オークションカタログ事件

2015年11月26日

絵画・絵画カタログをインターネットで自由に送信できるか。

東京地裁平成21年11月26日判決(平成20年(ワ)第31480号)

 原告等は、現代美術の作家で、絵画等の作品(本件著作物)の著作権者である。
被告は、オークション等を業とする株式会社エスト・ウエストオークションズである。

 被告は、原告の著作物の画像をフリーペーパー、パンフレット、冊子カタログに掲載し、その一部をインターネットで公開した。
 原告らは、原告等の複製権及び原告Xの公衆送信権を侵害したとして不法行為に基づく損害賠償を請求した。

 被告は、次のように主張した。

  1. 引用(32条)である。
  2. 展示に伴う複製であるから47条の「小冊子」である。
  3. 被告は、オークションは香港で開催され、これは「時事の事件の報道」に当る。
  4. オークションに先立ち著作権者に無断でカタログが作成されることは、国際慣行である、原告の著作権行使は、権利濫用である。

と被告は主張した。

民事47部阿部正幸裁判長は、

  1. 原告著作物をフリーペーパー等に掲載し、文字の部分は、資料的事項を箇条書きにしているが、32条の「引用」に当たらない。
  2. 47条は、観覧者のためのものであることが必要で、フリーペーパー等への掲載は、観覧者に限らない多数人に配布するから、「小冊子」に当たらない。
  3. 本件パンフレットは、オークションの広告で、「時事の事件の報道」に当たらない。
  4. 原告の著作権行使は、権利濫用に当たらない、とし、
    1. 被告は原告Aに対し、20万円、
    2. 被告は原告Bに対し、9万円。
    3. 被告は、原告Cに対し、14万円。
    4. 被告は、原告Dに対し、9万円。
    5. 原告のその余の請求をいずれも棄却した。
この判決の約1月後の平成22年1月1日施行の改正著作権法により、一定の要件を満たせば、権利者の許諾なしに美術品、写真の譲渡等をしようとする場合、その画像を、その申出のための複製又は自動公衆送信を行える、ことになった(47条の2)。
フランス美術著作権団体とピカソの相続人が毎日オークションに対し、オークションカタログに無断転載したとして、訴え、それぞれ、損害賠償金を得た事件が「東京地裁平成25年12月20日判決平成24年(ワ)第268号」であるがこれはインターネット送信は行っていないので本書に収録しなかった。

[参考文献]
茶園成樹「知的財産法判例の動き」『ジュリスト』1420号(平成22年度重要判例解説)320頁。種村佑介『ジュリスト』1422号153頁。
福王寺一彦・大家重夫「美術作家の著作権」19頁、231頁。