イカタコウイルス事件(刑事)

2015年11月18日

コンピュータウイルスを受信、実行させるなどの行為がパソコンのハードデスクの効用を害したとされ、器物損壊罪に当たるとされた事例である。

東京地裁平成23年7月20日判決(平成22年刑(わ)第2150号
平成22刑(わ)第2651号、判タ1393号366頁)

 本件は、いわゆるイカタコウイルス(又はタコイカウイルス)と呼ばれるコンピュータウイルスをインターネット上に公開して被害者に受信、実行させた行為が器物損壊罪に問われたものである。

器物損壊罪の「損壊」が物の物理的破壊に限らず、効用喪失を含むとしている(飲食用のすき焼き鍋や徳利に放尿する行為を器物損壊罪にした大審院明治42年4月16日刑録15巻452頁)。本判決は、

  1. 効用侵害の有無につき、ハードデスクは、読み出し機能と書き込み機能の2つが本来的効用で、ウイルスの感染により2つの機能が失われたこと、
  2. いずれの効用も一般人には容易に現状回復できない

として、器物損壊罪の成立を認め、岡部豪裁判長は、被告人を懲役2年6月に処した。「刑法第261条 前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。」

コンピュータ・ウイルスを、「感染」させる行為が、器物損壊罪に当たる、という判例である。