大道芸研究会の元会員のXは、ウエブサイトの画面およびソースコードを作成し、管理し、大道芸研究会の情報を発信したが、ウエブサイト画面とそのソースコードは、Xの著作物であるとし、会員の被告Yが作成し、自己の管理するウエブサイトに掲載した行為は、Xの著作物の同一性保持権侵害あるいは一般不法行為に当たると主張したが、Xの請求が棄却された事例である。
原告Xは、昭和60年に大道芸研究会の会員になり、平成22年3月末、退会した。
被告Yは、大道芸研究会会員である。
Xは、会員であった平成12年頃、「大道芸研究会」という本件ウエブサイトを開設し、「画面」及びその「ソースコード」(HTML)を作成し、Xは、X個人の著作した著作物としていた。
被告Yは、平成22年2月1日、本件ウエブサイトのソ-スコードを取り込み、新たな情報を追加するなどして、「大道芸研究会」と題する被告ウエブサイトを開設し、管理した。
原告Xは、被告Yが、別紙被告画面目録1ないし7記載の各画面(被告画面)を作成し、自己の管理するウエブサイトに掲載した行為は、
- Xの有する同一性保持権侵害行為である、
- 仮にそうでないとしても、被告Yの一連の行為は、原告の法的保護に値する利益を侵害する一般不法行為である
とし、Yに対し、損害賠償160万円を求めて訴えた。
東京地裁民事第46部大鷹一郎裁判長は、次のように判断し、原告Xの請求をいずれも棄却した。
- 原告Xは、各画面は、画面構成(デザイン・レイアウト)において、Xの思想感情を創作的に表現した著作物と主張したが、画面構成のうち、創作性があると挙げている点は、いずれもありふれた表現である、Xの各画面には原告主張の表現上の創作性が認められない、とし、各画面が全体として著作物に該当するとの原告の主張は理由がないとした。
- Xのソースコードの著作物性について、「本件ソースコードは、原告がフロントページエクスプレスを使用して本件画面っを作成するに伴ってそのソフトウエアの機能により自動的に生成されたHTMLソースコードであって、原告自らが本件ソースコードそれ自体を記述したものではないことからすると、本件ソースコードの具体的記述に原告の思想又は感情が創作的に表現され、その個性が現れているものとは認められない。」とした。
- 一般不法行為に当たるか、について、北朝鮮映画事件(最高裁平成23年12月8日判決)を引用し、著作権法の著作物に該当しないものの利用行為は、同法が規律の対象とする著作物の独占的な利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り不法行為を構成しない、とし、Xの請求を否定した。