迷惑メール仮処分事件

2015年12月29日

携帯電話利用者あてに「迷惑メール」を無差別に送信する業者に対し、その送信行為の差止めが認められた事例である。

横浜地裁平成13年10月29日決定(平成13年(ヨ)第560号)

仮処分命令の申立事件であるため、原告、被告でなく、債権者、債務者である。
債権者Xは、第1種電気通信事業者である株式会社エヌ・テイ・テイ・ドコモ。
債務者Yは、情報処理及び情報提供の各サービス業、移動体通信機器の販売等を目的として平成10年9月11日設立の有限会社グローバルネットワークであるが、平成13年9月4日、社員総会の決議で解散、清算人菊池越を代表者とする清算法人である。

Xは、iモードの名前のパケット通信サービスを提供する義務を負っている。
Yは、Xのパケット通信サービス契約者を不特定多数の男女の交際の仲介をする「出会い系サイト」というインターネットサイトの紹介を内容とする電子メール(本件メール)に勧誘するとともに、同契約者をして、有料インターネットにアクセスさせることにより収益を図ることを計画した。
Yは、本件電子メールを発信する際に、宛先となる電子メールアドレス(090に8桁の数字を付したものに続けて@dokomo.ne.jp)の8桁の数字部分にランダムな数字を当てはめる等の方法で、遅くとも平成13年5月、不特定多数の同サービス契約者宛ての電子メールアドレス及び同サービス契約者の存在しない多数の架空の電子メールアドレス宛てに、本件電子メールを大量かつ継続的に送信した。
このYの大量かつ継続的な本件電子メールの送信行為等に起因し、Xの電気通信設備等に機能障害が生じた。
そこで、Xは、Yに対して、送信行為の中止とその旨の誓約書の提出を求めたが、Yは、依然として本件電子メールを大量かつ継続的に送信し続けた。
Xは、Xの電気通信設備に対する所有権侵害を理由に、Yの送信行為の差止を求める仮処分の申立を行った。

[横浜地裁]
民事9部は、X請求を認容し、次の決定をした。

[主文]

  1. 債務者は、この決定送達の日から1年間、宛先となる電子メールアドレス(「090」に8桁の数字を付したものに続けて「@dokomo.ne.jp」を付したもの)の8桁の数字部分にランダムな数字を当てはめる等の方法により、債権者の所有する電気通信設備を利用して行われるパケット通信サービスを通じて、同サービスの契約者の存在しない多数の電子メールアドレス(「090」に8桁の数字を付したものに続けて「@dokomo.ne.jp」を付したもの)宛てに、営利目的の電子メールを送信する等して、債権者の所有する電気通信設備の機能の低下もしくは停止っをもたらすような行為をしてはならない。
  2. (省略)
この決定は、当然である。