クリニック情報事件

2015年11月4日

原告である医師は、被告が運営するウエブページ掲載のクリニックについての情報が誤っており、原告の人格権および業務遂行権(財産権)を侵害しているとして、不正競争防止法2条1項14号(不実記載)であるとして、ウエブページの表示の抹消、損害賠償200万円を求めたが、原告の請求がすべて棄却された事例である。

東京地裁平成25年3月6日判決(平成22年(ワ)第13704号)

原告は、Aクリニックという名称の診療所を開設する医師である。
被告((株)チューン)は、ホームページの作成等を主な業務とする株式会社で、(株)メデイラインから委託を受けて、インターネット上のアドレスにおいて、「Aクリニック」の名前を標榜するウエブサイトを開設している。

平成17年12月、本件クリニックが管理者原告で開設された。
メデイラインが本件クリニックの開設に当たり、経費等を負担、原告が医療知識等を提供する契約が締結された。
被告は、原告の了解を得たメデイアラインから、本件クリニックのホームページ制作及び開設の委託を受けて、これを運営している。
平成18年9月27日、原告とメデイアライン、被告らと協力関係が破綻し、原告は、メデイアラインの関与なしに、本件クリニックを運営した。
被告代表者は、平成19年9月11日設立の医療法人社団スペクトラムの理事に就任した。この団体は、Aクリニックから1キロ離れた場所に、「Bクリニック」を開設した。

原告は、

  1. 被告に対し、本件ウエブサイトの運営が原告に対する不法行為である、
  2. 被告による本件ウエブサイトの運営が不正競争防止法2条1項14号の「不正競争」にあたる

と主張した。

東京地裁民事40部東海林裁判長は、本件クリニックの事業主体は、原告ではなく、訴外の「組合契約または組合類似の契約」に基づく「組合」であるとして、被告が、この組合から委託を受けて、クリニックのウエブサイトを運営していることは、原告の権利を侵害するものではない、不正競争についても、原告被告間に競業関係はない、とし、原告の主張をしりぞけ、原告の請求をすべて棄却した。

原告は、本件クリニックを運営しているつもりだったが、判決は、訴外の「組合」であったと、認定した。原告は、まったく、自力で運営していると思っていたのだろうか。経費を負担していたメデイアラインが脱退した後、「組合」が負担したようだが、原告は知らなかったのだろうか。