控訴人(一審被告、行政書士)が自らのブログに掲載した被控訴人(一審原告、弁護士)に関する記事の内容は、控訴人の意見ないし論評にすぎないか、事実の摘示に当たる部分も虚偽とは認められないとして、一審は被控訴人(弁護士)の請求を一部認めたが、二審は、かかる記事の掲載は不正競争防止法の違反にならぬとして、被控訴人の請求を棄却した事例である。
原告は、東京都千代田区で「神田のカメさん法律事務所」を開設している弁護士である。
被告は、清瀬市内で「かなめ行政書士事務所」を開設している行政書士である。
被告は、モバイル用URLを開設し、そのブログで、平成23年6月9日、「南洋株式会社」と題する記事を書き、「この会社も社債を募集していますが、どうなんでしょう?」、南洋株式会社の有価証券を購入すれば、これを担保に先物取引で被った損失を取り戻せるという電話を受けた相談者への回答として「被害回復型の詐欺だと思います…損失を取り戻すと言って釣っておいて、南洋株式会社の社債を買わせようとしているんだと思います」などと書いた。
原告は、南洋株式会社から記事の削除を依頼され、被告へ記事の削除を求めたが、被告は拒否した。原告は、平成23年10月17日、東京都行政書士会長へ、被告は行政書士12条違反などの行為をしている、ブログの削除等の指導や対応を求めた。
被告も同月31日、東京弁護士会に、原告への懲戒を求めた。
南洋株式会社は、原告を代理人として、被告のブログが掲載されているニフテイ株式会社に対し人格権に基づき、本件各先行記事等の削除を求める仮処分命令を申立て、平成23年12月25日、本件第二先行記事の削除を命じる判決を得た。
被告は、原告への懲戒請求手続きにおいて、原告が提出した答弁書を被告のブログなどに掲載した。原告は、著作権に基づき、答弁書の削除を求める仮処分命令を出すよう東京地裁へ申し立てた。
平成24年5月、原告は、不正競争防止法2条1項14号、3条を根拠に訴訟を提起した。
1審の東京地裁17部(高野輝久、志賀勝、小川卓逸)は、次の判決を下した。
すなわち、一審判決は、原告が虚偽の記事であると主張する12件の記事の内、9件の記事について、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の流布に当たる部分があるとして、その掲載の禁止及び削除並びに損害賠償を命じた。
2審判決(設楽隆一、田中正哉、神谷厚毅)は、被控訴人の請求はいずれも理由がないとし、原判決が、被控訴人の請求の一部を認めていた部分を取り消して、被控訴人の請求をいずれも棄却した。
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