医療法人社団対NTTドコモ請求事件

2015年11月30日

携帯電話から接続サービスを利用してインターネットのブログになされた書き込みにより名誉、信用を毀損された者から携帯電話会社NTTドコモに対する発信者情報開示請求が認められた事例である。

東京地裁平成20年9月9日判決(判時2049号40頁)

被告Yは、NTTドコモである。
原告Xは、医療法人社団で、診療所を開設し、化粧品(本件化粧品)も販売している。

Xは、芸能人だった訴外Aへ本件化粧品を贈呈した。Aは、訴外B会社が提供しているブログのシステムを利用してインターネット上にブログ(本件ブログ)を開設していたが、平成19年8月15日午前10時20分頃、本件ブログに本件化粧品のカラー画像を掲載し、「嬉しき頂き物」などと書き込んだ。ところが、同日午後9時37分ころ、「肌悲しい子」の名前の者から、「その化粧品でひどく肌が赤くただれて、大学病院の皮膚科で治るまで3ケ月かかると言われました」などの書き込み(本件書き込み)がなされた。Xの求めに応じて、B会社は、同年9月20日、Xに、IPアドレスとこのIPアドレスを割当てられた携帯電話等からBの電気通信設備に送信された年月日及び時刻の情報を任意に開示した。
Xは、本件IPアドレスは、Yが所有しており、本件発信者が本件ブログに本件書込みをした際、インターネット接続サービスを提供したのは、Yであると知った。
Xは、Yの通信回線を利用し、本件書き込みをした者(「肌悲しい子」)の住所、氏名の情報の開示を請求をしたが、Yは拒否した。

民事23部須藤典明裁判長は、原告は、本件発信者によって、その名誉や信用を侵害されている。本件書き込みは、携帯電話等から被告の通信回線を経由して本件ブログに書き込まれたもので、被告は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(平成13年法律第137号)4条1項にいう「開示関係役務提供者」に該当するとし、原告に対し、本件発信者の氏名、住所、電子メールアドレス等の情報を開示せよ、と命じた。

2005-1エステックサロン事件と類似する事件である。