歩行女性無断撮影ウエブ掲載事件

2015年12月10日

公道を歩行中の最先端ファッション着用女性を無断撮影し、ウエブサイトに無断掲載した行為は、肖像権侵害である。

東京地裁平成17年9月27日判決平成17年(ワ)第18202号判時1917号101頁

原告女性Xは、著名なデザイナードルチェ・アンド・ガッパーナによる、胸部に「SEX」と大きい赤い文字のある上着を着て、銀座界隈を歩行していた。
被告Y1会社は、通信ネットワークを利用した衣料品の製造、販売、リサイクル輸出入に関する各種情報を提供する会社。
被告Y2会社は、日本のファッション向上のため調査研究等を目的とする財団法人。

Y1会社の従業員が、歩行中のXを無断撮影し、Y1とY2が共同で開設しているウエブページに、掲載した。しばらくして、2ちゃんねるの掲示板サイトへ、Xへの誹謗中傷が書き込まれ、被告らのサイトへリンクが張られた。Xは、Yらに抗議し、サイトは削除されたが、別の第三者により、写真が複製され、リンクが張られ、Xへの誹謗中傷が続いた。

Xは、Yらを訴え、

  1. 写真撮影とサイトへの掲載行為は、肖像権侵害である。
  2. Yらの行為には、表現の自由の行使としての違法性阻却事由がない。
  3. 訴外第三者による誹謗中傷行為によるXの損害との間に因果関係がある

と主張した。

東京地裁は、1.2.を認め、慰藉料30万円、弁護士費用5万円、合計35万円の支払いをYらに命じた。判決中、「原告が公道上を歩いているとしても、その周囲の人に一時的に認識され得るにすぎないが、本件写真が撮影されることにより原告の容貌等が記録され、これが本件サイトに掲載されることにより、上記の限られた範囲を超えて人々に知られることになる。」と述べている。

肖像権の問題であるが、天下の公道を歩いているから、撮影とそのネット配信が自由であるとはいえない。判決を支持する。

[参考文献]
大家重夫「肖像権 改訂新版」(太田出版・2011年)122頁、177頁。