大家重夫の世情考察

風俗記事無断マンガ化事件

フリー・ライター執筆のブログ記事を無断でマンガ化にし、これを雑誌に掲載した雑誌発行者と編集プロダクションを訴えたが、ライターがブログで、雑誌社と編集プロダクシヨンを名誉毀損したことで、反訴され、55万円の損害賠償金を得たが、40万円の損害賠償金の支払を命ぜられた事例である。

知財高裁平成27年5月21日判決(平成26年(ネ)第10003号)
東京地裁平成25年11月28日判決(平成24年(ワ)第3677号、第7461号)

原告Xは、風俗記事を書くフリーのライターで、自分のブログ(以下、本件ブログ)を運営している。
被告Y1(株式会社ジーオーテイー)は、「実話大報」という雑誌を出版、販売している出版社である。
被告Y2(有限会社ジップス・ファクトリー)は、Y1から依頼され実話大報の編集等を請け負っている編集プロダクションである。

Xは、自分の本件ブログに「混浴乱交サークル」と題する記事を平成22年7月30日に、「生脱ぎパンテイオークション乱交」と題する記事を平成22年1月10日を掲載した。
Y2は、訴外Aに、これらXの記事に依拠して作画させ、漫画にし、「実話大報」平成23年1月号、同6月号に掲載した。
Xは、平成22年1月6日頃からほぼ1年の間に、本件ブログに、別紙目録記載の記事1ないし6を書き込み、Y1Y2らが著作権侵害をしたとし、Y1が著作権侵害をしたことについて「盗作行為をどう思う」などの投票を行い、投票プログラムを利用して別紙投票プログラム記載のとおりの投票を実施した。
平成24年、Xは、Yらにより、著作権侵害、著作者人格権侵害を受けたとして、Yらに連帯して131万円(著作権侵害16万円、著作者人格権侵害100万円、弁護士費用15万円)の支払いと、雑誌「実話大報」への謝罪広告1回掲載を求めて訴えを起こした。
これに対して、Y1Y2は、(1)Xは、Y1Y2らに、それぞれ、100万円支払え、(2)Xは、別紙目録記載の記事1ないし6の記事及び別紙ブログ記載のブログにおける別紙投票プログラム記載の投票プログラム及びその投票結果を抹消せよ、との反訴を提起した。投票の募集や投票プログラムの記載、投票の実施等が、Y1及びY2の名誉、信用の社会的評価の低下を招いたというのである。

[東京地裁]民事47部の高野輝久裁判長は、次のように判断した。

  1. Y1Y2は、「実話大報」の2回の掲載によりXの記事の著作権(翻案権)侵害をしたとした。
  2. また、Y1Y2が、Xの氏名表示権、同一性保持権を侵害したとした。
  3. 被告らは、原告Xの著作権侵害及び著作者人格権侵害につき、過失があるとした。
    Aから漫画の提供を受けるに当たり、「三行広告」で検索し、調査すべきであったとする。
  4. Xが著作権行使で受けるべき金額は1万円とし、慰藉料として、5万円、弁護士費用6000円、合計6万6000円が相当であるとした。
  5. Xの社会的声望名誉は、毀損されていないとして、謝罪広告は認めなかった。

Y1Y2の起こした反訴について、次の判断をした。

  1. Y1は、Xの本件ブログの記事1,3,4により、名誉、信用等の社会的評価を低下させられた。 
    Y1は、Xの本件ブログの記事5,6により、名誉、信用等の社会的評価を低下させられた。 
    Y1は、Xの本件ブログの投票プログラムにより、名誉、信用等の社会的評価を低下させられた。
    Y2については、記事、投票プログラムによる名誉、信用等の社会的評価の低下を認めなかった。
  2. Xが、Y1の名誉、信用等を毀損したことについて、故意があるとした。
  3. Y1は、40万円の損害を被ったとした。
  4. Y1は、その名誉権に基づき、現に行われている侵害行為を排除するために、本件記事1,3ないし6及び投票プログラム等の記載の削除を求めることができる、とした。

[判決主文]

  1. 被告・反訴原告Y1、Y2は、原告・反訴被告Xに対し、連帯して6万6000円(財産権侵害1万円、慰謝料5万円、弁護士費用6000円)を支払え。
  2. 原告・反訴被告Xは、被告・反訴原告Y1に対し、40万円及びこれに対する平成24年3月28日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  3. 原告・反訴被告Xは、別紙ブログ目録記載のブログにおける別紙記事目録記載1,3ないし6の記事及び別紙ブログ目録記載のブログにおける別紙投票プログラム記載の投票プログラム及びその投票結果を抹消せよ。
  4. 被告・反訴原告Y2の請求並びに原告・反訴被告X及び被告・反訴原告Y1のその余の請求をいずれも棄却する。
  5. (訴訟費用の負担)省略。
  6. この判決は、第1、第2項に限り、仮に執行することができる。

 この判決に対し、Xは、控訴した。
「知財高裁」第4部富田善範裁判長は、Y1Y2は、Xに対し、連帯して55万円(財産権侵害10万円)、慰謝料40万円、弁護士費用5万円)を支払えと、Xの著作権侵害の損害額を1審にくらべ、多額に評価した。

[判決主文]

  1. 原判決を次のとおり変更する。
  2. 1審被告らは、1審原告に対し、連帯して55万円を支払え。
  3. 1審原告は、1審被告ジーオーテイに対し、40万円及びこれに対する平成24年3 月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  4. 1審原告は、1審被告ジーオーテイーに対し、原判決別紙ブログ目録記載のブログに おける原判決別紙記事目録記載1,3ないし6の各記事を抹消せよ。
  5. 1審原告は、1審被告ジーオーテイーに対し、原判決別紙ブログ目録記載のブログに おける原判決別紙投票プログラム記載1のタイトル、同記載2の選択肢及び同記載3の投票結果を抹消せよ。
  6. 1審原告のその余の本訴請求、1審被告ジーオーテイーのその余の反訴請求及び1審 被告ジップス・ファクトリイーの反訴をいずれも棄却する。
  7. (訴訟費用の負担)省略
  8. この判決は、第2項及び第3項に限り、仮に執行することができる。
原告が自分のブログに掲載した風俗記事が、無断で漫画化され、著作権侵害等が認められ、55万円(1審は6万6000円)を得たが、ブログで、著作権侵害者である出版社を誹謗、名誉権や信用を低下させたとして、40万円の支払いを命ぜられた。原稿料の相場が低いこと、慰藉料については、裁判官の裁量によるところが大きい。

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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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