データSOS事件

2015年11月18日

ウエブサイトの文章が類似するが、著作権侵害に当たらない、とされた事件である。

知財高裁平成23年5月26日判決(平成23年(ネ)第10006号判時2136号116頁判タ1386号322頁)
東京地裁平成22年12月10日判決(平成20年(ワ)第27432号)

[東京地裁判決]
 原告は、コンピュータの保守、管理、コンピュータにおいて、バックアップされていないデータがコンピュータ上で出力できなくなった場合、そのデータをコンピュータ等から取り出して復元するサービスの請負などを行う会社である。
原告は、2006年10月から12月にかけて、データ復旧サービスを一般に周知させ、顧客を誘引するためウエブページを創作し、これを自社のウエブサイトに「データSOS」の題名で掲載し、その後も文章を推敲、改良し、2007年4月28日、データ復旧サービスに関するウエブページを完成させた。
 被告は、コンピュータ機器開発販売会社である。被告も被告のウエブサイトにデータ復旧サービスに関する文章を掲載した。
 原告は、被告の文章は、原告の文章の著作権侵害であるとして、訴えた。

すなわち、原告は、

  1. 主位的に、被告の行為は、原告のウエブページにコンテンツ又は広告用の文章の複製又は翻案であるとして、原告の著作権侵害(複製権、翻案権、公衆送信権、二次的著作物に係る利用)及び著作者人格権(氏名表示権、著作権法113条6項のみなし侵害)を侵害する行為であるとして、損害賠償1650万3562円及び遅延損害金、著作権法115条に基づく謝罪広告を求め、
  2. 予備的に、被告行為は、一般不法行為に当たる

として、1,と同額の損害賠償金及び遅延損害金、民法723条に基づく謝罪広告を求めた。

東京地裁民事40部岡本岳裁判長は、次のように述べて、原告の請求を棄却した。

  1. 原告は、被告が(原告の)どの部分の著作権を侵害したか主張していない。
  2. 原告の広告用の文章作成者の個性が現れていなく、原告の文章の創作性がない部分において、被告の文書と同一であるにすぎない。
  3. 被告文章が著作権侵害でなく、翻案権侵害でない以上、著作者人格権の侵害もない。
  4. 一般不法行為について、被告文章が原告文章に依拠して作成されたとしても、被告の行為は、公正な競争として社会的に許容される限度を逸脱した不正な競争行為として不法行為を構成すると認められない、とした。

[知財高裁判決]
知財高裁第4部は、次のように判断し、控訴を棄却した。

  1. 被控訴人がウエブサイトに掲載したデータ復旧サービスに関する文章が、控訴人がウエブサイトに掲載したコンテンツ又は広告用文章に係る控訴人の著作権(複製権、翻案権、二次的著作物に係る公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)の侵害にも、著作権法113条6項のみなし侵害)にも当たらない。
  2. 被控訴人が控訴人の広告と同一ないし類似の広告をしたからといって、被控訴人の広告について著作権侵害が成立せず、他に控訴人の具体的な権利ないし利益の侵害が認められない以上、不法行為が成立する余地はない。
平成25年のナビキャスト事件(東京地裁平成25年9月12日判決)は、入力フォームのアシスト機能に係るサービスの説明資料が類似しているという事件で、原告資料が著作物であるとされ、原告が勝訴している。この事件で、原告は、「個性が現れている文章」、「創作性がある文章」にすべきであった。ウエブサイト上の図表について、著作物の主張をしたが、図形の著作物、編集著作物、データベースの著作物でもないとされた東京地裁平成22年12月21日判決(2010-11)がある。