大家重夫の世情考察

現代思想フォーラム事件

パソコン通信の電子会議室における発言が名誉毀損とされ、50万円の支払いを命じられたが、会議室主宰者とシステムオペレーターは、発言削除義務違反等の責任がなく、損害賠償を負わなかった事例である。

東京高裁平成13年9月5日判決(平成9年(ネ)第2631号・2633号・第2668号、5633号、判タ1088号94頁判時1786号80頁)
東京地裁平成9年5月26日判決(判時1610号22頁)

 パソコン通信ニフテイサーブの主宰者Y1(被告・控訴人)は、ニフテイサーブ上に、「現代思想フォーラム」を開設し、Y2(被告・控訴人)をシステムオペレーターにし、その管理運営に当たらせていた。X(原告・被控訴人)及びY3(被告・控訴人)は、ニフテイサーブの会員である。平成5年11月から平成6年3月にかけて、Y3は、Xが名誉毀損等に当たると主張する発言を書き込んだ。
シスオペのY2は、問題点を指摘したが、削除はしなかった。その後、平成6年2月15日、Y2は、Xの訴訟代理人から発言番号を特定し、削除要請を受けたため削除した。

同年4月、Xは、

  1. Y3に対し、名誉毀損等の不法行為に基づき、
  2. Y2に対し、名誉毀損等の発言を直ちに削除する作為義務の懈怠による名誉毀損を放置した不法行為に対し、
  3. Y1に対しては、Y2の使用者責任等の債務不履行責任に基づき、

各自1,000万円及びこれに対する遅延損害金の支払い及び謝罪広告を求め訴訟になった。

[東京地裁]
Y3の発言は、名誉毀損に当たる、Y2は、本件各発言を知ったときから条理上の削除義務を負うとし、本件各発言の一部につき削除義務を怠った過失があるとし、Y1は使用者責任を負うとし、Yらについて各自10万円、Y3についてはさらに、40万円の支払いを命じ、謝罪広告掲載要求は棄却した。

[東京高裁]
 控訴審は、Y3の発言の一部が、名誉毀損・侮辱に当たると認め、Y3へは、50万円の支払いを命じた。Y2及びY1については、発言削除義務違反等の責任が認められないとし、原判決を取消して、Y2、Y1に対するXの請求を棄却した。

地裁と高裁の意見が異なる点が興味を引く。

[参考文献]
橋本佳幸・判例時報1809号178頁(判例評論530号16頁)。
大谷和子・ニフテイーサーブ「現代思想フォーラム」事件・(岡村久道編「サイバー判例解説」98頁)。西土彰一郎・別冊ジュリスト179号「メイデイア判例百選」224頁(2005年)。牧野二郎「ネット関連訴訟の現状について」自由と正義2002年6月号68頁。
参考:http://www.law.co.jp/cases/gendai2.htm


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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

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2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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