小動物用サプリメント事件

2015年10月9日

原告が著作権や独占的利用権を有する著作物を、被告らが無断でウエブサイトに掲載したとして、ウエブサイトへの表示等の差止と削除、損害賠償を求めたが、被告らに対し、契約期間中、自由に使用することを許諾していたとして、原告の請求が棄却された事例である。

東京地裁平成26年8月28日判決(平成25年(ワ)第2695号)

 原告X(プラセンタ製薬(株))は、小動物用のサプリメントを製造する会社である。
被告Y1は、Xとの間に、平成23年10月18日、「小動物用プラセンタサプリメントの販売協定書」を結び、Y1の代表取締役であるY2は、Xに対し、Y1が本件契約に基づき負担する一切の債務について連帯して保証する旨、約束した。

Xは、Y1へ、「動物病院でのプラセンタ療法」というパンフレット、「プラセンタとは…?」と題するポスターのデータ、「人生におけるプラセンタのはたらき」と題するポスターのデータなどを無償で交付した。
Y1は、平成23年12月初旬頃から、Y1のホームページやY1が管理するウエブサイトに、Xから提供された記載内容に依拠し、これとほぼ同内容の記載を掲載した。

Xは、平成25年、Yらに次のことを請求する訴訟を提起した。

  1. Y1Y2は、連帯して、300万円を支払え。
  2. 被告らは、別紙目録記載の「被告著述」の内容をインターネットのウエブサイトに表示し、又は、紙媒体として印刷、頒布してはならない。
  3. 被告らは、別紙目録記載の「被告著述」欄記載の内容をインターネットのウエブサイトから削除し、これを記載した紙媒体を廃棄せよ。

東京地裁民事47部高野輝久裁判長は、次のように判断して、原告Xの請求を棄却した。

  • 「原告と被告会社の間で」
  • 「被告会社が本件各物件を複製したりホームページに掲載したりするなどして自由に利用することを当然の前提にしている」
  • 「原告は、本件契約を締結するに当たり、被告会社に対し、本件契約期間中、本件各物件等を複製したりホームページに掲載したりなどして自由に利用することを許諾していたものと認められる。」
  • 「本件各物件が著作物であり、これについて原告が著作権又は独占的利用権を有しているとしても」
  • 「被告らが本件各物件と同内容のものを被告サイトに掲載して公衆送信し、これらを複製して被告チラシ1及び2,被告ポスター及び被告パンフレット1及び2等に利用することが原告の著作権等(公衆送信権、複製権又は独占利用権)を侵害すると認められない。」
  • 「原告の請求は、その余につき判断するまでもなく、全て理由がない。」
プラセンタは、胎盤の意で、美容や健康維持を目的に胎盤に含まれる成分の一部を皮下や筋肉に注射することをプラセンタ療法というようである。
原告と被告の間で、どういう「契約」をしたか、原告は、了解していなかった。