肖像写真投稿者情報開示請求事件

2015年9月30日

池田大作名誉会長の写真の著作権者である原告創価学会が、インターネット上の電子掲示板「Yahoo!知恵袋」に投稿された記事中の写真は、原告写真の複製ないし翻案であるとして、記事投稿行為は、原告の著作権(公衆送信権)侵害であり、損害賠償請求をするため、発信者情報が知りたいとして、経由プロバイダであるNTTにプロバイダ責任制限法4条1項に基づき、開示を求めた事案である。

東京地裁平成27年4月27日判決(平成26年(ワ)第26974号)

原告は、池田大作名誉会長の肖像写真の著作権者である宗教法人創価学会である。
被告は、エヌ・テイ・テイ・コミュニケーションズ株式会社(以下、NTT)である。

「Yahoo!知恵袋」に、池田大作創価学会名誉会長の写真29枚(本件写真)と名誉会長に関する記事が掲載された。
原告は、この記事を投稿した者に対し、著作権(公衆送信権)侵害の不法行為に基づき、損害賠償を求めるため、NTTに対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(=プロバイダ責任制限法)4条1項に基づいて、別紙発信者情報(発信者の氏名又は名称、発信者の住所、発信者の電子メールアドレス)の開示を請求した。

原告は、本件写真は、原告創価学会の1部門である聖教新聞所属の訴外Bの撮影したもので、著作権法15条により、著作権は原告にあるとし、本件写真が、名誉会長を揶揄し、名誉会長の容貌を晒すためだけに用いられたとし、主張した。
被告は、本件写真は、すでに公表されたものであり、著作権法32条1項の引用に該当する可能性がある、「創価学会は永遠に不滅です.2014年も素晴らしく大活躍することは魔違いないでしょう」など「原告ないし名誉会長に対する意見、批評を記載したものということもできる記述があり、本件各写真は、意見、批評の対象を明示するために必要」として掲載、「引用としての利用に該当する余地もある」と主張した。

東京地裁民事29部嶋末和秀裁判長は、本件記事の投稿で、原告の権利侵害は明白で、原告には、発信者情報の開示を受けるべき正当な事由があるとし、原告が、プロバイダ責任制限法4条1項の開示関係役務者に該当し、経由プロバイダとして発信者情報を保有する被告に対し、開示を求めることが出来るとし、原告の請求を認容し、「被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の情報を開示せよ」と判決した。

記事は、創価学会と池田名誉会長に対する「褒め殺し」のような文章である。
創価学会池田大作名誉会長の肖像写真を無断で複製、印刷物に掲載した者に対する訴訟としては、東京地裁平成19年4月12日判決(平成18年(ワ)第5024号)などがある。