外務省デンバー元総領事肖像写真無断放送事件

2015年12月15日

被告日本テレビが、原告X作成のウエブサイト掲載のA元デンバー総領事の写真を、X及びAに無断で、放送し、100万円の損害賠償が認められ、複製及び公衆送信が禁止された事件である。

東京地裁平成16年6月11日判決(平成15年(ワ)11889号、判時1898号106頁)

原告Xは、アメリカ合衆国コロラド州デンバー市において、在米邦人向けの日本語新聞を発行する新聞社を経営し、ホームページを開設し、また写真家としても活動している。
被告Y(日本テレビ)は、放送法に基づき、一般放送事業、放送番組の企画、制作、販売等を行う株式会社で、キー局と言われる大放送局である。

Yは、平成13年7月当時、外務省の不祥事に関連する報道の一環として、その制作した報道番組において、原告X作成のウエブサイト上に掲載のXの友人である元デンバー総領事であったAの肖像写真を、XおよびAに無断で、ウエブサイトから採り、放送した。
Xは、Aの肖像写真は、著作物であるとし、Xの著作権侵害であるとし、損害賠償等を求めて訴えた。すなわち、Xは、Yに対し、写真の著作権(著作権法21条の複製権、同23条の公衆送信権)及び著作者人格権(同法19条の氏名表示権、同法20条の同一性性保持権)を侵害されたとして、

  1. 4521万円の損害賠償
  2. 上記写真の複製・公衆送信の差止め(同法112条1項)
  3. 上記写真及び上記写真が撮影された録画テープの廃棄(同法112条1項)
  4. 被害回復措置としての謝罪放送及び謝罪広告(同法115条)

を求めた。

東京地裁(三村量一裁判長、松岡千帆、大須賀寛之裁判官)は、次のように判断した。

  1. 被告が本件著作物(Aの同意を得て撮影されたAの肖像写真)が使用された各番組を原告Xの同意を得ずに公衆送信する行為は、公衆送信権の侵害である。
  2. 侵害による損害額は、キー局となる被告Yが1回公衆送信(放送)し、ネット局である各地方ネットワーク局が同時に公衆送信(放送)するに当たり、5万円を著作権法114条3項の損害額とする。5万円×12回=60万円
  3. 被告Yの公衆送信及び地方ネットワーク局の公衆送信におけるXの著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)侵害による損害額(慰謝料)は、10万円である。
  4. 弁護士費用は、30万円である。合計100万円の損害賠償を命じた。

Aの写真を複製し、又は公衆送信してはならない。原告のその余の請求を棄却する。

米国在住の原告であるからか4521万円の請求を行った。だが判決は、100万円であった。被告は著作権法41条時事の事件の報道である、との主張をしたか。