会社従業員ネガ窃盗事件

2016年1月6日

Y1会社の従業員Y2が同僚の女性Xの事務机の引き出しから、ネガ・フイルムを盗みだし、焼き付けて、無断でY1会社のホームページ(以下、HP)に掲載した行為について、会社の事業の執行につきなされたものとは認められず、Y1会社の使用者責任は認められなかった事例である。

東京地裁平成12年1月31日判決(判タ1046号187頁、控訴和解)

 Y1会社は、電子機器等の輸出入業務を行う会社で、Y2は、情報技術部のシニアマネージャー、Xも平成7年から平成10年8月まで従業員であった。平成10年4月頃、Y2は、Y1会社内のXの事務机の引出しに保管されていたX撮影の写真のネガフイルム数葉を盗み出し、Xに無断でこれを焼付け、そのうちの3葉をY1会社のHPに掲載した。

 Xは、Y2のネガフイルムの盗み出しとHPへの掲載は、不法行為に当たるとし、民法709条に基づき、また、右不法行為がY1会社の事業の執行につきなされたものであるとして、民法715条に基づき、Y1会社とY2に対し、それぞれ3000万円の慰藉料を求めて訴えた。

東京地裁地裁民事40部の都築裁判官は、

  1. Y1のHPの管理等がY2の職務行為の範囲内に属しない、Y2の右不法行為がY1会社の事業の執行につきなされたとはいえないと判断し、XのY1に対する請求は、棄却した。
  2. Y2のネガフイルムの盗みだしとY1のHPへの掲載については、不法行為として、Y2の損害賠償責任のみを認め、Xへ200万円の慰藉料の支払いを命じた。
Y1会社にも責任が問えるのではないだろうか。