呪われしモザイク事件

2015年10月16日

原告製作のビデオ映像がニコニコ動画にモザイクをかけられ、改変され無断掲載されたため、原告が発信者情報に係る情報の開示を求めた事件である。

東京地裁平成26年3月14日判決(平成25年(ワ)第26251号)

原告は、株式会社シナノ企画で、映画の著作物を製作した(以下、本件映像)。この本件映像の著作権は、創価学会に譲渡したが、その著作者人格権は保有している。
被告は、ソフトバンクBB株式会社である。

「takuya」と称する氏名不詳者が、株式会社ニワンゴが開設・運営する動画投稿サイト「ニコニコ動画」のに「『チキ本さん』呪われしモザイク」と題する動画(以下、本件動画)を、被告の提供するインターネット接続サービスを経由して投稿した。
本件動画は、その後本件サイトから削除された。

原告は、この本件動画は、原告が製作した映画の著作物である本件映像の無断複製物であり、原告が著作者であるとの表示がなく、また、無断でモザイクをかけるという改変をし、その内容も登場人物や創価学会の信仰を揶揄嘲笑するような、原告の意に反する改変をしていたとして、被告に対し、原告の権利が侵害されたことが明らかで(「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」第4条第1項第1号)で、「当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき」(同法4条第1項第2号)に該当するとして、発信者情報を開示するよう被告を訴えた。
被告は、本件動画が本件映像の複製物であること、本件発信者が原告の同一性保持権を侵害したこと等を否認し、発信者情報の開示を受けるべき正当事由につき争った。

[東京地裁判決]
民事29部の大須賀滋裁判長は、

  1. 本件ビデオ映像の著作物性を認め、
  2. 本件ビデオ映像の著作者は原告であるとし、
  3. 本件動画の5箇所について、本件ビデオ映像の本質的特徴を感得できるとし、
  4. 本件動画が原告の氏名表示権を侵害しているとし、
  5. 本件動画の利用に正当化事由がないとして、法4条1項1号の「権利侵害の明白性」があり、法4条1項2号にいう「当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき」の要件を充足するとして、原告の請求は理由があるとし、

「被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の発信者情報を開示せよ。」と命じた。

宗教団体を攻撃するような動画の投稿者を知り、訴訟提起のため、発信者情婦を求めてソフトバンクBBを訴えた事件である。