人材派遣会社対電子掲示板事件

2015年11月20日

ウエブサイトの電子掲示板に名誉毀損、信用毀損の投稿があるのに、速やかに削除しなかったサイトの運営管理者に対する不法行為に基づく損害賠償と謝罪文掲載要求が否定された事例である。

東京高裁平成22年8月26日判決(判時2101号39頁)
東京地裁平成21年11月27日判決(平成19年(ワ)第26700号)

原告X1は、英語指導助手の人材派遣業務等を営む会社で、X2は、その代表者である。
被告Yは、インターネットを利用した各種情報提供サービス等を行う会社で、英語総合情報サイト「GaijinPot.com」というフォーラムを運営している。

X1X2は、Yに対して、民法709条の不法行為にあたるとして、X1会社へは、信用の無形損害、弁護士費用の損害賠償と本件サイトへの謝罪文の掲載、X2に対しては、慰藉料と弁護士費用の損害賠償を請求し、訴えた。

X1X2は、サイトに、Xらへの誹謗中傷の書き込みがなされたが、

  1. Yがこの書き込みを行った(主位的主張)、
  2. そうでなくても、本件サイト管理に当たって、意図的に、Xらにとって不利な書き込みを行った者の格付けを上げる処分をし、Xらにとって有利な書き込みを行った者には、以後の書き込みを禁止する処分を行うことによりXらを誹謗中傷する書き込みを誘導した(予備的主張1)。
  3. Xらからの削除要請に応じず、第三者がXらを誹謗中傷する書き込みを行っていることを知りながら、これを放置し、削除する義務を怠った、

と主張した。

[東京地裁判決]

1審は、

  1. 主位的主張事実は認められない。
  2. 投稿者の格付けは、投稿数に応じて、機械的にランク付けする仕組みで、Yが意図的に格付けを引き上げたりしたものは認められず、不適切な書き込み者への書き込み禁止処分も予め公表されたルールに従がってなされ、YがXらを不当に攻撃する書き込み者に対して、書き込み禁止処分もしていて、X有利な書き込み者を意図的に書き込み禁止処分をして、Xらを誹謗中傷する書き込みを誘導したとは、認められない。
  3. Xらの書き込み削除要請にYが不当に応じないという対応をしたことや、本件サイトへの広告掲載を削除の条件として要求したことは、認められない

として、Xらの請求をいずれも棄却した。

[東京高裁判決]
東京高裁は、原審判決を支持して、控訴を棄却した。Xらに有利な書き込みを行う者を閉め出す意図がYにあったとは認められず、Yが削除要請があったときに要請者と対話の機会を設けるような運営を行っていることは不合理、不当でなく、Xらの削除要請を広告掲載の交換条件として、事実上削除処理を拒絶したことは、認められないとした。

サイト運営者が公平に運営しているのに、インターネット利用者が、不当に取り扱われ、名誉毀損、信用毀損の権利侵害を受けたと思い込んだ事例のようである。