし、被控訴人は、控訴人X2、X3,X4に対しても、同様の開示をせよ

と命じ、控訴人らのその余の請求は棄却した。

最高裁(金築誠志裁判長、宮川光治、櫻井龍子、横田尤孝、白木勇)は、上告を棄却した。

[判決要旨]
「最終的に不特定多数の者に受信されることを目的として特定電気通信設備の記録媒体に情報を記録するためにする発信者とコンテンツプロバイダとの間の通信を媒介する経由プロバイタは、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律2条3項にいう「特定電気通信役務提供者」に該当する。

東京地裁平成15年9月17日判決(平成15年(ワ)第3992号判タ1152号276頁)は、経由プロバイダについて同旨の判断をしていた。

R学園長対電子掲示板事件

1,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(以下、プロバイダ責任制限法)4条1項に基づく発信者情報の開示請求に応じなかった特定電気通信役務提供者は、当該開示請求が同項各号所定の要件のいずれにも該当することを認識し、又は上記要件のいずれにも該当することが一見明白であり、その旨認識することができなかったことにつき重大な過失がある場合にのみ損害賠償責任を負うとされ、2,インターネット上の電子掲示板にされた書き込みの発信者情報の開示請求を受けた特定電気通信役務提供者が、請求者の権利が侵害されたことが明らかでないとして開示請求に応じなかったことにつき、重大な過失があったとはいえないとされた事例である。

最高裁平成22年4月13日判決(平成21年(受)609号、判時2082号59頁民集64巻3号758頁)
東京高裁平成20年12月10日判決(平成20年(ネ)第3598号、民集64巻3号782頁)
東京地裁平成20年6月17日判決(平成19年(ワ)第27647号、民集64巻3号769頁)

原告Xは、学校法人R学園(湘南ライナス学園)の学園長兼理事である。
被告Yは、電気通信事業を営む株式会社で、DIONの名称でインターネット接続サービスを運営している。

平成18年9月頃、電子掲示板サイト「2ちゃんねる」において、X及びXが勤務する学園に関する書き込みがなされた。「気違いはどう見てもライナス学長」などである。Xは、プロバイダ責任制限法に基づき、2ちゃんねるに対して、発信者情報開示の仮処分を申立て、開示を命ずる仮処分決定を得た。その結果、2ちゃんねる側から、Xに対し、本件書き込みの発信者情報としてのIPアドレスが開示された。これにより、本件書き込みは、被告Yが運営するインターネット接続サービスDION経由と判明した。
Xは、Yへ、平成19年2月27日、発信者の情報を開示するよう依頼した。
Yは、平成19年6月6日書面で、権利侵害の明白性が認められないと回答した。
Xは、Yを訴えた。

[東京地裁]
民事26部は、次のように判断した。

  1. 本件書き込みは、違法性が強度で社会通念上許される限度を超える表現ではない。原告の権利が侵害されたことが明らかであるといえない。
  2. 原告による発信者情報の開示請求は理由がない。

Xの請求を棄却した。

[東京高裁]
第12民事部は、「気違い」という表現は、きわめて強い侮辱的表現で、差別用語で、名誉感情を侵害した。控訴人Xには、発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとして、

  1. 別紙目録記載の時刻頃に目録記載の書き込みを送信した者の氏名又は名称住所、電子メールアドレスを開示せよ。
  2. Yが開示請求に応じなかったのは、重大な過失で、これによるXの精神的苦痛に対する慰謝料として10万円、弁護士費用5万円

とし、これをXへ支払うようYへ命じた。

[最高裁]
第3小法廷(田原睦夫裁判長、藤田宙靖、堀籠幸男、那須弘平、近藤崇晴裁判官)は、東京高裁の判決中、損害賠償請求を認めた部分を廃棄し、同請求を棄却すべきものとした。発信者情報開示請求に関する上告は、上告受理申立理由が上告受理の決定において、排除されたので、棄却された。

最高裁の結論を冒頭に掲げたが、1審と3審最高裁が同じ判断をした。

「クラブハウス」商標事件

原告Xが第32類の「加工食料品」等を指定商品として、「クラブハウス」を商標登録をし、原告のメールマガジンにおいて使用していたが、特許庁は、その表示使用行為は「商標の使用」とは認めず、取消の審決を下したが、知財高裁で、メールマガジン、Web版の使用は、「商標の使用」と認め、審決が取消された事例である。

知財高裁裁平成22年4月14日判決(平成21年(行ケ)第10354号)

原告X(ハウス食品株式会社)は、「CLUBHOUSE」の欧文字と「クラブハウス」の片仮名文字とを上下2段に横書きしたものを、昭和62年2月9日登録出願し、第32類「加工食料品、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成2年5月31日に設定登録がなされ、平成12年2月1日、平成22年2月2日にそれぞれ、商標権の更新登録がなされ、商標権は有効に存続していた。
被告Yは、平成21年3月2日、商標法50条1項の「継続して3年以上日本国内において」商標権者等が指定商品、指定役務について、「登録商標の使用」をしていないならば、何人もその商標登録を取り消すことについて審判を請求できる、との規定に基づいて、不使用による取消審判を請求した。
特許庁は、審理し、平成21年9月25日、「登録第2230404号商標の商標登録は取り消す」との審決をした。審決の理由は、Xのメールマガジンにおける「クラブハウス」標章の表示行為は、商標法2条3項8号に該当せず、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内で、商標権者等がその請求に係る指定商品についての「本件商標の使用」をしていない、というものであった。

Xは、特許庁の審決の取消を求め、知的財産高等裁判所に提訴した。

[知財高裁]
第4部滝澤孝臣裁判長は、「原告Xは、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、加工食品を中心とする原告商品に関する広告又は原告商品を内容とする情報であるメールマガジン及びWeb版に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付し、これを電磁的方法により提供したものである。」この行為は、「商標法2条3項8号に該当する」とし、特許庁が「平成21年9月25日にした審決を取り消す。」との判決を下した。

[商標法2条3項]
この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。
一、商品又は商品の包装に標章を付する行為
(省略)
八、商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為

アリカ事件(2011-6)は、登録商標の使用をしていないとした。2005-6(IP 事件)、2009-2(ID事件)参照

「がん闘病記」医師ネット転載事件

医師が患者が月刊誌に掲載したがん闘病記事 を、患者に無断で、医師がクリニックのホームページに掲載し、医師が著作権(複製権、公衆送信権)侵害及び著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)侵害に問われた事例である。

東京地裁平成22年5月28日判決(平成21年(ワ)第12854号)

 原告Xは、平成14年、末期の子宮頸がんを宣告されたが、化学療法、外科療法等により治癒した者である。
 被告Yは、平成16年4月21日から平成20年3月18日まで、Xを診療、治療を実施したYクリニックを経営する医師である。

 Xは、平成18年1月頃から、体験を基に、「がん闘病マニュアル」を執筆をはじめて、月刊誌「がん治療最前線」に平成18年10月号(8月発売)から、20回にわたって連載し、のち単行本にした。
 Yは、平成17年に、Yクリニックのホームページを開設していたが、Xの記事の4回目(平成19年1月号)から10回目連載の分及び18回連載分の本文部分を、ホームページの「漢方コラム」欄に転載した。
 Xは、Yへ平成20年9月16日、Yの転載中止を求め、Yは、同年9月末日までに、転載記事を削除した。
平成21年、Xは、Yに対し、著作権侵害、著作者人格権侵害、プライバシー権侵害及び名誉権侵害で、1250万円の損害賠償を求めて提訴した。

[東京地裁]
民事40部の岡本岳裁判長は、次のように判断した。

  1. Yは、Xの文章をインターネット、ホームページに転載するについて、Xの許諾を得たと主張しているが、転載についてXが許諾した事実は認めることができないとした。
  2. Yは、本件転載は、著作権法32条1項の「引用」に当たる、と主張したが、これを認めなかった。著作権(複製権、公衆送信権)侵害を認めた
  3. Yは、Xに無断で、Xを「子パンダ」と表示したことは、Xの氏名表示権の侵害で、Xの文章を転載の際、リード文を切除し、本文のみを転載したが、これは、同一性保持権の侵害であるとした。
  4. Xは、プライバシー権侵害を主張したが、Yの転載記事は、Xが公開した事実の範囲内であり、認めなかった。Xは、Yの転載によりXの名誉権が侵害されたと主張したが、名誉権侵害は、認められないとした。
  5. Xの著作権(複製権、公衆送信権)侵害による財産的損害額について、損害額は利用許諾料の額とし、21万6000円(1頁12000円×18頁)とした。
     著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)侵害を慰藉する額として、15万円、弁護士費用5万円とした。

「判決主文」
1,被告は、原告に対し、41万6000円及びこれに対する平成21年4月25日から支払い済みまで年5分の割合の金員を支払え。(あと省略)」

患者に無断で医師が患者の著作物を転載したということは、相互の信頼関係が失われていたということである。

人材派遣会社対電子掲示板事件

ウエブサイトの電子掲示板に名誉毀損、信用毀損の投稿があるのに、速やかに削除しなかったサイトの運営管理者に対する不法行為に基づく損害賠償と謝罪文掲載要求が否定された事例である。

東京高裁平成22年8月26日判決(判時2101号39頁)
東京地裁平成21年11月27日判決(平成19年(ワ)第26700号)

原告X1は、英語指導助手の人材派遣業務等を営む会社で、X2は、その代表者である。
被告Yは、インターネットを利用した各種情報提供サービス等を行う会社で、英語総合情報サイト「GaijinPot.com」というフォーラムを運営している。

X1X2は、Yに対して、民法709条の不法行為にあたるとして、X1会社へは、信用の無形損害、弁護士費用の損害賠償と本件サイトへの謝罪文の掲載、X2に対しては、慰藉料と弁護士費用の損害賠償を請求し、訴えた。

X1X2は、サイトに、Xらへの誹謗中傷の書き込みがなされたが、

  1. Yがこの書き込みを行った(主位的主張)、
  2. そうでなくても、本件サイト管理に当たって、意図的に、Xらにとって不利な書き込みを行った者の格付けを上げる処分をし、Xらにとって有利な書き込みを行った者には、以後の書き込みを禁止する処分を行うことによりXらを誹謗中傷する書き込みを誘導した(予備的主張1)。
  3. Xらからの削除要請に応じず、第三者がXらを誹謗中傷する書き込みを行っていることを知りながら、これを放置し、削除する義務を怠った、

と主張した。

[東京地裁判決]

1審は、

  1. 主位的主張事実は認められない。
  2. 投稿者の格付けは、投稿数に応じて、機械的にランク付けする仕組みで、Yが意図的に格付けを引き上げたりしたものは認められず、不適切な書き込み者への書き込み禁止処分も予め公表されたルールに従がってなされ、YがXらを不当に攻撃する書き込み者に対して、書き込み禁止処分もしていて、X有利な書き込み者を意図的に書き込み禁止処分をして、Xらを誹謗中傷する書き込みを誘導したとは、認められない。
  3. Xらの書き込み削除要請にYが不当に応じないという対応をしたことや、本件サイトへの広告掲載を削除の条件として要求したことは、認められない

として、Xらの請求をいずれも棄却した。

[東京高裁判決]
東京高裁は、原審判決を支持して、控訴を棄却した。Xらに有利な書き込みを行う者を閉め出す意図がYにあったとは認められず、Yが削除要請があったときに要請者と対話の機会を設けるような運営を行っていることは不合理、不当でなく、Xらの削除要請を広告掲載の交換条件として、事実上削除処理を拒絶したことは、認められないとした。

サイト運営者が公平に運営しているのに、インターネット利用者が、不当に取り扱われ、名誉毀損、信用毀損の権利侵害を受けたと思い込んだ事例のようである。

TVブレイク事件

無許諾の音楽付動画ファイル視聴サービスが音楽著作権者の公衆送信権等を侵害するとされた事例である。

知財高裁平成22年9月8日判決(平成21年(ネ)第10078号判時2115号103頁)
東京地裁平成21年11月13日判決(判時2076号93頁判タ1329号226頁)

(1)東京地裁平成21年11月13日判決
 被告Y1(ジャストオンライン社)は、インターネット上で、動画投稿・共有サービスを運営する会社で、旧商号を株式会社パンドラTVといい、平成17年11月10日、インターネット等の通信ネットワークを利用した映像コンテンツ配信事業等を目的として設立された株式会社である。  被告Y2は、Y1の代表者である。

原告X(日本音楽著作権協会JASRAC)は、音楽著作物の著作権等の管理事業者である。 原告Xは、被告Y1が主体となって、そのサーバーに原告Xの管理著作物の複製物を含む動画ファイルを蔵置し、これを各ユーザーのパソコンに送信しているとして、

  1. 被告Y1に対して著作権(複製権及び公衆送信権)に基づいて、それらの行為の差止を求めると共に、
  2. 被告Y1及び被告Y1代表者Y2に対して、不法行為(著作権侵害)に基づいて過去の侵害に対する損害賠償金及びこれに対する遅延損害金並びに将来の侵害に対する損害賠償金の連帯支払

を求めた。

すなわち、音楽著作権者であるXが、

  1. 別紙記載の音楽著作物を、被告Y1のサーバーの記録媒体に複製し、又は公衆送信することの禁止、
  2. 被告Y1Y2各自が、原告Xへ1億28174888円支払え、
    1. 被告Yらは、原告Xに対し、各自平成20年4月25日から同年11月4日まで1月当たり、944万円支払え、
    2. 被告らは、各自、平成20年11月5日から、被告Y1が別紙サービスにおいて、別紙記載音楽著作物の複製及び公衆送信(送信可能化を含む)を停止するに至るまで1か月当たり504万円支払え、

との請求の訴訟を提起した。

被告Yらは、本件サービスにおいて、著作権侵害の主体は、ユーザーであると主張した。
被告Yらは、原告Xは、本件管理著作物を示すことはしても権利侵害コンテンツとする具体的な権利侵害情報の特定をしないまま漠然と権利侵害通知をしたのみであるから被告Y会社は、具体的な権利侵害の認識はない。放置したことをもって被告Y1が著作権侵害の主体という結論は導くことはできない等の反論を行った。

[東京地裁判決]
民事40部の岡本岳裁判長は、次のように述べて、音楽著作権者の公衆送信権等を侵害するとして、差止請求を認容するとともにし、約9000万円の損害賠償を命じた。
「著作権法上の侵害主体を決するについては、当該侵害行為を物理的、外形的な観点のみから見るべきではなく、これらの観点を踏まえた上で、実態に即して、著作権を侵害する主体として責任を負わせるべき者と評価することができるか否かを法律的な観点から検討すべきである。」「この検討に当たっては、問題とされる行為の内容・性質・侵害の過程における支配管理の程度、当該行為により生じた利益の帰属等の諸点を総合考慮し、侵害主体と目されるべき者が自らコントロール可能な行為により当該侵害結果を招来させてそこから利得を得た者として、侵害行為を直接に行う者と同視できるか否かとの点から判断すべきである。」とし、「被告Y1は、著作権侵害行為を支配管理できる地位にありながら著作権侵害行為を誘引、招来、拡大させてこれにより利得を得る者であって、侵害行為を直接に行う者と同視できるから、本件サイトにおける複製及び公衆送信(送信可能化を含む。)に係る著作権侵害の主体というべきである」とした。

主文

  1. 被告Y1は、1,別紙記載の音楽著作物を、原告のサーバーの記録媒体に複製し、又は公衆送信することをしてはならない。
  2. 被告各自が、原告へ各自8993万円及びうち5748万円に対する平成20年4月24日から支払い済みまで年5分の割合の金員を支払え。
  3. 請求の趣旨第3項(2)に係る訴え中、被告らに平成21年9月12日以後に生ずべき損害賠償金の支払いを求める部分を却下する。
  4. 原告のその余の請求(訴え却下部分を除く)をいずれも棄却する。
  5. (省略)
  6. (省略)

[知財高裁判決]
知財高裁第4部滝澤孝臣裁判長は、原判決の文章を基にして加除あるいは、改変し、その上で、「原判決は相当であって、本件控訴は棄却」とした。
著作権侵害主体について、次のように述べている。
「控訴人会社が、本件サービスを提供し、それにより経済的利益を得るために、その支配管理する本件サイトにおいて、ユーザーの複製行為を誘引し、実際に本件サーバーに本件管理著作物の複製権を侵害する動画が多数投稿されることを認識しながら、侵害防止装置を講じることなくこれを容認し、蔵置する行為は、ユーザーによる複製行為を利用して、自ら複製行為を行ったと評価することができるものである。よって、控訴人会社は、本件サーバに著作権侵害の動画ファイルを蔵置することによって、当該著作物の複製権を侵害する主体であると認められる。また、本件サーバに蔵置した上記動画ファイルを送信可能化して閲覧の機会を提供している以上、公衆送信(送信可能化を含む。)を行う権利を侵害する主体と認めるべきことはいうまでもない。以上からすると、本件サイトに投稿された本件管理著作物に係る動画ファイルについて、控訴人会社がその複製権及び公衆送信(送信可能化を含む。)を行う権利を侵害する主体であるとして、控訴人会社に対してその複製又は公衆送信(送信可能化を含む。)の差止めを求める請求は理由がある。」

この知財高裁判決は、一定の条件下、動画投稿サイト自身が複製の主体に当たると認めている、とされる。小泉直樹教授は、「クラウド時代の著作権法」において、「このようなサービスにおいて、動画投稿サイトが投稿された違法著作物のファイル形式の統一を行う場合、当該統一行為自体については47条の9の適用を受けるが、形式を統一したファイルを著作権者に無断でサーバーに蔵置する行為自体は、『準備に必要』とはいえないので違法であることに変わりはない。」とされる。
平成24年著作権法改正により、情報通信の技術を利用した情報提供の場合(各種動画投稿サイト、SNSなど)、「記録媒体への記録または翻案」など準備に必要な情報処理のための利用を、著作権侵害にしない、という「47条の9」が設けられた。このことと、当該情報自体が著作権侵害物であること、は別で47条の9によって影響を受けない、ことが小泉直樹教授、池村聰弁護士の問答(ジュリスト1449号17頁)で明らかにされている。また、サーバーへの蔵置が、「準備」にあたる(当該提供を円滑かつ効率的に行うための「準備」に必要な電子計算機による情報処理を行うのため必要な限度であること)とされれば、47条の9により合法である。
この判決は、クラウド・コンピューテイングに関連して、重要な判決となった。

[参考文献]
岡村久道「プロバイダ責任制限法上の発信概念と著作権の侵害主体」(堀部政男監修「プロバイダ責任制限法実務と理論」(商事法務・2012年)116頁)
田中豊編「判例で見る音楽著作権訴訟の論点60講」184頁(市村直也執筆)
小泉直樹、池村聰、高杉健二「平成24年著作権法改正と今後の展望」ジュリスト1449号12頁。小泉直樹「日本におけるクラウド・コンピューテイングと著作権」(小泉直樹、奥邨弘司、駒田泰土ほか「クラウド時代の著作権法」勁草書房・2013)25頁。

「モータ」ウエブ特許権侵害事件

発明の名称を「モータ」とする日本国特許権をもつ日本企業は、被告の韓国企業がその侵害をした物件の譲渡の申出をしているとし、その差止請求及び損害賠償請求を行ったが、被告企業は、そのウエブサイトで被告物件の譲渡の申出をしたと認められず、日本に国際裁判管轄がないとして、1審では、訴えが却下されたが、2審で原判決が取り消され、大阪地裁に差し戻された事例である。

知財高裁平成22年9月15日判決(平成22年(ネ)第10001号、第10002号、第10003号)
大阪地裁平成21年11月26日判決(平成20年(ワ)第9732号、判時2081号131頁)

原告X(日本電産株式会社)は、「モータ」という名称の特許権を有している。
被告Y(三星株式会社)は、サムスングループに所属する韓国法人で、日本に主たる事務所又は営業所を持たない(2008年当時、売上高4兆2845億ウオン、従業員24000名)。

Xは、被告Y(三星電機株式会社)のY物件は、X発明の技術的的範囲に属するもの、即ち特許権を侵害しているとし、

  1. Yは、特許法100条1項に基づく被告物件の譲渡の申出の差止め、および
  2. 不法行為に基づく損害賠償金300万円及び遅延損害金の支払を求めて、訴えた。

すなわち、Xは、Yが日本国内で閲覧可能なウエブサイトで、被告Y物件を紹介するとともに、被告物件の販売の申出を行っている、と主張した。
Yは、日本に於けるY物件の譲渡の申出又はそのおそれにつき証明がされていない、とし、日本に国際裁判管轄がないと主張した。

[大阪地裁]
民事21部田中俊次裁判長は、次のように判断した。

  1. 国際裁判管轄の判断基準について。
     日本の裁判所に提起された訴訟の被告が、外国に本店を有する外国法人の場合、当該法人が進んで服する場合のほかは、日本の裁判権が及ばないのが原則である。例外として、当事者間の公平や裁判の適正・迅速の理念により条理にしたがって日本の国際裁判管轄を肯定しうる。(最高裁昭和56年10月16日判決)。
    そして、日本の民訴法の裁判籍のいずれかが日本国内にあるときは、原則として被告を日本国の裁判籍に服させるのが相当だが、日本で裁判を行うことが当事者間の公平、裁判の適正・迅速の理念を期するという理念に反する特段の事情があると認められる場合には、日本の国際裁判管轄を否定すべきである(最高裁平成9年11月11日判決)。
  2. 民訴法5条9号の不法行為地の裁判籍の規定に依拠して、日本の国際裁判管轄を肯定するためには、原則として、Yが日本においてした行為によりXの法益について損害が生じたことの客観的事情が証明されることを要し、かつそれで足りる(最高裁平成13年6月8日判決(ウルトラマン事件判決))。日本において損害が発生したことが証明されるのみでは足りず、不法行為の基礎となる客観的事実としてXが主張する事実、すなわち、本件においては、日本国特許権である本件特許権の侵害事実としての、日本におけるY物件の譲渡の申出の事実が証明される必要がある。
  3. Yのウエブサイトの表示、営業部長の陳述書、日本語で「経営顧問」と標記されたYの経営顧問の名刺、送達の経緯等を考慮しても、Yが日本において、Y物件の譲渡の申出を行った事実を認めることはできない。不法行為に基づく日本の国際裁判管轄を否定した。
  4. 特許権侵害差止請求の国際裁判管轄について、日本における譲渡の申出の事実が証明されなくても、そのおそれを具体的に基礎づける事実(抽象的なおそれでは足りず、具体的であること)が証明された場合、条理により、日本の国際裁判管轄を肯定する余地もあるが、本件では、Y物件の譲渡の申出をする具体的なおそれがあると推認することはできないとし、特許権侵害の差止請求についても日本の国際裁判管轄を否定し、

    [判決主文]

    1. 本件訴えを却下する。
    2. 訴訟費用は原告の負担とする。

1審原告日本電産株式会社が控訴した。

[知財高裁]
第2部中野哲弘裁判長は、「主文 1,原判決を取り消す。2,本件を大阪  地裁に差し戻す。」と判決した。理由は、以下の通り。

  1. 「特許権に基づく差止請求は」「民訴法5条9号にいう『不法行為に関する訴え』に含まれる」(最高裁平成16年4月8日判決)。不法行為地は、加害行為地と結果発生地の双方が含まれる。「Yによる『譲渡の申出行為』について、申出の発信行為又はその受領という結果の発生が客観的事実関係として日本国内においてなされたか否かにより、日本の国際裁判管轄の有無が決せられる」とした。
  2. 「Yが、英語表記のウエブサイトを開設し、製品として被告物件の1つを掲載」「『Sales Inquiry』(販売問合せ)として『Japan』(日本)を掲げ、『Sales Headquarter』(販売本部)として、日本の拠点(東京都港区)の住所、電話、Fax番号が記載されていること、日本語表記のウエブサイトにおいても、『Slim ODD Motor』を紹介するウエブページが存在し、同ページの『購買に関するお問合わせ』の項目を選択すると、『Slim ODD Motor』の販売に係る問合せフォームを作成することが可能であること…(以下省略)」「などを総合的に評価すれば、Xが不法行為と主張する被告物件の譲渡の申出行為について、Yによる申出の発信行為又はその受領という結果が、我が国において生じたものと認めるのが相当である。」「我が国における当該サイトの閲覧者は、英語表記のウエブサイトにより、少なくとも被告物件の1つについての製品の仕様内容を認識し、日本所在の販売本部の住所等を知りうるだけでなく、日本語表記のウエブサイトにおいても、『Slim ODD Motor』の製品紹介を見て、『購買に関するお問合わせ』の項目を選択し、『Slim ODD Motor』の販売に係る問合せフォームを作成することが可能なのであるから、これらのウエブサイトの開設自体がYによる『譲渡の申出行為』と解する余地がある。」
インターネット上の知的財産権侵害について、その国際裁判管轄が問題とされた事例である。1審は、裁判管轄権はないとし、2審は認めた。
特許法2条3項の「譲渡の申出」は、平成6年改正で追加された。「申出」には、発明に係る物を譲渡のために展示する行為は含まれる。1審で、原告は、インターネット上で、「譲渡の申出」があったと主張したが、認められなかった。2審は、ウエブサイトの態様等を理由に不法行為地に基づく、日本の国際裁判管轄を認め、大阪地裁に差し戻した。
最高裁平成13年6月8日判決(ウルトラマン事件判決)については、上松盛明・大家重夫「ウルトラマンと著作権」(青山社・2015年2月)に判決文が掲載されている。

[参考文献]
1審判決につき、道垣内正人・Law &Technology 50号80頁(2011年1月)。2審判決につき、横溝大「特許権被疑侵害製品のウエブサイトへの掲載と国際裁判管轄」ジュリスト1417号(2011年3月1日号)172頁。

学習塾登録商標事件

被告学習塾が、「塾なのに家庭教師」という標章をチラシやウエブサイトで使用したことが、原告学習塾の登録商標の侵害ないし商標的使用であるとして訴えられ、その請求が棄却された事例である。

東京地裁平成22年11月25日判決(平成20年(ワ)第34852号)

原告(株式会社名学館)は、学習塾の経営並びにこれに関するノウハウの販売、経営指導及び業務受託等を行う会社で、直営校15,フランチャイズ契約校142である。
被告(株式会社東京個別指導学院)は、学習塾及び文化教室の経営並びにこれに関するノウハウの販売、経営指導及び業務受託等を行う会社で、直営学習塾192を経営している。

原告は、平成14年4月9日、指定役務第41類「学習塾における教授」に商標登録を出願し、平成15年6月20日設定登録された。本件登録商標は、「塾なのに家庭教師」の文字列と2つの感嘆符とを黄色に着色し、これに青色の縁取りが施された標章である。
原告は、被告が「塾なのに家庭教師」という標章をチラシやウエブサイトで使用したことが、原告学習塾の登録商標の侵害ないし商標的使用であるとして、被告が生徒募集、従業員募集等の折り込み広告に被告標章目録1ないし4,ウエブサイト上の広告に被告標章目録5の標章を付して提供することの禁止、1億7100万円の損害賠償を求め、また予備的請求も加えて提訴した。

 原告は、被告各標章は原告の登録商標と同一又は類似の商標と主張し、被告がチラシやウエブサイトで、「塾なのに家庭教師」を使用することは、商標的使用と主張した。
被告は、「塾なのに家庭教師」は、広く用いられて自他識別力がない、黄色の文字列、青色の縁取りの組合せ、文字列の工部の2つの感嘆符もないから、本件登録商標と類似していない、「塾なのに家庭教師」というフレーズを、チラシや被告ウエブサイトで使用する際、被告の出所を表示する「東京個別指導学院」「関西個別指導学院」又は「TKG」を付した。被告による被告チラシ及び被告ウエブサイトにおける被告標章の使用は、商標的使用でないと主張した。

[東京地裁]
民事46部の大鷹一郎裁判長は、「被告による被告チラシ及び被告ウエブサイトにおける被告各標章の使用は、本来の商標としての使用(商標的使用)に当たらないから、その余の点について判断するまでもなく、本件商標権の侵害行為又は侵害行為とみなす行為のいずれにも該当しない」として、原告の請求を棄却した。

「塾なのに家庭教師」をチラシ、ウエブサイトに使うことは、商標的使用に当たらないとした。アリカ商標事件(2011-6)参照。

住宅ローン金利比較表事件

被告である(財)住宅金融普及協会のホームページ中の「住宅ローン商品 金利情報」が、原告ウエブサイトの「図表」あるいは「編集著作物」、「データベースの著作物」の著作権侵害であると主張し、被告の当該ウエブページの閉鎖と706万4000円の損害賠償を求めたが、請求を棄却された事例である。

東京地裁平成22年12月21日判決(平成22年(ワ)第12322号)

原告は、平成20年4月から「銀行商品コム」という名称のウエブサイトに住宅ローン金利の比較表を掲載し、ここに図表部分がある(これを「本件図表」という)。図表の金利情報は、随時更新されている。
被告は、(財)住宅金融協会で、平成20年頃から、「住まいのポータルサイト」という名のウエブサイトを運営し、ここに「住宅ローン商品 金利情報」を掲載している。金利情報は随時更新されている。

原告は、

  1. 本件図表は、「図表の著作物」(著作権法10条1項6号)である。
  2. 本件図表は、「編集著作物」(同法12条1項)である。
  3. 本件図表は、「データベース」の著作物である、

と主張し、被告により、複製権及び公衆送信権が侵害されたとして、706万4000円(バナー広告料収入相当額の損害570万円、有料会員会員料金相当額4月分136万4000円)の損害賠償と当該ウエブページの閉鎖を求めた。

被告は、本件図表の著作物性を争い、また、被告は独自に被告図表を作成し、原告の本件図表に依拠していない、59箇所の相違点がある、本件図表は「一般的にありふれたもの」と主張した。東京地裁民事第46部大鷹一郎裁判長は、「本件図表が『図形の著作物』『編集著作物』又は『データベースの著作物』であることを認めることはできない。」として原告の請求を棄却した。

原告には、訴訟代理人がついていない。

2011年

公明党都議肖像写真事件

公明党都会議員のホームページから、肖像写真の電子データヲダウンロードして、ビラやブログ等に写真を掲載た行為に対して、著作権侵害および著作者人格権侵害が認められ、ビラの頒布禁止、廃棄、送信可能化等の差止と損害賠償78万5000円の損害賠償が認められた事例である。

東京地裁平成23年2月9日判決(平成21年(ワ)第25767号、反訴平成21年(ワ)第36771号)

原告Xは、職業カメラマンで、公明党都議の肖像写真(本件写真)を撮影した者である。
被告Yは、「A調査会」ないし「A1調査会」の名称で、政治活動を行っている者である。

被告Yは、公明党都議Bのウエブサイトから本件写真の電子データをダウンロードし、これを利用して、別紙写真(カラーからモノクロ、縦横の比率を変更)を作成し、

  1. ビラに掲載し、通行人に頒布し、
  2. 自ら管理するインターネット上のウエブサイトにアップロードし、自己のブログに掲載し、
  3. また別紙写真を街宣車の車体上部に設置された看板に掲載した。

この被告行為を知った原告は、著作権(複製権、譲渡権、公衆送信権)侵害、著作者人格権(同一性保持権)侵害であるとして、著作権法112条に基づき、

  1. 本件写真掲載のビラ頒布の差止と廃棄、
  2. 写真をインターネット上のウエブサイトで送信可能化することの差止め、

を求め、不法行為による損害賠償請求権に基づき、損害賠償金400万円(著作権(財産権)侵害200万円、著作者人格権侵害による精神的損害150万円、弁護士費用50万円)及び遅延金の支払を求めた。

東京地裁民事40部の岡本岳裁判長は、損害賠償金78万5000円(財産権侵害58万5000円、著作者人格権侵害10万円、弁護士費用10万円)とし、これ以外の原告の請求をすべて認容した。

裁判所は、写真の著作物性について、「職業写真家である原告の思想、感情が創作的に表現された著作権法上の著作物であることは明白である。」としている。被告は、訴訟代理人をつけず争い、「引用」であると主張したが認められなかった。
被告は、原告による刑事告訴及び本訴提起が不法行為であるとして不法行為による損害賠償請求権に基づき、刑事告訴による慰謝料100万円及び本訴提起による逸失利益500万円の合計600万円の内金100万円の支払いを求める反訴を提起したが、棄却された。

データSOS事件

ウエブサイトの文章が類似するが、著作権侵害に当たらない、とされた事件である。

知財高裁平成23年5月26日判決(平成23年(ネ)第10006号判時2136号116頁判タ1386号322頁)
東京地裁平成22年12月10日判決(平成20年(ワ)第27432号)

[東京地裁判決]
 原告は、コンピュータの保守、管理、コンピュータにおいて、バックアップされていないデータがコンピュータ上で出力できなくなった場合、そのデータをコンピュータ等から取り出して復元するサービスの請負などを行う会社である。
原告は、2006年10月から12月にかけて、データ復旧サービスを一般に周知させ、顧客を誘引するためウエブページを創作し、これを自社のウエブサイトに「データSOS」の題名で掲載し、その後も文章を推敲、改良し、2007年4月28日、データ復旧サービスに関するウエブページを完成させた。
 被告は、コンピュータ機器開発販売会社である。被告も被告のウエブサイトにデータ復旧サービスに関する文章を掲載した。
 原告は、被告の文章は、原告の文章の著作権侵害であるとして、訴えた。

すなわち、原告は、

  1. 主位的に、被告の行為は、原告のウエブページにコンテンツ又は広告用の文章の複製又は翻案であるとして、原告の著作権侵害(複製権、翻案権、公衆送信権、二次的著作物に係る利用)及び著作者人格権(氏名表示権、著作権法113条6項のみなし侵害)を侵害する行為であるとして、損害賠償1650万3562円及び遅延損害金、著作権法115条に基づく謝罪広告を求め、
  2. 予備的に、被告行為は、一般不法行為に当たる

として、1,と同額の損害賠償金及び遅延損害金、民法723条に基づく謝罪広告を求めた。

東京地裁民事40部岡本岳裁判長は、次のように述べて、原告の請求を棄却した。

  1. 原告は、被告が(原告の)どの部分の著作権を侵害したか主張していない。
  2. 原告の広告用の文章作成者の個性が現れていなく、原告の文章の創作性がない部分において、被告の文書と同一であるにすぎない。
  3. 被告文章が著作権侵害でなく、翻案権侵害でない以上、著作者人格権の侵害もない。
  4. 一般不法行為について、被告文章が原告文章に依拠して作成されたとしても、被告の行為は、公正な競争として社会的に許容される限度を逸脱した不正な競争行為として不法行為を構成すると認められない、とした。

[知財高裁判決]
知財高裁第4部は、次のように判断し、控訴を棄却した。

  1. 被控訴人がウエブサイトに掲載したデータ復旧サービスに関する文章が、控訴人がウエブサイトに掲載したコンテンツ又は広告用文章に係る控訴人の著作権(複製権、翻案権、二次的著作物に係る公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)の侵害にも、著作権法113条6項のみなし侵害)にも当たらない。
  2. 被控訴人が控訴人の広告と同一ないし類似の広告をしたからといって、被控訴人の広告について著作権侵害が成立せず、他に控訴人の具体的な権利ないし利益の侵害が認められない以上、不法行為が成立する余地はない。
平成25年のナビキャスト事件(東京地裁平成25年9月12日判決)は、入力フォームのアシスト機能に係るサービスの説明資料が類似しているという事件で、原告資料が著作物であるとされ、原告が勝訴している。この事件で、原告は、「個性が現れている文章」、「創作性がある文章」にすべきであった。ウエブサイト上の図表について、著作物の主張をしたが、図形の著作物、編集著作物、データベースの著作物でもないとされた東京地裁平成22年12月21日判決(2010-11)がある。

イカタコウイルス事件(刑事)

コンピュータウイルスを受信、実行させるなどの行為がパソコンのハードデスクの効用を害したとされ、器物損壊罪に当たるとされた事例である。

東京地裁平成23年7月20日判決(平成22年刑(わ)第2150号
平成22刑(わ)第2651号、判タ1393号366頁)

 本件は、いわゆるイカタコウイルス(又はタコイカウイルス)と呼ばれるコンピュータウイルスをインターネット上に公開して被害者に受信、実行させた行為が器物損壊罪に問われたものである。

器物損壊罪の「損壊」が物の物理的破壊に限らず、効用喪失を含むとしている(飲食用のすき焼き鍋や徳利に放尿する行為を器物損壊罪にした大審院明治42年4月16日刑録15巻452頁)。本判決は、

  1. 効用侵害の有無につき、ハードデスクは、読み出し機能と書き込み機能の2つが本来的効用で、ウイルスの感染により2つの機能が失われたこと、
  2. いずれの効用も一般人には容易に現状回復できない

として、器物損壊罪の成立を認め、岡部豪裁判長は、被告人を懲役2年6月に処した。「刑法第261条 前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。」

コンピュータ・ウイルスを、「感染」させる行為が、器物損壊罪に当たる、という判例である。

NHKテレビ海外インターネット送信事件

テレビ番組を海外居住者向けにインターネット配信する事業者に対し、NHKが著作隣接権(送信可能化権、複製権)に基づき、訴訟し、被告が1257万2459円の損害賠償を命ぜられた事例である。

東京地裁平成23年9月5日判決(平成22年(ワ)第7213号)

原告は、日本放送協会(NHK)。
被告は、インターネット事業等を業とするジェーネットワークサービスインターナショナル非公開株式会社(本店所在地タイ王国バンコック市)の代表者である。

被告は、平成18年頃、「ジェーネットワークサービス」の名称で、海外居住者向けに日本国内でテレビ放送された番組を有料でインターネット配信する事業を始めた。
被告は、平成18年頃、(株)スフィアの代表者Bと同社従業員Cと協議、次のような配信システムを完成させた。

  1. ケーブルテレビ等の配線から、テレビ番組の映像(音及び影像)を受信し、チューナーを通してサーバー機に入力し、コンピュータが処理できるようデータ変換し、「Windows Mediaサービス」を使用して、利用者に対し、テレビ映像データをストリイーミング配信する。利用者がサーバー機からファイルをダウンロードすることなく、リアルタイムで画像と音が視聴できる動画配信方式である。
  2. ケーブルテレビ等の配線から、テレビ番組の映像(音及び影像)を受信し、チューナーを通してサーバー機に入力し、動画ファイル形式へとデータ変換を行い、この動画ファイルデータを記録媒体に記録し、録画用サーバー機に記録された動画ファイルデータをウエブサイト用ソフトウエアがインストールされたサーバー機の記録媒体に複製又は移動させ、利用者からの求めに応じて、利用者が、上記動画ファイルデータをダウンロードすることを可能とした。

被告は、平成18年11月30日、タイ現地人を代表者とするジェーネット合資会社を設立、同年12月8日、東京都に同社の日本支店を置いた。
被告は、千葉県市原市内に、サーバー機を複数台設置し、被告本人を契約者として、ケーブルテレビ契約、光りファイバーケーブルによるインターネット回線契約、インターネットサビスプロバイダ契約をそれぞれ締結した。(株)スフィアとの間で、配信システム等のメインテナンス契約及びサーバー機の維持管理契約を無神だ。
平成18年12月、本件サービスの提供を開始した。

NHKは、このサービスは、

  1. ストリーミング配信システム、
  2. 動画ファイル形式による記録及び配信システムに拠るものであるが、原告NHKの送信可能化権及び複製権を侵害する

とし、損害賠償金1463万8450円を求めて訴えた。

被告は、サーバー機に自働公衆送信機能があるとの点、及び利用者が送信側の機器を操作するものでない、とする点を否認し、本件サービスはの利用は、各利用者による機器の操作が不可欠である、「契約者から個々の機械を預かる代わりに高額なソフトを導入し、個々の契約者に仮想PCを割り当て各契約者に機器の操作を可能ならしめることにより、本件サービスが著作権法に違反することはないと考えていた」と述べた。

東京地裁民事29部大須賀滋裁判長は、1)のストリーミング配信システム、2)の動画ファイル形式による記録及び配信システムにおいて、原告の送信可能化化権侵害を認め、2)の動画ファイル形式による記録及び配信システムにおいて、原告の複製権を侵害していると認定した。なお、損害賠償については、被告の得た利益から他社のテレビ放送に係る部分や衛星放送に係る部分を控除して損害額を算定し、原告の請求を一部認容、1257万2459円の支払いを命じた。

ロクラクII事件(2012-2)、「まねきテレビ」事件(2012ー3)と同種の事件である。

ウイニー事件(刑事)

最高裁平成23年12月19日決定(平成21(あ)第1900号刑集65巻9号1380頁)(刑事事件)
大阪高裁平成19年10月8日判決(平成19(う)第461号)
京都地裁平成18年12月13日判決(平成16(わ)第726号)

 元・東大助手X(金子勇)は、平成14年5月、ファイル交換ソフト・ウイニーを開発し、ネット上に公開し、配布した。平成15年11月、AおよびBは、このウイニーを用いて、米国映画、ゲームソフトを違法にコピーし、ABは、それぞれ、著作権法違反で、逮捕され、懲役1年、執行猶予3年の判決を受けた。開発者Xも逮捕された。

[京都地裁]
平成18年判決は、Xを有罪とした。

Xは、

  1. ウイニーによって、著作権侵害がインターネット上に蔓延することを積極的に企図したとまでは認められないが、
  2. 著作権侵害が起こることを認識しながら不特定多数の者が入手できるようにホームページで公開しており、幇助罪に当たる。
  3. 社会に生じる弊害を十分知りつつ、ウイニーを公開しており、独善的かつ無責任で非難は免れない。

として罰金150万に処した。幇助罪の成立要件として「ウイニーの現実の利用状況やそれに対する認識、提供する際の主観的態様がどうかということになる」との基準をあげて、幇助犯成立とした。

「主文」
 被告人を罰金150万円に処する。その罰金を完納することができないときは、金1万円を1日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。訴訟費用は被告人の負担とする。」 Xは控訴した。

[大阪高裁]
平成19年、Xを無罪とした。大阪高裁は、

  1. 著作権侵害の幇助犯の成立は、侵害する者が出る可能性があると認識していただけでなく、ソフトを侵害の用途で使用するようインターネット上で勧めていることが必要であるとし、
  2. 被告人Xは、侵害の可能性を認識していたが、ネット上での発言を見ても著作権侵害の用途で使うよう勧めていたとはいえない。
  3. 原審のように認めると、ソフトが存在する限り、無限に刑事責任を問われることになり、罪刑法定主義の観点から慎重に判断することが必要、

とした。

[最高裁]
最高裁第3小法廷は、検察からの上告を棄却した。
被告人において、本件ウイニーを公開、提供した場合に、例外的とはいえない範囲の者がそれを著作権侵害に利用する蓋然性が高いことを認識、認容していたとまで認めることは困難である。したがって、被告人は著作権法違反罪の幇助犯の故意を欠く、とした。
言い換えれば、ウイニーは、中立価値のソフトである、入手者のうち例外的といえない範囲の人が著作権侵害に使う可能性を認容して、提供した場合に限って、幇助に当たる、とした。4人の裁判官のうち1人の裁判官は、幇助犯が成立すると反対意見を述べた。

非常に難しい事件である。

[参考文献]
林幹人「ファイル共有ソフトWinnyの公開・提供と著作権法違反幇助罪の成否」(「平成24年度重要判例解説」152頁)

アリカ商標事件

登録商標の使用をしているかどうかが争われ、最高裁が「指定役務についての本件商標の使用をしていない」と判決した事例。

最高裁平成23年12月20日判決民集65巻9号3568頁判時2143号119頁
知財高裁平成21年3月24日判決平成20年(行ケ)第10414号

 日本の商標法は、継続して3年以上、日本国内において、商標権者、専用又は通常使用権者が、指定商品又は指定役務について、登録している登録商標を使用していないとき、何人もその登録商標を取り消すよう、特許庁に審判を請求することができる(50条1項)。ゲームソフトの企画、制作、販売等を業とするX(株式会社アリカ)は、平成13年1月22日、本件商標登録出願をし、平成14年3月1日、設定登録を受けた。
Y(株式会社ARICA)は、貸別荘や貸しビルなど不動産業者のようである。

 Yは、平成19年3月15日、本件商標につき、商標法50条1項に基づき、指定役務のうち第35類に属する6役務についての不使用を理由に、それらの役務に係る商標登録の取消の審判を請求し、同年4月4日その旨の予告登録がなされた。
特許庁は、平成20年9月26日、本件商標の「指定役務中、第35類『広告、経営の診断及び指導、市場調査、商品の販売に関する情報の提供、ホテルの事業の管理、広告用具の貸与』については、その登録を取り消す」旨の審決をした。
理由は、原告の提出した「会社案内」の「インターネットのホームページ」は、いずれも自社の商品ないし自社の開発した商品の広告にすぎない、本件商標を「商品の販売に関する情報の提供」の役務について使用していると認められない、であった。

Xは、この審決の取消を求め訴えを起こした。審決に対する訴えは、東京高等裁判所の専属管轄である(商標法63条)。知的財産高等裁判所法(平成16年6月18日法律第119号)により、東京高等裁判所内に知的財産高等裁判所が置かれ、ここで、知的財産権に関する訴訟が取り扱われる。

[知財高裁]
Xは自社のウエブサイトで、自社が開発したゲームソフトを紹介するとともに、本件各商品を販売するA社、B社の各ウエブサイトを閲覧し、同ウエブサイトから利用者が本件商品が購入できるなど、「本件商標が使用されている」と主張した。
知財高裁平成21年3月24日判決は、本件各行為により、前記予告登録前3年以内に日本国内で本件指定役務についての「本件商標の使用をしていた」と判断し、Xが勝訴した。
これに不服のYは、最高裁へ上告した。

[最高裁]
最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長、那須弘平、田原睦夫、岡部喜代子、寺田逸郎裁判官)は、「原判決を破棄する。被上告人の請求を棄却する。」との判決を下した。

理由は、

  1. 本件指定役務は、「商業等に従事する企業に対して、その管理、運営等を援助するための情報を提供する役務をいう」とし、
  2. Xの各行為は、Xのウエブサイトで、Xが開発したゲームソフトを紹介するとともに、他社の販売する本件各商品を紹介するに過ぎない、「商業等に従事する企業に対して、その管理、運営等を援助するための情報を提供するものとはいえない」とし、本件各行為により、Xが本件指定役務についての本件商標の使用をしていたといえない、

とした。

商標権に関連して2009-2、2005-6などがある。

[参考文献]西村雅子・判例評論647号17頁(判時2166号163頁)

2012年

2ちゃんねる名誉毀損事件

インターネットのウエブサイトにおける書き込みが名誉毀損の不法行為に当たるとして、書込みの発信者に慰謝料100万円、弁護士費用10万円、書込みの発信者の調査費用63万円、合計173万円の損害賠償が認められた事例である。

東京地裁平成24年1月31日判決(平成23年(ワ)第5572号、判時2154号80頁)

原告Xは、システムエンジニアを行う個人事業主である。
被告Y1,は、電気通信機器の販売、工事および保守等を行う株式会社である。被告Y2は、被告Y!の従業員である。

Xは、Y1会社との間で、包括的な業務委託契約を締結し、それに基づいて、株式会社戊田(以下、戊田社)において、システム担当として働いている。
不特定多数の者が閲覧可能な「2ちゃんねる」と題するウエブサイト内の「戊田社総合スレッド」というスレッドにおいて、Xの実名、風貌等に言及、「女子トイレに入るのを見た」、Xらしい人物が、盗撮をしたとうかがわせる「会社の女子トイレの盗撮映像がネットにながれているがいいんか」などと書かれていた。Xは、戊田社の役員から、書き込みの事実を指摘され、来期は、契約がないかも知れないと、言われた。Xは、書き込みの主体を特定するため、弁護士に依頼し、調査費用63万円をかけて、Y1会社の従業員Y2が、書き込みの犯人であると突き止めた。

Xは,Y1,Y2に対し連帯し、名誉毀損の不法行為として慰謝料400万円、弁護士費用100万円、調査費用63万円の合計503万円の損害賠償を請求した。
東京地裁杉本宏之裁判官は、Y2が、Y1の職務執行中でなく、休暇中に、Y2の携帯電話ドコモの「F904i」から投稿されたと認定し、次の判決を下した。

[主文]

  1. 被告Y2は、Xに対し、173万円(慰謝料100万円、弁護士費用10万円、書き込み発信者の調査費用63万円)及びおれに対する平成22年6月25日から支払済みまで年5分の割合の金員を支払え。
  2. 原告のその余の請求を棄却する。
  3. 訴訟費用(省略)。
  4. 1項に限り、仮に執行することができる。
本件書き込みは、携帯電話からなされている。Y2は、Xへ恨みがあったのであろうか。Y2は、分からないと思っていたのであろうか。民法710条により、Y1会社にも責任があると、Xは主張したが、就業時間外であるとし、使用者責任が否定されている。Y1会社とXは、どういう関係だったか知りたい。

ロクラクII事件

インターネット通信によるTY番組ネット送信サービスは、著作権侵害、著作隣接権侵害か、という事件である。

知財高裁平成24年1月31日判決(判時2141号117頁。)
最高裁第一小法廷平成23年1月20日判決(民集65巻1号399頁判時2103号128頁判タ1342号100頁)
知財高裁平成21年1月27日判決(平成20年(ネ)第10055号、10069号)
東京地裁平成20年5月28日判決(判時2029号125頁判タ1289号234頁)

[東京地裁]
原告は、日本放送協会、日本テレビ放送網(株)、(株)静岡第一テレビ、(株)東京放送、静岡放送(株)、(株)フジテレビ、(株)テレビ静岡、(株)テレビ朝日、(株)静岡朝日テレビ、(株)テレビ東京である。
 被告は、(株)日本デジタル家電である。

被告は、「ロクラクIIビデオデッキレンタル」という名称の事業を始めようとした。
日本国内で放送されるテレビ番組を複製し、被告のそのサービスの利用者が海外で視聴できるようにしたものである。
すなわち、ハードデイスクレコダー2台のうち、1台(親機)を日本国内に置き、受信するテレビ放送の放送波を親機に入力するとともに、これに対応するもう1台(子機)を利用者に貸与又は譲渡することにより、当該利用者をして、子機を操作する。
親機ロクラクは、インターネット通信機能付き地上アナログ放送用TVチユーナー内蔵ビデオ録画装置をもち、テレビ番組を複製、複製した番組データを子機ロクラクに送信し、子機ロクラクは、インターネット上、親機ロクラクに録画を指示し、親機ロクラクから録画データの送信を受け、これを再生する。利用者は、子機ロクラクで、番組データを再生して、テレビ番組を視聴する。

 原告であるNHK、放送会社は、この被告の行為は、原告らが著作権を有する番組を複製し、又は原告らが著作隣接権を有する放送に係る音又は映像を複製する行為に当たるから、原告らの著作権(複製権=法21条)、又は著作隣接権(複製権=法98条)を侵害するとして、対象番組の複製等の差止、本件対象サービスに供されているハードデスクレコダーの廃棄及び逸失利益等の損害賠償を求めた。
東京地裁民事29部清水節裁判長は、「クラブキャッツアイ事件最高裁判決等を踏まえ」(筆者注、本稿、「クラブキャッツアイ事件」最高裁1988年3月15日判決参照)、被告の提供するサービスの性質に基づき、支配管理性、利益の帰属等の諸点を総合考慮し、被告が本件番組等の複製行為を管理支配しており、それによる利益も得ているとして、被告の侵害主体性を肯定し、原告の著作権又は著作隣接権を侵害しているとし、対象番組の著作物の複製禁止、対象番組の放送に係る音又は影像を録音又は録画の禁止、別紙目録記載の器具の廃棄、NHKへ、226万円、静岡第一テレビへ88万円、日本テレビへ33万円などの判決を下した。被告が控訴し、原告らが附帯控訴した。

[知財高裁]
知財高裁田中信義裁判長は、1審判決と異なる判断を下した。被告(控訴人)は、利用者が私的複製を行う環境を提供しているに過ぎず、主体性はないとした。

知財高裁は、

  1. 本件サービスの目的、
  2. 機器の設置・管理、
  3. 親機ロクラクと子機ロクラクとの間の通信の管理、
  4. 複製可能なテレビ放送及びテレビ番組の範囲、
  5. 複製のための環境整備、
  6. 被告が得ている経済的利益を総合

すれば、被告が本件複製を行っていることは明らかで有る旨主張する原告らの主張に即して、検討の上、「本件サービスにおける録画行為の実施主体は、利用者自身が親機ロクラクを自己管理する場合と何ら異ならず、被告が提供するサービスは、利用者の自由な意思に基づいて行われる適法な複製行為の実施を容易ならしめるための環境、条件等を提供しているにすぎない」として、被告の侵害主体性を否定した。
クラブキャッツアイ事件最高裁判決については、「上記判例は、本件とは事案を異にする」とした。第1審判決中、被告(控訴人)敗訴部分を取消し、原告らの請求をすべて棄却した。原告らが、上告及び上告受理申立をした。

[最高裁]
最高裁(金築誠志裁判長、宮川光治、櫻井龍子、横田尤孝、白木勇裁判官)は、次のように述べて、原審の判断と異なる判断をし、知財高裁に差し戻した。
「放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて、サービスを提供する者が、その管理、支配下において、テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器に入力していて、当該機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合、その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても、当該サービスを提供する者はその複製の主体と解すべきである。」と述べて、テレビ番組の録画転送サービスにおいて、一定の状況があれば、サービス提供者は複製の主体となることを示し、本件サービスにおける親機ロクラクの管理状況等を認定することなく、テレビ番組等の複製をしているのは、被告ではない、とした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、本件を知財高裁に差し戻した。

[金築誠志裁判官の補足意見]
金築裁判官は、「カラオケ法理」は、「法概念の規範的解釈として、一般的な法解釈の手法の一つにすぎず、特殊な法理論でなく、考慮されるべき要素も行為類型により変わりうる。録画の指示が利用者によってなされるという点にのみ、重点を置くのは相当でない。本件システムを単なる私的使用の集積とみることは、実態に沿わない。著作権侵害者の認定に当たっては、総合的視点に立って行うことが著作権法の合理的解釈である」とした。

[知財高裁]
知財高裁第3部(飯村敏明裁判長、八木貴美子、知野明裁判官)は、上告審において示された判断基準に基づいて、詳細な事実認定を行った。
その上で、インターネト通信による親子機能を有する機器を利用して、海外等において、日本国内の放送番組等の複製又は視聴を可能にするサービスについて、被告であるサービス提供者が、放送番組等の複製の主体であるとした。
放送事業者の著作権及び著作隣接権の侵害をしているとして、原告らの放送番組等の放送回数、平均視聴率、本件サービスの契約数等を斟酌し、著作権法114条の5により、「相当な損害額」を認定した。著作権侵害の損害額は、1番組当たり3万円から24万円。
著作隣接権侵害の損害額は、1社あたり、80万円から400万円と認めた。

知財高裁平成21年1月27日判決は、このサービスの利用者が録画の指示をださなければ、録画が実行されることはないので、利用者を複製の主体とし、この判決は注目された。しかし、最高裁は、この判決を認めなかった。

[参考文献]
『ジュリスト』1423号(2011年6月1日号)(特集まねきTV]/ロクラクII最判のインパクト)。小泉直樹「まねきTV・ロクラクII最判の論理構造とインパクト」『ジュリスト』1423号6頁、田中豊「利用(侵害)主体判定の論理ー要件事実論による評価」『ジュリスト』1423号12頁。上原伸一「放送事業者の著作隣接権と最高裁判決のインパクト」ジュリスト1423号19頁。奥邨弘司「米国における関連事例の紹介ー番組リモート録画サービスとロッカーサービス の場合」『ジュリスト』1423号25頁。「ロクラクII最高裁判決の解説及び全文」『ジュリスト』1423号38頁。
横山久芳「自炊代行訴訟判決をめぐって」ジュリスト1463号36頁。

「まねきテレビ」事件

日本のテレビ番組をインターネットにより、海外の日本人は視聴できるか。

知財高裁平成24年1月31日判決(平成23年(ネ)第10009号)
最高裁平成23年1月18日判決(民集65巻1号121頁、判時2103号124頁、判タ1342号05頁)
知財高裁平成20年12月15日判決(平成20年(ネ)第10059号判時2038号110頁)
東京地裁平成20年6月20日判決(平成19年(ワ)第5765号)

 海外の日本人がインターネット回線を通じて、日本のテレビ番組を鑑賞できるよう日本に居住するAが事業を始めた。
 Aは、コンピュータ、その付属機器の製造販売、電気通信事業法に基づく一般第2種電気通信事業等を目的とする会社である。
Aは、「まねきTV」という名の、インターネット回線を通じてテレビ番組が視聴できるサービスを入会金3万1500円、毎月5040円で、提供しようとした。サービスとは、利用者が購入したソニー製の「ロケーション・フリー」という機器をAの事務所に置いて、インターネット回線に常時接続する専用モニター又はパソコンで、海外の利用者が、インターネット回線を通じてテレビ番組を視聴できるようにするものである。
ロケーションフリーという機器は、地上波アナログ放送のテレビチューナーを内蔵し、受信する放送をデジタル化し、このデータを自動的に送信する機能を有する機器(ベースステーション)を中核的なものとした機器である。
原告B(NHK,TBSなど)は、放送局である。Bは、Aの事業は、放送局(放送事業者)に無断で、そのテレビ番組を放送する権利すなわち公衆送信権又は送信可能化権を侵害するとして、訴えた。

[東京地裁]
 1審東京地裁は、Bの請求を棄却し、Aは勝訴した。
理由は、

  1. ベースステーションが自動公衆装置に該当すれば、送信可能化権侵害になるが、そのためには、送信者にとって当該送信行為の相手方が不特定または、特定多数の者に対する送信をする機能を有する装置が必要である。ところで、ベースステーションの所有者が利用者であり、サービスを構成する機器類は汎用品で、特別なソフトウエアは用いられていない。従って、ベースステーションによる送信行為は、各利用者によってなされるものだ。ベースステーションは、1対1の送信をする機能で、自動公衆送信装置に該当しない、送信可能化権侵害は認められない。
  2. 自動公衆送信しうるのは、デジタル化された放送で、アナログ放送のままではインターネット回線で送信できない。アナログ放送をベースステーションに入力することは自動公衆送信し得るようにしたものでない。アンテナから利用者までの送信全体が公衆送信(自動公衆送信)に当たらず、公衆送信権侵害は認められない

とし、原告の請求を棄却した。

[知財高裁]
 2審知財高裁は、

  1. 送信可能化とは、自動公衆送信装置の使用を前提とする。
    本件では、各ベースステーションは、あらかじめ設定の単一の機器あてに送信する1対1の送信を行う機能を有するに過ぎない、自動公衆送信装置とはいえない。利用者がベースステーションに放送を入力するなどして、放送を視聴しうる状態に置くことは、放送の送信可能化に当たらない、送信可能化権侵害は認められない。
  2. ベースステーションが自動公衆送信装置に当たらないとすれば、本件サービスにおけるベースステーションからの送信が自動公衆送信としての公衆送信行為にも該当せず、ベースステーションについても送信可能化行為がなされているともいえない。公衆送信権侵害も認められない。

[最高裁]
 最高裁は、次のように述べて事件を知財高裁へ差し戻した。

  1. 公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより、当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は、これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても、当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは、自動公衆送信装置に当たる。
  2. 自動公衆送信が、当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としているが、当該装置が受信者からの求めに応じて情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者が、その主体である。
    当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており、これに継続的に情報が入力されている場合には、当該装置に情報を入力するする者が送信の主体である。

 2審では、

  1. ベースステーションを自動公衆送信装置と認めなかったが、最高裁は、自動公衆送信装置と認めた。
  2. 2審では、利用者が主体であるとしたが、最高裁は、ベースステーションをその事務所に置き、管理し、ベースステーションに放送の入力をしているAを主体とした。

[知財高裁]
知財高裁は、本件放送の送信可能化及び本件番組の公衆送信行為の各差止を求める原告(NHK、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京)らの請求には理由があり、被告に対し、著作権及び著作隣接権侵害による損害賠償の支払いを求める原告らの請求も一部理由があるとし、次の判決を下した。

主文

  1. 原判決を取消す。
  2. 被告は、別紙目録記載のサービス(まねきTV)において、別紙放送目録記載の放送(NHKなどが放送波を送信して行う地上波テレビ放送)を送信可能化してはならない。
  3. 被告は、別紙サービス目録記載のサービスにおいて、別紙放送番組目録記載の番組(NHK「バラエテイー生活百科」など)を公衆送信してはならない。
  4. 被告は、原告NHKへ、50万9204円支払え。
  5. 被告は、原告日本テレビ、原告TBS、原告テレビ朝日、原告テレビ東京へ、それぞれ24万0663円支払え。
  6. 被告は、原告フジテレビへ、20万6517円支払え。
  7. 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

知財高裁は、ベースステーションに本件放送の入力をしている者は、被告であり、ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被告であり、本件放送の送信可能化の主体は、被告である。被告の本件サービスによる本件放送の送信可能化は、原告らの送信可能化(著作隣接権)侵害、本件番組の公衆送信は、原告らの公衆送信権(著作権)侵害であるとした。

重要な判決で、多くの判例批評がある。

[参考文献]
島並良「自動公衆送信の主体」(「平成23年年度重要判例解説」281頁。
『ジュリスト』1423号(2011年6月1日号)(特集まねきTV/ロクラクⅡ最判のインパクト)小泉直樹「まねきTV・ロクラクⅡ最判の論理構造とインパクト」『ジュリスト』1423号6 頁、田中豊「利用(侵害)主体判定の論理ー要件事実論による評価」『ジュリスト』1423号12頁、上原伸一「放送事業者の著作隣接権と最高裁判決のインパクト」『ジュリスト』1423号19頁、奥邨弘司「米国における関連事例の紹介ー番組リモート録画サービスとロッカーサービス の場合」『ジュリスト』423号25頁、「まねきTV最高裁判決の解説及び全文」『ジュリスト』1423号32頁。最高裁判決について、岡邦俊「ロケーションフリー」テレビへの入力者は送信可能化権の侵害主体である。」『JCAジャーナル』2011年4月号62頁。山田真紀最高裁調査官・Law & Technology 51号95頁

チュパ・チュプス対楽天市場事件

インターネット・ショッピングモールの運営者は、同モールの出店者による商標権侵害行為について責任を負わない、とされた事例である。

知財高裁平成24年2月14日判決(平成22年(ネ)第10076号判時2161号86頁)
東京地裁平成22年8月31日判決(平成21年(ワ)第33872号判時2127号87頁判タ1396号311頁)

 原告Xは、イタリア法人であるペルフエツテイ・ヴァン・メッレ・ソシエタ・ペルアチオニ(Perfetti Van Melle S.p.A)で、商標「Chupa Chups」に関する登録商標を有している。
 被告Yは、楽天株式会社で、自らインターネットショッピングモール「楽天市場」を運営している。

原告は、被告が運営する「楽天市場」というインターネットショッピングモールにおいて、被告が主体となって出店者を介し、あるいは出店者と共同で、あるいは幇助して、原告の商品の周知または著名表示若しくは原告の登録商標に類似する標章を付した各商品を展示又は販売(譲渡)する行為は、

  1. 商標権侵害であり、
  2. 不正競争防止法2条1項1号又は2号違反である

と主張して、被告に対し、商標法36条1項及び不正競争防止法3条1項に基づき、上記の類似した標章を付した商品の譲渡等の差止めと民法709条及び不正競争防止法4条に基づく損害賠償金の支払を求め提訴した。

[東京地裁]
民事46部の大鷹一郎裁判長は、本件各出店者の出店ページに登録された右各商品の展示及び販売について、当該出店ページの出店者が当該商品の「譲渡」の主体で、被告は、その主体でない。Yの行為は、商標法2条3項2号の「譲渡のための展示」又は「譲渡」に該当しない、不正競争防止法2条1項1号及び2号の「譲渡のための展示」又は「譲渡」についても、商標法2条3項2号と同様に解するのが相当である、として、請求を棄却した。

[知財高裁]
第一部中野哲弘裁判長は、次のように述べ、控訴を棄却した。
 この被告のようなサイトの運営者は、単に出店者によるウエブページの開設のための環境等を整備するだけでなく、運営システムの提供・出店者からの出店申込みの拒否・出店者へのサービスの一時停止や出店停止等の管理・支配を行い、出店者からの基本出店料やシステム利用料の受領等の利益を受けている。
 このような事例で、ある出店者による商標権侵害があることを、サイト運営者が知ったとき又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるに至ったときは、その後の合理的期間内に侵害内容のウエブページからの削除がなされない限り、右期間経過後から、商標権者は、サイトの運営者に対し、商標権侵害を理由に、出店者に対するのと同様の差止請求と損害賠償請求をすることができると解する。
 本件において、商標権者からの指摘又は出訴等を切っ掛けとして、「楽天市場」運営者は、その8日以内に、本件商標権侵害品の展示を削除しており、商標権侵害の事実を知り又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるときから合理的期間内にこれを是正した。「楽天市場」の運営が、商標権者の本件商標権を違法に侵害したとまではいえない。原判決は結論において誤りがない。控訴を棄却するとした。

楽天市場というインターネットのショッピングモールの運営者に、あまりに厳格な注意義務を課せば、運営者になろうとする者がいなくなるだろう。控訴審判決のいうように、合理的な期間内に是正したらば、よしというべきであろう。

[参考文献] 水谷直樹・発明2010年11月号37頁。

iモードID事件

インターネット上の電子掲示板で名誉を毀損された者が接続サービス会社に対し発信者情報の開示請求と損害賠償請求をおこなったが、損害賠償請求は棄却された事例である。

金沢地裁平成24年3月27日判決(平成22年(ワ)第559号、判時2152号62頁)

原告Xは、インターネット上の電子掲示板における氏名不詳の発信者によるスレッドの立ち上げ及び投稿により名誉を毀損され又はプライバシー権を侵害されたとして、プロバイダーであるY会社(エヌ・テイ・テイ・ドコモ)に対して、プロバイダ責任制限法4条1項所定の発信者情報開示請求権に基づき、本件発信者が使用した電気通信回線に係る識別番号(iモードIDほか)によって特定される電話番号の契約者の氏名又は名称及び住所の開示を求めるとともに、Y会社が本件IDに係る契約者の情報を保存しなかったために精神的苦痛を被ったとして慰謝料50万円と遅延損害金の支払いを求めて訴えた。
Xは、投稿の中で浮気・不倫をしたなど誹謗中傷されていた。

金沢地裁は、「被告は、原告に対し、別紙アクセスログ記録7記載の投稿に使用された電気通信回線に係る識別番号(iモードID:05E0…)によって特定される契約者の氏名又は名称及び住所を開示せよ。)」として、発信者情報の開示は認めた。
しかし、損害賠償請求については、Y会社が、iモードIDによって特定される契約者の氏名住所等が「発信者情報」に該当する旨の司法判断がなく、その認識がなく、認識が容易であったとまでいえない、として、Y会社に故意又は重大な過失はないとした。

Xは、浮気、不倫をしていると書かれ、傷ついたと思うが、金沢地裁は、NTTドコモに故意過失なく、慰謝料なしでいいと考えた。

「Shibuya Girls Collection」事件

原告主張のShibuya Girls Collectionの商標権侵害及び不正競争防止法違反による損害賠償責任を認め、被告標章の使用差止、Webサイトその他からの抹消と1100万円の支払を裁判所に出頭しなかった被告が命ぜられた事例である。

東京地裁平成24年4月25日判決(平成23年(ワ)第35691号)

原告は、(株)T-Garden。
被告は、アジムット株式会社ことX。

原告は、ファッションショーの企画・運営又は開催、ファッション情報の提供を指定役務とする「Shibuya Girls Collection」の商標権を有している。欧文字を赤色で横書きし、各文字を白色で縁取りし、その外側を黒色線で縁取りし、「i」の黒点及び「o」の内側の円が星形に図案化されている。
被告は、Webページに、「SHIBUMO GIRLS COLLECTION」「シブモガールズコレクション」等の標章を使用した。

原告は、被告行為は、

  1. 商標法37条1号の商標法違反、
  2. 不正競争防止法2条1項1号の「不正行為」であり、商標法36条及び不正競争防止法3条に基づき、
  3. 被告各標章の使用の差し止め、及び、
  4. Webページその他営業物件からの被告各標章の抹消を求め、
  5. 商標権侵害の不法行為責任(民法709条、710条)または不正競争防止法4条に基づき、

1100万円の支払いを求めた。

被告は、呼び出しを受けながら口頭弁論期日に出頭せず、答弁書、準備書面等を提出しなかった。訴訟代理人はいない。

東京地裁地裁民事29部大須賀滋裁判長は、原告の請求通り、

  1. 被告の営業上の施設又は活動に被告標章を使用することの禁止、
  2. 被告標章を、別紙Webページ目録記載のインターネット上のWebサイトその他の営業表示物件から抹消せよ。
  3. 被告は、原告へ1100万円及び平成24年3月8日から支払済みまで年5分の金員を支払え

との判決を下した。

原告は、被告から、実際に、1100万円の支払を受けたであろうか。

「PLUS」発信者情報事件

被告のレンタルサーバーに記録されたウエブページによって、商標権侵害及び不正競争防止法の営業上の利益を侵害された原告が、プロバイダ責任制限法に基づき、被告が保有する発信者情報の開示を求め、認容された事件である。

東京地裁平成24年6月28日判決(平成23年(ワ)第37057号)

原告は、オフイス家具、オフイスインテリア用品、文具、事務用品等の製造、販売等を行う株式会社で、「プラス株式会社」という。
被告は、インターネットを利用した情報提供、ドメイン取得サービス、レンタルサーバーの提供等を行う株式会社paperboy&co.で、インターネット上で不特定多数の者に対する送信をすることを目的とするレンタルサーバーを保有している。

平成23年8月迄に、被告のレンタルサーバーに、「+人材派遣プラスPLUS」「人材派遣プラス+」および「Plus」なる標章が記載されたウエブページの情報が記録された。

原告は、このウエブページの記録は、

  1. 原告の商標権侵害である。
  2. 不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為である。
  3. 不正競争防止法2条1項2号の不正競争行為である、

と主張し、発信者情報の情報開示を求めた。

東京地裁民事47部高野輝久裁判長は、2)の主張を採り、原告の「PLUS」の表示(商品等表示)は、需要者の間に広く認識されていたと認め、被告が、ウエブページ上でその営業を表示するものとして、本件各標章を使用する行為は、不正競争防止法2条1項1号に該当し、原告の営業と混同を生じさせるもので、原告の営業上の利益が侵害された、とし、原告が、損害賠償請求権を行使するため、発信者情報が必要で、その開示を受けるべき正当な理由がある、とし、被告は原告へ、「別紙発信者情報目録記載の情報を開示せよ」と命じた。

この事件では、原告は、被告へ開示を求めなくても、人材派遣会社の住所代表者等を把握できたのではないだろうか。

児童ポルノURL事件(刑事)

児童ポルノのURLをホームページ上に明らかにした行為は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等等等に関する法律」第7条4項「公然と陳列した」に当たる、という多数意見で、被告人は有罪とされたが、反対意見が付された事例である。

最高裁平成24年7月9日決定(判時2166号140頁)
大阪高裁平成21年10月23日判決(平成21年(う)第241号)
大阪地裁平成21年1月16日判決(平成19年(わ)第2291号)

この事件は、第三者が開設しているインターネット上の掲示板に記憶、蔵置されている児童ポルノを、被告人が共犯者が管理運営するホームページ上にURL(識別番号)を記し、不特定多数の利用者が閲覧可能な状況にすることは、(児童ポルノを公然と陳列した)に当たるか、という事案である。
「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等等等に関する法律」(平成11年5月26日法律第52号)第7条4項は、「児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者」には、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(以下略)」と定める。

1審大阪地裁は、「公然と陳列した」と解し、被告人を懲役8月、執行猶予3年及び罰金30万円に処した。
2審大阪高裁も「被告人Bが開設したウエブページに本件児童ポルノのURLを明らかにする情報を掲載した行為は、当該ウエブページの閲覧者がその情報を用いれば特段複雑困難な操作を経ることなく本件児童ポルノを閲覧することができ、かつ、その行為又はそれに付随する行為が全体としてその閲覧者に対して当該児童ポルノの閲覧を積極的に誘引するものである」「児童ポルノ公然陳列に該当する。」とし、控訴棄却した。

最高裁(岡田喜代子裁判長、田原睦夫、大谷剛彦、寺田逸郎、大橋正春)は、適法な上告理由には当たらないとして上告を棄却した。 大橋正春裁判官の反対意見は、「公然と陳列」とは、「所在場所の情報を単に示すだけでは不十分」であるとし、被告人の行為は幇助犯の成立の余地があり、その余地につき検討すべきで、正犯として処罰することはない、とした。

大橋正春最高裁判事(著作権法学者、弁護士出身)は、反対意見を述べた。

「釣りゲーム」事件

携帯電話用ゲームの画面表示の類似はどこまで、許されるか、という事件で、1審は、侵害とし、2審は、問題なしとした。

知財高裁平成24年8月8日判決(平成24年(ネ)第10027号、判時2165号42頁)
東京地裁平成24年2月23日判決(平成21年(ワ)34012号)

 原告X(グリー株式会社)は、インターネットを利用した情報サービス等を提供する株式会社である。インターネット上で、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(コミュニテイ型サービス)を提供するインターネット・ウエブサイト「GREE」を携帯電話向け及びパソコン向けに運営している。
 被告Y1(株式会社デイー・エヌ・エー)は、インターネットを利用した各種情報処理サービス及び情報提供サービス、ソフトウエアの企画、開発等及びその代理業等を業とする会社である。携帯電話向け及びパソコン向けにインターネット・ウエブサイト「モバゲータウン」を運営している。
 被告Y2(株式会社ORSO)は、インターネット、コンピュータ、携帯電話、テレビゲーム機器等のシステム開発、コンサルタント業務、ゲームソフトの企画制作、製造販売等の業務を業とする株式会社である。

Xは、2007年、携帯電話向けGREEに、その会員に対し、釣りのゲームの作品「釣り★スタ」(X作品)を公衆送信によって配信した。このX作品は、トップ画面、釣り場選択画面、キャステイング画面、魚の引き寄せ画面、魚を釣り上げた釣果画面が存在する。
 2009年、Y1およびY2は、「釣りゲータウン」という携帯電話機用の釣りのインターネット・ゲーム(Y作品)を共同で製作し、携帯電話機向けのモバゲータウンにおいて、その会員一般に、公衆送信による配信を開始した。このY作品にも、トップ画面、釣り場選択画面、キャステイング画面、魚の引き寄せ画面、釣果画面が存在する。
Y1のモバーゲタウンや、Y2のホームページには、Y作品が掲載されている。
 Xは、1,YらによるY作品の製作及び公衆送信は、X作品の著作権(翻案権、公衆送信権)および著作者人格権の侵害である、Y作品の公衆送信の差止およびモバゲータウンなどウエブサイトからY作品を抹消すること、2,Yらが、Y作品をウエブページに「魚の引き寄せ画面」のY影像を掲載することは、不正競争防止法2条1項1号所定の周知な商品等表示の混同惹起行為に当たるとして、Y影像の抹消を求め、3,YらがY作品を製作し、公衆に送信する行為は、Xの法的保護に値する利益を侵害する民法の不法行為に当たる、と主張し、著作権侵害、不正競争防止法2条1項1号違反、共同不法行為に基づく損害賠償として9億4020万円、4,著作権法等に基づく謝罪広告を求めて訴えた。

東京地裁平成24年2月23日判決は、Y作品の「魚の引き寄せ画面」が、X作品の「魚の引き寄せ画面」を翻案したものである、X作品にかかるXの著作権及び著作者人格権を侵害するとして、Y作品の公衆送信の差止、ウエブサイトの抹消、損害賠償の一部約2億3500万円の支払いを認めた。

 この判決に不服のYらは控訴した。

知財高裁平成24年8月8日判決は、「魚の引き寄せ画面」は、たしかに共通しているが、「ありふれた表現である」か(魚を引き寄せる決定キーを押すタイミングを魚影が同心円の一定の位置にきたときにする)ことにした点は、「アイデア」にすぎない、として、翻案権侵害を否定した。また、「魚の引き寄せ画面」は、不正競争防止法2条1項1号に該当せず、著作権侵害、不正競争行為に該当せず、民法の不法行為も構成しないとした。

 東京地裁判決は、携帯電話向け釣りゲームのX作品は、従来にない、新しいものとし、著作権法で保護しようとしたが、知財高裁は、X作品は、ありふれている、又は著作権法で保護するに値しない単なるアイデアであると判断した。

最高裁第三小法廷は、平成25年4月16日、X側の上告を棄却する決定をした。

非常に難しい問題である。しかし、この2審判決を研究し、多少、類似したゲームを、創作する者が出るかも知れない。

[参考文献]横山久芳「翻案の判断方法」(「平成24年度重要判例解説」267頁)。

「新聞販売黒書」事件

フリージャーナリストがインターネット上において掲載した記事が、読売新聞社から名誉毀損で訴えられ、1審、2審は、名誉毀損による不法行為請求が棄却されたが、最高裁では、名誉毀損とされ、東京高裁も名誉毀損とし、ウエブサイトにより名誉毀損された被害者の損害額が、名誉毀損の内容、表現の方法と態様等により算定された事例である。

東京高裁平成24年8月29日判決(判時2189号63頁)
最高裁平成24年3月23日判決(判タ1369号121頁)
東京高裁平成22年4月27日判決(平成21年(ネ)第5834号)
さいたま地裁平成21年10月16日判決(平成20年(ワ)第613号)

 フリージャーナリストYは、「新聞販売黒書」と題するインターネット上のウエブサイトに「X1新聞西部本社は、○日、○県○市にある○○文化センター前のA所長に対して、明日○日から新聞の商取引を中止すると通告した。現地の関係者からの情報によると、○日の午後4時ごろ、西部本社のX2法務室長、X3担当の3名が事前の連絡なしに同店を訪問し、A所長に取引の中止を伝えたという。その上で明日の朝刊に折り込む予定になっていたチラシ類を持ち去った。これは窃盗に該当し、刑事告訴の対象になる」という記事を掲載した。Xらは、記事の第2文により名誉を毀損されたとして、Yに対し、不法行為にによる損害賠償請求をした。

1審のさいたま地裁は、名誉毀損による不法行為を否定した。

2審の東京高裁も、最高裁昭和31年7月20日(民集10巻8号1059頁)を引用し、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すべきであるとし、第1文は、事実の摘示で、第2文は、被告の法的見解の表明で、直ちに原告社員らが「窃盗」に該当する行為を行ったものと理解する可能性は乏しいとし、本件記載部分によって原告等の社会的評価が低下したということを否定して、原告等の請求を棄却した。

最高裁第二小法廷(古田佑紀裁判長、竹内行夫、須藤正彦、千葉勝美)は、「インターネット上のウエブサイトに掲載された記事が、それ自体として一般の閲覧者がおよそ信用性を有しないと認識し、評価するようなものではなく、会社の業務の一環として取引先を訪問した従業員が取引先の所持していた物をその了解なく持ち去った旨の事実を摘示するものと理解されるのが通常であるなど判示の事情の下では、その記事を掲載した行為は、上記の会社及び従業員の名誉を毀損するものとして不法行為を構成する。」(要旨)とし、東京高裁へ差し戻した。

東京高裁平成24年8月29日判決は、1,本件記事の内容は、X2らがチラシ類を持ち去った行為が窃盗に該当し、刑事告訴の対象になる旨の虚偽の事実を摘示し、X2らの名誉を毀損するもので、Xらの損害につき慰藉料の請求を認めるのが相当であるとした。
また、X2らの行為がX1会社が窃盗を行わせるような会社と誤信されるから、X1会社も無形損害として賠償請求ができるとした。損害額について、名誉毀損の内容、表現の方法と態様、流布された範囲と態様、流布されるに至った経緯、加害者の属性、被害者の属性、被害者の被った不利益の内容・程度、名誉回復の可能性などの事情を考慮して算定することが相当であるとした。訴権の濫用に当たるとみるべき事情は見い出せないとした。
加藤新太郎裁判長は、控訴人会社X1への賠償額40万円、控訴人X2、X3、X4に対し、それぞれ20万円、弁護士費用X1につき、4万円、控訴人X2らにつきそれぞれ、2万円、合計110万円の支払をYに命じた。

ウエブサイトの記事を1審、2審が名誉毀損にならない、と判決したのに、3審の最高裁が名誉毀損になると判断し、東京高裁へ差し戻した、というのが注意を引く。

「夕暮れのナパリ海岸」事件

ハワイの写真家の写真が、日本の旅行業者のブログに無断転載された事件である。

東京地裁平成24年12月21日判決(平成23年(ワ)第32584号)

原告X1は、米国国籍のハワイ州在住の職業写真家である。
原告X2は、ハワイの美術品販売のほか写真のライセンス事業を業務とするハワイ州の法律に基づく有限責任会社である。

X1は、「夕暮れのナパリ海岸」(写真1)と「たそがれ時のサーファー」(写真2)の写真を米国で最初に発行した。
被告Yは、東京都に住み旅行業を営み、ブログも運営している。
Yは、平成23年1月10日および同年2月4日、その運営する「旅の料理人、…」と題するブログにおいて、インターネットからダウンロードした写真1と写真2を掲載した。
X1は、Yに対し、X1の写真1が許諾していないに、使用されているとして、甲弁護士を通じて、写真1の削除と10万円の支払いを求めた。Yは、1万円を送付し、経営体力がなく10万円は払えないという文書を送付した。甲弁護士は、Yへ、1万円では和解に応じられない、写真2の存在も判明したので、写真2の削除と損害金残額の19万円の支払いを求め、著作権(複製権、公衆送信権)侵害の訴訟を提起した。

被告Yは、(ヤフーサイトで、「画像ハワイ」と入力し検索し、検索結果の画面(乙4)が出てきたので、NO PICTURE や著作権者のサインの記載があるのもを除き、2枚の写真を選択した。その出展元は、壁紙Linkの「世界遺産と世界の風景デザイナーズ壁紙」というカテゴリーで)(その中には「サイトで海外のショップでフリーの素材として販売していたもの」「無料でダウンロードした壁紙ハ、デスクトップピクチャーとして、あなたの生活に憩いを与えてくれるでしょう。また、ホームページ素材としてお使いください。」との記載があった。)。Yは写真をブログに掲載した手順は、「ヤフーハワイ検索から本件写真をピックアップ」「1つを画面上でクリックすると写真が現れる、下のリンクをクリックすると写真が現れる。出典元の確認をするため画面(写真の上で)をクリックすると写真が現れる。この壁紙Linkで消費者の被告がフリー素材であると『誤認』するような記載があった。次ぎに、写真の上にカーソルを合わせ、名前を付けて画像を保存した.最後に、自分のブログに画像をアップした」と述べた。

東京地裁民事29部大須賀滋裁判長は、次のように判断した。

  1. 準拠法は、法の適用に関する通則法17条(不法行為)により、日本法である。
  2. 本件写真は、著作物性があり、X1が著作者で、著作権者である。X2は、独占的利用許諾権を付与され、ウエブに掲載したり、不正使用した侵害者から損害賠償を徴収している。
  3. 被告は、検索サイトヤフーで「ハワイ」に入力、クリックしているうちに、壁紙Linkサイトの記載により、フリー素材、無料と誤信したと主張したが、認めることができないとし、「被告は壁紙Linkの記載を閲覧することなく、Yahoo!の画像検索結果から本件写真をダウンロードした蓋然性が高い」とした。
  4. Yは、写真の利用について、利用権原の有無について確認を怠り、写真をダウンロードし、複製し、アップロードしブログに掲載し、公衆送信したことに過失がある。
  5. Yは、X1に対し、金7万8704円(本来8万8704円だが1万円控除)と支払済みまでの年5分の金員の支払を命じた。X2へは、写真1について、99米ドル、写真2について、178.2ドルの手数料相当額の損害が生じたとして、1ドル80円として、2万2176円とし、弁護士費用5万とし、X2に対し、金7万2176円と支払済みまでの年5分に金員の支払を命じた。
被告Yが、本件写真は、フリーであると誤信した、との主張も面白いが、これを裁判官が採用しなかった。この判決当時、1ドル80円である。

「大道芸研究会」事件

大道芸研究会の元会員のXは、ウエブサイトの画面およびソースコードを作成し、管理し、大道芸研究会の情報を発信したが、ウエブサイト画面とそのソースコードは、Xの著作物であるとし、会員の被告Yが作成し、自己の管理するウエブサイトに掲載した行為は、Xの著作物の同一性保持権侵害あるいは一般不法行為に当たると主張したが、Xの請求が棄却された事例である。

東京地裁平成24年12月27日判決(平成22年(ワ)第47569号)

原告Xは、昭和60年に大道芸研究会の会員になり、平成22年3月末、退会した。
被告Yは、大道芸研究会会員である。

Xは、会員であった平成12年頃、「大道芸研究会」という本件ウエブサイトを開設し、「画面」及びその「ソースコード」(HTML)を作成し、Xは、X個人の著作した著作物としていた。
被告Yは、平成22年2月1日、本件ウエブサイトのソ-スコードを取り込み、新たな情報を追加するなどして、「大道芸研究会」と題する被告ウエブサイトを開設し、管理した。

原告Xは、被告Yが、別紙被告画面目録1ないし7記載の各画面(被告画面)を作成し、自己の管理するウエブサイトに掲載した行為は、

  1. Xの有する同一性保持権侵害行為である、
  2. 仮にそうでないとしても、被告Yの一連の行為は、原告の法的保護に値する利益を侵害する一般不法行為である

とし、Yに対し、損害賠償160万円を求めて訴えた。

東京地裁民事第46部大鷹一郎裁判長は、次のように判断し、原告Xの請求をいずれも棄却した。

  1. 原告Xは、各画面は、画面構成(デザイン・レイアウト)において、Xの思想感情を創作的に表現した著作物と主張したが、画面構成のうち、創作性があると挙げている点は、いずれもありふれた表現である、Xの各画面には原告主張の表現上の創作性が認められない、とし、各画面が全体として著作物に該当するとの原告の主張は理由がないとした。
  2. Xのソースコードの著作物性について、「本件ソースコードは、原告がフロントページエクスプレスを使用して本件画面っを作成するに伴ってそのソフトウエアの機能により自動的に生成されたHTMLソースコードであって、原告自らが本件ソースコードそれ自体を記述したものではないことからすると、本件ソースコードの具体的記述に原告の思想又は感情が創作的に表現され、その個性が現れているものとは認められない。」とした。
  3. 一般不法行為に当たるか、について、北朝鮮映画事件(最高裁平成23年12月8日判決)を引用し、著作権法の著作物に該当しないものの利用行為は、同法が規律の対象とする著作物の独占的な利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り不法行為を構成しない、とし、Xの請求を否定した。
大道芸研究会の内紛がなければ、原告は会に留まっていたであろう。原告は、研究会のウエブサイトに愛着があった。

2013年

クリニック情報事件

原告である医師は、被告が運営するウエブページ掲載のクリニックについての情報が誤っており、原告の人格権および業務遂行権(財産権)を侵害しているとして、不正競争防止法2条1項14号(不実記載)であるとして、ウエブページの表示の抹消、損害賠償200万円を求めたが、原告の請求がすべて棄却された事例である。

東京地裁平成25年3月6日判決(平成22年(ワ)第13704号)

原告は、Aクリニックという名称の診療所を開設する医師である。
被告((株)チューン)は、ホームページの作成等を主な業務とする株式会社で、(株)メデイラインから委託を受けて、インターネット上のアドレスにおいて、「Aクリニック」の名前を標榜するウエブサイトを開設している。

平成17年12月、本件クリニックが管理者原告で開設された。
メデイラインが本件クリニックの開設に当たり、経費等を負担、原告が医療知識等を提供する契約が締結された。
被告は、原告の了解を得たメデイアラインから、本件クリニックのホームページ制作及び開設の委託を受けて、これを運営している。
平成18年9月27日、原告とメデイアライン、被告らと協力関係が破綻し、原告は、メデイアラインの関与なしに、本件クリニックを運営した。
被告代表者は、平成19年9月11日設立の医療法人社団スペクトラムの理事に就任した。この団体は、Aクリニックから1キロ離れた場所に、「Bクリニック」を開設した。

原告は、

  1. 被告に対し、本件ウエブサイトの運営が原告に対する不法行為である、
  2. 被告による本件ウエブサイトの運営が不正競争防止法2条1項14号の「不正競争」にあたる

と主張した。

東京地裁民事40部東海林裁判長は、本件クリニックの事業主体は、原告ではなく、訴外の「組合契約または組合類似の契約」に基づく「組合」であるとして、被告が、この組合から委託を受けて、クリニックのウエブサイトを運営していることは、原告の権利を侵害するものではない、不正競争についても、原告被告間に競業関係はない、とし、原告の主張をしりぞけ、原告の請求をすべて棄却した。

原告は、本件クリニックを運営しているつもりだったが、判決は、訴外の「組合」であったと、認定した。原告は、まったく、自力で運営していると思っていたのだろうか。経費を負担していたメデイアラインが脱退した後、「組合」が負担したようだが、原告は知らなかったのだろうか。

SEO債務不履行事件

ウエブサイトが検索結果上位に表示されるようにする義務の不履行により損害を被った等とする債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求及び不当利得返還請求が棄却され、その反訴であるリース料金及び割賦販売代金の請求が認容された事例である。

大阪地裁平成25年3月5日判決(判時2198号113頁)

 SEO(Search Engine Optimization)とは、検索エンジンの検索結果ページにおいて、ホームページ(以下、HP)が表示される順位を上げる手法をいう。この表示される順位を上げるということが実現できるのか別として、そういう契約がなされた。  この事件は、その契約がなされたのに、実際に達成できなかったとして、原告会社X1が、インターネットHPの制作を請負った被告会社Y1などを訴えた事件である。

 原告X1は、療養術、整骨院の経営、整体師の育成、専門学校の経営等を目的とする会社(前身は、小林整骨院)で、原告X2は、その代表取締役である。  被告Y1((株)アールエム)は、インターネットプロバイダ業、インターネットホームページの企画、立案、制作等を業とする株式会社である。

 X1は、傘下に整骨院などを置いているがそれらのために、Y1と、平成18年11月15日から、平成20年5月8日までの間に、コンピュータ・ソフト等の「供給契約」を結び、その際、X1は、次の会社とリース契約若しくは割賦販売契約を締結し、X2がその保証人になった。リースの年数は、それぞれ4年、5年とまちまちである。
被告Y2(三井住友ファイナンス&リース(株))、被告Y3(NECキャピタルソリューション(株))、被告Y4(イデアカード(株))、被告Y5((株)ビジネスパートナー)。
X1は、平成22年11月の支払日以降のリース代及び割賦販売代を支払わなくなった。
 X1は、Yらに対し、X1のウエブサイトが、検索エンジンにおいて、検索結果ページの順位が上がるように工夫するというSEO対策を行うとの供給契約に基づき、その債務を負っているのにこれを怠ったこと、これにより損害を受けたとして、債務不履行、不法行為(共同不法行為等)に基づく損害賠償を請求した。予備的に本件各供給契約が公序良俗違反、錯誤、詐欺取消又は心裡留保により無効であることを前提に、既払金等の不当利得返還を請求する本訴を起こした。
 Y2ないしY5は、X1及びX2に対し、リース契約及び保証契約等に基づき、期限の利益喪失を前提に残りのリース代金等の支払を求める反訴請求を提起した。

[争点]

  1. 被告Y1が「継続的かつ効果的なSEO対策」を行う債務を負うか、について契約書には、原告会社と被告アール・エムとの間で原告の主張するような『継続的かつ効果的なSEO対策』を実施する具体的な債務を負うことを裏付ける記載は見当たらない。本件各供給契約に至る経緯、契約前後の当事者間の交渉状況、契約後の被告Y1の対応状況、その他本件における一切の事情に照らしても、被告Y1が、原告会社に対し、『継続的かつ効果的なSEO対策』を行う手段債務を負っていたとまでは認められない。
  2. 被告Y1が「継続的かつ効果的なSEO対策」を行う債務を負わない場合に不法行為が成立するか。被告Y1に不法行為は成立しない。

[大阪地裁の判断]

(判決主文)

  1. 原告らの請求をいずれも棄却する。
  2. 原告らは、Y2へ連帯して87万7060円及びうち86万6250円に対する平成22年12月27日から支払済みまでの年14.6%の金員の支払を命ずる。
  3. 原告らは、Y3へ連帯して316万1970円及びうち別紙1の金員に対する別紙1の遅延損害金起算日欄記載の各日から支払い済みまでの年14.6%の金員の支払を命ずる。
  4. 原告らは、Y4へ連帯して55万0500円及びこれに対する平成22年12月28日から支払い済みまでの年14.6%の金員の支払を命ずる。
  5. 被告Y3のその余の反訴請求をいずれも棄却する。
  6. 訴訟費用は、本訴反訴を通じ、原告らの負担とする。
  7. この判決は、第2、3、4項に限り、仮に執行することができる。
判決文において、「SEO対策、特に原告の主張するようなHP制作後の継続的かつ効果的なSEO対策の実施は、HP制作とは別個の商品的価値を有し、また、その具体的な実施態様・程度についても、当事者が想定する獲得目標等に照らして様々なパターンが考えられる」とし、かかるSEO対策の実施が、本件各供給契約においてHP制作等と同時に具体的に合意されたか否か、慎重に検討する必要があるとし、検討している。
そもそも検索エンジンの検索結果ページにおいて、順位を上げることが可能であろうか、それがよく分からない。

メール著作物事件

ウエブ上の記事により、著作権、著作者人格権が侵害されたとして、本件記事を掲載した者に対して、損害賠償請求権の行使のために、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、被告経由プロバイダに対し,発信者情報の開示を求めた原告が勝訴した事件である。

東京地裁平成25年3月21日判決(平成24年(ワ)第16391号)

原告は、宗教団体「ワールドメイド」の会員で、同団体の親睦団体関東エンゼル会の議長を勤めている。
被告は、イー・アクセス株式会社である。

原告は、「やっと『人形ムード』になった方も多いのではないでしょうか?」「B先生が『伊勢神業』のお取次ぎをしてくださるまでの貴重なこの時間は、私たちに『人形形代』をもっともっと書かせて頂くための時間ではないでしょうか?」などと書いた。
氏名不詳の誰かが、本件メールの全文をほぼそのまま記載した。
原告の本件メールの複製権、公衆送信権が侵害されたとして、被告イーアクセス(株)に対し、発信者情報を保有しており、原告は発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとして、訴えた。被告は、著作物性を争った。
裁判所は、開示を命じた。

[判決主文]
被告は、原告に対し、別紙アクセスログ目録記載17ないし22の各日時ころに、同目録記載のIPアドレスを使用して、同目録記載のアクセス先に接続していた者の氏名及び住所を開示せよ。訴訟費用は被告の負担とする。

宗教に関係する文章を、短いが、著作物と認めた判決で珍しい。

映像作品無断送信事件

総合格闘競技のを大会を撮影・編集した映像作品をウエブサイトにアップロードする行為が、上記映像作品に係る公衆送信権侵害であるとして1000万円の損害賠償を命じられた事例である。

東京地裁平成25年5月17日判決(判タ1395号319頁)

原告は、ズファエルエルツシー(代表者代表執行役員X)で、総合格闘競技である「Ultimate Fightting Championship 」(UFC)の大会の試合を撮影・編集した映像作品(本件各作品)の著作権を有する。
被告は、本件各作品を、ウエブサイト「ニコニコ動画」に合計84回、アップロードした。原告は、著作権(公衆送信権)を侵害したと主張し、被告へ上記著作権侵害の不法行為により原告の被った損害の一部である1000万円及び遅延損害金の支払いを求めた。

東京地裁民事29部大須賀滋裁判長は、

  1. 本件各作品のうち、原告が一部請求の根拠とした作品合計3点の著作物性を検討、これらの作品がUFC大会の試合を撮影した動画映像で、被写体の選択、被写体の撮影方法に工夫がこらされ、編集や加工により構成が 工夫され、映画の著作物で、原告が上記作品の著作権者であるとした。
  2. 被告が「ニコニコ動画」の運営のために設置管理されているサーバーコンピュータ内の記録媒体にこれらの動画のデータを記録・保存し、インターネットを利用する不特定多数の者に対し、自動公衆送信し得るようにしたことは、これら作品を送信可能化するもので、原告の公衆送信権を侵害する、とした。
  3. 損害額。配信料相当額である500円に再生回数(3作品合計3万4008回)を乗じ、更に60%を乗じた金額に相当する額を原告の損害(著作権法114条3項)とするとし、

原告の請求1000万円及び遅延損害金の支払い請求を全部認容した。

映画の著作物であるとすれば、この判決の結論は正しいと思う。

中村うさぎ「狂人失格」事件

ネットで知合った女性をモデルにして、小説「狂人失格」を出版した作家中村うさぎが名誉毀損、プライバシー権侵害で訴えられ、100万円の損害賠償が命ぜられた事例である。

大阪地裁堺支部平成25年5月30日判決(平成23年(ワ)第1731号)

作家Y(中村うさぎ)は、ネットで、原告Xと知合い、その後、面談し、共著の本を出そうかという話もあったが、その計画は中止になった。
Yは、A出版社のPR誌に連載ののち、平成22年2月、A出版社から小説「狂人失格」を5000部発行した。この小説は、女性作家が、一人の有名になりたい女性と知合い、その女性との交流を通して、その女性の中に、自己顕示欲や作家自身の姿があることを剔抉し、哲学的自問自答を描いた作品である。
Xは、当初は、この小説の出版に異議を唱えず、かえって、A出版社に自らの著作の出版や、著名人のとの対談企画を提案したり、みずから自己が管理するウエブサイトに、Yの「狂人失格」のモデルは、自分であるとの宣伝活動をした。

平成23年、Xは、本件小説により、名誉を毀損され、プライバシー権を侵害されたとして、1000万円の損害賠償を請求した。
大阪地裁堺支部中村哲裁判長は、プライバシー権侵害、名誉毀損を認め、原告の被った精神的苦痛を金銭的に評価し、100万円の損害賠償の支払いを命じた。

この判例は、インターネットに直接関係していないともいえるが、インターネットによって、原告と被告は、知り合いになり、原告は、自分のホームページで、被告小説のモデルは自分である、と告白し、むしろ宣伝し、インターネットが重要な役割を果たしている。原告は、一旦は、モデルを承諾していること、対談や共著の話が実現しなかったこと、原告は(有名になるなら)自己のプライバシーや名誉を犠牲にしてもかまわない、と思われること、原告被告は、同じ作家という「部分社会」に住む人間であること、以上の理由で、私は、請求棄却ないし、原告から被告へ、5万円の損害賠償金の支払いでいいと考える。

[参考文献]
大家重夫「中村うさぎ『狂人失格』事件を読む」マーチャンダイジングライツレポート2013年7月号52頁

「出会い系サイト」不法行為事件

多くの有料メール交換サイトを運営する会社Yが、サクラ(回し者)を使い、利用者をサイトに誘い込み、サイト利用Xから代金名目で、2031万3000円を詐取したとして、有料メール交換サイトの運営会社の不法行為責任が認められ、Xへ2234万4300円を支払うよう命ぜられた事例である。

東京高裁平成25年6月19日判決(平成24年(ネ)第4873号、判時2206号83頁)
横浜地裁平成24年6月11日判決(平成23年(ワ)第5174号)

 被告Y会社は、インターネット上で多数の有料メール交換サイト運営している。
原告Xは、被告Y会社が運営する出会い系サイトに入り、会員登録をした。Xは、その後、指示に従えば、数百万円ないし数千万円の多額の金員を供与する、面談や実験対象になってくれれば、相当の対価を支払うとのサクラからのメールに応じ、Xは、面談に赴くが会えず、その都度、サイトの利用代金がかさみ、合計2031万3000円になった。

Xは、Yが、サクラを用いて、利用代金の名目で、多額の金員を支払わせ、金員を騙し取ったして、利用代金を損害とする損害賠償請求訴訟を提起した。
1審横浜地裁は、Yの不法行為の日時、内容等、Xの誤信内容、錯誤に基づくYへの送金ないしポイント購入の時期及び金額について特定がなく、サクラとYの関係等が主張上明確でないとして、請求を棄却した。Xは、控訴した。
2審東京高裁瀧澤泉裁判長は、「被控訴人は、本件各サイトにおいて、サクラを使用して、かつサクラであることを秘して、資金援助や連絡先交換又は待合せ等、役務ないし利益の提供をする意思もないのに、それがあるように虚偽のメールを送信させて、それらが一定程度実現する可能性があると控訴人を誤信させ、控訴人に役務ないし利益の取得のため、送受信等を多数回繰り返させたり、上記資金援助等の目的達成のためには虚偽の暗号送信等の手続きが必要であるとの虚偽の事実を申し向けてその旨控訴人を誤信させ、利用料金名下に多額の金員を支払わせた詐欺に該当するものというべきである。被控訴人は、控訴人に対する不法行為責任を免れることはできない。」

利用代金2031万3000円と弁護士費用203万1300円(上記損害の1割)の合計2234万4300円を損害とし、原判決を取り消して、控訴人の請求(2審で拡張した分を含む)を全部認容した。

出会い系サイトに引っかかり、2031万円も支払った原告が、2審判決により、取り戻したという事件である。2審判決を是としたい。

ニコニコ動画事件

ニコニコプレミアム会員Xが、自分が大阪市内のマクドナルド店に入店する様子や警察官と対応する様子を撮影し、動画にし、動画共有サイト「ニコニコ動画」にアップロードし、サイトへアクセスする者が視聴できるにしたところ、「ロケットニュース24」というウエブサイトが掲載し、記事を書込み、会員を誹謗中傷する書込みをし、この動画を視聴できるようにし、この記事の末尾に「参照元 ニコニコ動画」とした。Xは、ウエブサイト運営者を訴えたが、Xが敗訴した事件である。

大阪地裁平成25年6月20日判決(平成23年(ワ)第15245号、判時2218号112頁)

原告Xは、平成23年6月当時、株式会社ニワンゴが提供するインターネット上の動画共有などのサービスのニコニコプレミアム会員として、「ニコニコ生放送」による動画のライブストリーミング配信等を行っていた。
 被告Yは、情報提供サービスなどを目的とし、「ロケットニュース24」というウエブサイトを運営している株式会社ソシオコーポレ-ションである。

原告Xは、Xが著作者である動画を、被告Yが被告運営の「ロケットニュース24」に無断で掲載し、これに原告を誹謗中傷する記事を掲載し、コメント欄に読者をして原告を誹謗中傷するコメント欄の書込をさせ、これを削除しなかったことがXの名誉を毀損するとともに、Xの著作権(公衆送信権)及び著作者人格権(公表権、氏名表示権)を侵害するものであるとして、被告に対し、名誉権に基づき、本件ウエブサイトに掲載された本件記事及び本件コメント欄記載の削除を求めると共に、著作権及び著作者人格権侵害の不法行為に基づく名誉回復措置として別紙1記載の謝罪文を、名誉毀損の不法行為に基づく名誉回復措置として別紙2記載の謝罪文を本件ウエブサイトに掲載するよう求めた。
 併せて、主位的に著作権及び著作者人格権の不法行為に基づく損害賠償の一部として30万円と遅延損害金並びに名誉毀損の不法行為に基づく損害賠償の一部として30万円及び遅延損害金を請求し、予備的に被告の上記行為は、原告の肖像権を侵害するとし、被告に対し、肖像権侵害の不法行為に基づく損害賠償の一部として10万円及び遅延損害金荒美に名誉毀損の不法行為に基づく損害賠償の1部として50万円及び遅延損害金を請求した。

大阪地裁第21民事部谷有恒裁判長は、次のように判断し、原告の請求を棄却した。

  1. 本件動画は映画の著作物で、著作者は原告である。
  2. 被告は、本件動画へのリンクを貼ったにとどまり、被告Yが本件動画を自動公衆送信による不法行為をしたり、送信可能化による不法行為も認められない。公衆送信権侵害の幇助による不法行為は成立しない。
  3. 著作者人格権(公表権、氏名表示権)侵害について。
    原告Xは、被告Yによる本件動画のリンクに先立ち、生放送をライブストリーミング配信しており、公表権侵害は成立しない。本件記事自体に原告Xの実名、変名の表示はなく、氏名表示権侵害の前提を欠き、ウエブサイト上の表示が原告の氏名表示権侵害になると認められない。
  4. 本件動画及び本件記事の名誉毀損該当性、違法性阻却事由の有無について。
    本件記事及び本件動画の本件ウエブサイトへの掲載が原告の名誉を毀損するとの主張は、違法性阻却事由があり、また、記事中の「非常識な行動」は、人身攻撃に及んでなく意見や論評の域を逸脱してない。被告が、本件ウエブサイトに本件記事を掲載し、併せて本件動画へのリンクを貼ったことに違法性はない。
  5. 本件コメント欄記載の削除義務の有無について。
    被告は、平成23年6月27日に原告から抗議を受け直ちに本件動画へのリンクを削除し、原告の社会的評価が低下することの防止するための対応を適時とっている。被告は、本件コメント欄記載を削除すべき義務を負う状況になく、削除義務を負うものでない。
  6. 肖像権侵害の有無について。
    被告が本件ウエブサイト上で、本件動画へリンクを貼ったことが原告Xの肖像権を違法に侵害したとはいえない、第三者による肖像権侵害につき、故意又は過失があったともいえず、不法行為が成立するとは認められない。
大阪地裁判決を支持する。

苦情申告書ブログ掲載事件

原告弁護士と被告行政書士2人との間に紛争がある中で、被告行政書士らが、それぞれのウエブサイトに原告の苦情申告書、原告の懲戒請求に対する原告答弁書を掲載したことは、被告らが著作物である申告書、答弁書の著作権(公衆送信権及び公表権)侵害であるとし、使用の差止を認めた事件である。

東京地裁平成25年6月28日判決(平成24年(ワ)第13494号)

原告Xは、東京都千代田区岩本町に「神田のカメさん法律事務所」を開業する弁護士。
被告Y1は、清瀬市内で「かなめ行政書士事務所」を開設する行政書士で、インターネット上、「かなめ行政書士事務所」のタイトルでブログを公開している。
被告Y2は、インターネット上、「NEWS RAGTAG」のタイトルで、ブログを公開している。

Xは、

  1. Y1に対して、原告文書1(XがY1にあてた通知書で、Y1がインターネットで公開する記事の削除を求める等を記載)及び別紙URL目録記載のURLを掲載してはならない。
  2. Y2は、原告文書1、原告文書2(Xが東京行政書士会長に提出の苦情申告書)、原告文書3(Y1が東京弁護士会に提出のXの懲戒請求に対するXの答弁書、懲戒請求棄却を求めるXの理由を述べた文書)を、ブログに掲載してはならない。
  3. Y1、Y2は、それぞれ150万円及び支払済みまでの年5分の金員を支払う

よう求めた。

なお、Y1は、原告文書1を掲載し、原告文書3のpdfファイルを、アップロードし、pdfファイルをアップロードしたURLをY1ブログ1の記事内に表示、記事を閲覧した者が、URLから、pdfを閲覧できる仕組みにした。
Y2は、原告文書1ないし3を、それぞれのブログ内の記事において掲載した。
東京地裁民事29部大須賀滋裁判長は、原告文書1の著作物性を否定した。原告文書2及び3の著作物性は肯定した。Y1の、これらのpdfファイル掲載行為、被告Y2の原告文書2及び3の公衆送信権侵害、公表権侵害を認めた。URLの掲載は、Xの絞首送信権侵害を引き起こす行為であり、れらを掲載し、使用する行為の差止を認めた。慰謝料請求は、精神的苦痛が生じたと認められないとした。

「判決主文」

  1. 被告Y1は、別紙ウエブサイト目録記載1のウエブサイトにおいて、別紙掲載記事目録記載4及び5の各記事に含まれている別紙URL目録記載のURLを掲載してはならない。
  2. 被告Y2は、別紙ウエブサイト目録記載2のウエブサイトにおいて、別紙掲載記事目録3の記事に含まれている別紙原告文書目録記載2の文書及び別紙掲載記事目録記載6の記事に含まれている別紙原告文書目録記載3の文書を掲載して使用してはならない。
  3. 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
  4. (訴訟費用、省略する)
2013-13と同じ当事者間の事件である。

センチュリー21事件

「CENTURY21」の名称で、フランチャイズチェーンを営む原告が、「CENTURY21。CO.JP」のドメイン登録をした被告に対し、フランチャイズ契約違反、不正競争防止法違反に基づき、被告ドメインの使用差止、登録抹消および損害賠償を求め、また被告に対し、被告の法人格は権利濫用で、A社と同視すべきで、原告がA社に有する未払いの債権5532万9175円の支払を求めた事件で、原告の請求を認容した事件である。

東京地裁平成25年7月10日判決(平成24年(ワ)第7616号)

原告Xは、「CENTURY21」の名前で、不動産業者むけのフランチャイズチェーン事業本部であり、加盟店に対する営業支援等を主とする会社である。
被告Yは、原告のフランチャイジーであった不動産業者である。

原告Xと被告Yは、平成23年6月21日、フランチャイズ契約を結んだ。
原告Xのフランチャイジーであった訴外A社(横浜不動産)は、遅くとも平成10年頃、「CENTURY21.CO.JP」(本件ドメイン)を登録し、平成23年6月21日、これをAは、被告Yへ譲渡した。

Xは、Yに対し、

  1. フランチャイズ契約又は不正競争防止法2条1項12号、3条、4条に基づき、本件ドメインの使用差止、登録抹消及び損害賠償を求めた。
  2. 被告Yは、形式上は、A社と別法人だが、法人格の濫用であり、A社と同一視されるべきで、XはA社への債権5532万9175円を有しており、その支払いを求めた。

東京地裁民事29部大須賀滋裁判長は、原告Xの請求をほぼ全部認容した。

「判決主文」

  1. 被告は、建物の賃貸の媒介、建物の売買の媒介、土地の賃貸の媒介、土地の売買の媒介の各役務の提供に関し、「CENTURY21」を含むドメインを使用してはならない。
  2. 被告は、別紙ドメイン名目録のドメインの登録を抹消せよ。
  3. 被告は、原告に対し、平成23年12月28日から別紙ドメイン名目録記載のドメインの登録抹消済みに至るまで、月5万円の割合による金員を支払え。
  4. 被告は、原告に対し、5162万2641円及びこれに対する平成23年3月31日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
  5. 被告は、原告に対し、370万6534円及びこれに対する平成24年3月31日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
  6. 訴訟費用は被告の負担とする。
  7. この判決は、第2項を除き、仮に執行することができる。
判決文において、多くの場合、遅延利息は「年5分」であるが、この事件、商人同士であり、「年6分」である。日本でも、まだこういう不動産業者が存在し、外国の大手の企業を騙す者がいることに驚く。

漫画家佐藤秀峰事件

漫画家佐藤秀峰の描いた天皇の似顔絵を無断で、画像投稿サイトに投稿したことが著作権侵害及び著作者人格権侵害とされ、50万円の損害賠償が命ぜられた事例である。

知財高裁平成25年12月11日判決(平成25年(ネ)第24571号)
東京地裁平成25年7月16日判決(平成24年(ワ)第24571号)

原告X(佐藤秀峰)は、著名な漫画家であるが、2012年9月、「ブラックジャクによろしく」の二次使用を商用、非商用をとわずフリーにしたことで話題になった。
訴外A(有限会社佐藤漫画製作所)は、Xが制作した作品の著作権の管理等を行う特例有限会社である。

Aは、「漫画on Web」というウエブサイトを運営しているが、販売促進活動の一環として、同サイトで、Xの作品を購入した顧客に対し、その希望する人物の似顔絵をXが色紙に描き、これを贈与するというサービスを提供した。
被告Yは、平成24年3月20日頃、このサイトを通じて、Xの「特攻の島」3巻及び4巻を購入すると共に、Aに対し、Xが描いた昭和天皇及び今上天皇の似顔絵を各1枚贈るよう申し入れ、Xは、これに応じAがYに送付した。
平成24年3月24日、Yは、ツイッターのサイト(以下、本件サイト)に、
「天皇陛下にみんなでありがとうを伝えたい。陛下の似顔絵を描いてくれるプロのクリエータさん。お願いします。クールJAPANなう、です。」
と投稿し、その後、似顔絵のうちの1枚を撮影した写真をTwitpicという画像投稿サイトにアップロードした上、本件サイトに
「陛下プロジェクトエントリーナンバー1,X.海猿、ブラックジャックによろしく、特攻の島」
と投稿し、上記画像投稿サイトへのリンク先を掲示した。また、Yは、残る1枚の似顔絵についても、上記画像投稿サイトにアップロードし、本件サイトに
「はい応募も早速三通目!…なんとまたXさんの作品だ!なんか萌えますな。萌え陛下。」
と投稿し、上記画像投稿サイトへのリンク先を掲示した(以下、本件行為1)。

これに対しXは、
「お客様のリクエストには極力お応えするのですが、政治的、思想的に利用するのはご遠慮ください。あくまで個人的利用の範囲でお応えしたイラストです。」
と投稿したところ、Yは、
「あ、はいゴメンなさい。賛同していただけるかと思ったのですが、届きませんでしたか…ごめんなさい。消します。」
と投稿し、その後、本件似顔絵の写真を上記画像投稿サイトから削除した。

しかし、Yは、本件サイトに、平成24年3月25日、
「毒をもって毒を制すということで、大手マスコミと同じ手法を取ってみた。」
翌26日
「どんな手を使っても注目を集めて伝えたいことがあるんです。」
「Xさんにも○害予告されましたし、あちこちから狙われてますのでW俺の交友範囲は右から左、官から暴、聖から貧まで幅広いですが、危険情報ばかり流しているので…アブナイJAPANというのに少しまとめてあります…(以下省略)」
と投稿した(以下、本件行為2)。
本件サイト及び画像投稿サイトにおけるYの投稿内容は、Yがブロックした者以外の者に自由に閲覧できた。

Xは、

  1. 本件行為1について、Xの著作権(公衆送信権)侵害である。また、本件行為1は、原告Xの名誉声望を害する方法で著作物を利用する行為であり、著作者人格権侵害である(著作権法113条6項)、
  2. 本件行為2の中で、「○害予告」は「殺人予告」を意味する、XがYに対し殺害予告をしたとの事実を摘示することは、Xの社会的評価を低下させるもので、Xへの名誉毀損であると主張し、平成24年9月、Yを相手に400万円の損害賠償を求め提訴した。

[東京地裁]
民事46部の長谷川浩二裁判長は、本件行為1の著作権侵害による損害額20万円、本件行為1による著作者人格権侵害、及び本件行為2のXへの名誉毀損について、それぞれ15万円(合計30万円)と認定し、Yは、Xへ50万円を支払うよう命じた。
Yは、控訴し、Xは、自らの作品について、著作権フリーの姿勢をみせており、Yには著作権侵害の故意はない、と主張、これに対し、Xは、「自ら制作した特定の作品のみ他人意よる自由な二次利用を許諾したにすぎない」と反論した。

[知財高裁]
第3部の設楽隆一裁判長は、原判決が認容した限度で、理由がある、と1審判決を支持し、本件控訴を棄却した。

佐藤秀峰氏は、マンガの二次利用は、フリーにしたいという気持ちを持っていたと思われるが、自分と違う思想の人の手にかかると、このように「悪用」されるので、考えを改めたかも知れない。「著作権法113条6項」という条文の有用性が証明された。

[参考文献]
判例評釈として、小泉直樹「著作者の名誉声望の侵害」『ジュリスト』2013年10月号6頁、大家重夫「入手した天皇似顔絵を政治・思想目的でウエブサイトに掲載利用した事件」日本マンガ学会ニューズレター36号(2014年1月)8頁。

ナビキャスト事件

入力フォーム紹介の資料は著作物であり、類似サービスの資料が著作権侵害とされ、10万円の損害賠償が命ぜられた事例である。

東京地裁平成25年9月12日判決(平成24年(ワ)第36678号)

 原告X((株)ショーケース・テイービー)は、その業務に関連して、ウエブサイトの入力フォームのアシスト機能に係るサービスである「ナビキャスト」の内容を説明する資料を作成し、ネット上、あるいは紙媒体で、Xの著作の名義で公表した。
 ところが、同様の事業を行っている被告Y((株)コミクス)が、COMIX Inc.の著作名義で「EFO CUBEによる入力フォーム改善・最適化~入力フォームでの離脱を改善します」という資料をネット上で、あるいは紙媒体の印刷物で公表した。

 Xは、Yに対し、

  1. 上記「EFO CUBEによる入力フォーム改善・最適化~入力フォームでの離脱を改善」の営業資料を記録した電磁的記録媒体の記録抹消、又は同資料印刷パンフレット、レジメ等の印刷物の廃棄を求め、
  2. 被告Yは、原告Xへ、1680万円及び訴状到達日翌日から支払済みまでの年5分の金員の支払を求める、

として訴訟になった。

 原告は、原告各資料は、全体として、著作者の個性が発揮され、思想を創作的に表現し、文芸及び学術の範囲に属する言語及び美術の著作物に当たると主張した。
 被告は、原告資料は、特徴的言い回しがなく、表現が平凡で、ありふれている、創作的表現はない、と反論した。

[東京地裁判決]
民事47部の高野輝久裁判長は、次のように述べて、原告の請求を一部認容した。

  1. 差止め及び廃棄等の請求について。
    被告Yは、平成21年8月頃から、「EFO CUBE」のサービスを開始し、上記営業資料を作成し、顧客に頒布、上映していたが、平成24年1月15日、本件訴状の送達を受けて、被告資料の使用を中止し、記録した電磁的記録媒体や被告資料印刷の印刷物を保有している証拠はないので、「原告の差止め及び廃棄等の請求」は理由がないとした。
  2. 損害賠償の請求について。
    1. 原告各資料が著作物に当たるか否か
      「『ナビキャスト』の内容を効率的に顧客に伝えて購買意欲を喚起することを目的として『ナビキャスト』の具体的な画面やその機能を説明するために相関図等の図や文章の内容を要領よく選択し、これを顧客に分かりやすいように配置したもので」「全体として筆者の個性が発揮され」「創作的な表現を含むから、著作物に当たる」とした。
      また、原告Xが、平成20年、訴外A(インターネット広告代理店事業(株)フルスピード)に、ナビキャストフォームアシストの供給の委託等をしたこと、被告Yは、Aから、「〈入力フォーム最適化ツール〉フルスピードEFO」資料の送付を受け、被告Y従業員がこれを修正し、被告資料が完成したことを認め、原告資料に「依拠」したと認定、被告Yは、原告Xの著作権(複製権及び翻案権)侵害したとし、顧客に対し被告資料の頒布上映は、原告の著作権(上映権又は著作権法28条に基づく上映権及び譲渡権又は著作権法28条に基づく譲渡権)侵害するとした。
    2. 被告の代表者は、原告ナビキャスト担当者の訪問を受けて原告資料を入手している。原告資料と被告資料の記載が同一のものがあると知ることができたのに、しなかった被告には過失がある。
    3. 被告資料が「EFO CUBE」の営業で補助的役割であること、著作権侵害部分は、被告資料の38.8%相当にすぎないこと等の理由で、原告損害額は10万円とした。
ウエブページに載せるこういう文章の著作物性が認められた事例である。

弁護士対行政書士事件

控訴人(一審被告、行政書士)が自らのブログに掲載した被控訴人(一審原告、弁護士)に関する記事の内容は、控訴人の意見ないし論評にすぎないか、事実の摘示に当たる部分も虚偽とは認められないとして、一審は被控訴人(弁護士)の請求を一部認めたが、二審は、かかる記事の掲載は不正競争防止法の違反にならぬとして、被控訴人の請求を棄却した事例である。

知財高裁平成25年9月25日判決(平成25年(ネ)第10004号)
東京地裁平成24年12月6日判決(平成24年(ワ)第11119号)

原告は、東京都千代田区で「神田のカメさん法律事務所」を開設している弁護士である。
被告は、清瀬市内で「かなめ行政書士事務所」を開設している行政書士である。

被告は、モバイル用URLを開設し、そのブログで、平成23年6月9日、「南洋株式会社」と題する記事を書き、「この会社も社債を募集していますが、どうなんでしょう?」、南洋株式会社の有価証券を購入すれば、これを担保に先物取引で被った損失を取り戻せるという電話を受けた相談者への回答として「被害回復型の詐欺だと思います…損失を取り戻すと言って釣っておいて、南洋株式会社の社債を買わせようとしているんだと思います」などと書いた。
原告は、南洋株式会社から記事の削除を依頼され、被告へ記事の削除を求めたが、被告は拒否した。原告は、平成23年10月17日、東京都行政書士会長へ、被告は行政書士12条違反などの行為をしている、ブログの削除等の指導や対応を求めた。
被告も同月31日、東京弁護士会に、原告への懲戒を求めた。
南洋株式会社は、原告を代理人として、被告のブログが掲載されているニフテイ株式会社に対し人格権に基づき、本件各先行記事等の削除を求める仮処分命令を申立て、平成23年12月25日、本件第二先行記事の削除を命じる判決を得た。
被告は、原告への懲戒請求手続きにおいて、原告が提出した答弁書を被告のブログなどに掲載した。原告は、著作権に基づき、答弁書の削除を求める仮処分命令を出すよう東京地裁へ申し立てた。

平成24年5月、原告は、不正競争防止法2条1項14号、3条を根拠に訴訟を提起した。

  1. 被告は、インターネット上の「かなめ行政書士事務所」ブログ、モバイル用URLその他のブログ電子掲示板等へ別紙記事目録の記事を掲載してはならない。
  2. 被告は、インターネット上の「かなめ行政書士事務所」ブログ、モバイル用URLに掲載している別紙目録の請求欄記載の記事を削除せよ。
  3. 被告は、原告に対し、744万円及びこれに対する平成24年5月2日から支払済みまで年5分の割合の金員を支払え。

1審の東京地裁17部(高野輝久、志賀勝、小川卓逸)は、次の判決を下した。

  1. 被告は、インターネット上の「かなめ行政書士事務所」ブログ、モバイル用URLその他のブログ、電子掲示板等へ別紙記事目録の記事を掲載してはならない。
  2. 被告は、インターネット上の「かなめ行政書士事務所」ブログ、モバイル用URLに掲載している別紙目録の主文欄記載の記事を削除せよ。
  3. 被告は、原告に対し、50万円及びこれに対する平成24年5月2日から支払済みまで年5分の割合の金員を支払え。(以下省略)

 すなわち、一審判決は、原告が虚偽の記事であると主張する12件の記事の内、9件の記事について、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の流布に当たる部分があるとして、その掲載の禁止及び削除並びに損害賠償を命じた。
2審判決(設楽隆一、田中正哉、神谷厚毅)は、被控訴人の請求はいずれも理由がないとし、原判決が、被控訴人の請求の一部を認めていた部分を取り消して、被控訴人の請求をいずれも棄却した。

「主文」

  1. 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
  2. 上記部分につき、被控訴人の請求をいずれも棄却する。
  3. 訴訟費用は、第1、2審を通じて、被控訴人の負担とする。」
1審判決と2審判決が全く違っている。

動画無断使用事件

誰が投稿したか、インターネット会社に発信者情報の開示を請求した事件である。

東京地裁平成25年10月22日判決(平成25年(ワ)第15365号)

 原告は、宗教法人創価学会である。被告は、電気通信事業を営むGMOインターネット株式会社である。

 平成24年11月29日、被告GMOインターネット株式会社の提供するインターネット接続サービスを利用し、被告のサーバーを経由して、氏名不詳の者が、本件動画を投稿し、不特定多数の者が閲覧できる状態になった。
 これは、原告動画の無断複製である、とし、原告は、被告に対し、氏名不詳の者などの発信者情報の開示を請求した。なお、この本件動画は、原告が訴訟を提起した平成25年6月12日までに削除されている。
 「インターネット上の文章を誰が書いたか、氏名、アドレスを教えよ」と述べても、「特定電気通信役務者」は、(通信の秘密)を保護する見地から、拒絶できる。
 ただ、「1,権利侵害の流通によって、当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき、2,当該発信情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき」の2要件を備えていれば、この事件の被告のような特定電気通信役務者は、開示しなければならない(プロバイダ責任制限法4条1項)。

[東京地裁判決]
 民事46部長谷川浩二裁判長は、

  1. 少なくとも、原告動画の部分1及び部分4を、被告の本件動画は、無断複製し、原告の著作権が侵害されたことは、明らかであるとし、著作権侵害を認定、
  2. 原告が、著作権侵害者」である氏名不詳の者に対し、損害賠償を請求するには、発信者情報(本件動画の発信者、その他本件動画の送信に係る者の氏名又は名称、住所、電子メールアドレス)を取得する必要が有り、原告には、これら発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある、とし、「被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の情報を開示せよ。」と判決した。
東京地裁平成15年(2003年)3月31日判決(判時1817号83頁)(錦糸眼科事件)参照。亀井弘泰・JUCC通信179号5頁。

LADY GAGA事件

「LADY GAGA」の文字を標準文字で、「レコード、インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル…」を指定商品とする本願商標は、商標登録が拒絶査定され、不服不成立の審決が出されたが、この審決が維持された事例である。

知財高裁平成25年12月17日判決(平成25年(行ケ)第10158号)

原告は、エイト・マイ・ハート¥イン・コーポレイテッド。
被告は、特許庁長官。

原告は、「LADY GAGA」の文字を標準文字で表してなり、第3類、第9類、第14類、第16類、第18類、第25類、第41類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務とし、平成22年4月12日登録出願された商願2010ー28913号に係る商標法10条1項の規定による商標登録出願の分割として平成23年3月28日、第9類「レコード、インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル、映写フイルム、録画済みビデオデイスク及びビデオテープ」を指定商品とする本願商標について、商標登録出願をした。
特許庁は、拒絶査定をした。
原告は、これに対する不服の審判請求をした。
特許庁は、商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当するとして、不服不成立の審決をした。
原告は、知財高裁に本件審決の取消を求めた。
知財高裁第2部清水節裁判長は、「原告の請求を棄却する。」とした。

次のように判断している。

  1. 「LADY GAGA」は、世界的に広く知られた歌手で、「LADY GAGA」の商標に接する者は、歌手名を表示したものと容易に認識する。
  2. 本願商標を、その指定商品中、本件商品である「レコード、インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル、録画済みビデオデスク及びビデオテープ」に使用した場合、これに接する取引者・需要者は、当該商品に係る収録曲を歌唱する者、又は映像に出演し歌唱している者を表示したもの、すなわち、その商品の品質(内容)を表示したものと認識するから、本願商標は、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない。したがって、本願商標は、商標法の3条1項3号に該当する。
  3. 本願商標を、本件商品である「レコード、インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル、録画済みビデオデスク及びビデオテープ」のうち、LADY GAGA が歌唱しない品質(内容)の商品に使用した場合、LADY GAGA が歌唱しているとの誤解を与える可能性があり、商品の品質について誤認を生ずるおそれがある。従って、商標法4条1項16号に該当する。
  4. 歌手名が現実に自他商品の識別標識として機能している、との原告の主張に対し、取引される商品によっては、人の名称やグループ名が当該商品に表示された場合に出所表示機能を有することは否定できないが、本件商品については、商品に表示された人の名称やグループ名を、取引者・需要者が商品の品質(内容)とまず、認識する。そして、表示された人の名称やグループ名が、著名な歌手名・音楽グループ名である場合には、取引者・需要者は、これを商品の品質(内容)とのみ認識し、それとは別に、当該商品の出所を表示したものと理解することは通常困難であると認められる。
レデイ・ガガをこういう指定商品に商標登録を認めない結論は正しいと思う。

ウイッチーズキッチン事件

インターネットショッピングモール「楽天市場」に出店して、商品を販売している原告が、被告Yが運営するウエブサイト上で、Yが宣伝、販売するY商品は、訴外Aにより中国で、X商品に依拠して、X商品の形態を模倣して製造され、YがA社に注文したもので、これが不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為にあたるとして、XのYへの差止請求と損害賠償が認められた事例である。

知財高裁平成25年12月26日判決(平成25年(ネ)第10062号、同10083号)
東京地裁平成25年6月27日判決(平成24年(ワ)第4229号)

原告Xは、ウイッチーズキッチンという商号でステンドグラスのランプシェード、パイン材の家具、ドールハウスなどを製造、販売を営む者である。
被告Y(有限会社ジャパンリンク貿易)は、日用品雑貨、インテイリア用品、家具の輸入、販売等を営む会社である。

Xは、インターネットショッピングモール「楽天市場」に「ウイッチーズキッチン」において、ステンドグラスのランプシェードなどの商品を販売している。
訴外のメーカーAは、インターネットで、Xの各製品を見て、これらに依拠し、サンプルのデザインをし、被告Yにサンプル画像を添付したメールを送信して受注活動をした。
Yは、Aに各商品を発注し、A製造の各商品を購入し、輸入し、業者向けに販売した。
Xは、Yに対して、Xの販売するステンドグラスのランプシェードの形態を模倣した商品を販売していると主張し、不正競争防止法2条1項3号に当たるとして、同法3条に基づいて、被告Yが販売する商品の一部の製造、販売又は販売の差止め並びに同商品とその金型及び治具の廃棄を求めると共に、同法4条に基づき、損害賠償金1320万円及びこれに対する訴状送達の翌日から支払済みまで年5分の遅延損害金の支払いを求めた。
Yは、Aから商品を購入し、輸入し、日本国内で販売したが、XやX各商品を知らず、Y商品がX商品の形態模倣であることも知らなかったと主張し、不正競争防止法19条1項5号(他人の商品の形態を模倣した商品を譲り受けた者(その譲り受けた時にその商品が他人の商品の形態を模倣した商品であることを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない者に限る)がその商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為)に該当し、不正競争防止法3条(差止請求権)、4条(損害賠償)は適用されない、と主張した。

東京地裁民事第47部の高野輝久裁判長は、次のように判断した。
 被告Yは、訴外Aから被告各商品を購入し、日本に輸入するに当たって、原告X商品の形態を模倣したものかどうか調査すべき注意義務が有り、調査を行わなかったというのであるから、被告Y商品が、原告X商品の形態を模倣したものであることを知らなかったとしても、知らなかったことについて、重大な過失があるとした。

「判決主文」

  1. 被告は、別紙目録記載1及び4ないし6の商品の製造、販売、又は販売の申出(被告ホームページにおける販売の申出及び販売のための展示を含む)の禁止。
  2. 被告は、その占有に係る別紙被告商品目録記載1及び4ないし6の商品の廃棄をせよ。
  3. 被告は、原告に対し、374万5337円及びこれに対する平成24年2月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  4. 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
    (5,6,省略)

 Yは、損害賠償請求に関する部分の敗訴部分のみを不服として控訴した。
 Xは、損害賠償請求に関する部分の敗訴部分について、付帯控訴した。

[知財高裁]冨田善範裁判長は、次のように判決した。

「判決主文」

  1. 本件控訴及び本件付帯控訴をいずれも棄却する。
  2. 控訴費用は、控訴人兼附帯控訴人の負担とし、附帯控訴費用は被控訴人兼附帯控訴人の負担とする。
  3. 原判決主文第3項は、当審において、被控訴人兼付帯控訴人が附帯請求について請求の一部減縮をしたことにより、「控訴人兼附帯被控訴人は、被控訴人兼附帯控訴人に対し、374万5337円及び内金322万6779円に対する平成24年2月23日から、内金5万1496円に対する同年3月31日から、内金12万7062円に対する同年12月29日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え」と変更された。
2012-4(チュパ。チュプス対楽天市場事件)参照。

[参考文献]小泉直樹・ジュリスト2014年4月号6頁。

シテイバンク事件

ドメイン名を日本レジストリーサービス(JPRS)に登録している原告が、そのドメイン名を被告(シテイバンク銀行株式会社)へ移転せよ、との裁定がでたたため、被告に対し、本件各商標に基づく本件ドメイン名の使用差止請求権の不存在確認を求め、訴えが却下された事件である。

東京地裁平成25年2月13日判決(平成24年(ワ)第2303号)

原告は、日本ユナイテッド・システムズ株式会社である。
被告は、シテイバンク銀行株式会社で、米国法人Citibank,N.A.のグループ会社で、米国シテイバンクの外国銀行のとしての日本における業務を代理している。

原告は、ドメイン名「CITIBANK,JP」(以下、本件ドメイン名)を株式会社日本レジストリーサービス(JRPS)へ登録している。(平成14年4月までは(社)日本ネットワークインフォメーションサービスセンターJPNICが登録事務を行っていた。)
JPNICは、平成12年7月、「JPドメイン名紛争処理方針」を定め、これにより、被告は、平成23年10月28日、日本知的財産仲裁センターに対し、原告を相手方として、本件ドメイン名の登録を被告に移転せよとの裁定を求めて、本件紛争処理方針に基づく申立を行った。日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、「本件ドメイン名の登録を被告に移転せよ」とする裁定をした。

ところで、米国法人Citibank N,A.は、は、商標登録第1447343号など5件の商標権を有している。
原告は、被告に対し、本件各商標に基づく本件ドメイン名の使用差止請求権の不存在確認を求めて訴えた。
東京地裁民事29部は、仮にこの訴訟で、被告に本件各商標の商標法上の使用差止請求権が存在しないことを確認しても、被告が本件各商標について米国シテイバンクから許諾を得ているという事実関係が、本件ドメイン名の登録の移転を基礎づけ得るものである以上、原告の本件ドメイン名の登録に関するJPRSとの間の契約関係に基づく地位についての不安、危険は除去されない、商標権に基づくドメイン名の使用差止という紛争は存在しない。確認の利益は認められない。本件訴えは、確認の利益なく不適法で、却下する、とした。

原告は、「日本ユナイテッド・システムズ株式会社」で、弁護人なしで、訴訟を提起している。どういう実体があるのだろうか。

2014年

イスラム教徒個人情報インターネット流出事件

インターネット上にイスラム教徒の個人情報が流出したことにつき、原告イスラム教徒の個人情報を警察当局が収集・保管・利用したことは憲法20条等に違反しないが、警視庁の情報管理上の注意義務違反があったとされ、しかし警察庁の監査・監督上の責任は否定され、国家賠償法上、モロッコ、イラン、アルジェリア、チュニジアとの間に相互保証があり、被告東京都は、原告1人へ220万円、原告16人へそれぞれ550万円が支払うよう命じた事例である。

東京地裁平成26年1月15日判決(平成23年(ワ)第15750号、第32072号、平成24年(ワ)第3266号、判時2215号30頁)

原告は、いずれもイスラム教徒で、日本国籍4名、チュニジア共和国国籍6名、アルジェリア民主人民共和国国籍3名、コロッコ人王国国籍3名、イラン・イスラム共和国国籍1名である。

平成22年10月28日頃、インターネット上に、114点のデータがファイル交換ソフト・ウイニーを通じて、掲出された。このデータは、同年11月25日時点で、20を超える国と地域の1万台以上のパソコンにダウンロードされた。データには、履歴書のような書面、モスクへの出入り状況、イスラム教徒との交友関係などがある。

原告等は、

  1. 警視庁、警察庁、国家公安員会は、モスクの監視など憲法上の人権を侵害し、個人情報を収集・保管・利用し、
  2. 個人情報を情報管理上の注意義務違反で、インターネット上に流出し、適切な損害拡大防止措置を執らなかったことは、国家賠償法上違法である

と主張し、東京都(警視庁)、国(警察庁、国家公安員会)に対し、国家賠償法1条1項等に基づき、連帯してそれぞれ1100万円及び遅延損害金の支払いを求めた。

[東京地裁]
民事第41部の始関正光裁判長は、次のように判断した。

  1. 平成22年流出のデータは、警察が作成したもので、警視庁公安部外事第3課が保有していた。警察の情報収集活動は、国際テロ防止のために必要やむを得ないもので憲法20条(信教の自由・国の宗教活動の禁止)、これを受けた宗教法人法84条に違反するものでない。憲法13条(個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重)でない。
  2. 本件データは、4警察職員(おそらくは警視庁職員)によって外部記録媒体を用いて持ち出された。警視総監には情報管理上の注意義務を怠った過失がある。国家賠償法上の違法性があり、被告東京都に原告が被った損害賠償責任がある。
    警察庁は流出事件の責任はなく、被告国にもない。
  3. 本件で流出した原告の個人情報の種類・性質・内容、当該個人情報が、インターネットによって、広汎に伝播したことを考えると、原告等が受けたプライバシー侵害、名誉権侵害は大きく、原告16人へ、慰謝料各500万円(弁護士費用各50万円)、原告1名には、200万円(テロリストであるような表記をされた原告の妻として氏名、生年月日、住所のみが流出)(弁護士費用20万円)を東京都に命じた。
  4. 原告モロッコ、イラン、アルジェリア、チュニジア間に国家賠償法6条(この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証がある限り、これを適用する。)があると認められ、東京都から損害賠償を受けることができる。
この事件、控訴されているが、控訴審判決を入手していないので、1審のみ掲載する。イスラム過激派による国際テロがあり、警察当局の取締、犯罪の予防、公共の安全、秩序維持をわれわれは期待している。ただ、そのため、個人の自由を必要以上に縛り、侵害しないよう願いたい。アメリカ合衆国では、外国情報監視法裁判所(United States Foreign Intelligence Surveillance Court)は、2013年4月25日、大手のプロバイダベライゾンに対し、顧客の電話記録(電話メタデータ)を90日間、NSA(国家安全保障局)へ提出せよ、と命じている(ルーク・ハーデイング「スノーデンファイル」(日経BP社・2014年)122頁。

[参考文献]
ルーク・ハーデイング著、三木俊哉訳「スノーデンファイル」日経BP社・2014年。
グレン・グリーンウオルド著、田口俊樹・濱野大道・武藤陽生訳「暴露」新潮社・2014年。
上杉隆「ウイキリークス以後の日本」光文社新書・2011年。
柏原竜一「中国の情報機関」祥伝社新書・2013年。

出会い系サイト規制法違反事件(刑事)

「インターネット異性紹介業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(平成15年6月13日法律第83号)」は、インターネット異性紹介事業は、都道府県公安員会に届出をしないと行えないと規定し、届出をしないで行った被告人がこの法律違反で起訴され、被告人は無罪を主張したが50万円の罰金に処せられ、罰則を伴う届出制度が合憲とされた事例である。

最高裁平成26年1月16日判決(平成23年(あ)第1343号刑集68巻1号1頁、判時2225号144頁、判タ1402号54頁)
東京高裁平成23年6月14日判決(東髙刑時報62巻1=12号52頁)
東京地裁平成22年12月16日判決(刑集68巻1号59頁)

 平成15年に「インターネット異性紹介業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」が公布された。この法律は、インターネット異性紹介事業を利用して、児童(18才未満の者)を性交等の相手方となるように誘引する行為を禁止し、インターネット異性紹介事業について必要な規制を行うこと等により、インターネット異性紹介事業の利用に起因する児童買春その他の犯罪から児童を保護し、もって児童の健全な育成に資することを目的とした法律である。
インターネット異性紹介事業を行う者は、都道府県公安員会に届け出ることを定め(7条)、広告宣伝で、児童は、当該インターネット異性紹介事業を利用してなならない、旨を明示しなければならないこと(10条)、サイト利用者が児童でないことの確認し(11条)、禁止誘引行為が行われたことを知った時は、公衆が閲覧できないようにする措置をとらねばならない(12条)こと等が定められている。
また、都道府県公安委員会に無届けでインターネット異性紹介事業を行った者(7条1項)は、「6月以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する」(32条1号)と規定する。

被告人は、無届けで、出会い系サイトを運営したとして、起訴された。
被告人は、その運営するサイトは、趣味のサイトであること、届出制度は憲法の表現の自由、集会結社の自由を制約し、不当であると主張した。
東京地裁は、本件届出制度は、憲法に違反しないとして、罰金50万円を命じた。
東京高裁も控訴を棄却した。

最高裁(山浦善樹裁判長、櫻井龍子、金築誠志、横田尤孝、白木勇裁判官)は、「本件届出制度は、上記の正当な立法目的を達成するための手段として必要かつ合理的なものというべきであって、憲法21条1項に違反するものではない。本法2条2号による『インターネット異性紹介事業』の定義は不明確とはいえないから、不明確であることによる憲法21条1項違反の主張は前提を欠く」として、裁判官全員一致で、上告を棄却した。

50万円の罰金は低すぎると思う。

「参考文献」曽我部真裕「ジュリスト別冊平成26年度重要判例解説」18頁。

漫画家発信者情報開示請求事件

漫画の著作権者である原告が、インターネット上のあるブログにより、原告漫画本が無断で、アップロードされ、リンク先で本の表紙の画像とともに、著作物が掲載され、著作権(公衆送信権)が侵害されたとし、発信者を特定するため、インターネットに接続していた者について、KDDI株式会社に発信者情報の開示を請求した事件。

東京地裁平成26年1月17日判決(平成25年(ワ)第20542号)

原告は、同人サークル「Art Jam」をたちあげ、「B」のペンネームで漫画原作等を行っている者で、「本件漫画1」「本件漫画2」の著作権者である。
 被告(KDDI株式会社)は、電気通信事業者として、インターネット接続サービスやサービスプロバイダ業等を行う株式会社である。

 原告は、訴外LINE株式会社が管理するライブドアブログに開設の「どーじんぐ娘」(以下、本件ブログ)があり、誰かが、原告の漫画を原告に無断で、アップロードし、送信可能化したファイルに対するリンクが表紙の画像と共に掲載されていることを知った。
原告は、債権者となり、債務者をLINE株式会社として、発信者情報開示に関する仮処分決定を得て、

  1. 本件記事の発信者に係るIPアドレス及び
  2. 本件記事が送信された年月日時刻

の開示を受けた。
IPアドレスは、被告が管理している。被告は、プロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に当たると主張し、原告の権利侵害をした発信者を訴えるためには、被告に発信者情報の開示を求めて、訴えた。

 すなわち原告は、本件IPアドレス本件タイムスタンプの時刻に使用して、インターネットに接続していた者について、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、別紙発信者情報目録記載の発信者情報の開示を求めた。

[東京地裁民事29部判決]
大須賀滋裁判長は、次のように判断し、「被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。」と判決した。

  1. 被告は、本件IPアドレスを管理する経由プロバイダで、法4条1項の「開示関係役務提供者」である。
  2. 本件記事に対応するダウンロードサーバーに本件漫画の電子ファイルをアップロードした者は、公衆の用に用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆通信装置の公衆送信用記録媒体に本件漫画の情報を記録(アップロード)して、原告の本件漫画を送信可能化し、自動公衆送信しうるようにしていた(パスワードは公開)ので、原告の公衆送信権侵害は明らかである。本件記事を投稿した発信者は、ダウンロードサーバーに本件漫画の電子ファイルをアップロードした者と同一人であると認めるのが相当であり、仮にそうでないとしても、少なくともアップロード者と共同して主体的に原告の公衆送信権を侵害したことは明である。
  3. 原告は、発信者に対し損害賠償請求の予定があるので、発信者を特定するため、本件IPアドレスを本件タイムスタンプの時刻に使用してインターネットに接続していた者(発信者)の住所、氏名及びメールアドレスの開示を受けるべき正当な理由がある。
LINEについては愼武宏・河鐘基「ヤバいLINE」(光文社新書・2015年5月20日)がある。

カード情報流出事件

ウエブサイトによる商品の受注システムを利用し、インテリア商材を販売している会社が、顧客のクレジットカード情報が流出したとして、システムの設計をし、保守等の委託契約をしたネットショップ運営業者へ、債務不履行であるとして、約1億円の損害賠償を求めたが、2262万3697円の損害賠償が命ぜられた事例である。

東京地裁平成26年1月23日判決(平成23年(ワ)第32060号、判時2221号71頁)

原告は、インテリア商材の卸小売、通信販売等を行う株式会社である。
被告は、情報処理システムの規格、保守受託及び顧客へのサポート業務、ホームページの制作、業務システムの開発、ネットショップの運営等を行う株式会社である。

原告と被告の間で、ウエブサイトにおける商品の受注システムの設計、製作、保守等の基本契約、個別契約を結び、システムの完成後、平成21年4月、原告会社は、システムの稼働を開始した。
平成23年4月、顧客のクレジットカード情報の不正使用やサーバーへの外部からの不正アクセスが確認され、個人情報の流出が疑われる事態になった。
原告は、原因調査、顧客対応等を余儀なくされたため、受託業者である被告に対して、債務不履行責任を問い、1億0913万5528円の損害賠償を求めた。

東京地裁民事44部脇博人裁判長は、両者間に、当時の技術水準に沿ったセキュリテイ対策を施したプログラムを提供することが黙示的に合意されていた、被告は、顧客の個人情報を本件データベースに保存する設定になっていたから個人情報の漏洩を防ぐため必要なセキュリテイ対策を施したプログラムを提供すべき債務を負っていた、被告は、SQL(Structured Query Language)(データベースの管理プログラムを制御するための言語) インジェクション対策としてのバインド機構の使用やエスケープ処理を施したプログラムを提供すべき債務を履行しなかった、として、被告の債務不履行を肯定した。原告のその他主張の債務不履行は否定した。原告の過失を3割とし、損害賠償として3231万9568円を認め、Xの過失相殺をして、2262万3697円及び平成23年10月15日から支払済みまでの年6分の金員の支払を命じた。

こういう事件は、今後、増加するであろう。

芸能人発信者情報開示請求事件

芸能活動を行いブログを開設している芸能人が、インターネット上のあるブログにより、著作権侵害され、名誉感情が侵害されたとして、誰が投稿したか、NTTコミュニケーション株式会社に発信者情報の開示を請求した事件である。

東京地裁平成26年1月27日判決(平成25年(ワ)第18124号)

原告は、芸能活動を行っている者で、インターネット上にブログを開設している。そのブログに平成23年4月、「やっぱりハッピーでえ~(※^0^※)」と題する記事(原告記事1)を、平成24年3月、「バーチャルで遊んで下さい!!訂正、追記」と題する記事(原告記事2)を掲載した。
 株式会社サイバーエージェントが提供するブログサービスを利用して、インターネット上に「嘘を暴く快感!嘘を見逃すな!!」というブログに平成25年1月20日付け投稿の記事(以下、本件記事)、原告の顔写真が掲載されており、そこに原告の記事の一部が転載され、「妄想が激しく、嘘つき」「数々の嘘を暴き」というサブタイトルもあった。
 原告は、いわゆる経由プロバイダである被告NTTコミュニケーションズが、本件記事の発信者情報を保有しているとして、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」第4条第1項に基づき、開示を求めて訴えた。

[東京地裁民事29部判決]
大須賀滋裁判長は、次のように判断し、「被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。」と判決した。

  1. 原告の文字によって記載された部分は、いずれも原告の著作物であると認め、原告は、作成者として著作権(複製権、公衆送信権)を有する。
  2. 被告は、「引用」を主張するが、本件記事1全文や本件記事2のうちの24行を引用する必要性があるとは認められないとして、著作権法32条1項の引用を認めなかった。
  3. 「本件記事」を本件ブログ上に投稿する行為は、原告著作権(複製権、公衆送信権)を侵害するものと認めた。
  4. 原告が本件記事発信者に対し、不法行為(著作権侵害)に基づく損害賠償請求権を行使するためには、被告の保有する本件発信者情報の開示を受けることが必要である。
芸能人も攻撃され、また、攻撃者に対して、芸能人が敢然と戦う、のである。

プラスチック自動車部品事件

被告らが著作、販売、インターネット上に掲載等をした「自動車プラスチック部品メーカー分析と需要予測」が、原告が著作した「プラステック自動車部品」の著作権侵害ではないとされた事例である。

知財高裁平成26年2月19日判決(平成25年(ネ)第10070号)
東京地裁平成25年7月18日判決(平成24年(ワ)第25843号)

原告Xは、自動車用プラスチックの研究開発、企画、市場開発、営業及びコンサルテイングを業としてきた者で、「プラステック自動車部品」(以下、本件書籍)の著者である。
被告Yは、「自動車プラスチック部品メーカー分析と需要予測」(以下、被告書籍)の著者の1人である。
被告Y2(有限会社シーエムシー・リサーチ)は、被告書籍の発行元である。
被告Y3(株式会社シーエムシー出版)は、被告書籍の発売元である。

Xは、Y1Y2Y3らが共謀して、被告書籍を作成・販売し、被告書籍をインターネット上に掲載している行為は、原告の本件書籍に掲載されている14個の表についての著作権(複製権、譲渡権、公衆送信権)侵害及び著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)の侵害であると主張し、

  1. 著作権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき、Yらに84万円、
  2. 著作者人格権の不法行為による損害賠償請求権に基づき、Y1に対し100万円、Y2に対し、100万円、Y3に対し、50万円、
  3. 著作権法112条1項に基づき、Yらに対し、被告書籍の複製、譲渡、公衆送信の差止め禁止、
  4. 同条2項に基づき、Yらに対し、被告書籍の廃棄及びその電子データを記憶した媒体の廃棄を、
  5. 同法115条に基づき、Yらに対し、別紙告知文の掲載を求めた。

[東京地裁]
民事46部の長谷川浩二裁判長は、原告Xの本件書籍の各表は、自動車に採用されているプラスチックに関する事実をごく一般的な形式に整理したものにすぎず、その表現自体は平凡かつありふれたもので、著作物性を認めることはできない、としてXの請求を棄却した。

[知財高裁]
第2部清水節裁判長は、原判決の認定判断を支持し、控訴人Xの請求は、理由がないとし、控訴を棄却した。2審において、Xは、本件書籍の各表が編集著作物であるとも主張したが、アイデアの独創性や記載事項の情報としての価値を述べたに過ぎず、著作権法上の保護対象でないとした。

1審、2審とも、書籍及びその中の表は、著作物性がないとされている。

呪われしモザイク事件

原告製作のビデオ映像がニコニコ動画にモザイクをかけられ、改変され無断掲載されたため、原告が発信者情報に係る情報の開示を求めた事件である。

東京地裁平成26年3月14日判決(平成25年(ワ)第26251号)

原告は、株式会社シナノ企画で、映画の著作物を製作した(以下、本件映像)。この本件映像の著作権は、創価学会に譲渡したが、その著作者人格権は保有している。
被告は、ソフトバンクBB株式会社である。

「takuya」と称する氏名不詳者が、株式会社ニワンゴが開設・運営する動画投稿サイト「ニコニコ動画」のに「『チキ本さん』呪われしモザイク」と題する動画(以下、本件動画)を、被告の提供するインターネット接続サービスを経由して投稿した。
本件動画は、その後本件サイトから削除された。

原告は、この本件動画は、原告が製作した映画の著作物である本件映像の無断複製物であり、原告が著作者であるとの表示がなく、また、無断でモザイクをかけるという改変をし、その内容も登場人物や創価学会の信仰を揶揄嘲笑するような、原告の意に反する改変をしていたとして、被告に対し、原告の権利が侵害されたことが明らかで(「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」第4条第1項第1号)で、「当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき」(同法4条第1項第2号)に該当するとして、発信者情報を開示するよう被告を訴えた。
被告は、本件動画が本件映像の複製物であること、本件発信者が原告の同一性保持権を侵害したこと等を否認し、発信者情報の開示を受けるべき正当事由につき争った。

[東京地裁判決]
民事29部の大須賀滋裁判長は、

  1. 本件ビデオ映像の著作物性を認め、
  2. 本件ビデオ映像の著作者は原告であるとし、
  3. 本件動画の5箇所について、本件ビデオ映像の本質的特徴を感得できるとし、
  4. 本件動画が原告の氏名表示権を侵害しているとし、
  5. 本件動画の利用に正当化事由がないとして、法4条1項1号の「権利侵害の明白性」があり、法4条1項2号にいう「当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき」の要件を充足するとして、原告の請求は理由があるとし、

「被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の発信者情報を開示せよ。」と命じた。

宗教団体を攻撃するような動画の投稿者を知り、訴訟提起のため、発信者情婦を求めてソフトバンクBBを訴えた事件である。

山野草動画事件

フリーのカメラマンとパケージソフト製作会社の間で、契約の解釈の相違から紛争が起こった事件である。

知財高裁平成26年4月23日判決(平成25年(ネ)第10080号)
東京地裁平成25年8月29日判決(平成24年(ワ)第32409号、平成25年(ワ)第5163号)

原告は、フリーのカメラマン。
被告は、音楽、教養、文芸等のパッケージソフト、デジタルコンテンツの企画、製作及び販売を業とする株式会社ポニーキャニオンである。
原告は被告の委嘱により、平成21年11月1日付で、「Virtual Trip 山野草(仮題)」に使用する録音録画物の製作業務を行い、被告が一時金150万円及び印税を支払うことを内容とする契約を行った。

  1. 契約の中に、「製作された原版」「及び原版を製作する過程で生じた中間成果物」「に関する所有権並びに著作権法上の一切の権利(著作隣接権、並びに著作権法第27条、28条の権利を含む)、産業財産権及びその他一切の権利は甲(被告)に帰属するものとする」(1条2項)があった。
  2. 原告は、ソニーPCL株式会社運営の「髙画質ビデオライブラリー」に映像動画(本件映像動画1)を提供し、ライブラリーにおいて、これらを販売し、株式会社アマナイメージズ運営の動画素材販売ウエブサイトにおいて映像動画(本件映像動画2)を販売した。
  3. 被告は、平成24年3月21日、原告が撮影した映像動画を収録した「Virtual Trip 花 Flowers 四季の山野草と高山植物」という題名のDVD及びBlu-rey(以下、本件作品)を発売した。本件作品は、春、夏、高山植物、秋、冬の5ブロックからなり、それぞれのブロックについて、風景の映像動画、山野草の映像動画、その山野草の映像動画の間に風景の映像動画(以下、本件風景映像動画)を収録し、山野草の映像動画等は448点、尺数58分4秒、本件風景映像動画は、点数52点、尺数9分8秒である。
  4. 被告は、本件映像動画1が、契約1条2項の本件成果物に当たることを理由に、10日以内に、ソニーPCL株式会社運営の「髙画質ビデオ素材ライブラリー」への掲載と販売を中止し、被告へ引き渡すよう催告した。

被告は平成24年6月12日、本件契約を解除する旨の意思表示をした。

[訴訟の提起]
原告は、被告が本件作品に本件風景映像動画を使用しているが、その複製、頒布を許諾していない。本件作品から、「風景の映像動画」を全て即刻削除せよ、不法行為による損害賠償請求権に基づき、225万円及び遅延損害金の支払を求めた。

[反訴]
被告は、反訴を起こし、原告が契約の条項に違反したことを理由に、原告との間の製作委嘱契約を解除したとして、上記契約に基づき、原告撮影の山野草の映像動画について、被告が著作権を有することの確認、これらを収録した映像素材(原版)の引渡並びに原告に対する既払金合計153万6465円及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めた。

[東京地裁]
民事47部高野輝久裁判長は、次のように判断し、判決した。

  1. 原告は、「扉」について各季節を意味すると解し、4点の風景の映像動画の使用は承諾したが、風景の映像動画を収録することは承諾していない。
  2. 損害額は、9分8秒分に相当する23万5935円である。
  3. 削除請求は、前提である差止め請求をしていないから不適法である。

反訴について。

  1. 本件映像動画1,2の著作権確認請求、これらを収録した映像素材(原版)の引渡請求は理由がある。
  2. 原告は、既払金153万6465円及び遅延損害金を被告へ支払え。

判決は、

  1. 被告は、原告へ23万5935円支払え。
  2. 別紙映像動画について、被告が著作権を有することを確認する。
  3. 原告は、被告に対し、各映像動画を収録した映像素材(原版)を引き渡せ。
  4. 原告は、被告に153万6465円支払え。
  5. 原告のその余の損害賠償請求を棄却し、原告のその余の請求に係る訴えを棄却する。
  6. 被告のその余の請求を棄却する。(7,8.省略)

として、被告の反訴を全面的に認めた。

[知財高裁]
原告・控訴人は、
1,被控訴人・被告が販売する後記「本件作品」中の「本件風景映像動画」部分が控訴人の著作権(複製権)を侵害するとして、不法行為に基づき、損害賠償金225万円及び附帯金の支払、
2,本件風景映像動画の著作権(複製権)に基づいて、本件作品から本件風景映像を削除することを求めた。
被告・被控訴人は、控訴人に対し、反訴として、
3,控訴人が販売する「本件映像動画1」及び「本件映像動画2」は、録音録画物製作委託契約である「本件契約」に基づき被控訴人が著作権を取得したとし、著作権に基づいて、本件映像動画1及び本件映像動画2の著作権確認と、
4,本件契約に基づいて、本件映像動画1及び本件映像動画2の映像素材の引渡と、
5,本件契約の解除に基づいて、既払金153万6465円の返還及び附帯金の支払を求めた。
控訴人は、本件作品を収録したDVD等の販売等の差止めと本件作品を収録したDVD等の廃棄を申立てた。被控訴人は、原判決主文1項の取消を求めた。

2部清水節裁判長は、次のように判断した。

  1. 控訴人は、本件風景映像動画を複製、頒布することの許諾をした。
  2. 本件映像動画1及び本件映像動画2,は、一体として、本件成果物である。
  3. 本件契約の解除の有効性。被控訴人のした本件契約の解約は、効力を有する。
  4. 本件契約の解除の効果について。

本件は、本件契約10条が本来的に想定する事例と異なるとして、契約の合理的解釈として、被控訴人は、控訴人に対し、本件作品を返還する必要はなく、本件映像動画1及び本件映像動画2の著作権等の取得も継続されるが、既払金の返還を求めることはできない、というべきである。(控訴人に既払金153万6465円の返還及び既払金の遅延金の支払を命じた原判決主文4項は不当であるからこれを取り消す)。

「主文」

  1. 本件控訴について
    1. 原判決主文第4項を取り消す。
    2. 前項の取消部分に係る被控訴人の請求を棄却する。
    3. その余の本件控訴を棄却する。
  2. 本件附帯控訴について
    1. 原判決主文第1項を取り消す。
    2. 前項の取消部分に係る控訴人の請求を棄却する。
  3. 当審請求について
    控訴人の当審における新たな請求を棄却する。
  4. 訴訟費用は、第1、2審とも、本訴反訴を通じて、これを2分し、その1を控訴人の、その余を被控訴人の各負担とする。
原告・控訴人は、弁護士を依頼せず本人で、訴訟を追行している。

「モーゲージプランナー」団体ドメイン事件

モーゲージプランナーの養成、認証を行う原告法人(日本モーゲージプランナーズ協会)が、被告日本資産証券化センター及び被告日本住宅ローン診断士協会が使用するドメイン名の使用差止等を求めたが、原告の請求がすべて棄却された事例である。

東京地裁平成26年5月23日判決(平成24年(ワ)第19272号)

原告X(特定非営利活動法人日本モーゲージプランナーズ協会)は、平成20年8月21日に設立されたモーゲージプランナーの養成、認証等を行う特定非営利活動法人である。
被告Y1(特定非営利活動法人日本資産証券化センター)は、平成15年12月19日に設立された住宅ローン、不動産、知的財産等資産の証券化に関する調査研究、啓蒙普及活動を行う特定非営利活動法人である。
被告Y2(一般社団法人日本住宅ローン診断士協会)は、平成24年5月18日に設立され、住宅ローン相談に際し、斡旋業務などを行う住宅ローン診断士やモーゲージプランナーを要請・認証・登録すること等を目的等に掲げる一般社団法人である。

原告、被告がいうモーゲージプランナー(Mortgage Planner)とは、アメリカ合衆国のモーゲージブローカー(Mortgage Brokers)(住宅ローン利用の消費者保護のため有益な助言、提案をする)を日本へ導入しようとする点で一致しているが、原告は、モーゲージプランナーの行う業務に住宅ローンの斡旋業務を含まず、被告らは斡旋業務を含むとしている。
Y1は、平成18年12月8日、(社)日本ネットワークインフォメーションセンターから「本件ドメイン名」を取得した。
平成20年8月21日、Xが設立された。Xは、Y1から本件ドメイン名の貸与を受け、「www.(略)」を広告用のウエブサイトのアドレスに用いるなどして使用した。
平成24年5月18日、Y2が設立された。
平成24年5月28日、Y1は、Xに対し、本件ドメイン名の返還を要求した。
Xは、平成24年5月31日、Xは、本件ドメイン名を使用できなくなった。
Y2は、平成24年6月3日以降、本件ドメイン名を使用し、「http://www.略」のアドレスにY2広告用ホームページを掲載、顧客問合せ用のメールアドレスとして、「info@略」を使用している。

Xは、

  1. 被告らは、「略」のドメイン名を使用してはならない。
  2. Y2は、社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター平成18年12月8日受付の登録ドメイン名「略」の抹消登録手続きをせよ。
  3. Y2は、「住宅ローン診断士補(MPフェロー)検定試験」を実施してはならずかつ、その講座を開講する告知をしてはならない。

等を請求する訴訟を提起した。

東京地裁民事第40部東海林保裁判長は、原告Xの請求は、いずれも理由がないとして、原告の請求をいずれも棄却した。

この要約では省略したが、Xの現在の代表者理事B氏とY1の監事Aとの意見の相違、対立がこの事件の根底にある。

発信者情報開示請求事件

ツイッターに投稿された記事によって名誉が毀損されたと主張する者から、IPアドレス保有者に対する発信者情報の開示が認められた事件である。

東京高裁平成26年5月28日民事12部判決(平成26年(ネ)第797号、判時2233号113頁)
東京地裁平成26年1月16日判決(平成25(ワ)26322号)

 原告Xは、氏名不詳の者からツイッターに投稿された記事によって、名誉が毀損された、もしくは名誉感情が侵害されたとして、ツイッターの運営会社から開示されたIPアドレスの保有者である被告YソフトバンクBB(株)に対して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づき、発信者情報の開示を求めた事件である。

原告は、ツイッターの運営会社に、誰が自分の名誉を毀損させたか特定すべく、IPアドレスを開示するよう仮処分の申立をした。ツイッター運営会社は、これに応じた。そこで、IPアドレスから、ソフトバンクBB(株)を経由してログインされていることが分かった。
原告Xは、被告Yに対し、IPアドレスを、本件名誉侵害した記事を掲載された日時頃に使用した者に関する情報で、「1,氏名又は、名称、2,住所、3,電子メールアドレス」 (以下、「本件発信者情報」という)の開示を求めて訴えた。
Yは、開示を拒絶した。

1審東京地裁は、開示を命じた。Yが控訴した。Yは、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項の開示請求の対象となる発信者情報には、「本件発信者情報」は含まれない、法4条1項の開示請求の対象となる発信者情報は、侵害情報の流通があった場合における当該侵害情報の発信そのものについての発信者情報である、その余の発信者情報は含まれない、と主張した。

東京高裁民事12部は、

  1. 法4条1項の趣旨からは、開示請求の対象が当該権利侵害情報そのものの発信者情報に限定するとまでいえない。
  2. 総務省令によって、法4条1項に規定する「当該権利の侵害に係る発信者情報」が決まるわけではない。
  3. ツイッターは、利用者がアカウント及びパスワードを入力することによりログインしなければ利用できないサービスであることに照らすと、ログインするのは当該アカウント使用者である蓋然性が高いと認められる。

とし、「本件発信者情報は、当該侵害情報の発信者の特定に資する情報であり、法4条1項の開示請求の対象である『当該権利の侵害に係る発信者情報』に当たると認める」とし、開示を命じた。

この種の事件で、多くは、知財高裁が控訴審であるが、この事件では、「東京高裁」が担当している。知的財産高等裁判所設置法(平成16年6月18日法律第119号)は、平成17年4月1日から施行された。知財高裁は、東京高裁の「特別の支部」である。本件やパブリシテイ権など東京高裁で裁判されたものもある。

レコード送信可能化KDDI事件

原告レコード会社2社が、氏名不詳者によって、送信可能化権を有するレコードを無断複製され、被告のインターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態に置かれたことにより、原告等の送信可能化権が侵害されたと主張し、被告に対しプロバイダ責任制限法4条1項に基づき、氏名不詳者に係る発信者情報の開示を求めた事例である。

東京地裁平成26年6月25日判決(平成26年(ワ)第3570号)

原告1は、キングレコード株式会社。
原告2は、ユニバーサルミュージック合同会社。いずれもレコードを製作し、複製し、CD等にして発売している。
被告は、一般利用者に対し、インターネット接続プロバイダ事業等を行っているKDDI株式会社である。

原告1は、実演家AKB48が歌唱する楽曲「大声ダイヤモンド」を製作し、平成20年10月22日、商業用CDの1曲目に収録、発売した。
原告2は、実演家GreeeeNが歌唱する楽曲「道」を録音したレコードを製作し12センチ音楽CDの1曲目に収録し、平成19年1月24日発売した。
 この原告1及び原告2のレコードの音は、mp3方式により圧縮され、コンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置された上、そのコンピュータから被告のインターネットサービスを利用し、氏名不詳者等により、それぞれ、インターネットに接続され、それぞれ、平成25年7月11日及び平成25年7月23日、ファイル交換共有ソフトウエアであるGnutella交換ソフトウエアにより、インターネットに接続している不特定の他の同じソフトウエア利用者からの求めに応じて、インターネット回線を通じて、自動的に送信しうる状態にされた。

 原告1及び原告2は、被告に対し、氏名不詳者の氏名、住所、電子メールアドレスを開示せよ、と求めて訴えた。
 すなわち、原告1は、平成25年7月11日午前9時51分33秒頃、「219.108.203.208」というインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続した者、原告2は、平成25年7月23日午前9時54分42秒頃に、「219.108.203.208」というインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続した者の発信者情報(氏名、住所、電子メールアドレス)の開示を求めた。

東京地裁民事40部東海林保裁判長、今井弘晃、実本滋裁判官は、原告1及び原告2の請求を認容し、被告に開示せよ、訴訟費用は被告の負担とする、との判決を下した。

音源が無断で送信可能に置かれた事例である。

レコード送信可能化ソフトバンクBB事件

各レコードについて送信可能化権をもつレコード会社が、氏名不詳者により、被告が提供するインターネット接続サービスを経由して、自動的に送信しうる状態におかれたため、氏名不詳者に対し、送信可能化権侵害で訴えるべく、被告に対しプロバイダ責任制限法4条1項に基づき、被告が保有する発信者情報の開示を求め、認容された事例である。

東京地裁平成26年7月31日判決(平成26年(ワ)第3577号)

原告は、(株)ジェイ・ストーム、(株)ランテイス、ユニバーサルミュージック合同会社、(株)エピックレコードジャパン、(株)ポニーキャニオンの5社である。
被告(ソフトバンクBB(株))は、一般利用者に対するインターネット接続プロバイダ事業等を行う株式会社で、プロバイダ責任制限法2条3号の「特定電気通信役務提供者」に当たる。

訴外(株)クロスワープは、インターネット上の著作権侵害を継続的に監視する会社であるが、原告5社へ、Gnutellaネットワークに接続されたパソコンに保存されて、ダウンロード可能な状態に置かれた音楽ファイルを検出し、各音楽ファイルをダウンロードしたとして、その旨を各音楽ファイルごとに対応する原告らに報告した。

原告等は、「P2P FINDER」というシステムがGnutella ネットワーク上を監視して検出したIPアドレスは実験者が送信したファイル送信元のIPアドレスと完全に一致しており、このシステムによる各音楽ファイル及び各IPアドレスの検出は正確であり、氏名不詳の本件契約者は、原告等の送信可能化権を侵害している、と主張した。
被告は、ユーザーのIPアドレス、タイムスタンプ等の正確性を判断できない。本件発信者情報が本件各音楽ファイルの送信可能化権侵害者の情報であるか否か確認できない、と主張した。

東京地裁民事46部長谷川浩二裁判長は、

  1. 本件システムは、当該ファイルを記録している端末のIPアドレスを正確に検出、当該ファイルをダウンロードするものと認められる。本件各契約者は、明らかに各原告の各レコードの送信可能化権を侵害している。
  2. 被告に対し、本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。
2014-10参照。

「ネットワークおまかせサポート」事件

「ネットワークおまかせサポート」という商標登録の申請を拒絶した特許庁の審決の判断は相当であるとして、審決を維持した事例である。

知財高裁平成26年8月6日判決(平成26年(行ケ)第10056号。)

原告○○商事株式会社は、「ネットワークおまかせサポート」の文字を本願商標とする商標登録を得ようとして、特許庁に申請した。この文字は、横書き、赤色で、白色で縁取りし、太い文字で、陰影を付している。指定役務を第37類とするものである(注1)

特許庁は、平成25年5月10日、拒絶査定した。原告は、拒絶査定に対する不服の審判請求をした。
特許庁は、平成26年1月20日、本件審判の請求は成り立たないとする審決を下した。
原告は、特許庁を被告に、本件審決の取消を求め訴えた。
知財高裁第4部富田善範裁判長は、次のように述べて、本願商標は、商標法3条1項3号(注2)に該当し、登録を受けることができないとした審決は相当であるとして、審決を維持した。
すなわち、「ネットワークおまかせサポート」は、「コンピュータネットワークに関する相談や接続設定の代行など、顧客が自分で判断・選択せず、他人にまかせてサポートしてもらうサービス」といった役務の質(内容)を表示するもので、取引者、需要者によって一般に認識されるもので、「特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、自他役務の識別力を欠く」とし、「その役務の質を表示したものと認識・理解するにとどまる」「自他役務の識別標識の機能を果たし得ない」とし、商標法3条1項3号に該当する、とした。

(注1)
37類「事務用機械器具の修理又は保守、電子応用機械器具の修理又は保守、電話機械器具の修理又は保守、ラジオ受信機又はテレビジョン受信機の修理、電気通信機械器具(電話機械器具・ラジオ受信機及びテレビジョン受信機を除く。)の修理又は保守、民生電気機械器具の修理又は保守、電動機の修理又は保守、配電用機械器具の修理又は保守、発電機の修理又は保守」。

(注2)
商標法3条(商標登録の要件)自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
一、二、(省略)
三、その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状(包装の形状を含 む)、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標

ネットワークという言葉があれば、インターネットを連想する人は多いと思う。2009-2アイデー商標事件、2005-6 IP FIRM商標事件を参照。

検索サイト表示差止請求事件

ヤフー・ジャパンの検索サイトで自分の名前を検索すると、逮捕事実が表示されとして、名誉毀損及びプライバシー侵害に基づく損害賠償及び差止めを求めたが、請求が認められなかった事例である。

京都地裁平成26年8月7日判決(毎日新聞2014年8月23日)

原告は、2012年11月、サンダルに小型カメラを装置し、女性を盗撮し、同年12月、京都府迷惑行為防止条例違反で逮捕され、2013年4月、執行猶予付の有罪判決を受けた者である。

原告が、ヤフー・ジャパンの検索サイトで、自分の名前を検索したところ、逮捕された事実が表示された。
原告は、ヤフー・ジャパンに対して、名誉毀損、プライバシー侵害を理由として、差止めと損害賠償を求めた。
京都地裁は、1,検索結果の表示によって、原告の名誉を毀損したとはいえないが、仮に、検索結果の表示の内、スニペット部分について、原告への名誉毀損が成立すると解し、違法性阻却を検討する。

原告の逮捕事実は、盗撮という特殊な行為態様の犯罪事実に関するもので、社会的関心の高い事柄で、原告逮捕からまだ1年半程度しか経過していないことから、サイトの事実表示は公共の利害に関する事実に関する行為であり、違法性は阻却されないとした。プライバシー侵害については、違法性が阻却され、不法行為は成立しないとした。
損害賠償については、判断の必要なく、検索結果の表示により原告の人格権が違法に侵害されているとも認められない、として、差止めは理由がないとした。

いわゆる「忘れられる権利」の事件である。京都地裁は、これを認めなかった。原告が抹消して欲しいという事実から、「1年半」しか経過していないことが、大きな理由と思われる。
紙媒体であるが、交通事故で傷害を負い、後遺症がある旨の虚偽申告し、誤信した保険会社から保険金の支払を受け、そのことが発覚した被告が、原告出版社発行「交通事故民事判例集」に実名が載り、「保険金詐欺事件」なる索引により、詐欺被告人と同視した扱いをされ、名誉・信用が毀損に掲載されたとして、謝罪文の掲載と500万円の賠償を求めた事件で、長野地裁飯田支部平成元年2月8日判決(昭和63年(ワ)23号、判時1322号134頁、判タ704号240頁)。大手新聞社の縮刷版のことを考えると、「忘れられる権利」は、紙媒体には影響を及ぼすべきではない。

[参考文献]
中島美香「検索サイトに対して検索結果の表示と差止めを認めた地裁判決の紹介ー京都地 裁平成26年8月7日判決について」 http://www.irc.co.jp/newsletter/law/2014/law201408.html
神田知宏「ネット検索が怖いー『忘れられる権利』の現状と活用」ポプラ新書・2015 年5月7日発行。
福井健策編「インターネットビジネスの著作権ルール」(著作権情報センター・2014年)252頁。

小動物用サプリメント事件

原告が著作権や独占的利用権を有する著作物を、被告らが無断でウエブサイトに掲載したとして、ウエブサイトへの表示等の差止と削除、損害賠償を求めたが、被告らに対し、契約期間中、自由に使用することを許諾していたとして、原告の請求が棄却された事例である。

東京地裁平成26年8月28日判決(平成25年(ワ)第2695号)

 原告X(プラセンタ製薬(株))は、小動物用のサプリメントを製造する会社である。
被告Y1は、Xとの間に、平成23年10月18日、「小動物用プラセンタサプリメントの販売協定書」を結び、Y1の代表取締役であるY2は、Xに対し、Y1が本件契約に基づき負担する一切の債務について連帯して保証する旨、約束した。

Xは、Y1へ、「動物病院でのプラセンタ療法」というパンフレット、「プラセンタとは…?」と題するポスターのデータ、「人生におけるプラセンタのはたらき」と題するポスターのデータなどを無償で交付した。
Y1は、平成23年12月初旬頃から、Y1のホームページやY1が管理するウエブサイトに、Xから提供された記載内容に依拠し、これとほぼ同内容の記載を掲載した。

Xは、平成25年、Yらに次のことを請求する訴訟を提起した。

  1. Y1Y2は、連帯して、300万円を支払え。
  2. 被告らは、別紙目録記載の「被告著述」の内容をインターネットのウエブサイトに表示し、又は、紙媒体として印刷、頒布してはならない。
  3. 被告らは、別紙目録記載の「被告著述」欄記載の内容をインターネットのウエブサイトから削除し、これを記載した紙媒体を廃棄せよ。

東京地裁民事47部高野輝久裁判長は、次のように判断して、原告Xの請求を棄却した。

  • 「原告と被告会社の間で」
  • 「被告会社が本件各物件を複製したりホームページに掲載したりするなどして自由に利用することを当然の前提にしている」
  • 「原告は、本件契約を締結するに当たり、被告会社に対し、本件契約期間中、本件各物件等を複製したりホームページに掲載したりなどして自由に利用することを許諾していたものと認められる。」
  • 「本件各物件が著作物であり、これについて原告が著作権又は独占的利用権を有しているとしても」
  • 「被告らが本件各物件と同内容のものを被告サイトに掲載して公衆送信し、これらを複製して被告チラシ1及び2,被告ポスター及び被告パンフレット1及び2等に利用することが原告の著作権等(公衆送信権、複製権又は独占利用権)を侵害すると認められない。」
  • 「原告の請求は、その余につき判断するまでもなく、全て理由がない。」
プラセンタは、胎盤の意で、美容や健康維持を目的に胎盤に含まれる成分の一部を皮下や筋肉に注射することをプラセンタ療法というようである。
原告と被告の間で、どういう「契約」をしたか、原告は、了解していなかった。

グーグル検索サイト削除決定事件

グーグルの検索サイトにかって不良グループに属していたこと関する情報が表示されていたため、グーグルに削除を求め、削除を求めた237件のうち、122件について削除の仮処分を決定した事件である。

東京地裁平成26年10月9日決定(朝日2014年10月10日1面、毎日2014年11月09日)(尾村洋介)(http://newsphere.jp/national/20141014-1/

 グーグルの検索エンジンで、自分の名前を検索すると、検索結果として表示される見出しと検索先の記事の一部を表示する「スニペット」にかって不良グループに属していたことに関する情報が表示され、すでにこのグループとは全く関係がないが、融資を申し込んだ銀行から「風評被害対策をしなければ融資できない」と指摘され、グーグルに対し、検索結果237件の削除を求めた。

 関述之裁判官は、「検索結果の一部はプライバシーの一部として保護されるべきで、人格権を否定している。検索サイトを管理するグーグルに削除義務がある」と認め、検索結果から『男性は素行が不適切な人物との印象を与え実害も受けた』として男性側の請求を認め、約230件のうち、およそ半数の237件の削除を命じた。

朝日新聞は、1面トップで「グーグル検索結果削除命令」「名前入力で犯罪思わせる内容」との見出し、6段記事で報じた。
 この事件の弁護人神田知宏弁護士は、後掲「ネットが怖い」40頁以下でEU裁判所2014年5月13日判決を知り、訴訟を提起し、5月後、この決定を得た、と述べている。

[参考文献] 神田知宏「ネット検索が怖いー『忘れられる権利』の現状と活用」(ポプラ新書・2015年5月7日)45頁。
尾村洋介「http://mainichi.jp/feature/news/p20141109mog00m040005000c.html
福井健策編「インターネットビジネスの著作権とルール」(著作権情報センター・2014年)252頁(池村聡執筆)

塗装屋口コミランキング事件

ウエブページにおいて塗装業者の口コミランキングの記載があり、原告について、不正競争防止法2条1項14号もしくは13号の不正競争が行われ、また、原告への名誉権の侵害があったとして、プロバイダ責任制限法に基づき、ウエブページのサーバーを保有し管理する会社へ、発信者情報の開示を求めた原告塗装業者の開示請求が認められた事例である

東京地裁平成26年10月15日判決(平成26年(ワ)第11026号)

原告((株)PGSホーム)は、住宅ペイント、一般住宅・マンション・ビルのトータルリフォーム等を業とする株式会社である。
被告(さくらインターネット株式会社)は、本件サーバーを保有・管理する法人である。

この事件での本件ウエブページは、「みんなのおすすめ、塗装屋さん」というもので、「口コミランキング」というウエブページへのリンクがある。
「口コミランキング」のウエブページには、「口コミランキング一覧」として、塗装業者のランキングが10位まで記載されているが、原告の名はない。
本件ウエブページには、「掲載業者一覧」のウエブページにリンクしており、平成26年4月30日当時、原告の名前はあったが、平成26年6月5日時点で削除されていた。
原告は、口コミランキングの記載により、不正競争防止法2条1項14号もしくは13号の不正競争が行われ、または原告の名誉権が侵害されたとして、被告に対し、サーバーの契約者の発信者情報をプロバイダ責任制限法に基づいて、開示請求をした。

裁判では、次の点で争われた。

  1. 原告に対する口コミによる名誉権侵害について。
    裁判所は、口コミ1について、「一般読者の普通の注意と読み方を基準にすると、原告が、実際の壁面の2倍の面積で(それに単価を乗じた不当に高額の)見積書を作成し、足場代等を無料にすると言って(不当に高額波つもりから割り引いたように見せかけ)不当な営業行為を行っているとの事実を摘示するものであり、原告の社会的評価を低下させるものである。」とし、口コミ2についても、名誉権侵害を認めた。
    これにより、プロバイダ責任制限法4条1項1号の「侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき」の要件を充足するとした。
  2. 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無について。
    裁判所は、「本件口コミが本件サイトから既に削除されているとしても」「本件口コミによって過去に原告が被った損害の賠償請求をするため、原告に本件利用者に係る発信者情報の開示を受けるべき正当な理由が認められる」と判断した。
○○ランキングは、読者、視聴者が好むテーマであるが、劣位に置かれた方は面白くなく、問題を生じやすい。比較広告は、公正取引委員会の問題でもある。

「自炊」事件

いわゆる自炊行為が違法とされ、株式会社サンドリームと有限会社ドライビバレッジジャパンが、書籍を電子的方法で複製することを禁止された事例である。

知財高裁平成26年10月22日判決(平成25年(ネ)第10089号、判時2246号92頁)
東京地裁平成25年9月30日判決(平成24年(ワ)第33525号)

原告は、小説家東野圭吾、浅田次郎、大沢在昌、林真理子、漫画家の永井豪、弘兼憲史、漫画原作者武論尊である。
被告は、株式会社サンドリーム(以下、サンドリーム)とY1、有限会社ドライバレッジジャパン(以下、ドライバレッジ)とY2である。

 紙の書籍を裁断して、スキャナーで読み取り、電子ファイルを作成し、インターネット上のダウンロード用サイトからダウンロードするか、電子ファイルを収録したDVD、USBメモリ等の媒体を配送して貰い、利用者(依頼者)は、iPadやKindle等の機器で読む、こういう利用者の自分用の電子書籍をつくる「自炊」の代行業者が出現した。代行業者は、サービス料金として、1冊100円から500円という。
 原告らは、2011年、代行業者約100社に、「自己(原告ら)の作品をスキャンして電子ファイルを作成することは、著作権侵害になる旨」の警告文、質問書を送付したが、被告サンドリームは、回答をせず、被告ドライバレッジは、スキャン事業を行わないと回答したが、注文を受けて、原告作品のスキャンニングを行った。

 そこで、原告らは、この2社に対し、原告らが著作権を有する別紙作品目録1~7の作品が多数含まれている蓋然性が高く、今後注文を受ける書籍にも含まれるであろうという蓋然性が高いとして、原告らの著作権(複製権)が侵害されるおそれがあるなど主張し、
被告サンドリームと被告Y1(サンドリームの代表取締役)、被告ドライバレッジと被告Y2(ドライバレッジの代表取締役)を相手に訴えた。すなわち、

  1. 著作権法112条1項に基づく差止請求として、法人被告らそれぞれに対し、第三者から委託を受けて、原告作品が印刷された書籍を電子的方法により複製することの禁止を求めるとともに
  2. 不法行為に基づく損害賠償として、
    1. 被告サンドリーム、Y1に対し、弁護士費用相当額として原告1名につき21万円(附帯請求として遅延損害金)
    2. 被告ドライバレッジ、Y2に対し、弁護士費用相当額として原告1名につき21万円(附帯請求として遅延損害金)の連帯支払を求めた。

[東京地裁]
民事29部の大須賀滋裁判長は、

    1. ロクラクII事件最高裁平成23年1月20日判決(第一小法廷判決・民集65巻1号399頁)を引用し、本件における複製は、書籍を電子ファイル化する点に特色があり、電子ファイル化の作業が複製における枢要な行為で、その枢要な行為は、法人被告らが行っていて、利用者でないとし、法人被告らを複製の主体とした。
    2. 被告側が、複製物は増加していない、との主張に対し、著作権法上の「複製」は、有形的再製それ自体をいうとし、有形的再製後の著作物及び複製物の個数にによって、複製の有無が左右されないとした。
    3. 法人被告らが原告らの著作権を侵害するおそれがあると認めるとし、原告らの著作権侵害112条1項に基づく差止請求は理由があるとした。
  1. 損害賠償について。
    1. 被告サンドリーム、Y1に対し、弁護士費用相当額として原告1名につき10万円(附帯請求として遅延損害金)
    2. 被告ドライバレッジ、Y2に対し、弁護士費用相当額として原告1名につき10万円(附帯請求として遅延損害金)の連帯支払を求める限度で理由がある、とした。

 ドライバレッジジャパンとY2が控訴した。 

[知財高裁]
4部富田善範裁判長は、「1,本件各控訴をいずれも棄却する。2 控訴費 用は控訴人らの負担とする。」とした。

 判決は、

  1. 一審とおなじく、複製する主体が、利用者でなく、被告・控訴人である、とした。すなわち、ドライビバレッジは、独立した事業者として、営利を目的としたサービスの内容を自ら決定し、スキャン複製に必要な機器及び事務所を準備・確保した上で、インターネットで宣伝広告を行うことにより不特定多数の一般顧客である利用者を誘引し、その管理・支配の下で、利用者から送付された書籍を裁断し、スキャナで読み込んで電子ファイルを作成することにより書籍を複製し、当該電子ファイルの検品を行って利用者に納品し、利用者から対価を得るサービスを行っている。ドライバレッジは、利用者と対等な契約主体で、営利を目的とする独立した事業主体として、サービスにおける複製行為を行っているから、サービスにおける複製行為の主体である、とした。
  2. ドライバレッジを利用者の「補助者」ないし「手足」と認めることもできないとし、著作権法30条1項の適用を否定した。
  3. 差止めの必要性があるとした。
  4. 損害賠償請求の成否と損害額について。原告・被控訴人は、訴訟提起を余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委任したと認められ、ドライバレッジは、少なくとも過失がある。
    Y2と共同不法行為責任を負う。諸事情を勘案し、被控訴人1名につき10万円が相当であり、ドライビレッジとY2は、連帯して、上記金額につき損害賠償の責任を負う。
利用者がそこへ行けば、スキャン複製の器具が完備し、利用者が自分で電子ファイルを作成し、電子書籍化できる。そういう事業所があり、複製の主体が利用者であると認められれば、現行法下で、「自炊」が可能である。

「参考文献」横山久芳「自炊代行訴訟判決をめぐって」ジュリスト1463号(2014年2月号)36頁。週刊新潮2012年1月5・12日合併号52頁。読売新聞2012年1月10日朝刊(多葉田聰記者)。島並良・法学教室2011年3月号(366号)2頁。 生田哲郎・森本晋「『自炊』代行サービスを著作権侵害と判断した事例」発明2013年12月号41頁。

サイト構築作業請負事件

サイト構築作業の請負契約により、原告は代金の支払いを求めたところ、被告は、不正競争行為による損害賠償請求権を自働債権とする相殺の抗弁をしたが、相殺の抗弁が認められず、原告の請求がそのまま認められた事例である。

大阪地裁平成26年10月23日判決(平成25年(ワ)第3058号)

原告X((株)グリームデザイン)は、ホームページ及びインターネットシステムの企画、研究、開発、制作、デザイン及び保守管理業務等を目的とする株式会社である。
被告Y((株)デジタルマックス)は、販売促進に関する宣伝用ツールの索石及び販売等を目的とする株式会社である。

原告Xの代表者Aは、平成21年10月1日まで、Yの代表取締役、平成23年5月31日までYの取締役、平成23年6月1日、Yとコンサルテイング業務委託契約を締結、1年間、Yの顧問をし、Aは、平成23年12月28日、Xを設立した。
Yは、平成24年2月1日、日本事務器(株)との間で、コンピュータシステムに関する業務の委託に関し、「ソフトウエア基本契約書」を作成した。
Yは、平成24年9月30日、日本事務器に対し、[(株)大坂村上楽器が日本事務器に依頼した、TSUTAYAのウエブサイト上で楽譜の販売等をすることのできるサイトを構築する業務]に関し、代金合計577万5000円のソフトウエアを納品した。
原告は、被告が日本事務器から受注したこの業務を、代金約560万円(見積書の記載は557万5500円)で請け負う契約をし、平成24年9月末、業務を完成し、Yに引渡したとし、約560万円から保守費用及びYが行った作業部分の費用を差し引いた代金額321万5034円の支払を求めた。
被告Yは、原告Xとの間に請負契約を締結していないと主張し、仮にYの支払義務があるとしても、Xは、Yの元取締役であったAが持ち出した営業秘密(不正競争防止法2条6項)を不正に使用する不正競争行為をしている(同法2条1項7号)ので、不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求権で相殺する、という抗弁を主張した。

大阪地裁第21民事部谷有恒裁判長は、原告の請求のとおり、「321万5034円及びこれに対する平成24年12月1日から支払済みまで年6分の割合による金員」の支払を被告に命じた。被告の「営業秘密」についての抗弁については、被告は、システムの「発想」を使用した主張をするのみで、抽象化した「発想」がどのように秘密として管理されていたか等具体的に主張せず、営業秘密といえないとし、相殺の抗弁を認めなかった。

ホームページやサイトを構築する事業者が、単独では行わず、請負契約で、下請けさせたり、その際の金額等がよくわかる事件である。被告側は、不正競争防止法の定義する「営業秘密」を勉強するべきであった。

わいせつ動画事件(刑事)

顧客のダウンロード操作に応じて、自動的にデータを送信する機能を備えた配信サイトを利用してわいせつな動画等のデータファイルを同人の記録媒体上に記録、保存させる行為は、刑法175条1項後段の「わいせつな電磁的記録の『頒布』にあたるとし、」刑法175条1項後段の「頒布」の意義を明らかにした事例である。

最高裁平成26年11月25日決定(平成25年(あ)510号)
東京高裁平成25年2月22日判決(平成24年(う)2197号)
東京地裁平成24年10月23日判決(平成24刑(わ)1356号)

刑法175条1項は、「わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。」とある。
同条2項「有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。」

日本在住の被告人は、日本とアメリカ合衆国在住の共犯者らとともに日本国内で作成したわいせつな動画のデータファイルをアメリカ合衆国在住の共犯者に送り、共犯者がアメリカ国内に設置したサーバーコンピュータにそのデータファイルを記録、保存し、日本人など不特定かつ多数の顧客にインターネットを操作させ、データファイルをダウンロードさせる方法で有料配信する日本語のウエブサイトを運営していた。

  1. 日本国内の顧客Aが、平成23年7月及び12月、この配信サイトを利用し、わいせつ動画等のデータをダウンロードし、Aのパソコンに記録、保存した。
  2. 被告人等は、平成24年5月、有料配信の実施を予想し、バックアップ等のために、東京都内の事務所にDVDやハードデスクにわいせつ動画等のデータを保管した。

 被告人は、刑法175条1項の、「わいせつ電磁的記録等送信頒布罪」および2項「わいせつ電磁的記録有償頒布目的保管罪」に当たるとして起訴れた。
 被告人は、サーバーコンピュータから顧客Aのパソコンへのデータ転送は、顧客Aの行為であり、被告人らの頒布行為には当たらないと主張した。また、被告人は、配信サイトの開設、運用は日本国外でなされており、被告人等は、刑法1条「日本国内において罪を犯したすべての者に適用する」とあるが、これに当たらない、と主張した。
最高裁(大谷剛彦裁判長、岡部喜代子、大橋正春、木内道祥、山崎敏充裁判官)は、「顧客による操作は、被告人らが意図していた送信の契機となるものにすぎず、被告人らは、これに応じてサーバーコンピュータから顧客のパーソナルコンピュータへデータを送信したというべきである」とし、「不特定の者である顧客によるダウンロード操作を契機とするものであっても、その操作に応じて自動的にデータを送信する機能を備えた配信サイトを利用して送信する方法によってわいせつな動画等のデータファイルを当該顧客のパーソナルコンピュータ等の記録媒体上に記録、保存させることは、刑法175条1項後段にいうわいせつな電磁的記録の『頒布』に当たる」とした。また、「前記の事実関係の下では、被告人らが、同項後段の罪を日本国内において犯した者に当たることも、同条2項所定の目的を有していたことも明らか」とし、「わいせつ電磁的記録等送信頒布罪」及び「わいせつ電磁的記録有償頒布目的保管罪」の成立を認めた原判断は正当である、とし、上告を棄却した。

刑法175条の「頒布」の意義を明確にした。

「参考文献」判例時報2251号112頁のコメント。

色切り替えパッチ事件

氏名不詳者がアップロードしたファイルに含まれるプログラムとされる制作物は、原告創作に係るプログラムとされる制作物(パッチ)の複製又は翻案であるとし、プロバイダ責任制限法により、特定電気通信役務提供者へ発信者情報の開示を求め、開示が認められた事例である。

東京地裁平成26年11月26日判決(平成26年(ワ)第7280号)

パッチとは、オペレーテイングシステムやアプリケーションプログラムの不具合などを修正するためのファイルをいう。
原告は、本件パッチを制作した者である。
被告(ビッグロープ株式会社)は、インターネット等のネットワークを利用した情報通信サービス、情報提供サービスその他情報サービスの提供を業とする株式会社で、プロバイダ責任制限法の「特定電気通信役務者」である。

別紙ウエブページのURLにより表示されるウエブページに、氏名不詳の者がアップロードしたプログラムとされる制作物があり、これは、原告の制作物(本件パッチ)の複製物ないし翻案物であり、この発信者の行為は、原告の複製権又は翻案権及び公衆送信権の侵害であるから、発信者に対し、損害賠償請求権を行使するため、原告は、被告に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づいて、発信者情報の開示を求めて訴えた。
原告は、本件パッチは、平成7年(株)バンダイ発売の家庭用ゲーム機「スーパーファミコン」用のゲーム「SDガンダム GNETXT」に関して原告がそのバグ等を改善するために作成したプログラムであり、本件色替えパッチに創作性がある、プログラムの著作物と主張した。
被告は、原告のは「バンダイプログラムを改変するためのデータ列」で、「原告の困難かつ多大な努力と、それらの創意工夫は、原告の個性による創作・創造というよりは、専らバンダイプログラム自体の原状に規定・拘束された、ある種の必然的な制作作業というべきもの」で、「著作物における、制作者の個性の表現ともいわれる創作性とはおよそ異なる」と主張した。

東京地裁民事29部嶋末和秀裁判長は、次のように判断した。

  1. 本件パッチは、著作権法2条1項10号の2の「プログラム」に該当する。
  2. 本件パッチの中、少なくとも本件色替えパッチは、「プログラムの著作物」である。
  3. 発信者プログラムのうち、少なくとも本件色替えパッチに対応する部分は、本件パッチの複製物である。
  4. 本件発信者の行為は、原告の複製権及び公衆送信権を侵害するものである。
  5. 原告は、本件発信者に対し、損害賠償請求権の行使のため本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。

[判決主文]

  1. 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
  2. 訴訟費用は被告の負担とする。
このあと、「色替えパッチのプログラム著作物」について、著作権侵害あるいは翻案権侵害の訴訟が行われるのであろうか。

家庭用脱毛器事件

インターネット上に公開されているウエブページにおいて、家庭用脱毛器を販売している原告の商品ケノンに類似の「ケノン.asia」を使う者がおり、原告商品は高価だが、訴外他社商品の方に比べると劣る等の品質誤認させるような記載をし、不正競争防止法違反行為で原告の権利を侵害されているとして、原告がその発信者情報の開示を求め、認容された事例である。

東京地裁平成26年12月18日判決(平成26年(ワ)第18199号)

原告((株)エムロック)は、インターネットの「ケノン公式ショップ」等において、家庭用脱毛器に「ケノン」との特定商品表示を付して、これを販売している。
被告は、ウエブページが蔵置されたレンタルサーバーを保有、管理している「さくらインターネット株式会社」である。

原告は、ネット上のウエブページにおいて、権利を侵害されたとして、不正競争防止法2条1項12号又は同項13号の不正競争を行った者に対する損害賠償請求を行うため、被告に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、被告のサイトのウエブページが蔵置されたサーバー領域利用者である契約者の住所氏名等の発信者情報の開示を求めた。

東京地裁民事第47部高野輝久裁判長は、次のように判断し、被告が開示関係役務者であるとし、被告へ、別紙発信者情報目録記載の各情報の開示を命じた。

  1. サイトの契約者は、不正の利益を得る目的で、原告の特定商品表示である「ケノン」と類似の「ケノン .asia」とのドメインを使用するもので、これは、不正競争防止法2条1項12号の不正競争に該当する。
  2. サイトにおいて、訴外他社の商品は、「78ジュールの出力は業界ナンバー1」「業界1の髙出力」であるとし、「みんなの評価」の見出しのもとで、訴外他社の総合評価を
  3. 7ポイント、原告商品を3.3ポイントなどと表示したことは、不正競争防止法2条1項13号に該当する。

これらの侵害情報の流通によって、原告の権利が侵害されたことは明らかであるとした。

家庭用脱毛器を販売する業者間の競争が激しいこと、商品の性質上、インターネットにおいて広告することが有効であることが窺える。この事件の原告代理人は、「ネット検索が怖い」(ポプラ新書・2015年5月)の著者、神田知宏氏である。

2015年

ミクシイ事件

ソーシャル・ネットワーキング・サービス「ミクシイ」が、「アクセス制御システム、アクセス制御方法およびサーバー」という特許権に触れない、特許発明の技術的範囲に属さないという判決である。

知財高裁平成27年1月22日判決(平成26年(ネ)第10092号)
大阪地裁平成26年9月4日(平成25年(ワ)第6185号)

原告Xは、「アクセス制御システム、アクセス制御方法およびサーバ」の発明について特許をもつ特許権者である。
被告Y(株式会社ミクシイ)は、インターネットを用いたソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)である「ミクシイ」を運営する株式会社である。

Xは、Yがサービスで提供し始めた「一緒にいる人とつながる」との名称の機能(本件機能)は、Xの特許に係る発明の実施に該当すると主張して、特許法184条の101項に基づく補償金の一部請求として495万円及び本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償の一部請求として500万円、合計995万円及び遅延損害金の支払いを求め訴えた。
原審大阪地裁は、被告Yの本件機能を含むミクシイのコンピュータシステム(被告物件)及びコンピュータで用いられる方法(被告方法)は、原告Xの特許に係る発明の技術的範囲に属さない、として請求を棄却した。

Xは、これを不服として控訴した。

知財高裁第4部富田善範裁判長は、Xの明細書の記載事項を検討し、次のように判断し、控訴は、理由がないとして、これを棄却した。

  1. Y物件は、X発明1の構成要件Bの「所定の地理的エリア内にいる者によるコンタクト可能状態にするための同意がとれたことを確認するための確認手段」を備えているものと認められない。
  2. Y物件の構成dは、構成要件Cの「コンタクト用共有ページ」を備えるものとは認められない。
  3. Y物件は、構成要件Bの上記「確認手段」及び構成要件Cの「コンタクト用共有ページ」を構成に含む構成要件Dを充足しない。また、被告物件について、X主張の均等侵害も成立しない。従って、被告物件は本件発明1の技術的範囲に属さない。被告方法は、構成要件GないしIをいずれも充足しない。
1審が大阪地裁の判決であるが、2審は、大阪高裁でなく、東京の知的財産高等裁判所で審理、判決されている。民事訴訟法6条参照。

イケア事件

世界的企業イケアに無断で、イケアの一部門か、関係会社のような記号を用い、ネットによるイケア商品の購入代行業を行った会社が、記号の使用禁止、イケア製品写真のウエブ掲載、自動公衆送信、送信可能化禁止、データ破棄等を命ぜられた事件である。

東京地裁平成27年1月29日判決(平成24年(ワ)第21067号判時2249号86頁)

 原告Xは、オランダ国デフトに本社を置くインター・イケア・システムズ・ビー・ヴィ(以下、イケアという)である。

当時、日本のイケアでは、ネット販売せず、店頭販売のみ行い、また顧客が店頭で購入した商品の配送サービスをしていなかった。
イケア公式サイトウエブに「IKEAと類似のブランド表示による通信販売サイトは、IKEAとは無関係です。イケア製品はイケアストアのみでの販売となります。」と記載していた。
被告は、福岡市のYで、イケアの一部門か、関連会社とみられるようなインターネット上の記号を用い、勝手に購入代行業を行った。
Yは、イケア製品の注文をネットで募り、これをイケアストアで、購入し、梱包、発送し、注文者へ転売していた。
Yは、はじめサイトに「IKEASTORE」と名乗り、Xの製品写真を掲載した。2010年7月29日、被告サイトにタイトルタグとして、「〈title〉【IKEA】イケア通販〈title〉」と記載し、メタタグとして、「〈meta namu=Description” cntent=【IKEA STORE】IKEA〉通販です。カタログにあるスエーデン製輸入家具・雑貨イケアの通販サイトです。」などと記載した。
Yの行為により、検索エンジンで、「IKEA」「イケア」と検索すると上記Yのタイトルがでた。
Xは、Yのウエブサイトに、Xの製品写真等の掲載禁止などを求め、また、製品写真の著作権侵害、商標権侵害等で1373万7000円の損害賠償を求めて訴えた。

東京地裁民事47部は、製品写真の著作物性を認め、次の判決を下した。

  1. 別紙の製品写真エータ及び別紙文章写真データをウエブに掲載することの禁止。
  2. 別紙製品写真データ及び別紙文章写真データを自動公衆送信又は送信可能化することの禁止。
  3. その占有する別紙製品データ、別紙文章写真データの廃棄。
  4. インターネット上のウエブサイトのトップページ、htmlファイルに別紙標章をタイトルタグとして、また、メタタグとして使用することの禁止。
  5. ウエブサイト(http://以下略)のhtml ファイルの〈title〉から、別紙の標章を、並びに〈meta namu=”Description” content=から、別紙標章を、それぞれ除去せよ、〉
  6. 損害賠償24万円(著作物使用料相当額14万円弁護士費用10万円)を命じた。

メタタグ及びタイトルタグンの記載が商標権侵害及び不正競争に該当するが、被告サイトに誘引された顧客の購入した原告製品はイケアストアで購入したもので、原告に損害は発生していないとして、この方の損害額は認めなかった。

イケアでは、2012年出店の福岡新宮店のみネット販売をしているという。現在は、変わっているかも知れない。

ネット広告システム事件

「ネット広告システム」の特許権者の特許権が、「ZOZOTOWN」「ZOZOVILLA」「ZOZOOUTLET」には、及ばず、損害賠償請求が棄却された事例である。

知財高裁平成27年2月26日判決(平成26年(ネ)第10114号)
東京地裁平成26年9月25日判決(平成25年(ワ)第23584号)

原告Xは、発明の名称を「ネット広告システム」とする特許権の特許権者である。
被告Y(株式会社スタートトウデイ)は、「ZOZOTOWN」「ZOZOVILLA」又は「ZOZOOUTLET」の名称のインターネットショッピングサイト(以下、併せて「被告ウエブサイト」という)を運営している。

Xは、Yがインターネットショッピングサイトに係るシステムを使用する行為は、Xの特許権侵害又は間接侵害(特許法101条1号、2号)に当たるとして、Yに対し、特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償4億2680万円の一部請求として、1億円及び遅延損害金の支払を求めた。
東京地裁は、YがYウエブサイトに係るシステムを使用する行為は、Xの特許権を侵害するものとは認められず、また、本件特許権の間接侵害の成立も認められない、とし、請求を棄却した。Xは、控訴した。
知財高裁第4部富田善範裁判長は、次のように判断して、本件控訴を棄却した。

Xの特許権は、どこかの会社が使い、Xへ特許料が支払われているのだろうか。

スマートフォン事件

KDDIのスマートフォン「REGZA Phone IS04」は、特許権を侵害していないという判例である。

東京地裁平成27年2月27日判決(平成26年(ワ)第65号)

原告(株式会社コアアプリ)は、名称を「入力支援コンピュータプログラム、入力支援コンピュータシステム」とする特許権について、これをもつ特許権者である。
被告(KDDI株式会社)は、移動通信及び固定通信を業とする法人である。

原告は、被告に対して、「

  1. 「REGZA Phone IS04」を生産、譲渡、輸入、輸出し、又は譲渡の申出をしてはならない。
  2. 被告は、その占有に係る前記記載の製品、及び前記記載の製品に搭載されたソフトウエアのソースコードとバイナリイメージを廃棄せよ。また被告は、前記記載の製品に搭載されたソフトウエアのソースコードとバイナリイメージの製造設備を除去せよ。
  3. 被告は、原告に対し、252万円及びこれに対する平成23年10月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

」という請求の訴訟を提起した。

被告が販売するスマートフォン「REGZA Phone IS04」、またはこれにインストールされている「ホーム」と呼ばれているソフトウエア(本件ホームアプリ)が、原告の特許権をとった発明の技術的範囲内に属し、特許権を侵害している、というのである。
東京地裁民事29部の嶋末和秀裁判長は、「本件ホームアプリは、少なくとも構成要件Eを充足せず」、「本件発明1,3の技術的範囲に属しない。」「本件ホームアプリが、構成要件Eを充足しない以上、これをインストールした被告製品は、構成要件H、Iのうち」、「本特許の特許請求の範囲の請求項1,3を引用する態様を充足しているとはいえず、本件発明4,5のうちの上記態様の技術的範囲に属しない。」として、原告の請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとし、「

  1. 原告の請求をいずれも棄却する。
  2. 訴訟費用は原告の負担とする。

」との判決を下した。

バイナリイメージには、どういう訳語がいいのだろうか。バイナリ(Binary)は、数値の表し方の1つで、0と1からなる2進法のことをいう。アプリは、Applicationの省略で、ワープロ・ソフト、表計算ソフトなど作業の目的に応じて使うソフトウエア、プログラムを指す。これに対し、OS、ドライバー、ファームウエアなどコンピュータの制御に使われるソフトウエアをシステム・ソフトウエアという。

弁護士法人ウエブサイト写真無断使用事件

弁護士法人のウエブサイトが、写真の無断使用をしたため、写真の著作権管理団体と写真著作権者から不法行為として訴えられ、損害賠償をした事件である。

東京地裁平成27年4月15日判決(平成26年(ワ)第24391号)

 原告アマナイメージズは、ビジュアル・コミュニケーション事業、エンタテインメント映像事業等を行う株式会社で、写真、イラスト、映像機材など2500万点以上のコンテンツを揃え、利用者が。これらのコンテンツを購入、ダウンロードできるサービスを提供している。原告A,原告B,原告Cは、いずれも写真家である。

 被告弁護士法人は、「ボストンローファーム」の名称でウエブサイトを運営していた。
 被告は、そのウエブサイトに6枚の写真を、平成25年7月頃から平成26年1月頃まで使用した。
 この6作品は、原告アマナイメージズが著作権を、原告A、B、Cが著作権及び著作者人格権(氏名表示権)をもつものであった。
原告アマナイメージズは、被告へ、28万1440円、原告Aは、22万1600円、原告Bは、21万7280円、原告Cは、21万7280円を支払うよう被告に請求、訴訟を提起した。

 東京地裁地裁民事29部嶋末和秀裁判長は、

  1. 被告は、原告アマナイメージズに対し、19万6400円
  2. 被告は、原告Aに対し、4万6000円
  3. 被告は、原告Bに対し、2万9800円
  4. 被告は、原告Cに対し、1万1000円の支払いを命じた。

(5,原告等のその余の請求を棄却した。6,訴訟費用の負担(省略。)

弁護士法人の従業員が、写真について著作権等の調査確認の義務を怠った。
原告Cは、写真5について、損害の立証をしなかった。裁判所はCの著作権又は独占的利用権の侵害を認めず、Cへは、氏名表示権侵害1万円、弁護士費用1万円のみを認めた。

「為替相場」情報無断コピー提供事件

原告会社のブログサイトの投資等の情報提供等をインターネットによる投資等の情報提供サービス等を行う被告会社が、そのブログに掲載し、297万円の損害賠償請求をされたが、被告は出廷せず、100万の損害賠償が認められた事例。

東京地裁平成27年4月24日判決(平成26年(ワ)第30442号)

 原告X((株)トレードトレード)は、FX・株式・海外投資など資産運用のコンテンテンツを提供する会社で、「川合美智子の為替相場と楽しく付き合う方法」というブログサイトを管理運営している。Xは、訴外A(ワカバヤシエフエックスアソシエイツトの代表取締役川合美智子との間で、記事作成、掲載、ブログ公開し、毎月21万円Xは訴外Aに支払い、Xに著作権を帰属させる契約を結んでいる。
 福岡県所在の被告Y1((株)Clara)は、インターネット上のブログサイト「アメーバブログ」を管理運営し、自社の記事を掲載していた。
 被告Y2は、Y1の代表取締役で、投資に関するセミナー等を自ら行っている。
 原告の平成25年1月11日付け等5件の記事が、被告アメーバブログに無断掲載されていた。
 原告Xは、原告記事は、「為替相場の動向を踏まえた値動きの予測に関する訴外川合美智子の思想感情を創作的に表現したもの」であるとして、297万円の損害賠償を求めて訴えた。
 東京地裁民事40部東海林保裁判長は、被告らに対し、著作権侵害による損害額40万円、信用毀損による無形侵害50万円、弁護士費用10万円、合計100万円の支払を命じた。

被告会社は、福岡県筑紫野市に所在し、送達場所は、福岡市中央区である。口頭弁論期日に出頭せず、答弁書、準備書面も提出しなかった。原告主張の請求原因事実を認めた、自白したものとして、297万円の損害賠償を命じてもよかったのでないか。

肖像写真投稿者情報開示請求事件

池田大作名誉会長の写真の著作権者である原告創価学会が、インターネット上の電子掲示板「Yahoo!知恵袋」に投稿された記事中の写真は、原告写真の複製ないし翻案であるとして、記事投稿行為は、原告の著作権(公衆送信権)侵害であり、損害賠償請求をするため、発信者情報が知りたいとして、経由プロバイダであるNTTにプロバイダ責任制限法4条1項に基づき、開示を求めた事案である。

東京地裁平成27年4月27日判決(平成26年(ワ)第26974号)

原告は、池田大作名誉会長の肖像写真の著作権者である宗教法人創価学会である。
被告は、エヌ・テイ・テイ・コミュニケーションズ株式会社(以下、NTT)である。

「Yahoo!知恵袋」に、池田大作創価学会名誉会長の写真29枚(本件写真)と名誉会長に関する記事が掲載された。
原告は、この記事を投稿した者に対し、著作権(公衆送信権)侵害の不法行為に基づき、損害賠償を求めるため、NTTに対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(=プロバイダ責任制限法)4条1項に基づいて、別紙発信者情報(発信者の氏名又は名称、発信者の住所、発信者の電子メールアドレス)の開示を請求した。

原告は、本件写真は、原告創価学会の1部門である聖教新聞所属の訴外Bの撮影したもので、著作権法15条により、著作権は原告にあるとし、本件写真が、名誉会長を揶揄し、名誉会長の容貌を晒すためだけに用いられたとし、主張した。
被告は、本件写真は、すでに公表されたものであり、著作権法32条1項の引用に該当する可能性がある、「創価学会は永遠に不滅です.2014年も素晴らしく大活躍することは魔違いないでしょう」など「原告ないし名誉会長に対する意見、批評を記載したものということもできる記述があり、本件各写真は、意見、批評の対象を明示するために必要」として掲載、「引用としての利用に該当する余地もある」と主張した。

東京地裁民事29部嶋末和秀裁判長は、本件記事の投稿で、原告の権利侵害は明白で、原告には、発信者情報の開示を受けるべき正当な事由があるとし、原告が、プロバイダ責任制限法4条1項の開示関係役務者に該当し、経由プロバイダとして発信者情報を保有する被告に対し、開示を求めることが出来るとし、原告の請求を認容し、「被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の情報を開示せよ」と判決した。

記事は、創価学会と池田名誉会長に対する「褒め殺し」のような文章である。
創価学会池田大作名誉会長の肖像写真を無断で複製、印刷物に掲載した者に対する訴訟としては、東京地裁平成19年4月12日判決(平成18年(ワ)第5024号)などがある。

「爆サイ中傷被害者の会」事件

原告の写真等が、LINE開設のブログ「爆サイ中傷被害者の会(仮」に掲載され、著作権侵害されたため、犯人に損害賠償を求め訴えるべく、LINE社から開示された電子メールアドレスを管理し、インターネットメール事業を開設運営する被告へ、犯人の発信者情報を求め、訴訟し、東京地裁が被告へ原告に対し、「発信者の住所」の開示を命じた事例である。

東京地裁平成27年5月15日判決(平成27年(ワ)第1107号)

原告(株式会社アクトコミュニケーション)は、インターネット上における商業デザイン・工業デザインの企画、制作、販売、インターネットのホームページデザインのシステム設計及び計画等を主な目的とする会社である。
被告(AOLオンライン・ジャパン株式会社)は、コンピュータ・ソフトウエアの開発、制作、販売及び保守管理等のサービスの提供、電気通信事業法に基づく第2種電気通信事業並びに付加価値情報通信網及び有償提供、インターネット接続等を主な目的として営業する株式会社で、無償でインターネットメールを開設・運営するサービスを行っている。

原告は、平成25年1月頃、「求人おきなわ」を通じて、求人募集を行う際、原告ロゴマーク、原告の社内風景等を撮影した写真(本件写真等)」を作成し、「求人おきなわ」のウエブサイトに掲載された。
平成25年1月頃、本件写真等が、原告、「求人おきなわ」に無断で、LINEが開設、運営するliveddoorブログに開設された「爆サイ中傷被害者の会(仮」というウエブログ(本件ブログ)に記事とともに掲載された。
原告は、LINE社を相手に、LINE社が開設管理するlivedoorブログ上に、本件発信者(犯人)が本件ブログ開設時の電子メールアドレスの開示を求めて、東京地裁に訴訟を提起し、 東京地裁平成26年7月23日判決(筆者未入手)は、電子メールアドレスについて原告のLINE社に対する開示請求を認める判決を下した。LINE社は、この判決を受けて、原告に対し、7月30日付け書面で、本件発信者の電子メールアドレスが「○○@○○」であることを開示した。
原告は本件メールアドレスのドメイン名登録情報から、被告が本件メールアドレスを管理していることを特定し、被告に対し、平成26年8月28日、発信者情報の開示請求を行った(筆者注、メールアドレスが、(○○@aol.com)だったと思われる。
被告は、本件発信者に対し、平成26年10月15日付け「発信者情報開示に係る意見照会書」を出して、発信者の意見を紹介したが、発信者の回答がなかった。
平成27年、原告は、被告に対し、「別紙記事目録記載の投稿記事に係る別紙発信者情報目録記載の情報を開示せよ」との請求の訴えを起こした。
裁判で、次の点が争われた。

  1. 被告が、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」4条1項に該当するか。

    [原告の主張]
    本件ブログは、インターネットを通じて誰でも閲覧でき、「不特定の者によってア、受信されることを目的とする電気通信の送信」といえる。法2条1号の「特定電気通信」に該当する。

    1. 本件発信者は、被告を経由プロバイダとして本件ブログを投稿していると推認される。
      本件ブログが経由したリモートホスト、電気通新設部一式は「特定電気通信の用に供される電気通信設備」で、法2条2号の「特定電気通信設備」に該当する。
    2. 被告は、イの「特定電気通信設備」を用い、本件ブログの投稿閲覧を媒介し、他人の通信の用に供しており、法2条3号の「特定電気通信役務提供者」に該当する。
    3. 以上により、被告は、法4条1項の「当該特定電気通信役務提供者」に該当する。

    [被告の主張]
    電子メール等の1対1の通信は、「特定電気通信」には含まれない。被告が「開示関係役務提供者」に該当する余地はない。

  2. 権利侵害の明白性について
    原告は、著作権侵害された。法4条1項1号に該当する。
    被告は争う。
  3. 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無。
    原告は、正当な理由がある。
    被告は、争う。

東京地裁民事29部の嶋末和秀裁判長は、次のように判断した。

  1. 電子掲示板等に係る特定電気通信設備の記録媒体に情報を記録するための当該特定電気通信設備を管理運営するコンテンツプロバイダと本件発信者との間の1対1の通信を媒介する、いわゆる経由プロバイダであっても、法4条1項にいう「開示関係役務提供者」に該当する。最高裁平成22年4月8日判決(「しずちゃん」経由プロバイダ事件)
    (2010-3).被告は、経由プロバイダである。
  2. 本件記事に掲載された本件写真は、原告の職務著作で、そのまま転載されたのであり、原告の著作権(複製権、公衆送信権)侵害は明らかである。
  3. 「発信者情報目録」のうち、「発信者の住所」について開示を受けることが必要だが、「発信者の郵便番号」については、住所が開示されれば、容易に、調査できるから、郵便番号は不要とした。

「判決主文

  1. 被告は、原告に対し、別紙記事目録記載の投稿記事に係る、別紙発信者情報目録記載1の情報及び同目録記載2の情報のうち「発信者の住所」を開示せよ。
  2. 原告のその余の請求を棄却する。
  3. 訴訟費用は被告の負担とする。」
最高裁平成22年4月8日判決(「しずちゃん」経由プロバイダ事件)(2010-3).を引用している。この事件の「本件記事」は、どういうものだったのであろうか。
原告は、約2年半、相当な努力を払って、犯人(発信者)を捉えることができた。

風俗記事無断マンガ化事件

フリー・ライター執筆のブログ記事を無断でマンガ化にし、これを雑誌に掲載した雑誌発行者と編集プロダクションを訴えたが、ライターがブログで、雑誌社と編集プロダクシヨンを名誉毀損したことで、反訴され、55万円の損害賠償金を得たが、40万円の損害賠償金の支払を命ぜられた事例である。

知財高裁平成27年5月21日判決(平成26年(ネ)第10003号)
東京地裁平成25年11月28日判決(平成24年(ワ)第3677号、第7461号)

原告Xは、風俗記事を書くフリーのライターで、自分のブログ(以下、本件ブログ)を運営している。
被告Y1(株式会社ジーオーテイー)は、「実話大報」という雑誌を出版、販売している出版社である。
被告Y2(有限会社ジップス・ファクトリー)は、Y1から依頼され実話大報の編集等を請け負っている編集プロダクションである。

Xは、自分の本件ブログに「混浴乱交サークル」と題する記事を平成22年7月30日に、「生脱ぎパンテイオークション乱交」と題する記事を平成22年1月10日を掲載した。
Y2は、訴外Aに、これらXの記事に依拠して作画させ、漫画にし、「実話大報」平成23年1月号、同6月号に掲載した。
Xは、平成22年1月6日頃からほぼ1年の間に、本件ブログに、別紙目録記載の記事1ないし6を書き込み、Y1Y2らが著作権侵害をしたとし、Y1が著作権侵害をしたことについて「盗作行為をどう思う」などの投票を行い、投票プログラムを利用して別紙投票プログラム記載のとおりの投票を実施した。
平成24年、Xは、Yらにより、著作権侵害、著作者人格権侵害を受けたとして、Yらに連帯して131万円(著作権侵害16万円、著作者人格権侵害100万円、弁護士費用15万円)の支払いと、雑誌「実話大報」への謝罪広告1回掲載を求めて訴えを起こした。
これに対して、Y1Y2は、(1)Xは、Y1Y2らに、それぞれ、100万円支払え、(2)Xは、別紙目録記載の記事1ないし6の記事及び別紙ブログ記載のブログにおける別紙投票プログラム記載の投票プログラム及びその投票結果を抹消せよ、との反訴を提起した。投票の募集や投票プログラムの記載、投票の実施等が、Y1及びY2の名誉、信用の社会的評価の低下を招いたというのである。

[東京地裁]民事47部の高野輝久裁判長は、次のように判断した。

  1. Y1Y2は、「実話大報」の2回の掲載によりXの記事の著作権(翻案権)侵害をしたとした。
  2. また、Y1Y2が、Xの氏名表示権、同一性保持権を侵害したとした。
  3. 被告らは、原告Xの著作権侵害及び著作者人格権侵害につき、過失があるとした。
    Aから漫画の提供を受けるに当たり、「三行広告」で検索し、調査すべきであったとする。
  4. Xが著作権行使で受けるべき金額は1万円とし、慰藉料として、5万円、弁護士費用6000円、合計6万6000円が相当であるとした。
  5. Xの社会的声望名誉は、毀損されていないとして、謝罪広告は認めなかった。

Y1Y2の起こした反訴について、次の判断をした。

  1. Y1は、Xの本件ブログの記事1,3,4により、名誉、信用等の社会的評価を低下させられた。 
    Y1は、Xの本件ブログの記事5,6により、名誉、信用等の社会的評価を低下させられた。 
    Y1は、Xの本件ブログの投票プログラムにより、名誉、信用等の社会的評価を低下させられた。
    Y2については、記事、投票プログラムによる名誉、信用等の社会的評価の低下を認めなかった。
  2. Xが、Y1の名誉、信用等を毀損したことについて、故意があるとした。
  3. Y1は、40万円の損害を被ったとした。
  4. Y1は、その名誉権に基づき、現に行われている侵害行為を排除するために、本件記事1,3ないし6及び投票プログラム等の記載の削除を求めることができる、とした。

[判決主文]

  1. 被告・反訴原告Y1、Y2は、原告・反訴被告Xに対し、連帯して6万6000円(財産権侵害1万円、慰謝料5万円、弁護士費用6000円)を支払え。
  2. 原告・反訴被告Xは、被告・反訴原告Y1に対し、40万円及びこれに対する平成24年3月28日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  3. 原告・反訴被告Xは、別紙ブログ目録記載のブログにおける別紙記事目録記載1,3ないし6の記事及び別紙ブログ目録記載のブログにおける別紙投票プログラム記載の投票プログラム及びその投票結果を抹消せよ。
  4. 被告・反訴原告Y2の請求並びに原告・反訴被告X及び被告・反訴原告Y1のその余の請求をいずれも棄却する。
  5. (訴訟費用の負担)省略。
  6. この判決は、第1、第2項に限り、仮に執行することができる。

 この判決に対し、Xは、控訴した。
「知財高裁」第4部富田善範裁判長は、Y1Y2は、Xに対し、連帯して55万円(財産権侵害10万円)、慰謝料40万円、弁護士費用5万円)を支払えと、Xの著作権侵害の損害額を1審にくらべ、多額に評価した。

[判決主文]

  1. 原判決を次のとおり変更する。
  2. 1審被告らは、1審原告に対し、連帯して55万円を支払え。
  3. 1審原告は、1審被告ジーオーテイに対し、40万円及びこれに対する平成24年3 月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  4. 1審原告は、1審被告ジーオーテイーに対し、原判決別紙ブログ目録記載のブログに おける原判決別紙記事目録記載1,3ないし6の各記事を抹消せよ。
  5. 1審原告は、1審被告ジーオーテイーに対し、原判決別紙ブログ目録記載のブログに おける原判決別紙投票プログラム記載1のタイトル、同記載2の選択肢及び同記載3の投票結果を抹消せよ。
  6. 1審原告のその余の本訴請求、1審被告ジーオーテイーのその余の反訴請求及び1審 被告ジップス・ファクトリイーの反訴をいずれも棄却する。
  7. (訴訟費用の負担)省略
  8. この判決は、第2項及び第3項に限り、仮に執行することができる。
原告が自分のブログに掲載した風俗記事が、無断で漫画化され、著作権侵害等が認められ、55万円(1審は6万6000円)を得たが、ブログで、著作権侵害者である出版社を誹謗、名誉権や信用を低下させたとして、40万円の支払いを命ぜられた。原稿料の相場が低いこと、慰藉料については、裁判官の裁量によるところが大きい。

プロ野球ドリームナイン事件

「プロ野球ドリームナイン」というゲームをSNS上で提供・配信している控訴人が、「大熱狂!!プロ野球カード」というゲームを提供・配信している被控訴人に対し、著作権侵害、不正競争防止法に基づく等の請求をし、1審は、全て棄却されたが、2審は、被控訴人のカードの中、中島選手とダルビッシュ選手のカードは、控訴人ゲームのカードを翻案したものとされ、被控訴人は控訴人へ32万3322円(うち、弁護士費用20万円)の支払が命ぜられた事例である。

知財高裁平成27年6月24日判決(平成26年(ネ)第10004号)
東京地裁平成25年11月29日判決(平成23年(ワ)第29184号)

原告・控訴人Xは、株式会社コナミデジタルエンタテインメント。
被告・被控訴人Yは、株式会社gloopsである。

社会的交流をインターネット上で構築するサービスであるソーシャルネットワーキングサービス(SNS)上で提供され、他の利用者とコミュニケーションを取りながらプレイするオンラインゲームをソーシャルネットワーキングサービスゲーム(SNSゲーム)という。原告Xは、プロ野球カードを題材としたSNSゲームである原告ゲーム「プロ野球ドリームナイン」を制作し、グリー株式会社が運営している携帯電話等のプラットホームである「GREE」において、原告ゲームを提供・配信している。
被告Yは、プロ野球カードを題材としたSNSゲームである被告ゲーム「大熱狂!!プロ野球カード」を制作し、株式会社デイー・エヌ・エー(以下、DeNA)が運営する携帯電話等のプラットホームである「Mobage」において、被告ゲームを提供・配信している。

原告ゲームは、平成23年3月30日オープンベータ版、4月18日、正式版が提供・配信が開始された。
被告ゲームは、平成23年8月18日頃、提供・配信が開始された。
同年9月20日、原告Xは、被告Yに対して、主位的に、1)YがXゲームを複製ないし翻案して、自動公衆送信し、Xの著作権(複製権、翻案権、公衆送信権)を侵害している、2)、Xゲームの影像や構成は周知又は著名な商品等表示若しくは形態であるとし、不正競争防止法の不正競争に当たるとし、3)、Yに対し、著作権法112条1項又は不正競争防止法3条に基づき、Yゲームの配信(公衆送信、送信可能化)の差止を求め、4)。著作権侵害による不法行為に基づく損害賠償請求、又は不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求として5595万1875円及び遅延損害金の支払い、弁護士費用として、260万円及び遅延損害金の支払いを求め、予備的に、5)、Yが行うYゲームの提供・配信は、Xゲームを提供・配信することによって生じるXの営業活動上の利益を不法に侵害する一般不法行為に該当するとし、不法行為に基づく損害賠償請求として1716万4696円及び遅延損害金の支払いを求め、訴訟を提起した。

[1審]東京地裁民事第40部東海林保裁判長は、次の争点を審理し、判断し、原告の請求をすべて、棄却した。

  1. 争点(1)、Yゲームの制作・配信行為はXの著作権を侵害するか。
    (1、著作物性、複製及び翻案について、
    (2、個別表現における著作権侵害の成否について、
    選手カードについては、中島裕之選手、ダルビッシュ有選手、坂本勇人選手、今江敏晃選手について、Xはいずれも著作物性を認めるべきと主張し、判決は(被告の)「中島選手とダルビッシュ選手の選手カードのポーズや構図は、原告ゲームにおけるそれと酷似している」と認めたが、「原告ゲームと被告ゲーム」は『選手カード』において共通する点があるとはいえ、その共通する部分は、ありふれた表現にすぎないか又は創作性のない表現であり、そもそも翻案にあたらないと認めるのが相当である。」とした。
    (3、まとまった表現についての検討、
    (4、ゲーム全体の著作権侵害について、の順に審理し、(5)「以上の通り、原告ゲームと被告ゲームは、個別の表現においても、表現全体においても、アイデアなど表現それ自体でない部分又はありふれた表現において共通するにすぎないと認められるから、被告ゲームについて複製権を侵害した、または翻案権を侵害したということはできず、公衆送信権を侵害したということもできない。」とした。
  2. 争点(2)被告ゲームの配信行為は、不正競争防止法2条1項1号又は2号の不正競に該当するか。
    原告ゲームは、「その影像が周知または著名な商品等表示」でないから、理由がない。
  3. 争点(3)被告ゲームの配信行為は不正競争防止法2条1項3号の「不正競争」に該当するか。
    Xが主張する原告ゲームの5つの要素における画面表示の展開の組合せといったものは、不正競争防止法2条1項3号「形態」に当たらない。
  4. 争点(4)被告ゲームの配信行為は不法行為に該当するか。
    最高裁平成23年12月8日判決(北朝鮮映画事件)を引用し、被告ゲーム配信行為が「著作権法の規律の対象とする著作物の利用若しくは不正競争防止法の定める不正競争行為の規制による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情は認められない」として、不法行為を構成しない、とした。

Xは、控訴した。

[2審]知財高裁第1部設楽隆一裁判長は、「被控訴人Yゲームの選手カードのうち、中島選手及びダルビッシュ選手の選手カードについては、控訴人Xゲームの選手カードの著作権(翻案権、公衆送信権)侵害に基づく損害賠償請求が認められる」とした。
損害額について。
Yが選手カードの表現を変更するまで9日間で、Yゲームにおけるレアパックの販売によりYが得た利益は、1541万円5312円である。
レアパックの販売利益の内、本件2選手カードによって得られた利益に相当する額のみが当該著作権侵害の行為によりYが受けている利益に当たる。「前記レアパックの販売利益のうち少なくとも8%が、本件2選手カードの販売によりYが受けた利益と認める」
したがって、著作権法114条2項によりXが受けた損害の額と推定される額は、123万3225円(1541万5312円×0.08)である。
ところで、著作権法114条2項の「推定覆滅事由」がある。Yの著作権侵害がなかったとしても、XがXゲームのレアパック(選手カード)の販売により得たとは認められない。
「XがXゲームのレアパックを販売することができたとは認められない割合は、少なくとも90%である」
「本件2選手カードの著作権侵害により控訴人Xが被った損害は、12万3322円(123万3225円×10%)となる」。
弁護士費用は、20万円が相当である。

[判決主文]

  1. 原判決を次のとおり変更する。
    1. 被控訴人は、控訴人に対し、32万3322円及びうち12万3322円に対する平成23年9月21日から、うち20万円に対する平成24年2月21日から支払済みまで年5分の割合におる金員を支払え。
    2. 控訴人のその余の主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。
  2. 訴訟費用は、第1,2審を通じ、これを100分し、その1を被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。
1審判決の判決文は、A4判139頁、2審判決は、53頁である。
ゲームjについては、「2012-9」釣りゲーム事件がある。
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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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