大学内に2つのグループがあり、一方の学生が他方の学生等が傷害事件を起こしたという印象を与える文書を大学管理下のコンピュータ、ホームページに掲載し、掲載した学生に名誉毀損による損害賠償が命じられたが、大学は、文書の削除義務を負わないとされた事例である。
原告X1、X2、X3と被告Y1は、ともに被告Y2が設置する大学の学生で、X1、X2、X3とY1は、学生の自治組織をめぐり、対立するグループに属していた。
Y1は、Y2が学内に設置し、管理しているサーバーに、Y1が委員長をつとめるホームページを開設しており、ここにY1は、平成10年の新入生入学手続きの際に起こった両派の衝突事件で、複数の学生が傷害を負ったこと、その事件顛末を記載した文書を公開した。文書は、Xらが傷害事件を起こし、刑事事件になったという印象を与えるものであった。
X1、X2、X3は、Y1に対し、名誉毀損であるとし、Y1に対し、ホームページからの本件文書の削除、ホームページへの謝罪広告掲載と損害賠償(各33万円)を求め、Y2に対しては、名誉毀損文書の掲載を知った場合、速やかに削除すべき義務が条理上認められ、Y2は、掲載を知った後も放置した削除義務の不履行(故意又は過失による不法行為)をしたとし、ホームページからの本件文書の削除・謝罪広告掲載と損害賠償(各33万円)を求め訴訟を提起した。なお、この訴えが報道されるとY2は、本件ホームページの問題部分を閉鎖した。
[東京地裁]
民事第25部の野山宏裁判長は、Xらに各3000円の支払いを命じ、Y1に対するそのほかの請求とY2に対する請求を全部、棄却した。
[参考文献]
森亮二「サイバー法判例解説」(岡村久道編・商事法務・2003年)4頁。