発信者情報NTT請求事件

2015年12月1日

ネットのチャットルームにおける書込みがプライバシー侵害、名誉毀損に該当する等として、発信者情報開示請求が認められたが、プロバイダーによる情報開示請求の拒否につき重過失がないとして、損害賠償請求が棄却された事例である。

大阪地裁平成20年6月26日判決(平成20年(ワ)第461号、判タ1289号294頁)

Xは、私人である。
Yは、エヌ・テイ・テイ・コミュニケーションズ株式会社である。

インターネットのチャットルームにおいて、Aが、原告Xについて、その住所、氏名を公開し、「郵便局の配達員クビになった」、「誰もが認める人格障害」「引き籠もり40歳」などと記載した。
Xは、プロバイダ責任制限法4条1項に基づいて、Aの住所、氏名の開示を求めたが、拒否された。Xは、「別紙アクセスログ記載の参加日時から退出日時までの間に同目録記載のIPアドレスを使用してインターネットに接続していた者の氏名及び住所を開示せよ」および百万円の損害賠償を請求して訴訟を提起した。

[大阪地裁]
第17民事部の西岡繁靖裁判官は、Xのプライバシー権が侵害されたことが明白で、名誉を毀損されたことも明白で、開示を受ける正当な理由があるとして、Aの住所、氏名の開示請求を認めた。
しかし、損害賠償請求については、被告Yに、故意、重過失を認めず、原告Xの損害賠償請求は理由がない、とした。
Aは、原告Xから、(弁護士が発信者の住所を調べ、判明したら原告が極道をAの下に送るから待ってろよ)、との脅迫を度々受けており、被告Yとしては、Aの意見を尊重して、原告の開示請求に応じることはできないと判断した事情があった。

発信者情報開示請求について、被告側にもいろいろの事情がある。