アイデイー商標事件

2015年11月27日

「アイデイ-」という商標は許されるか、許されないという判決例である。

知財高裁平成21年9月8日判決(判時2076号89頁)

IDは、Identificationの略語で、システムの利用者を識別するための符号であり、一般には、数字や英字を組み合わせる。インターネットやサーバーにアクセスする場合、パスワードやユーザーを入力し、サーバーはこれにより、正当な利用者であると認知し、識別する。このIDを商標登録しようとしたが、特許庁、知財高裁は、拒絶した。

原告X((株)インフォメーション・デペロプメント)は、「アイデイー」の片仮名文字を標準文字で書して成る商標を、指定商品:第9類「加工ガラス(建築用のものを除く)、自動販売機…(省略)スロットマシン、レコード、メトロノーム、電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCDーROM」に平成17年3月22日、出願をした。
特許庁は、平成19年3月28日拒絶査定をした。
原告Xは、平成19年4月16日、特許庁へ拒絶査定不服審判の請求をした。

特許庁は、平成20年12月26日、「本件審決の結論として『本件審判の請求は成り立たない。』」とした。審決理由として、「指定商品中の例えば、『システム・情報等のセキュリテイに関する商品を含む電子応用機械器具及びその部品並びに電気通信機械器具(テレビジョン受信機・ラジオ受信機…を除く。)』」に使用しても、これに接する取引者・需要者は、「識別子。ネットワークシステムなどの利用者を識別するための符号」を意味する語、さらには、「コンピュータ、情報セキュリテイに関する1用語である「ID」の表音と理解・認識するにとどまり、自他商品の識別標識として認識し得ないものであるから、本願商標は商標法3条1項6号所定の「需要者が何人かの業務に係る商品…であることを認識することができない商標」に該当する、とした。
Xは、不服で、商標法63条に基づき、上訴した。

知財高裁は、「本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であり、本願商標が商標法3条1項6号に該当するとした本件審決の判断に誤りはない。」として、原告の請求を棄却した。

[商標法3条1項]
自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
一、その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
(省略)
六、前各号に掲げるものの外、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標

東京地裁平成17年6月21日判決(2005-6)は、「IP FIRM」なる商標は、商標法3条1項6号に該当、商標権者に基づく商標権行使を許さなかった。
2009-2(IT事件)参照。