インターネット上の掲示板に記載された情報で、名誉、プライバシー、名誉感情を傷つけられたとして、プロバイダ責任制限法により発信者情報開示が認容され、損害賠償請求は棄却された事例。
原告Xは、田中次郎である。被告Yは、ヤフー株式会社である。
Yは、電気通信事業法に基づく一般第2種電気通信事業等を行う株式会社で、インターネット上で、「Yahoo!掲示板」を設営している。この掲示板に投稿するには、利用者は、Yに対して、住所氏名と「Yhoo!JAPAN ID」とパスワードを申告、YからIDが付与されることが必要である。利用者が掲示板に投稿しても、申告した住所氏名は表示されない。IDを取得した利用者は、プロフィールを公開することが可能で、これに本名真実の住所などを公開する必要もない。
Xは、何者かによって、自己の名前のイニシヤルJとXの苗字のローマ字記載を連結した(j.tanaka.仮名)を取得され、同IDを使用してYが提供するサービスの1つ、公開プロフイールに、Xが持っている携帯電話番号が記載され、職業欄に知的障害者、住所欄は、精神病院隔離病棟などと記載され、Yが運営する掲示板にも、同IDを使用して携帯電話番号が書き込まれていた。さらに、他のID(bu)を使用して掲示板に、j.tanaka を侮辱する投稿がなされ、buから自己のIDに侮辱的な電子メールが送付された。
そこで、Xは、各ID(j.tanaka,bu)を使用して、投稿等を行った者の発信者情報の開示を請求し、Yが、Xから前記投稿等の削除要求を受けながらこれを放置したとして、不法行為に基づく損害賠償請求をした(Yは、1週間後削除した)。
Yは、電子メールは、プロバイダ責任制限法4条1項の特定電気通信による情報に該当しない、前記投稿の1部は、Y運営の掲示板へのものでない、j.tanakaは、個人として特定できないからXの名誉を毀損をしない、携帯電話番号は一般に公開されていないから、プライバシー侵害は不成立と主張した。
[東京地裁]
民事第5部の長秀之裁判長は、次のように判断した。
[判決主文]