マンション建設業者対電子掲示板事件

2015年12月15日

マンション建設業者が、電子掲示板の書込みにより名誉等の権利を侵害されたとして、ネット運営会社に不法行為に基づく損害賠償請求、書込の削除請求、発信者の情報開示請求をし、いずれも棄却された事例である。

名古屋地裁平成17年1月21日判決(平成16年(ワ)第3336号、判時1893号75頁)

 原告Xは、木材防腐処理業等を目的とする甲野木材防腐株式会社である。
被告Yは、インターネットの運営等を目的とする株式会社である。

Xは、東京都豊島区にマンションを建設することを計画しているが、附近住民により、反対運動がなされていた。このような状況下で、Yの運営する電子掲示板に、「(1)投稿日、2004/6/15/7:32、(2)投稿者kounomokuzai-shaco-otsuyama、(3)題名 なめとんか? (4)今更、ワンルームマンション、誤った新規事業、最低。」と書き込まれていた。

Xは、

  1. 不法行為に基づく損害賠償請求
  2. 条理上の削除請求権に基づく書き込みの削除
  3. プロバイダ責任制限法4条に基づく発信者情報の開示

を求めた。

[名古屋地裁]
民事8部の黒岩巳敏裁判長は、

  1. 原告の請求をいずれも棄却する。
  2. 訴訟費用は原告の負担とする。

と判決した。

 この電子掲示板の投稿者は、kounoで、原告の名を冒用しているが、内容から通常の一般人は、この書き込みの主体がXの代表者であると誤認することはない。本件書き込みがXの名誉、信用、プライバシー権及び人格権を侵害したと評価できない。したがって、本件書き込みがXの権利を侵害するのとは認められず、その余の点を判断するまでもなく、理由がないとした。

この事件は、珍しく、発信者情報を求めた原告が敗訴しているが、裁判所は、インターネットによる原告への攻撃は、軽微であると判断したのであろうか。