検索サイト表示差止請求事件

2015年10月16日

ヤフー・ジャパンの検索サイトで自分の名前を検索すると、逮捕事実が表示されとして、名誉毀損及びプライバシー侵害に基づく損害賠償及び差止めを求めたが、請求が認められなかった事例である。

京都地裁平成26年8月7日判決(毎日新聞2014年8月23日)

原告は、2012年11月、サンダルに小型カメラを装置し、女性を盗撮し、同年12月、京都府迷惑行為防止条例違反で逮捕され、2013年4月、執行猶予付の有罪判決を受けた者である。

原告が、ヤフー・ジャパンの検索サイトで、自分の名前を検索したところ、逮捕された事実が表示された。
原告は、ヤフー・ジャパンに対して、名誉毀損、プライバシー侵害を理由として、差止めと損害賠償を求めた。
京都地裁は、1,検索結果の表示によって、原告の名誉を毀損したとはいえないが、仮に、検索結果の表示の内、スニペット部分について、原告への名誉毀損が成立すると解し、違法性阻却を検討する。

原告の逮捕事実は、盗撮という特殊な行為態様の犯罪事実に関するもので、社会的関心の高い事柄で、原告逮捕からまだ1年半程度しか経過していないことから、サイトの事実表示は公共の利害に関する事実に関する行為であり、違法性は阻却されないとした。プライバシー侵害については、違法性が阻却され、不法行為は成立しないとした。
損害賠償については、判断の必要なく、検索結果の表示により原告の人格権が違法に侵害されているとも認められない、として、差止めは理由がないとした。

いわゆる「忘れられる権利」の事件である。京都地裁は、これを認めなかった。原告が抹消して欲しいという事実から、「1年半」しか経過していないことが、大きな理由と思われる。
紙媒体であるが、交通事故で傷害を負い、後遺症がある旨の虚偽申告し、誤信した保険会社から保険金の支払を受け、そのことが発覚した被告が、原告出版社発行「交通事故民事判例集」に実名が載り、「保険金詐欺事件」なる索引により、詐欺被告人と同視した扱いをされ、名誉・信用が毀損に掲載されたとして、謝罪文の掲載と500万円の賠償を求めた事件で、長野地裁飯田支部平成元年2月8日判決(昭和63年(ワ)23号、判時1322号134頁、判タ704号240頁)。大手新聞社の縮刷版のことを考えると、「忘れられる権利」は、紙媒体には影響を及ぼすべきではない。

[参考文献]
中島美香「検索サイトに対して検索結果の表示と差止めを認めた地裁判決の紹介ー京都地 裁平成26年8月7日判決について」 http://www.irc.co.jp/newsletter/law/2014/law201408.html
神田知宏「ネット検索が怖いー『忘れられる権利』の現状と活用」ポプラ新書・2015 年5月7日発行。
福井健策編「インターネットビジネスの著作権ルール」(著作権情報センター・2014年)252頁。