大家重夫の世情考察

歩行女性無断撮影ウエブ掲載事件

公道を歩行中の最先端ファッション着用女性を無断撮影し、ウエブサイトに無断掲載した行為は、肖像権侵害である。

東京地裁平成17年9月27日判決平成17年(ワ)第18202号判時1917号101頁

原告女性Xは、著名なデザイナードルチェ・アンド・ガッパーナによる、胸部に「SEX」と大きい赤い文字のある上着を着て、銀座界隈を歩行していた。
被告Y1会社は、通信ネットワークを利用した衣料品の製造、販売、リサイクル輸出入に関する各種情報を提供する会社。
被告Y2会社は、日本のファッション向上のため調査研究等を目的とする財団法人。

Y1会社の従業員が、歩行中のXを無断撮影し、Y1とY2が共同で開設しているウエブページに、掲載した。しばらくして、2ちゃんねるの掲示板サイトへ、Xへの誹謗中傷が書き込まれ、被告らのサイトへリンクが張られた。Xは、Yらに抗議し、サイトは削除されたが、別の第三者により、写真が複製され、リンクが張られ、Xへの誹謗中傷が続いた。

Xは、Yらを訴え、

  1. 写真撮影とサイトへの掲載行為は、肖像権侵害である。
  2. Yらの行為には、表現の自由の行使としての違法性阻却事由がない。
  3. 訴外第三者による誹謗中傷行為によるXの損害との間に因果関係がある

と主張した。

東京地裁は、1.2.を認め、慰藉料30万円、弁護士費用5万円、合計35万円の支払いをYらに命じた。判決中、「原告が公道上を歩いているとしても、その周囲の人に一時的に認識され得るにすぎないが、本件写真が撮影されることにより原告の容貌等が記録され、これが本件サイトに掲載されることにより、上記の限られた範囲を超えて人々に知られることになる。」と述べている。

肖像権の問題であるが、天下の公道を歩いているから、撮影とそのネット配信が自由であるとはいえない。判決を支持する。

[参考文献]
大家重夫「肖像権 改訂新版」(太田出版・2011年)122頁、177頁。


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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

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2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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