速読本舗事件

2015年12月25日

書籍の要約文を掲載するウエブサイトは、許されるか。

東京地裁平成13年12月3日判決(平成13年(ワ)第22067号、判時1768号116頁)

 平成8年頃、Y(有限会社コメットハンター、本社福井市)は、インターネット・プロバイダAとサーバースペース提供に関する契約を締結し、Yのホームページを開設、そこに、ビジネス書の要約文を紹介するサイト「速読本舗」を置いた。
 Yは、毎月4冊のビジネス書を選び、その要約文を作成し、会費を支払った個人、法人の会員にメールサービスによって、書籍要約文を送信した。また、毎月、一冊の書籍要約文をホームページ上に無料で公開し、新規にこのサービスに加入する会員を募集した。
 Yは、要約した書籍の著者には、全く無断で、報酬も支払わず、連絡もしなかった。

 江口克彦、竹村健一、田原総一朗ら9名の著名な評論家、文化人、経営者である書籍の著者X1~X9らが、原告となって、Yに対し、複製権、翻案権、公衆送信権、送信可能化権及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害するものとして、その差止めと損害賠償を請求して訴えた。 X1らは、インターネット・プロバイダAへも著作権侵害で訴えた。

[東京地裁判決]
被告Yは、答弁書、準備書面を提出せず、口頭弁論期日にも出頭しなかった。民事29部飯村敏明裁判長は、Yが請求原因事実を認め、自白(民事訴訟法159条、179条)したものとみなし、原告の請求をすべて認容したものとした。

[判決主文]

  1. 被告は別紙書籍要約文を自動公衆送信又は自動公衆送信可能化してはならない。
  2. 被告は、被告の開設するウエブサイトから別紙各書籍要約文を削除せよ。
  3. 被告は、各原告に対し、それぞれ金110万円(うち10万円は弁護士費用)及びこれに対する平成13年10月28日から各支払済みまで年5分の金員を支払え。

 なお、Xらは、Aの行為も著作権侵害であると主張、Aに対し差止及び損害賠償を求めたが、XA間で、裁判上の和解が成立した(和解条項は判時1768号118頁に掲載。)

被告は、著者、出版社の承諾をとり行うか、被告が読み、褒めるなり、批判するなりして、文章を前後に書き、「引用」の形式で、試みる方法があった。

[参考文献]
山本順一・「速読本舗事件」「サイバー法判例解説」(商事法務・2003年)26頁。