サイト構築作業の請負契約により、原告は代金の支払いを求めたところ、被告は、不正競争行為による損害賠償請求権を自働債権とする相殺の抗弁をしたが、相殺の抗弁が認められず、原告の請求がそのまま認められた事例である。
原告X((株)グリームデザイン)は、ホームページ及びインターネットシステムの企画、研究、開発、制作、デザイン及び保守管理業務等を目的とする株式会社である。
被告Y((株)デジタルマックス)は、販売促進に関する宣伝用ツールの索石及び販売等を目的とする株式会社である。
原告Xの代表者Aは、平成21年10月1日まで、Yの代表取締役、平成23年5月31日までYの取締役、平成23年6月1日、Yとコンサルテイング業務委託契約を締結、1年間、Yの顧問をし、Aは、平成23年12月28日、Xを設立した。
Yは、平成24年2月1日、日本事務器(株)との間で、コンピュータシステムに関する業務の委託に関し、「ソフトウエア基本契約書」を作成した。
Yは、平成24年9月30日、日本事務器に対し、[(株)大坂村上楽器が日本事務器に依頼した、TSUTAYAのウエブサイト上で楽譜の販売等をすることのできるサイトを構築する業務]に関し、代金合計577万5000円のソフトウエアを納品した。
原告は、被告が日本事務器から受注したこの業務を、代金約560万円(見積書の記載は557万5500円)で請け負う契約をし、平成24年9月末、業務を完成し、Yに引渡したとし、約560万円から保守費用及びYが行った作業部分の費用を差し引いた代金額321万5034円の支払を求めた。
被告Yは、原告Xとの間に請負契約を締結していないと主張し、仮にYの支払義務があるとしても、Xは、Yの元取締役であったAが持ち出した営業秘密(不正競争防止法2条6項)を不正に使用する不正競争行為をしている(同法2条1項7号)ので、不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求権で相殺する、という抗弁を主張した。
大阪地裁第21民事部谷有恒裁判長は、原告の請求のとおり、「321万5034円及びこれに対する平成24年12月1日から支払済みまで年6分の割合による金員」の支払を被告に命じた。被告の「営業秘密」についての抗弁については、被告は、システムの「発想」を使用した主張をするのみで、抽象化した「発想」がどのように秘密として管理されていたか等具体的に主張せず、営業秘密といえないとし、相殺の抗弁を認めなかった。