日本のテレビ番組をインターネットにより、海外の日本人は視聴できるか。
海外の日本人がインターネット回線を通じて、日本のテレビ番組を鑑賞できるよう日本に居住するAが事業を始めた。
Aは、コンピュータ、その付属機器の製造販売、電気通信事業法に基づく一般第2種電気通信事業等を目的とする会社である。
Aは、「まねきTV」という名の、インターネット回線を通じてテレビ番組が視聴できるサービスを入会金3万1500円、毎月5040円で、提供しようとした。サービスとは、利用者が購入したソニー製の「ロケーション・フリー」という機器をAの事務所に置いて、インターネット回線に常時接続する専用モニター又はパソコンで、海外の利用者が、インターネット回線を通じてテレビ番組を視聴できるようにするものである。
ロケーションフリーという機器は、地上波アナログ放送のテレビチューナーを内蔵し、受信する放送をデジタル化し、このデータを自動的に送信する機能を有する機器(ベースステーション)を中核的なものとした機器である。
原告B(NHK,TBSなど)は、放送局である。Bは、Aの事業は、放送局(放送事業者)に無断で、そのテレビ番組を放送する権利すなわち公衆送信権又は送信可能化権を侵害するとして、訴えた。
[東京地裁]
1審東京地裁は、Bの請求を棄却し、Aは勝訴した。
理由は、
とし、原告の請求を棄却した。
[知財高裁]
2審知財高裁は、
[最高裁]
最高裁は、次のように述べて事件を知財高裁へ差し戻した。
2審では、
[知財高裁]
知財高裁は、本件放送の送信可能化及び本件番組の公衆送信行為の各差止を求める原告(NHK、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京)らの請求には理由があり、被告に対し、著作権及び著作隣接権侵害による損害賠償の支払いを求める原告らの請求も一部理由があるとし、次の判決を下した。
主文
知財高裁は、ベースステーションに本件放送の入力をしている者は、被告であり、ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被告であり、本件放送の送信可能化の主体は、被告である。被告の本件サービスによる本件放送の送信可能化は、原告らの送信可能化(著作隣接権)侵害、本件番組の公衆送信は、原告らの公衆送信権(著作権)侵害であるとした。
[参考文献]
島並良「自動公衆送信の主体」(「平成23年年度重要判例解説」281頁。
『ジュリスト』1423号(2011年6月1日号)(特集まねきTV/ロクラクⅡ最判のインパクト)小泉直樹「まねきTV・ロクラクⅡ最判の論理構造とインパクト」『ジュリスト』1423号6 頁、田中豊「利用(侵害)主体判定の論理ー要件事実論による評価」『ジュリスト』1423号12頁、上原伸一「放送事業者の著作隣接権と最高裁判決のインパクト」『ジュリスト』1423号19頁、奥邨弘司「米国における関連事例の紹介ー番組リモート録画サービスとロッカーサービス の場合」『ジュリスト』423号25頁、「まねきTV最高裁判決の解説及び全文」『ジュリスト』1423号32頁。最高裁判決について、岡邦俊「ロケーションフリー」テレビへの入力者は送信可能化権の侵害主体である。」『JCAジャーナル』2011年4月号62頁。山田真紀最高裁調査官・Law & Technology 51号95頁