携帯電話用ゲームの画面表示の類似はどこまで、許されるか、という事件で、1審は、侵害とし、2審は、問題なしとした。
原告X(グリー株式会社)は、インターネットを利用した情報サービス等を提供する株式会社である。インターネット上で、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(コミュニテイ型サービス)を提供するインターネット・ウエブサイト「GREE」を携帯電話向け及びパソコン向けに運営している。
被告Y1(株式会社デイー・エヌ・エー)は、インターネットを利用した各種情報処理サービス及び情報提供サービス、ソフトウエアの企画、開発等及びその代理業等を業とする会社である。携帯電話向け及びパソコン向けにインターネット・ウエブサイト「モバゲータウン」を運営している。
被告Y2(株式会社ORSO)は、インターネット、コンピュータ、携帯電話、テレビゲーム機器等のシステム開発、コンサルタント業務、ゲームソフトの企画制作、製造販売等の業務を業とする株式会社である。
Xは、2007年、携帯電話向けGREEに、その会員に対し、釣りのゲームの作品「釣り★スタ」(X作品)を公衆送信によって配信した。このX作品は、トップ画面、釣り場選択画面、キャステイング画面、魚の引き寄せ画面、魚を釣り上げた釣果画面が存在する。
2009年、Y1およびY2は、「釣りゲータウン」という携帯電話機用の釣りのインターネット・ゲーム(Y作品)を共同で製作し、携帯電話機向けのモバゲータウンにおいて、その会員一般に、公衆送信による配信を開始した。このY作品にも、トップ画面、釣り場選択画面、キャステイング画面、魚の引き寄せ画面、釣果画面が存在する。
Y1のモバーゲタウンや、Y2のホームページには、Y作品が掲載されている。
Xは、1,YらによるY作品の製作及び公衆送信は、X作品の著作権(翻案権、公衆送信権)および著作者人格権の侵害である、Y作品の公衆送信の差止およびモバゲータウンなどウエブサイトからY作品を抹消すること、2,Yらが、Y作品をウエブページに「魚の引き寄せ画面」のY影像を掲載することは、不正競争防止法2条1項1号所定の周知な商品等表示の混同惹起行為に当たるとして、Y影像の抹消を求め、3,YらがY作品を製作し、公衆に送信する行為は、Xの法的保護に値する利益を侵害する民法の不法行為に当たる、と主張し、著作権侵害、不正競争防止法2条1項1号違反、共同不法行為に基づく損害賠償として9億4020万円、4,著作権法等に基づく謝罪広告を求めて訴えた。
東京地裁平成24年2月23日判決は、Y作品の「魚の引き寄せ画面」が、X作品の「魚の引き寄せ画面」を翻案したものである、X作品にかかるXの著作権及び著作者人格権を侵害するとして、Y作品の公衆送信の差止、ウエブサイトの抹消、損害賠償の一部約2億3500万円の支払いを認めた。
この判決に不服のYらは控訴した。
知財高裁平成24年8月8日判決は、「魚の引き寄せ画面」は、たしかに共通しているが、「ありふれた表現である」か(魚を引き寄せる決定キーを押すタイミングを魚影が同心円の一定の位置にきたときにする)ことにした点は、「アイデア」にすぎない、として、翻案権侵害を否定した。また、「魚の引き寄せ画面」は、不正競争防止法2条1項1号に該当せず、著作権侵害、不正競争行為に該当せず、民法の不法行為も構成しないとした。
東京地裁判決は、携帯電話向け釣りゲームのX作品は、従来にない、新しいものとし、著作権法で保護しようとしたが、知財高裁は、X作品は、ありふれている、又は著作権法で保護するに値しない単なるアイデアであると判断した。
最高裁第三小法廷は、平成25年4月16日、X側の上告を棄却する決定をした。
[参考文献]横山久芳「翻案の判断方法」(「平成24年度重要判例解説」267頁)。