ウイッチーズキッチン事件

2015年10月22日

インターネットショッピングモール「楽天市場」に出店して、商品を販売している原告が、被告Yが運営するウエブサイト上で、Yが宣伝、販売するY商品は、訴外Aにより中国で、X商品に依拠して、X商品の形態を模倣して製造され、YがA社に注文したもので、これが不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為にあたるとして、XのYへの差止請求と損害賠償が認められた事例である。

知財高裁平成25年12月26日判決(平成25年(ネ)第10062号、同10083号)
東京地裁平成25年6月27日判決(平成24年(ワ)第4229号)

原告Xは、ウイッチーズキッチンという商号でステンドグラスのランプシェード、パイン材の家具、ドールハウスなどを製造、販売を営む者である。
被告Y(有限会社ジャパンリンク貿易)は、日用品雑貨、インテイリア用品、家具の輸入、販売等を営む会社である。

Xは、インターネットショッピングモール「楽天市場」に「ウイッチーズキッチン」において、ステンドグラスのランプシェードなどの商品を販売している。
訴外のメーカーAは、インターネットで、Xの各製品を見て、これらに依拠し、サンプルのデザインをし、被告Yにサンプル画像を添付したメールを送信して受注活動をした。
Yは、Aに各商品を発注し、A製造の各商品を購入し、輸入し、業者向けに販売した。
Xは、Yに対して、Xの販売するステンドグラスのランプシェードの形態を模倣した商品を販売していると主張し、不正競争防止法2条1項3号に当たるとして、同法3条に基づいて、被告Yが販売する商品の一部の製造、販売又は販売の差止め並びに同商品とその金型及び治具の廃棄を求めると共に、同法4条に基づき、損害賠償金1320万円及びこれに対する訴状送達の翌日から支払済みまで年5分の遅延損害金の支払いを求めた。
Yは、Aから商品を購入し、輸入し、日本国内で販売したが、XやX各商品を知らず、Y商品がX商品の形態模倣であることも知らなかったと主張し、不正競争防止法19条1項5号(他人の商品の形態を模倣した商品を譲り受けた者(その譲り受けた時にその商品が他人の商品の形態を模倣した商品であることを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない者に限る)がその商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為)に該当し、不正競争防止法3条(差止請求権)、4条(損害賠償)は適用されない、と主張した。

東京地裁民事第47部の高野輝久裁判長は、次のように判断した。
 被告Yは、訴外Aから被告各商品を購入し、日本に輸入するに当たって、原告X商品の形態を模倣したものかどうか調査すべき注意義務が有り、調査を行わなかったというのであるから、被告Y商品が、原告X商品の形態を模倣したものであることを知らなかったとしても、知らなかったことについて、重大な過失があるとした。

「判決主文」

  1. 被告は、別紙目録記載1及び4ないし6の商品の製造、販売、又は販売の申出(被告ホームページにおける販売の申出及び販売のための展示を含む)の禁止。
  2. 被告は、その占有に係る別紙被告商品目録記載1及び4ないし6の商品の廃棄をせよ。
  3. 被告は、原告に対し、374万5337円及びこれに対する平成24年2月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  4. 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
    (5,6,省略)

 Yは、損害賠償請求に関する部分の敗訴部分のみを不服として控訴した。
 Xは、損害賠償請求に関する部分の敗訴部分について、付帯控訴した。

[知財高裁]冨田善範裁判長は、次のように判決した。

「判決主文」

  1. 本件控訴及び本件付帯控訴をいずれも棄却する。
  2. 控訴費用は、控訴人兼附帯控訴人の負担とし、附帯控訴費用は被控訴人兼附帯控訴人の負担とする。
  3. 原判決主文第3項は、当審において、被控訴人兼付帯控訴人が附帯請求について請求の一部減縮をしたことにより、「控訴人兼附帯被控訴人は、被控訴人兼附帯控訴人に対し、374万5337円及び内金322万6779円に対する平成24年2月23日から、内金5万1496円に対する同年3月31日から、内金12万7062円に対する同年12月29日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え」と変更された。
2012-4(チュパ。チュプス対楽天市場事件)参照。

[参考文献]小泉直樹・ジュリスト2014年4月号6頁。