大家重夫の世情考察

都立大学事件

大学内に2つのグループがあり、一方の学生が他方の学生等が傷害事件を起こしたという印象を与える文書を大学管理下のコンピュータ、ホームページに掲載し、掲載した学生に名誉毀損による損害賠償が命じられたが、大学は、文書の削除義務を負わないとされた事例である。

東京地裁平成11年9月24日判決(平成10年(ワ)第23171号、判時1707号139頁、判タ1054号228頁)

原告X1、X2、X3と被告Y1は、ともに被告Y2が設置する大学の学生で、X1、X2、X3とY1は、学生の自治組織をめぐり、対立するグループに属していた。
Y1は、Y2が学内に設置し、管理しているサーバーに、Y1が委員長をつとめるホームページを開設しており、ここにY1は、平成10年の新入生入学手続きの際に起こった両派の衝突事件で、複数の学生が傷害を負ったこと、その事件顛末を記載した文書を公開した。文書は、Xらが傷害事件を起こし、刑事事件になったという印象を与えるものであった。

X1、X2、X3は、Y1に対し、名誉毀損であるとし、Y1に対し、ホームページからの本件文書の削除、ホームページへの謝罪広告掲載と損害賠償(各33万円)を求め、Y2に対しては、名誉毀損文書の掲載を知った場合、速やかに削除すべき義務が条理上認められ、Y2は、掲載を知った後も放置した削除義務の不履行(故意又は過失による不法行為)をしたとし、ホームページからの本件文書の削除・謝罪広告掲載と損害賠償(各33万円)を求め訴訟を提起した。なお、この訴えが報道されるとY2は、本件ホームページの問題部分を閉鎖した。

[東京地裁]
民事第25部の野山宏裁判長は、Xらに各3000円の支払いを命じ、Y1に対するそのほかの請求とY2に対する請求を全部、棄却した。

当時、学生紛争があったこと及びインターネットのホームページが惹起した事件と言うことで注目された。

[参考文献]
森亮二「サイバー法判例解説」(岡村久道編・商事法務・2003年)4頁。


ページトップへ

中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

シリア難民とインドシナ難民 - インドシナ難民受入事業の思い出のイメージ

シリア難民とインドシナ難民 - インドシナ難民受入事業の思い出 【2,800円+税】

ウルトラマンと著作権 - 海外利用権・円谷プロ・ソムポート・ユーエム社のイメージ

ウルトラマンと著作権 - 海外利用権・円谷プロ・ソムポート・ユーエム社 【4,500円+税】

インターネット判例要約集 - 附・日本著作権法の概要と最近の判例のイメージ

インターネット判例要約集 - 附・日本著作権法の概要と最近の判例 【2,800円+税】