パソコン通信の電子会議室における発言が名誉毀損とされ、50万円の支払いを命じられたが、会議室主宰者とシステムオペレーターは、発言削除義務違反等の責任がなく、損害賠償を負わなかった事例である。
パソコン通信ニフテイサーブの主宰者Y1(被告・控訴人)は、ニフテイサーブ上に、「現代思想フォーラム」を開設し、Y2(被告・控訴人)をシステムオペレーターにし、その管理運営に当たらせていた。X(原告・被控訴人)及びY3(被告・控訴人)は、ニフテイサーブの会員である。平成5年11月から平成6年3月にかけて、Y3は、Xが名誉毀損等に当たると主張する発言を書き込んだ。
シスオペのY2は、問題点を指摘したが、削除はしなかった。その後、平成6年2月15日、Y2は、Xの訴訟代理人から発言番号を特定し、削除要請を受けたため削除した。
同年4月、Xは、
各自1,000万円及びこれに対する遅延損害金の支払い及び謝罪広告を求め訴訟になった。
[東京地裁]
Y3の発言は、名誉毀損に当たる、Y2は、本件各発言を知ったときから条理上の削除義務を負うとし、本件各発言の一部につき削除義務を怠った過失があるとし、Y1は使用者責任を負うとし、Yらについて各自10万円、Y3についてはさらに、40万円の支払いを命じ、謝罪広告掲載要求は棄却した。
[東京高裁]
控訴審は、Y3の発言の一部が、名誉毀損・侮辱に当たると認め、Y3へは、50万円の支払いを命じた。Y2及びY1については、発言削除義務違反等の責任が認められないとし、原判決を取消して、Y2、Y1に対するXの請求を棄却した。
[参考文献]
橋本佳幸・判例時報1809号178頁(判例評論530号16頁)。
大谷和子・ニフテイーサーブ「現代思想フォーラム」事件・(岡村久道編「サイバー判例解説」98頁)。西土彰一郎・別冊ジュリスト179号「メイデイア判例百選」224頁(2005年)。牧野二郎「ネット関連訴訟の現状について」自由と正義2002年6月号68頁。
参考:http://www.law.co.jp/cases/gendai2.htm