フリーのカメラマンとパケージソフト製作会社の間で、契約の解釈の相違から紛争が起こった事件である。
原告は、フリーのカメラマン。
被告は、音楽、教養、文芸等のパッケージソフト、デジタルコンテンツの企画、製作及び販売を業とする株式会社ポニーキャニオンである。
原告は被告の委嘱により、平成21年11月1日付で、「Virtual Trip 山野草(仮題)」に使用する録音録画物の製作業務を行い、被告が一時金150万円及び印税を支払うことを内容とする契約を行った。
被告は平成24年6月12日、本件契約を解除する旨の意思表示をした。
[訴訟の提起]
原告は、被告が本件作品に本件風景映像動画を使用しているが、その複製、頒布を許諾していない。本件作品から、「風景の映像動画」を全て即刻削除せよ、不法行為による損害賠償請求権に基づき、225万円及び遅延損害金の支払を求めた。
[反訴]
被告は、反訴を起こし、原告が契約の条項に違反したことを理由に、原告との間の製作委嘱契約を解除したとして、上記契約に基づき、原告撮影の山野草の映像動画について、被告が著作権を有することの確認、これらを収録した映像素材(原版)の引渡並びに原告に対する既払金合計153万6465円及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めた。
[東京地裁]
民事47部高野輝久裁判長は、次のように判断し、判決した。
反訴について。
判決は、
として、被告の反訴を全面的に認めた。
[知財高裁]
原告・控訴人は、
1,被控訴人・被告が販売する後記「本件作品」中の「本件風景映像動画」部分が控訴人の著作権(複製権)を侵害するとして、不法行為に基づき、損害賠償金225万円及び附帯金の支払、
2,本件風景映像動画の著作権(複製権)に基づいて、本件作品から本件風景映像を削除することを求めた。
被告・被控訴人は、控訴人に対し、反訴として、
3,控訴人が販売する「本件映像動画1」及び「本件映像動画2」は、録音録画物製作委託契約である「本件契約」に基づき被控訴人が著作権を取得したとし、著作権に基づいて、本件映像動画1及び本件映像動画2の著作権確認と、
4,本件契約に基づいて、本件映像動画1及び本件映像動画2の映像素材の引渡と、
5,本件契約の解除に基づいて、既払金153万6465円の返還及び附帯金の支払を求めた。
控訴人は、本件作品を収録したDVD等の販売等の差止めと本件作品を収録したDVD等の廃棄を申立てた。被控訴人は、原判決主文1項の取消を求めた。
2部清水節裁判長は、次のように判断した。
本件は、本件契約10条が本来的に想定する事例と異なるとして、契約の合理的解釈として、被控訴人は、控訴人に対し、本件作品を返還する必要はなく、本件映像動画1及び本件映像動画2の著作権等の取得も継続されるが、既払金の返還を求めることはできない、というべきである。(控訴人に既払金153万6465円の返還及び既払金の遅延金の支払を命じた原判決主文4項は不当であるからこれを取り消す)。
「主文」