発信者情報開示請求事件

2015年10月15日

ツイッターに投稿された記事によって名誉が毀損されたと主張する者から、IPアドレス保有者に対する発信者情報の開示が認められた事件である。

東京高裁平成26年5月28日民事12部判決(平成26年(ネ)第797号、判時2233号113頁)
東京地裁平成26年1月16日判決(平成25(ワ)26322号)

 原告Xは、氏名不詳の者からツイッターに投稿された記事によって、名誉が毀損された、もしくは名誉感情が侵害されたとして、ツイッターの運営会社から開示されたIPアドレスの保有者である被告YソフトバンクBB(株)に対して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づき、発信者情報の開示を求めた事件である。

原告は、ツイッターの運営会社に、誰が自分の名誉を毀損させたか特定すべく、IPアドレスを開示するよう仮処分の申立をした。ツイッター運営会社は、これに応じた。そこで、IPアドレスから、ソフトバンクBB(株)を経由してログインされていることが分かった。
原告Xは、被告Yに対し、IPアドレスを、本件名誉侵害した記事を掲載された日時頃に使用した者に関する情報で、「1,氏名又は、名称、2,住所、3,電子メールアドレス」 (以下、「本件発信者情報」という)の開示を求めて訴えた。
Yは、開示を拒絶した。

1審東京地裁は、開示を命じた。Yが控訴した。Yは、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項の開示請求の対象となる発信者情報には、「本件発信者情報」は含まれない、法4条1項の開示請求の対象となる発信者情報は、侵害情報の流通があった場合における当該侵害情報の発信そのものについての発信者情報である、その余の発信者情報は含まれない、と主張した。

東京高裁民事12部は、

  1. 法4条1項の趣旨からは、開示請求の対象が当該権利侵害情報そのものの発信者情報に限定するとまでいえない。
  2. 総務省令によって、法4条1項に規定する「当該権利の侵害に係る発信者情報」が決まるわけではない。
  3. ツイッターは、利用者がアカウント及びパスワードを入力することによりログインしなければ利用できないサービスであることに照らすと、ログインするのは当該アカウント使用者である蓋然性が高いと認められる。

とし、「本件発信者情報は、当該侵害情報の発信者の特定に資する情報であり、法4条1項の開示請求の対象である『当該権利の侵害に係る発信者情報』に当たると認める」とし、開示を命じた。

この種の事件で、多くは、知財高裁が控訴審であるが、この事件では、「東京高裁」が担当している。知的財産高等裁判所設置法(平成16年6月18日法律第119号)は、平成17年4月1日から施行された。知財高裁は、東京高裁の「特別の支部」である。本件やパブリシテイ権など東京高裁で裁判されたものもある。