動画無断使用事件

2015年10月23日

誰が投稿したか、インターネット会社に発信者情報の開示を請求した事件である。

東京地裁平成25年10月22日判決(平成25年(ワ)第15365号)

 原告は、宗教法人創価学会である。被告は、電気通信事業を営むGMOインターネット株式会社である。

 平成24年11月29日、被告GMOインターネット株式会社の提供するインターネット接続サービスを利用し、被告のサーバーを経由して、氏名不詳の者が、本件動画を投稿し、不特定多数の者が閲覧できる状態になった。
 これは、原告動画の無断複製である、とし、原告は、被告に対し、氏名不詳の者などの発信者情報の開示を請求した。なお、この本件動画は、原告が訴訟を提起した平成25年6月12日までに削除されている。
 「インターネット上の文章を誰が書いたか、氏名、アドレスを教えよ」と述べても、「特定電気通信役務者」は、(通信の秘密)を保護する見地から、拒絶できる。
 ただ、「1,権利侵害の流通によって、当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき、2,当該発信情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき」の2要件を備えていれば、この事件の被告のような特定電気通信役務者は、開示しなければならない(プロバイダ責任制限法4条1項)。

[東京地裁判決]
 民事46部長谷川浩二裁判長は、

  1. 少なくとも、原告動画の部分1及び部分4を、被告の本件動画は、無断複製し、原告の著作権が侵害されたことは、明らかであるとし、著作権侵害を認定、
  2. 原告が、著作権侵害者」である氏名不詳の者に対し、損害賠償を請求するには、発信者情報(本件動画の発信者、その他本件動画の送信に係る者の氏名又は名称、住所、電子メールアドレス)を取得する必要が有り、原告には、これら発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある、とし、「被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の情報を開示せよ。」と判決した。
東京地裁平成15年(2003年)3月31日判決(判時1817号83頁)(錦糸眼科事件)参照。亀井弘泰・JUCC通信179号5頁。