大家重夫の世情考察

学習塾登録商標事件

被告学習塾が、「塾なのに家庭教師」という標章をチラシやウエブサイトで使用したことが、原告学習塾の登録商標の侵害ないし商標的使用であるとして訴えられ、その請求が棄却された事例である。

東京地裁平成22年11月25日判決(平成20年(ワ)第34852号)

原告(株式会社名学館)は、学習塾の経営並びにこれに関するノウハウの販売、経営指導及び業務受託等を行う会社で、直営校15,フランチャイズ契約校142である。
被告(株式会社東京個別指導学院)は、学習塾及び文化教室の経営並びにこれに関するノウハウの販売、経営指導及び業務受託等を行う会社で、直営学習塾192を経営している。

原告は、平成14年4月9日、指定役務第41類「学習塾における教授」に商標登録を出願し、平成15年6月20日設定登録された。本件登録商標は、「塾なのに家庭教師」の文字列と2つの感嘆符とを黄色に着色し、これに青色の縁取りが施された標章である。
原告は、被告が「塾なのに家庭教師」という標章をチラシやウエブサイトで使用したことが、原告学習塾の登録商標の侵害ないし商標的使用であるとして、被告が生徒募集、従業員募集等の折り込み広告に被告標章目録1ないし4,ウエブサイト上の広告に被告標章目録5の標章を付して提供することの禁止、1億7100万円の損害賠償を求め、また予備的請求も加えて提訴した。

 原告は、被告各標章は原告の登録商標と同一又は類似の商標と主張し、被告がチラシやウエブサイトで、「塾なのに家庭教師」を使用することは、商標的使用と主張した。
被告は、「塾なのに家庭教師」は、広く用いられて自他識別力がない、黄色の文字列、青色の縁取りの組合せ、文字列の工部の2つの感嘆符もないから、本件登録商標と類似していない、「塾なのに家庭教師」というフレーズを、チラシや被告ウエブサイトで使用する際、被告の出所を表示する「東京個別指導学院」「関西個別指導学院」又は「TKG」を付した。被告による被告チラシ及び被告ウエブサイトにおける被告標章の使用は、商標的使用でないと主張した。

[東京地裁]
民事46部の大鷹一郎裁判長は、「被告による被告チラシ及び被告ウエブサイトにおける被告各標章の使用は、本来の商標としての使用(商標的使用)に当たらないから、その余の点について判断するまでもなく、本件商標権の侵害行為又は侵害行為とみなす行為のいずれにも該当しない」として、原告の請求を棄却した。

「塾なのに家庭教師」をチラシ、ウエブサイトに使うことは、商標的使用に当たらないとした。アリカ商標事件(2011-6)参照。

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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

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2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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