大家重夫の世情考察

会社従業員ネガ窃盗事件

Y1会社の従業員Y2が同僚の女性Xの事務机の引き出しから、ネガ・フイルムを盗みだし、焼き付けて、無断でY1会社のホームページ(以下、HP)に掲載した行為について、会社の事業の執行につきなされたものとは認められず、Y1会社の使用者責任は認められなかった事例である。

東京地裁平成12年1月31日判決(判タ1046号187頁、控訴和解)

 Y1会社は、電子機器等の輸出入業務を行う会社で、Y2は、情報技術部のシニアマネージャー、Xも平成7年から平成10年8月まで従業員であった。平成10年4月頃、Y2は、Y1会社内のXの事務机の引出しに保管されていたX撮影の写真のネガフイルム数葉を盗み出し、Xに無断でこれを焼付け、そのうちの3葉をY1会社のHPに掲載した。

 Xは、Y2のネガフイルムの盗み出しとHPへの掲載は、不法行為に当たるとし、民法709条に基づき、また、右不法行為がY1会社の事業の執行につきなされたものであるとして、民法715条に基づき、Y1会社とY2に対し、それぞれ3000万円の慰藉料を求めて訴えた。

東京地裁地裁民事40部の都築裁判官は、

  1. Y1のHPの管理等がY2の職務行為の範囲内に属しない、Y2の右不法行為がY1会社の事業の執行につきなされたとはいえないと判断し、XのY1に対する請求は、棄却した。
  2. Y2のネガフイルムの盗みだしとY1のHPへの掲載については、不法行為として、Y2の損害賠償責任のみを認め、Xへ200万円の慰藉料の支払いを命じた。
Y1会社にも責任が問えるのではないだろうか。

ページトップへ

中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

シリア難民とインドシナ難民 - インドシナ難民受入事業の思い出のイメージ

シリア難民とインドシナ難民 - インドシナ難民受入事業の思い出 【2,800円+税】

ウルトラマンと著作権 - 海外利用権・円谷プロ・ソムポート・ユーエム社のイメージ

ウルトラマンと著作権 - 海外利用権・円谷プロ・ソムポート・ユーエム社 【4,500円+税】

インターネット判例要約集 - 附・日本著作権法の概要と最近の判例のイメージ

インターネット判例要約集 - 附・日本著作権法の概要と最近の判例 【2,800円+税】