エステックサロン対楽天仮処分事件

2016年1月12日

発信者情報開示請求権を被保全権利とする発信者情報の開示を命ずる断行の仮処分が認められた事例である。

東京地裁平成17年1月21日決定(平成16年(モ)第54824号判時1894号35頁)
東京地裁平成16年9月22日決定(平成16年(ヨ)第2963号判時1894号40頁)

債権者Xは、A又はエステキューズ及びBの名称で、エステックサロンの経営等を業とする株式会社である。
債務者Y(楽天株式会社)は、各種マーケッテイング業務の遂行及びコンサルテイング等を業とし、インフォーシークレンタル掲示板という電子掲示板を開設、インターネットサービスを提供している。

インフォシークレンタル掲示板に、「ベルボーというサポーターが、全部で20万円もするにかかわらず、開封してみると紙1枚だけでどういう仕組みで痩せられるかのか等について全く掲載されておらず、グルメッツという食品に至っては詳しい成分の記載もなく、こんな怪しい商品は今まで見たことがない」といった記事が掲載された(ベルボーもグルメッツもXが販売している商品である。)。
Xは、Yに対して、Yの電子掲示板に対する投稿により、名誉を毀損されたとして、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報開示に関する法律(以下、プロバイダ責任制限法)4条1項の発信者情報開示請求権を被保全権利として、同投稿にかかるIPアドレス等の開示を求めた。

[平成16年原決定]
平成16年9月22日東京地裁は、Xの申立の内、別紙記事目録1記載番号15(タイトル、返品について),97(まとめて返事),143(Aやめました),178(現社員です),別紙記事目録2記載番号14(最悪でした)については、理由があるとして、これを認容し、その余の申立は、被保全権利の疎明を欠くとして、これを却下した。債務者Yが保全異議を申し立てた。

[平成17年本決定]
民事9部大橋寛明裁判長は、別紙記事目録1掲載番号178及び同目録2掲載番号14に係る発信者情報の開示を命じた部分については、被保全権利の疎明があるとはいえず、不当であるから、これを取消し、その余の部分は正当であるからこれを認可し、債権者の仮処分命令申立は、上記取消に係る部分につきこれを却下した。

電子掲示板においては、化粧品、健康食品などの商品、サービスへの悪口、非難、批評があり、これに対し、信用毀損、名誉毀損で対抗する事例が多い。