わいせつ画像マスク処理事件(刑事)

2016年1月8日

画像をマスク処理したが、わいせつ物公然陳列罪に問われた事件である。

岡山地裁平成9年12月15日判決(平成9年(わ)220号判時1641号158頁)

被告人2人は、猥褻画像を不特定多数のネット利用者へ有料で閲覧させようと意図して、女性の性器部分等を撮影した画像に、画像処理ソフトで、マスク処理したものをプロバイダーのサーバコンピュータに送信し、同時に取り外し機能のソフトを付して送信し、その記憶装置内に記憶、蔵置させた。不特定多数のインターネット利用者において受信した画像データを同じソフトを利用することにより、マスクを取り外した状態の猥褻画像を復元閲覧することができた。これが、猥褻物公然陳列罪に問われた。

被告人側は、

  1. サーバーコンピュータの記憶装置内に記憶、蔵置させた画像は、性器部分が画像処理ソフトにより、マスク処理され見えないようにされているから猥褻性はない
  2. 被告人らが送信し記憶、蔵置させたものは、情報である画像データであり、有体物であるべき、猥褻図画は存在せず、猥褻図画陳列罪に該当しない

と主張した。

裁判所は、

  1. 画像にマスクがなされていても、マスクを外すことが誰にでも、その場で、直ちに、容易にできる場合には、その画像は、マスクをかけられていないものと同視することできるとし、
  2. 陳列された図画は、サーバコンピュータではなく、情報としての画像データであると解すべきである、とし、情報としてのデータもわいせつ物の概念に含ませることは、刑法の解釈として許される、とし、

被告人らの行為は、刑法175条猥褻図画公然陳列罪に当たるとした。

当然の結論と思われる。

[参考文献]山本光英・判例評論487号59頁(判時1679号237頁)。