マンガ無断ネット配信事件

2015年12月3日

マンガを著作者に無断で配信した事件である。

東京地裁平成19年9月13日判決(平成19年(ワ)第6415号判時1991号142頁)

さいとうたかお、永井豪、井上雄彦ら11人の漫画家が、それぞれのマンガを無断で配信されたとして、インターネットコンテンツ企画制作等を行うA会社及びインターネットカフエ経営のB会社等を訴えた。

被告らは、原告等の漫画単行本を裁断し、スキャナーで読み取った画像ファイルを、サーバーを用いて、ウエブサイトPを通じて、インターネットを利用する不特定多数の者に自動公衆送信が可能な状態にし、実際に自動公衆送信が行われた。

原告は、これらの行為をした被告らに対し、著作権侵害(公衆送信権侵害)に基づいて、損害賠償を求めた。被告は、インターネットコンテンツの企画制作等を目的とするA会社、インターネットカフエ経営のB会社、C(元A会社及び元B会社の代表者)、D(現在のA会社代表者)である。

東京地裁民事46部設楽隆一裁判長は、

  1. ABCDの被告は、原告10人それぞれに対し、連帯して金200万円及び平成18年2月1日から支払い済みまでの年5分の金員を支払え
  2. 被告は、原告丙川竹夫こと丙川二郎(筆者注、「家栽の人」「斗馬TOMA」著者)に対し、金32万2560円を平成18年2月1日から支払い済みまでの年5分の金員を支払え
  3. その余の請求を棄却した。

A社には、侵害行為の幇助、Dには故意があり、共同不法行為を認め、B社も本件侵害行為を幇助、Cには故意があるとして、不法行為責任を認めた。
裁判所による損害額は、各漫画単行本を電子書籍化した場合の想定販売価格に、相当な使用料率を乗じ、ウエブサイトPの利用者の閲覧総数を乗じた金額を損害額とし使用料相当額の算定について、ヤフーブックや有限責任中間法人出版物貸与権管理センター使用料規程によることをしなかった。

電子書籍とマンガは、親和性があるという。

[参考文献]JUCC通信126号4頁に亀井弘泰弁護士の判例紹介がある。