有名ホストが電子掲示板になされた書き込みが名誉毀損に当たるとして携帯電話事業会社が発信者情報の開示を命ぜられたが、損害賠償請求は棄却された事例である。
原告Xは、有名ホストである。
被告Yは、携帯電話事業を業とするボーダホン株式会社である。
訴外Aの運営するホームページは、ホストクラブ情報交換を目的とする電子掲示板を包含しているが、ここに、「Xさんは、性病でした。花子うつされた~」などの書き込みがなされた。Xは、Aを相手に平成17年1月27日、大阪地裁に対し、発信者のIPアドレス及び書き込みがなされた日時の情報を開示を求める旨の仮処分を申立て、同年2月10日、仮処分決定を得て、同年3月16日に情報の開示を受けた。この開示で、Xは、書き込みに利用された端末が「j-phoneV402SH」で、IPアドレスは、被告Yが管理しているサーバーであることを知り、平成17年3月17日、Yに対し、書き込みについての発信者情報の開示及び開示までの保存を請求した。
平成17年5月20日、Yは、Xに対し、その発信者情報開示請求が、プロバイダ責任制限法4条1項の要件を充足していると判断できず、請求に応じられないと回答した。
Xは、名誉毀損及びプライバシー権侵害であるとして、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、発信者情報の開示を求めると共に、Yが開示しなかったことによる精神的損害100万円の損害賠償支払を求めて提訴した。
[大阪地裁]
第9民事部の深見敏正裁判長は、本件書き込みは、公共性も公益目的も違法性阻却事由もなく、権利侵害の明白性要件を満たしているとし、発信者情報の開示を命じた。Yの損害賠償責任については、Yに故意や重過失はないとし、これを否定した。
[判決主文]