被告学習塾が、「塾なのに家庭教師」という標章をチラシやウエブサイトで使用したことが、原告学習塾の登録商標の侵害ないし商標的使用であるとして訴えられ、その請求が棄却された事例である。
原告(株式会社名学館)は、学習塾の経営並びにこれに関するノウハウの販売、経営指導及び業務受託等を行う会社で、直営校15,フランチャイズ契約校142である。
被告(株式会社東京個別指導学院)は、学習塾及び文化教室の経営並びにこれに関するノウハウの販売、経営指導及び業務受託等を行う会社で、直営学習塾192を経営している。
原告は、平成14年4月9日、指定役務第41類「学習塾における教授」に商標登録を出願し、平成15年6月20日設定登録された。本件登録商標は、「塾なのに家庭教師」の文字列と2つの感嘆符とを黄色に着色し、これに青色の縁取りが施された標章である。
原告は、被告が「塾なのに家庭教師」という標章をチラシやウエブサイトで使用したことが、原告学習塾の登録商標の侵害ないし商標的使用であるとして、被告が生徒募集、従業員募集等の折り込み広告に被告標章目録1ないし4,ウエブサイト上の広告に被告標章目録5の標章を付して提供することの禁止、1億7100万円の損害賠償を求め、また予備的請求も加えて提訴した。
原告は、被告各標章は原告の登録商標と同一又は類似の商標と主張し、被告がチラシやウエブサイトで、「塾なのに家庭教師」を使用することは、商標的使用と主張した。
被告は、「塾なのに家庭教師」は、広く用いられて自他識別力がない、黄色の文字列、青色の縁取りの組合せ、文字列の工部の2つの感嘆符もないから、本件登録商標と類似していない、「塾なのに家庭教師」というフレーズを、チラシや被告ウエブサイトで使用する際、被告の出所を表示する「東京個別指導学院」「関西個別指導学院」又は「TKG」を付した。被告による被告チラシ及び被告ウエブサイトにおける被告標章の使用は、商標的使用でないと主張した。
[東京地裁]
民事46部の大鷹一郎裁判長は、「被告による被告チラシ及び被告ウエブサイトにおける被告各標章の使用は、本来の商標としての使用(商標的使用)に当たらないから、その余の点について判断するまでもなく、本件商標権の侵害行為又は侵害行為とみなす行為のいずれにも該当しない」として、原告の請求を棄却した。